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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

Oscar Peterson / The Sound of The Trio

2007年02月21日 00時21分56秒 | JAZZ-Piano Trio
 オスカー・ピーターソンのロンドン・ハウスでのライブといえば、彼の全盛期のライブとして名演の誉れも高いパフォーマンスですが、確かアルバムでは数枚に分散していたハズで、私が持っているのは"Put on a Happy Face"と"Something Warm"の2in1と、"The Trio"とこれの3枚だけで、あとはどんなアルバムに入っているのか、どんな順序で出たのかなどさっぱり分かりません。確か数年前にそのあたりをコンプリートにまとめたボックス・セットも出ていたようですが、さすがにこれは手を出していません。ただ、調べてみたら、今では入手困難のようなので、そう思うと購入しておけばよかったかなと、少し後悔しているところです。

 このアルバムですが、収録曲はA面2曲、B面3曲という長尺曲ばかり集めているのが特徴でしょうか。これのアナログ盤を購入したのは確か20代の中盤頃でしたが、当時、あしげく通っていたショップのマスターがもともとジャズのベーシストだったこともあって、ジャズについてはいろいろ指南を受けたのは今やいい思い出ですが、そのマスターがピーターソンで一押しだったこのアルバムで、それを信じて購入してきたところ、めくるめくようなピアノ・インプロヴィゼーションの洪水と、豪快というか痛快この上ないスウィング感で圧倒されたもんでした。今から思えば、あの頃はスタンダード・ナンバーなど未だほとんど眼中になかった頃でしたから、間違って「ブリーズ・リクエスト」だとか「ナイト・トレイン」なんか購入していたら、ピーターソンのイメージも全く違ったものになっていただろうなと思います(まぁ、それはそれでおもしろかったとは思いますが)。

 そんな訳で、このアルバムピーターソンの汲めども尽きぬといった感じのジャズ・ピアノのフレーズの洪水としてとても楽しめる作品です。個人的に好きなのは2曲目の「On Green Dolphin Street」ですかね。左手で繰り返す高速のアルペジオをバックを右手がラプソディックなソロを繰り出すクラシカルな冒頭が華麗そのものという感じでカッコ良いことしきり、ミディアム・テンポで繰り広げられる本編の途中で「Tenderly」が引用されるあたりも洒落っ気も最高です。もちろん1曲目の「Tricotism」やラストの「Kadota's Blues」は、前者のパップ風味、後者のブルージーさなど、全てこのトリオらしい、「ひとつの楽器」の如きトリオの一体化した-やや前のめりな-グルーブ感もほとんどワン・アンド・オンリーな世界を醸し出していて、ほんとあれよあれよという間に楽しめます。
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PETER ROSENDAHL / Wondering

2007年02月11日 00時37分32秒 | JAZZ-Piano Trio
 コペンハーゲン・ジャスハウスでライブをデビュウ作をとして出したデンマークのジャズ・ピアニスト、ピーター・ローゼンタルの2作目です。デビュウ作はこのブログを始めたばかりの頃、つまり2年前の今頃レビュウした訳ですが、実はこちらの作品もほぼ時を同じく購入してあって、いつかレビュウしようと思いつつ、2年が経過してしまったという訳です。うーん、歳をとると、なんとも年月経つのが早い。あの時のデビュウ作なんか、ほんのちょっと前に聴いたような気がするんですが....(その割に内容忘れてたりしますが-笑)。

 さて、内容的にはデビュウ作はほぼ延長線上です。ヨーロッパ系のピアニストらしい透明感と温度の低いロマンティックさをベースに、オーソドックスな王道ピアノ・トリオ風味も随所に顔を出すといったスタイルで、いうなればヨーロッパとアメリカのハイブリット路線といったところ。ただし、前作では割とそのあたりの要素がくっきりと分かれてしまっていたようなところがありしたけど、今回はスタジオ録音ということも幸いしたのが、両者がほどよくミックスされて、ECMでもブルーノートでもないという、けっこうユニークな音楽スタイルになってきているような感じがしました。

 ちなみに本作でもスタンダードは2曲、残りは全てオリジナルですが、本作ではどちらかといえばスタンダード作品はヨーロッパっぽく編曲し、オリジナルでは米国産ジャズに近づいているような感じです。とりあえずフュージョン的なリズムをベースのアウト気味にピアノ・ソロを展開していく2曲目のThe Mothのカッコ良さが印象的だったかな。なお、ベースは今回もマッズ・ビンディングです。この人の弾力あるベースのおかげでアルバムの仕上がりがずいぶん締まったというか、ワンランク上の風格のようなものを感じさせるのもまたポイント高いです。
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エディ・ヒギンズ・トリオ/クリスマス・ソングス

2006年12月21日 09時12分18秒 | JAZZ-Piano Trio
 エディ・ヒギンスのクリスマス・アルバムです。一昨年出たもので去年購入したはいいが、なんやかやでクリスマスの時期に聴き逃したせいで、そのまま放置、さきほどふと思い出して開封し、今聴いているところです。内容はもちろんピアノ・トリオによるクリスマス・ソング集、メンツはジェイ・レオンハートとジョー・アシオーネというヴィーナスでのレギュラー・トリオになります。よくいわれることですが、ヒギンスはオスカー・ピータソン風なノリの良さに白人的な洗練された上品さみたいなものがプラスされたのが特徴な人ですから、クリスマス・ソングとの相性の良さみたいなところは現物を聴かなくても、大体想像できる訳ですが、実際聴いてみると、クリスマスらしい華やいだ雰囲気は今一歩としても、良くも悪しくもほぼその通りの音が出てきたという感じです。

 収録曲については、全編スタンダードかなと思っていたら、意外にもトラッドが多くこれちょっと意外でした。4曲目には「世の人忘れるな」が入っているのですが、この曲シグナル風なテーマが何故かジャズ・ミュージシャンの心をとらえるか、このテーマをトリガーにしてテクニカルにアレンジするジャズ・ヴァージョンが数多く存在する訳ですが、ここでも途中レオンハートのアルコをフィーチャーしたりしてなかなか凝った構成になっていますし、「ベツレヘムの小さな町」は上品なボサノバ調とけっこう手を替え品を変えで全編楽しませてくれます。スタンダート作品としては、「ザ・クリスマス・ソング」はアシオーネのブラシにのってゆったりとした演奏、「ジングル・ベル」や「ウィンター・ワンダーランド」はスウィンギーなヒギンス節といったところです。ただ「クリスマス・タイム・イズ・ヒア」が出てこないところが少々残念でした。
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ローランド・ハナ/マンハッタン・クリスマス

2006年12月18日 23時09分36秒 | JAZZ-Piano Trio
 このアルバム、サブタイトルが「浅井慎平プロデュース~瞬間移動音楽装置vol.1」で、CDの他にもう一枚CDケースがついていて、そちらにはマンハッタンのクリスマスらしき情景を捉えた写真が数枚ついていて(浅井慎平が撮影したんでしょうかね)、ピクチャースタンドのように机など飾れるような仕組みになっています。なにしろ87年の作品とクレジットにあるくらいですから、いかにもあの頃らしいバブリーな企画物ともいえ、音楽そのものはオマケみたいな感じですが(笑)、ともあれこのアルバム冒頭にマンハッタン風なSEが入る他は、ソロ・ピアノで綴った比較的オーソドックスなクリスマス・ミューズ集といえるでしょう。

 ピアノを弾いているのは、先頃物故したローランド・ハナで、ジャズ・ピアニストとしてはクラシカルなタッチが特色の人ですから、ここでもジャジーなムードというよりは、敬虔で荘厳なムードを全面に出しつつ、時にジャジーなムードでふとニューヨークをイメージさせるという仕上がりなっています。個人的には晩年ヴィーナスで残したクラシックを素材にしたピアノ・トリオ作品より、むしろ素材としてはあっている気がします。ただ、この人、ジョン・ルイスほど禁欲的でも遊びがない訳でもないけれど、どことくなく生真面目過ぎて、このアルバムも数曲聴く分にはいいんですけど、通して聴くと、いささか息苦しくなってしまうのが、自分の好みと合わないところかもしれませんね。
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キース・ジャレット・トリオ/東京96

2006年05月23日 23時02分39秒 | JAZZ-Piano Trio
 90年代のスタンダーズといえば、マイルスのトリビュート盤あたりからだろうか、CDで聴く限りだが、初期のロマンティックで思索的で叙情的なムードから、ビバッブに接近と長尺インプロ満載の、良く言うと非常に奔放な、悪く云うと垂れ流し状態のパフォーマンスが多くなっていったと思う。そうした方向性の頂点を記録したのが、ご存じ94年のブルー・ノート・ライブだった訳だけれど、私個人としては、どうもスタンダーズのこういう方向性について全面的に賛同しかねる面もあったため、この時期の諸作については正直いってあまり愛聴した記憶がない。

 このアルバムは確か前述のブルーノート・ライブの後に出た作品で、大筋では前述の方向性に準じた仕上がりだが、日本の皇室を迎えてのロイヤル・パフォーマンスということで、スタンダーズ側も意識したのか、それぞれの楽曲は適度に狩りこまれてコンパクトだし、有名なスタンダードも多く、このトリオの持つ歌謡性のようなものを全面に出しているため、日本人にとっては非常に聴き易い仕上がりになっているのが特徴だろう。キース・ジャレットというと、非常にアーティスティックで唯我独尊みたいなイメージがあるけれど、こういう配慮をけっこうやる人なのである。

 そんな訳でこの作品、同時期のスタンダーズとしては、比較的ラクに聴ける作品だ。私のような初期のヨーロピアンナイズされた叙情を愛好している者にとっては、ややオーソドックス過ぎ、普通なジャズに聴こえ過ぎる気がしないでもないが、この作品の場合、そうした手練手管を超えた域でなされた、枯れた味わいをさりげなく楽しむべき作品なのかもしれないな。
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ゴンサロ・ルバルカバ/アット・モントルー

2006年04月10日 19時13分04秒 | JAZZ-Piano Trio
 こちらも懐かしい駄文。おそらく当時書き込みまくっていたニフティの音楽フォーラムに書いたもののような気がするんですが、今となって詳細は不明ですが、どうも98年10月頃に書いたようです。あの超絶"Well You Needn`t"で、ジャズ・ファンが度肝を抜かれた当時のムードがよく出た文章ですけど、この文章を書いた後も、結局、"Well You Needn`t"を超える演奏にはお目にかかってないです(ってーか、最近は購入してないですが)。

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 しかし、この「キューバの奇跡」の登場(モントルー・ライブ)は衝撃的でしたね。とにもかくにも、冒頭の "Well You Needn`t" に度肝を抜かれました。私の場合、いろんな音楽を雑多に聴いている遍歴故に、最近では言葉本来の意味で度肝を抜かれるなんてことは、正直いってそんなにない訳ですが、あればっかりは嘘もはったりもなしで、まさに「度肝を抜かれ」ました。
 
 なんせ、その超高速フレーズと並々ならぬパワー感、そしてオスカー・ピーターソンとモンクとセシル・テイラーをなんの違和感もく同居させる新世代らしい感覚、そしてなにより野獣如き鋭敏な運動性でもって、共演のチャーリー・ヘイデン(ベース)とポール・モチアン(ドラムス)という歴戦の大物を圧倒しきっていたのが凄かった。いゃぁ、この曲に限ってではありますが、あのふたりはルバルカバの圧倒的はパワーを眼前して、ほとんど自らのこれまでのジャズ的手練手管など何にも役に立たないことを悟ったのでしょう。酷な言い方ではありますが、ほとんど見る影もなく「単なる共演者」と成り下がってしまっていました(あんた、あのヘイデンとモチアンが....ですよ)。
 いゃぁ、ほんとうに「天才というのはこういう風に現れてくるもんなんだ」と思いましたね。おまけに後に続く曲では、エヴァンス~キース・ジャレット系のリリシズム溢れるバラードなんか聴かせてくれたりして、「なんだこいつは、キーズ・ジャレットにまでなれるか」って再び驚かされましたし、一時、彼に夢中でした。まぁ、少なくとも彼の登場で、私の中でミッシェル・カミロとモンティ・アレキサンダーは完全に精彩なくしました(笑)。
 
 ちなみに第2作目では、予想通りタイコがジャック・ディジョネットにチェンジ、第3作目ではベースがヘイデンから若手のジョン・バティトゥウィッチに変り、更には自らコンボでの作品も出したりもしてますが、残念ながら前述の"Well You Needn`t" に匹敵するプレイは未だお目にかかれないという気がします。まぁ、逆に言えば、それだけ "Well You Needn`t" のプレイは凄かったということなんでしょう。個人的にはジャズ史上の名演だと思ってます。ジャズが嫌いな人でも、この演奏はぜひ聴いてもらたい。好き嫌いはともかくとして、クラシックでいったら、全盛期のラザール・ベルマンの演奏みたいなもんで、とにかく聴いていて、頭がグラグラしてくるんですよね。

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ティエリー・ラング/ガイド・ミー・ホーム

2006年04月03日 23時28分25秒 | JAZZ-Piano Trio
 久々にティエリー・ラングです。96年の「ティエリー・ラングの世界」に続くブルー・ノートでの作品ですが、いつものトリオではなくピアノ・ソロによるアルバムになっています。ラングのピアノといえば、ヨーロッパ風に優美なエレガントさと物憂いほの暗さがベースになった、どちらかといえばモノローグ風なものが多かったですし、ピアノ・トリオといっても、ほとんどピアノ・ソロに淡くベースとドラムが付いただけみたいな演奏もありましたから、ピアノ・ソロは全く違和感ありません。むしろ、こういうのこそ聴きたかったという人もいるんではないでしょうか。あっ、もちろん私のことなんですが....(笑)。

 アルバムはスタンダード作品を中心にオリジナル作品が4曲ほど収録されています。まずアルバム前半部分では、いかにもラングらしい瞑想的でちょっとアンビエント風な演奏と割とジャズ・ピアノらしくオリジナルを自由にインプロヴィズしていくソロ中心で演奏したものが交互に現れてくるという感じで、もちろんオリジナルは前者、ブルーベックの「イン・ユア・オウン・スイート・ウェイ」とかマンシーニの「酒とバラの日々」は後者といったところですが、中盤の「インヴィテーション」や僕の大好きなロジャース&ハートの「イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド」あたりから、あたりからそのあたりが段々と渾然一体化していき、ラストのオリジナル2曲で再びラング的な世界に回帰するというような構成になっています。結果的にそうなっただけかもしれませんが、これって結構意図的にこう構成されたような気もしますが、どうなんでしょうね。

 そんな訳で、収録曲としては、やはりオリジナル作品の方が圧倒的に良かったです。あと、フレディ・マーキュリーの「ガイド・ミー・ホーム」なんかも取り上げていますが、これはいかにもラング的なヨーロッパ調のムードに塗り込められた演奏に仕立てています。スタンダード作品では、「イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド」のメロディックさがとてもラングにあっていてなかなかの秀演でした。
 後、ボーナス・トラックとしてクイーンの4曲ほど収録されていて、どれも前述の「ガイド・ミー・ホーム」に準じたメロディックで思索的なムードでアレンジされていて楽しめます。「ボヘミアン・ラプソディー」などラングがやるとこうなるか的なエレガントなムードです。クイーン・ファンなら一聴あれ。
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BILL CHARLAP Trio / Somewhere

2006年03月14日 00時01分49秒 | JAZZ-Piano Trio
 ビル・チャーラップのレギュラー・トリオ(ブルーノートからワールドワイド発売されている方)の2004年発表の作品。前作がホーギー・カーマイケルで、本作がバーンスタイン、先般出た新作がガーシュウィン集ですから、レギュラー・トリオの方はさながらアメリカン・ミュージカルの作曲家シリーズみたいな感じになってきてますが、カーマイケル集が多彩なゲストを迎えたけっこうバーサタイルな作品であったのに比べると、本作は再び全曲ピアノ・トリオで演奏されています。もちろん選曲は「ウェスト・サイド・ストーリー」を中心にしたバーンスタインとミュージカル作品ばかりですが、こういう企画をピアノ・トリオでやろうというセンスはさすがビル・チャーラップというべきでしょう。学校でジャズを勉強してきた人がスタンダードやるのとは、ひと味もふた味を違うセンスを感じさせますよね。

 とはいえ、収録曲のほとんどが初めて聴くため、ビル・チャーラップのスタンダードを料理する手腕を楽しむという点では、ちと当方の勉強不足なところがありますが(なにしろ、「ウェスト・サイド・ストーリー」なのに、「something's coming」や「tonight」そして「マリア」も入ってませんからね、このあたりのセンスもまたチャーラップらしいところなんだけど-笑)、純ピアノ・トリオ作品の前作にあたる「星の降る夜」と比べると、一曲一曲のキャラクターを鮮明に描き分けている点といい、歌心、インプロビゼーションといい、遙かに音楽的深度を増しているように思います。おそらく、このあたりは前作「スターダスト」でいろいろなフォーマットに挑戦し、多彩な解釈をものしたことが生きているんでしょうね。「星の降る夜」にあった一曲一曲はおもしろいし、巧いことこの上ないのだけれど、アルバム通して聴くと、どうも一本調子だったところが見事に解消されているあたり、このトリオの大きな進歩といえるんじゃないでしょうか。また、そうした進歩を派手なギミックやテクニックで見せるのではなくて、割と地味な歌心みたいなところから感じさせるのが、これまたこの人らしいところといえます。

 曲として目立ったところを書いておくと、1曲目「クール」はリフのみ残してオリジナルを解体したようなギクシャクしたアレンジなのがいかにもチャーラップ。2曲目の「ラッキー・トゥー・ビー・ミー」はこのトリオらしいミディアム・テンポゆったり楽しめる作品。このトリオらしい....といえば、3曲目の「イッツ・ラヴ」はシャープなリズムのキメに、小気味よいスウィング感、歌心と三拍子揃ったアルバム中もっともこのトリオらしい作品かも。5曲目「ジャンプ」はこのメンツにして珍しくトリッキーな作品で、チャーラップ最初期の頃を思わせたリもします。10曲目の「アメリカ」はアフロ・キューバン風のリズムで料理して、あっと驚くアレンジをさりげなく披露している。こんなことチャーラップ以外誰が思いつくのか、ざまぁみろとかいいたくなっちゃう(笑)。ラストの「サムホエア」は2分半のピアノ・ソロで、ニュー・ユーク・トリオでの「いそしぎ」を思わせるそこはかとない叙情と格調高さが絶妙にブレンドした実に味わい深い演奏です。
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AKIKO GRACE /フロム・ニューヨーク

2006年03月06日 00時49分25秒 | JAZZ-Piano Trio
 ジャケ買いです、黒髪のお嬢様みたいな、どちらかといえば、クラシックのピアニストみたいな風情に惹かれて購入してきました。とはいっても購入したのは、もう2,3年前のことになりますが....、さっきふと思い立って、久しぶりに聴いているところです。初めて聴いた時の印象を、私はあんまりよく覚えていないのですが、きっとその時は、「今時の秀才らしくテクニックや音楽的素養は申し分なけれど、今ひとつインパクトに欠ける」とでも思ったんでしょうね。これって、私の買ったはいいが、長らく放置しておく典型的パターンですから。

 さて、改めて聴くと、この人キース・ジャレットの影響がかなり強いという感じがしました。具体的にはごく初期のスタンダーズあたりに共通する、ちょっとメランコリックで思索的ムードでもってソロを紡いでいくあたりはかなり近いものがあると思います。このアルバムにはスタンダード・ナンバーもやっていますが、過半数はオリジナル曲で、それらの作品ではよりキース・ジャレット風というか、ECM的な温度感の音楽になっていますから、その意味ではティエリー・ラングとかトルド・グスタフセンなんかのスタンスに近い線で音楽をやっているような気もします。一方、情報過多な日本人らしく、2,8曲目ではチック・コリア的にスポーティーで敏捷なフレーズを多用したりしてバーサタイルさも発揮しています。

 そんな訳で、決して悪くないのですが、やっぱり「いまひとつこの人の独自の音楽的自我が見えない」というのか正直なところ。ECM風にいくならもうちょっと耽美的、陶酔的であって欲しいし、王道ジャズで攻めていくには音楽がモノトーンみたいな気がするんですね。なんでも、彼女は最近オスロで録音したとかいうもろECM風なアルバム出したようですが、そっちの方はどうなんだろう。
 ちなみにこのアルバム、ベースはロン・カーター、ドラムスは私の大好きなビル・スチュアートなんですが、こういう音楽だとスチュアートのドラムスってけっこうデジョネットっぽい(特にシンバル)のがおもしろかったです。
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The BILL EVANS Trio / Moon Beams

2006年02月24日 23時10分56秒 | JAZZ-Piano Trio
夭折したスコット・ラファロの後任としてチャック・イスラエルが参加したビル・エヴァンス・トリオによる確か最初の録音。同時期の録音としては「ハウ・マイ・ハート・シングス」があって、あれが比較的明るいスウィンギーな曲を集めていたに対して、こちらは全編ほぼバラードで構成されているのが特徴です。また、物憂げな女性が逆さまに写っている、ちょっと退廃的なジャケットも印象深くて、個人的には最もよく聴くビル・エヴァンスのアルバムになっています。

 音楽的には前述のとおり、ほぼミディアム~スローのバラード系の作品ばかり集められていて、ともすれば瞑想的な音楽になる寸前のところで、かろうじてトリオ・ミュージック的なインタープレイを成立させているところが印象的で、よくも悪しくも抑制された美しさを感じさせるのが特徴となっています。このあたりはレコーディング・セッションからバラード集めたからそうなったのか、新加入のチャック・イスラエルのせいなのか、それともラファロを失ったエヴァンスの虚脱感なのか、はたまたジャケの暗示効果なのか、私自身よくわからないところもあるのですが、とにかく数あるビル・エヴァンスのアルバムでも、一種独特の感触を感じさせるアルバムになっていることだけは確かでしょう。

 ビル・エヴァンスの音楽を称して、よく「耽美的」とか「詩的リリシズム」とかいう形容詞が使われますけど、このアルバムの場合、まさに「耽美的」という言葉がもっとも相応しい仕上がりではないでしょうか。このアルバムの場合、渋目とはいえ比較的有名なスタンダード・ナンバーが並んではいますが、聴いていて不思議と「へぇ、こう解釈しますかぁ」とか「誰々の演奏に比べて、エヴァンスの場合....」などという思いがほとんどよぎらないんですね。いってしまえば、スタンダード・ナンバーはたんなるきっかけに過ぎなくて、ひたすら自己の世界に沈み込んでいるという感じといったらいいか。

 ちなみにドラムスのモティアンは全編に渡ってブラッシュ・ワークに徹していますし、イスラエルもエヴァンスに楚々と寄り添っているかの如きサポート振りで、そうしたところもこのアルバムの耽美な印象を倍加しているといえるかもしれません。BGMとして軽く流していたつもりが、ふと気がつくと作業を止めて、陶然と聴き惚れている....そんなアルバムです。
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キース・ジャレット・トリオ/星影のステラ

2006年02月23日 23時47分02秒 | JAZZ-Piano Trio
 キース・ジャレットがゲイリー・ピーコックとジャック・ディ・ジョネットと組んだトリオ、通称スタンダーズは最初(1985年)のライブ盤です。ご存じの通り、彼は現在でもピアノ・トリオの最高峰としてジャズ界の頂点に君臨していて、出すアルバムはことごとく高い評価を得ている訳ですが、個人的にはこのアルバムがスタンダーズとしては一番か二番くらいに好きという感じです。

 理由は「星影のステラ」が入っていること。そもそも「星影のステラ」という曲自体私は大好きなのですが、おそらく数あるこの曲の演奏でも、これは間違いなくそのトップに来る名演中の名演だと思うからです。まず冒頭のソロがいい、思索的なムードの中、メインの旋律を最初は薄っすらと、そして次第にはっきりと暗示しつつ3分間ほどラプソディックにソロを展開していく訳ですが、キース流の叙情と「星影のステラ」の旋律が微妙に交錯して、静かな緊張感を感じさせるのです。そしてその後、いよいよテーマが今度はトリオで演奏される訳ですが、最初にベースが流れるように入ってきて、次にブラシが楚々と続く阿吽の呼吸感は最高です。こんな「星影のステラ」やられた日には、ほとんどのジャズ・ミュージシャンが敗北感を抱くんではないかと思うほどですが、少なくともこの前半部分はスタンダーズが見せた「最高の瞬間」のひとつであることは間違いないところだと思います。もちろんそれ以降、次第にテンションが高まり、ホットな展開に発展してく流れも見事だし、キースの音楽にエレガントな品格を与えるゲイリー・ピーコックのベース、キースの音楽のユニークさを独特の句読点で、リズムの点から拡大していくデジョネットのドラム(とくにシンバル)と、三者の絡みはほとんどエクセレントです。

 それにしても、このトリオ、何回か中断も挟んだりしながらも、結局は20年以上やってきたことになるんですねぇ。なんかもう最近になると、「ケルン・コンサート」などで有名なソロ・パフォーマンスより、「スタンダーズのキース」のイメージの方が強くなってしまったような感はあるし、ピアノ・トリオにしても、もうこれ以外メンツでやることを想像する方が難しくなっているような気がしますが、個人的にはやはりこの作品あたりが、一番鮮やかな印象が残ってますね。
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ウラジミール・シャフラノフ / ホワイト・ナイツ

2006年02月06日 00時00分14秒 | JAZZ-Piano Trio
 ウラジミール・シャフラノフと澤野工房をジャズ・ファンに一躍有名した作品です。そもそもジャズ評論家の寺島氏が例の調子で持ち上げたことから幻の名盤となり、澤野工房が復刻したことで、その評価がゆるぎないものになったということらしいのですが、確かにこれはピアノ・トリオの名盤としかいいようがないアルバムです。シャフラノフのことをデビュウ作のレビュウで、「ウィントン・ケリーばりの軽快なスウィング感+トミー・フラナガン的センスによるスタンダード解釈/ヨーロッパ的洗練」と形容させていただきましたが、このアルバムではそうした特徴がいかんなく発揮されているのに加え、アル・フォスターとジョージ・ムラーツという豪華なオマケがついて、ピアノ・トリオの醍醐味を満喫させる仕上がりになっているのが、このアルバムの素晴らしいところでしょう。

 これはあくまでも私の場合はなんですが、まず1曲目の「ラブ・ウォークド・イン」で思わずにんまりしてしまったんです。私はアル・フォスターがドラムが大好きで、ミディアム・テンポでブラシなどシャープに刻んでくれたりすると、もうほとんどそれだけで満足してしまうくらいなのですが、この曲などまさにその好例といってもいいドラミングで、おまけにベースは相性のムラーツですから、もういうことなしだったんですね。個人的に「フラナガン+ムラーツ+フォスター」と組み合わせはピアノ・トリオの理想型のひとつだと思ったりしていますが、この曲を聴くと、このトリオはそれに迫る組み合わせだと直感しました。またあっという間に終わってしまいますが、アップ・テンポで進む3曲目の「ジャイアン・ステップ」のシャープなスウィング感も素晴らしかったし、もう冒頭4曲でピアノ・トリオの名盤入りしてしまいました。

 一方、シャフラノフのヨーロッパ的体質が出た演奏としては、「ラウンド・ミッドナイト」、「ジャンゴ」、そしてスクリャービンの前奏曲を元ネタにしたらしいタイトル曲あたりに濃厚ですかね。やや暗いロマンティシズムと透明感のようなものが横溢する仕上がりです。ただ、この人の場合、過渡に深刻になったり、エモーショナルになったはしないで、あくまでもオーソドックスなピアノ・トリオの常道を守りつつヴァリエーションを出しているという感じなのがまたいいんですね。という訳で、このアルバム、ごくごくまっとうなピアノ・トリオ作品ではありますけど、「んじゃ、同じような音楽やってるアルバムを他に教えてよ」などといわれると、なかなか見つけることができないというあたりが、名盤の所以なのかもしれませんね。あっ、あとオリジナル曲ではボサ・ノヴァ調の「ノヴァ・モヴァ」がおもしろかったです。
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トルド・グスタフセン・トリオ/ザ・グラウンド

2006年01月30日 23時56分04秒 | JAZZ-Piano Trio
 去年の今頃といえばヨーロッパ系のピアノ・トリオばかり聴いていましたけど、丁度去年の今日にレビュウしたのが、グスタフセンのデビュウ作である「チェンジング・プレイセズ」でした。ややダークで温度感の低い、静謐で思索性に富んだ、それこそECM系としかいいようがない音楽は、日本だけでなく本国ノルウェイその他でも大ヒットしたようですが、本作はそれに続く第2作です。実はこのアルバム、昨年のレビュウを書いた後、すぐに購入していたのですが、あれこれと他の作品に関わっているうちに春から夏になってしまい、なんとなく聴く時期を逃してしまって、本日ようやく聴いてみたという訳です。

 さて、この第2作。全体としてはほぼ前作の延長線上の音楽といっていいと思いますが、誤解を恐れずあえて書くならば、いわゆるジャズ的な要素は前作以上に稀薄になったといえます。前作にはラウンジ風というかキャバレー風のBGMみたいなジャズのムードがそこかしこに香ったりしていましたが、本作ではそういう要素はほとんど一掃され、グスタフセンのコアな部分の純度を上げたいった結果、出来上がった音楽という感じがします。1,2曲目はほとんど寡黙なモノローグでつづったレイクエムのような音楽で、その様はまるでピアノ・ソロ。ベースとドラムは霞のように後方に陣取っているあたり、このアルバムの雰囲気が象徴しているかのようです。アルバムは3曲目以降になると、ようやくトリオ・ミュージック的なインタープレイがちらほら聴かれますが、これとてエキサイティングだとか、ホットなどという言葉とはほとんど対極にある音楽で、なんだか聴いているうちに「これって、ジャズのピアノ・トリオのフォーマットを借りているけれど、何かそれとは違う音楽なんじゃ....」などと思えてきたりしました。

 ともあれ、第1作でも聴かれたような思わず既視感を誘うような音楽づくりや、ストイックなエレガントさは明らかに前作を超えてますから、最近1作目を気に入った人から文句なく買いでしょう。ちなみにライナーは黒田恭一で、だからという訳ではありませんけど、このアルバム、スクウェアなジャズ・ファンというよりむしろクラシックが好きな人に受けそうな気がします。個人的にはここ数年聴いたユーロ・ジャズの作品では三指入る作品と断言したいですね。
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HOD O'BRIEN / Live at Blues Alley - Second Set

2006年01月25日 23時50分19秒 | JAZZ-Piano Trio
 ホッド・オブライエン、レイ・ドラモンド、ケニー・ワシントンのトリオによる2004年のブルース・アレイにおけるライブ、こちらはそのセカンド・セットです。ファースト・セットのラストでは、メンバー全員が余裕綽々、決していきりたつことなく、まさに八分の力で小気味よく盛り上げてましたが、その好調ぶりをそのまま、セカンド・セットのオープニング以降にも持続しているようで、メンバー全員絶好調なのがビビッドに伝わってきます。選曲もこちらのセットはエリントン絡みの曲が多いし、「ラブ・レターズ」などというボクの大好きな曲も入っていたりするので、ファースト・セットに比べると曲的にはいくらか馴染みやすいかな。

 演奏は後半戦を意識してか、アップ・テンポのものが多く、前述のとおり1曲目から絶好調なコンディションも手伝って全編に渡り、いきり立つことはありませんが、とてもテンションの高い、実に楽しめるものになってます。特に3曲目の「ハウ・アバウト・ユー」のピアノからベースへソロがチェンジし、その後4バース・チェンジへと進んでいくあたりの自在な展開ぶりは、ジャズ的お約束といってしまえばそれまでですが、その自在なノリはジャズ的愉悦感に溢れていて、けだしこのアルバムのハイライトでしょう。大好きな「ラブ・レターズ」はロマンティックさはほどほどにして、お得意のちょい早めのミドルテンポで渋目に決めてますけど、こういう解釈ももちろんアリですね。

 ちょいとエキゾチックな「インナ・センチメンタル・ムード」はこのセット唯一のスロー・テンポで演奏され。ベースとピアノの絡みが聴き物。それにしてもオブライエンのちょっとドライなセンスとストレイホーンのエキゾチックなセンスってなかなか相性良いみたいで、ここのセットで何曲かとりあげているところからすると、ひょっとするオハコなのかもしれませんね。「ドゥ・ナッシング....」ではうねるようなピアノ&ドラムスの4バース・チェンジが最高にのってます。そしてラストはお馴染み「A列車」が登場。これもごくごくゆったりした「A列車」で、オーラスだからといって熱狂の坩堝になったりしないのが大人です。

 という訳で、なかなか充実したライブでした。ファースト・セットのところでも書いたとおり、この人メロディックにピアノを弾く人ではないので、どうも日本人には微妙ですが、「これがジャズだ」としかいいようがない音楽的感興はなかなかのもので、私はとても気に入りました。 

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HOD O'BRIEN / Live at Blues Alley - First Set

2006年01月25日 00時05分33秒 | JAZZ-Piano Trio
 ホット・オブライエンというジャズ・ピアニストのライブ盤です。初めて聴く人ですが、一応ネットで調べてみたら、50年代にはデビューしている大ベテランで、メジャーな存在でこそないが、米国では知る人ぞ知るという感じの人みたいです。日本人の感覚でいうとエディ・ヒギンズみたいなもんかな?。このアルバムは一年くらい前に新宿のディスク・ユニオンで新譜としてディスプレイされていたものを購入してきたもので、レイ・ドラモンドとケニー・ワシントンという組み合わせからして、新人か中堅の今風なコンサバ・ジャズ(?)だろうとあてこんだ訳ですが、こんなベテランだったとは知らなかった(どうもすいません)。

 収録曲は全部で9曲。2004年、ブルース・アレイでのライブ盤ということで、演奏はどれも7,8分と長目で、ライブ的な感興も充分です。この人、基本的にはハード・パップ・スタイルのようで、ソロ自体は日本人が好むようなメロディックなものではなく、どちらといえばややゴツゴツしたパップ的なフレーズを次々に繰り出しつつ、音楽の温度を次第に上げていくという感じ。メロディックでもないし、ノリノリという訳でもないですから、日本人にとってはちょいと微妙なスタンスかもしれませんが、きっと本国ではこういうのが「オーソドックスなジャズ」って感じなのかもしれませんね。誤解を恐れずにいえば、全盛期のウィントン・ケリーあたりに近い感じといったら伝わりやすいかも(ケリーのような哀感はあまりないですが....)。

 曲もほとんどがスタンダードのようですが、選曲がなかなか渋く、半分くらいは知らない曲でした。ちなみに知っていた曲のひとつ「LULLABY OF THE LEAVES」も、最初はどっかで聴いたことある曲だよなぁって感じだったのですが、よくよく聴いたらベンチャーズでお馴染みの「木の葉の子守歌」でした。とてもセンスの良いブルージーな歌い回しで演奏している訳ですが、本来はこういう渋い曲だったんですかね。演奏としては1曲目の「Nothing Like You Has Ever Been Seen Before」とか、6曲目の「Tangerine」あたりのミディアム・テンポで上品にスウィングしつつ、多彩なフレーズを繰り出していくあたりが楽しかったですね。レイ・ドラモンドとケニー・ワシントンもこういう場面では心得たもので、ラストなどまさに八分の力でストイックに決めてます。かっこいい。 
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