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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

カルロ・ルスティケリ/ブーベの恋人

2009年11月27日 22時16分29秒 | サウンドトラック
 「プーベの恋人」という映画は、おそらく団塊の世代には忘れられない映画ではないか。そもそも主演のクラウディア・カルディナーレというイタリアの女優自体が、この世代にはおそらく忘れられない人であり、この作品はクラウディア・カルディナーレの代表作となっているものから、この両者はたぶん不可分なのだろう。物語は第二次世界大戦末期の北イタリアを舞台にしたパルチザンの青年と娘の悲恋といったもので、牢獄に入れられたパルチザンの青年にあえてついていく、苦難の道を選ぶ主人公のけなげな純愛ぶりが当時受けたようだ。私が観たのは、初公開時からずっと20年近くたった頃で、どうもそれが災いしたのか、よくいえばごくまっとうな、悪くいえば通俗的な青春映画という感じで、その名声の割に、例えば先日のアントニオーニのような歴史に残る名作という風格も感じなかった。そのことは監督がルイジ・コメンチーニという、当時の職人監督であったことからもわかる(この人の作品にこれに限らず、割と社会派なところがあり、そこにイタリアのネオリアリズムの残滓を感じることもできる)。

 さて、そんなイマイチな印象だったこの作品であるが、そんな中にあって随所で光り輝いていたのがこの音楽である(もちろんカルディナーレも光り輝いていたけれど、こういう気性の激しそうな女は、個人的には「なんか、かなわねーな」とか思って敬遠したくなってしまうのだ-笑)。スコアはカルロ・ルスティケリ、古くは「鉄道員」を筆頭にピエトロ・ジェルミ作品で忘れられない旋律を提供し、「禁じられた恋の島」「イタリア式離婚狂想曲」といった作品でもファンには知られるイタリアの名匠である。さしずめこの作品はルスティケリ最盛期の名作ということになると思う。この作品のには一度聴いたら忘れられないような曲が2つある。ひとつは嘆き悲しむようなトランペットのイントロから、哀愁を漂わせつつサックスが物憂げな旋律を吹く「プーベのブルース」、ワルツのリズムなのに何故かひっそりとした哀しさ誘う「マーラのテーマ(ちなみにこういうタイトルのトラックはない)」である。劇中、このテーマがあれこれと姿を変え、随所に登場する訳だが、実際、この悲恋の物語はこの音楽なくして....というくらいに映画を大きく盛り上げていたと思う。ついでにいえば、アルトサックスがとろけるようにスウィートでノスタルジック旋律を奏でる「ステファーノ」も素晴らしい。基本なジャジーな音楽なのだが、実は地中海の海を望むような壮麗さがある実にイタリアらしい音楽で何度聴いても陶然として聴き惚れてしまう(ちなみにこれも劇中に何度も登場する)。

 という訳で、数あるイタリア映画の音楽でも非常に好きな一作である。このサントラを聴くと、この映画自体のことはあまり思い出さないけれど、20代はじめの頃、映画に耽溺していた時の自分のあれこれを思い出したりもしてしまう。もっとも、当時聴いていたのは、このサントラではなくキングから出ていたヨーロッパ映画音楽名作選みたいなものに収録されていた、確かルスティケリ自身のオーケストラかなにかの演奏だったように思う、プーベとマーラのテーマがあわさったアレンジだった(この時期にキングがよく出していたセブンシーズ音源のヨーロッパの映画音楽集、オリジナルサントラではないけれど、趣味のいい演奏が多かったように思う。復刻してくれないかなぁ)。サントラを入手したのはもっともっと後のことだ。
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ジョヴァンニ・フスコ/赤い砂漠

2009年11月13日 22時35分43秒 | サウンドトラック
 「赤い砂漠」は、「情事」「夜」「太陽はひとりぼっち」と続いた、いわゆる「愛の不毛三部作」に続いて発表された64年の作品。この作品も私は多分観ていないと思うが、そのポスターというか、広告だけはけっこう覚えている。これが公開された65年といえば、ビートルズ最盛期、愚兄がビートルズの記事目当てで購入してきた映画雑誌の裏表紙がこの「赤い砂漠」で、赤い扉枠に手をかけたモニカ・ビッティが何か思い詰めたような表情でこちらを観ているような構図だったと思うけれど、その赤....というか茶色のトーンが支配した独特の色調に写真は子供心にもかなり奇妙な印象を残したのだろう、今でもはっきり覚えているくらいだ。映画の内容は交通事故のショックから精神障害となった主人公(当然、モニカ・ビッティ)の孤独な心象風景を様々な形で描いているらしい(そういえば、アントニオーニの初のカラー作品がこれだったようだ)。

 アルバムに収録されたのは6曲。メインタイトルらしい「Astrale」はモロに現代音楽した音響の上に無調風な女声スキャットがのる非常に幻想的な音楽だ。昨日のところにジョヴァンニ・フスコという人は現代音楽畑の音楽家ではないか旨のことを書いたけれど、こういうトラックを聴くとますますそう思えてくる。「Nevrosi」も非常に幻想的な趣がある音響作品。こちらはボーカルもはいらず、ゆらゆらと漂うサウンドに時折メカニックな現実音が散りばめられたあたり、が離人症的な主人公の心象風景を表しているようで、こういう音楽をつけた画面というのはどんな風になっていたのか、とても興味深い。「Orgia」と「La Favola」は映画のセリフをそのまま収録したようなトラックだが、隙だらけの寡黙なセリフ(しかも奇妙な残響付き)の合間にやはり奇妙な現実音が入っていて、これまた非現実的な雰囲気と幻想味があり、聴いている質感としては、もはやミュージック・コンクレートの領域にはいったといってもいいトラックになっている。

 残り2曲はこれらの音楽とは全く対照的な通俗ダンス・ミュージックだが、他の2作が現音風音響的な作品とこうした通俗トラックがかろうじてバランスしていたのに比べると、さすがにこちらは前者の音響がエキセントリック過ぎて、まさに乖離してしまっているように聴こえる。これなどネオリアリズム出身のアントニオーニが本編で次第にイタリア的なもの、スタンダードな映画の作法から離れていく解体のプロセスをまさに音楽面で物語っているようで興味深い。ちなみにジョヴァンニ・フスコがアントニオーニの音楽を担当するのは確かこれが最後で、次からはもっと先鋭的な非映画音楽畑の人たちを起用していくことになる。
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ジョヴァンニ・フスコ/情事

2009年11月12日 21時28分25秒 | サウンドトラック
 アントニオーニの「情事」は彼のフィルモグラフィーでも多分一番有名な作品だ。技法というか方法論的にも従来の映画を打ち破った映画といわれていて、そういう意味でも私が映画に耽溺していた80年代初頭くらいには、その衝撃波の余韻というか、異常に高い評価がまだ通用していたように思う。なにが画期的だったかといえば、従来の映画的な物語のわくを否定したようなストーリーに仕立てたことだと思う。私はこの作品を未だ観ていないので、実にはなんともいえないのだが、冒頭に登場した行方不明になった女を捜す、恋人とその女友達のだらだらとした捜索劇のようなものらしいのだが、とにかくこの行方不明ななった女の「謎」が全く解明されず、探しているうたちに恋が始まりそうな2人の関係もなにやら展望のないまま終わる....という、いわばそれまでの映画の定石からいえばほとんど物語といえないような物語を、そのままやってしまったところが画期的だったらしい。今ならこんなストーリーでも「十分にあり」だろうが、当時はとてもそれが斬新で画期だったらしい。

 まぁ、観てもない映画の本編についてあれこれ突っ込むのも意味がなさそうなのだから、音楽の方に話を戻すことにしたい。このアルバムは昨日も書いたとおり、アントニオー二作品である「情事」、「太陽はひとりぼっち」、「赤い砂漠」のサントラから構成されたオムニバスだが、この「情事」については18曲、時間に40分のスペースが割かれているところからして、このアルバムのメイン・ディッシュといってもいいだろう。メイン・タイトルからフィナーレまで収録されているし、おそらく当時出たであろうサントラ盤をフル収録していると思われる。
 冒頭のメインタイトルは、新古典派時代のストヴィンスキーを思わせる木管アンサンブルで奏でられる。その乾いたユーモアとシニカルな面持ちは、ほぼ時を同じくして製作された、もう一方の傑作「甘い生活」の雰囲気に似ていないこともない(もっともこちらはニーノ・ロータなのでもうすこしウェットだけれど)。60年代初頭、高度成長期にあったイタリアのブルジョア達にはこんな音楽が似合ったのだろうか?。3曲目の「Valzer」はタイトル通りワルツで、マンドリンをフィーチャーしたややエキゾチックなサウンドと哀感に満ちた旋律が素敵だ。2ヴァージョン収録された「スロウ」も同様の哀愁の旋律をフィチャーした印象的な曲だ。

 さて、この「情事」の音楽だけれど、前述のような「比較的キャラの立った曲」に混ざって、漠とした不安感と倦怠感、主人公たちのうつろな心象風景を表現したような音楽が多数登場する。いずれも木管群をフィーチャーした、かなりモダンな音響で組み立てられていて、時に新古典派時代のストヴィンスキーを通り越して現代音楽的なところにまで接近してしまうところもあるくらいだ。おそらくこれらは、主人公ふたりの心象風景などを描写に違いなく、音楽を聴いているだけで、モニカ・ヴィッティのアンニュイな表情だとか、ふたりがレア・マッセリを探しつつ、けだるい恋に陥る舞台となる地中海の孤島の風景だとかが、映画を観たこともないのに思わず思い浮かべてしまう(浮かぶような気がするだけか-笑)。
 という訳で、「太陽はひとりぼっち」の方では4曲だけだったが、こちらはトラックがたっぷりと収録されているせいで、イタリア伝統の旋律美はもちろんだが、それ以上にモダンでアブストラクトな音響感覚がたっぷりと味わえる。あとこれは想像だが、ジョヴァンニ・フスコという人がおそらく現代音楽畑の音楽家で、調度日本の同じ頃でいえば池野成とか石井歓みたいなスタンスで映画音楽を担当していのではないか....などとも感じた。
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ジョヴァンニ・フスコ/太陽はひとりぼっち

2009年11月11日 22時06分20秒 | サウンドトラック
 私が映画に耽溺して30年近くも前の80年代初頭頃、フェリーニやベルイマンなどと並んで芸術的評価の高かったイタリアの映画監督である。思い返すと、当時の日本でヨーロッパの映画監督といえば、ヌーヴェル・ヴァーグ系の監督の先鋭的な作品は一段落つき、ゴダール、トリュフォー、シャブロルといった新鋭たちは、そろそろベテランになろうかというある種の分岐点にさしかかっていた。また、フェリーニやベルイマンといった問答無用の巨匠レベルのまだまだ元気に活躍、ヴィスコンティは亡くなったばかりだったが、晩年に彼が手がけた作品はどれもほとんど最高の評価を得ていた。当時映画に熱狂していた私は、様々な映画の関する本を乱読したが、映画史的な本をひもとくとこれら巨匠たちと並び称され、いや、それ以上に高い評価を得ていたのが、ミケランジェロ・アントニオーニというイタリアの監督なのであった。

 彼が60年代に監督した「情事」、「夜」、「太陽はひとりぼっち」、「赤い砂漠」、「欲望」、「砂丘」といった作品は、どれも公開時にほとんど最高の評価を得て、芸術性も高く、しかも客を呼べる監督(だったのだろう)として、一般ににも知られており、そうした知名度、評価が80年代初頭の頃はまだまだ残っていた。ところが、当時、まだレンタル・ビデオなどはまだなく、これらの映画のうち、「欲望」くらいしか私は観ることができなかった。ヴィスコンティやベルイマン、フェリーニなどはまだ新作に併せて旧作がリバイバルされることもあったが、ことに映画にに残る画期的な作品として有名で、かつモニカ・ビッティのアンニュイな美しさが映えたらしい「情事」や「夜」といった作品は、喉から手が出るほどに観たい作品だったが、そのような機会はついぞ訪れなかったのだ....と、なんだかいきなり、話が脱線しているが(笑)、このアルバムは全盛期のアントニオー二作品である「情事」、「太陽はひとりぼっち」、「赤い砂漠」のサントラから構成されたオムニバスである。

 音楽は三作ともにジョバンニ・フスコ、全盛期のアントニオー二の作品のかなり部分を手がけている、いわばアントニオー二の音楽面での片腕だ。さて、とりあえず今夜はアラン・ドロンとモニカ・ビッティという当時の大スターの共演で、日本でもその主題曲が大ヒットした「太陽はひとりぼっち」のパートを聴いてみた。収録曲はたった4曲だが、この主題曲は強力だ。なにしろこの私ですら覚えているくらいだから当時よほどヒットしたのだろう、またヨーロッパ系のサントラ名曲集みたいなアルバムには大抵収録されているから問答無用の名曲といってもいい。主題曲「ツイスト」ははねるツイストのリズムにのって、哀愁のメロディをサックスが奏でるもので、いかにも日本人が好みそうな曲でもある(大貫妙子の「A Slice Of Life」に入っている「もう一度トゥイスト」という私の大好きな曲はおそらくこれのオマージェだ)。哀愁のメロディというのはイタリアによくあるが、それをツイストのリズムでやったところが斬新で、60年代初頭のヨーロッパ独特の雰囲気が伝わってくるようでなんとも魅力的だ。

 まったりとしたリズムにのって、物憂げなアルトサックスがテーマを奏でる2曲目「スロウ」、今時なサントラ・ファンなら喜びそうな、おしゃれなラウンジ・ジャズ風の3曲目「パッセジャータ」は、ほとんどメインタイトルとは異質な音楽だが、映画どうん風に両者は使い分けられていたのだろう?。また4曲目の「ツイスト(ヴァリエーション)」は、おそらくこの映画に充満していたであろう、「魂の孤独」だの「愛の不毛」(どちらもアントニオー二の映画を形容するのに当時流行ったフレーズね)的なムードをいやおうなく想像させる、高度成長期の歪みからうまれた都会に住む人の虚脱感....みたいな60年代前半の時代的雰囲気を甦るような印象的な作品になっている。これはなかなか魅力的だ。
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ベスト・オブ・007 Vol.4

2009年10月16日 23時59分06秒 | サウンドトラック
 ここからはデビッド・アーノルド時代に入る。ピアーズ・ブロスナンのジェームス・ボンドとアシッドで重厚、そしてバリーへのオマージュに充ち満ちていたアーノルドの音楽は実にマッチして、またたくまにバリーの後継者の地位を確立してしまったと思う。一方、ダニエル・クレイグにボンドがスウィッチすると、007シリーズ自体がリセットされてしまったため、バリーのオマージュ、あるいはバリー風なところは大幅に後退して、よりアーノルドの素が出た、ギラギラとしてアシッドな雰囲気のテクノ、あるいはアンビエント風な音楽が以前にも増して濃厚になってくる。この第4巻は、公開前だったこともあり「慰めの報酬」からの音楽は入っていないけれど、そこからの何曲をここに付け足せば、そのあたりの変化がより明確になるんではないだろうか。

<トゥモロー・ネバー・ダイ>
01.White Knight
02.Tomorrow Never Dies
03.Paris And Bond
04.Backseat Driver
05.Surrender

<ワールド・イズ・ノット・イナフ>
06.Show Me The Money
07.Come In 007, Your Time Is Up
08.The World Is Not Enough
09.Elektra's Theme

<ダイ・アナザー・デイ >
10.On The Beach
11.Hovercraft Chase
12.Die Another Day
13.James Bond Theme (Bond Vs. Oakenfold)
14.Going Down Together

<カジノ・ロワイヤル>
15.African Rundown
16.You Know My Name
17.Vesper
18.Death Of A Vesper
19.The Name's Bond... James Bond
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ベスト・オブ・007 Vol.3

2009年10月14日 23時17分10秒 | サウンドトラック
 ロジャー・ムーア後期からティモシー・ダルトン第一作までは3作はジョン・バリーが担当、この時期は監督もジョン・グレンに固定していたし、007シリーズとしては長期安定路線だったと思う。音楽面では「オクトパシー」の主題歌「All Time High」が「Nobody Does It Better」に匹敵する名バラードで印象的。重厚な「消されたライセンス」の音楽はエリック・ケイメン、一方、ピアース・プロスナンにチェンジした「ゴールデンアイ」はエリック・セラが軽快な音楽をつけてかなり目先をあれこれ変えている印象だ。で、次は御大ジョン・バリーが復帰かな....と予想させたところで、新鋭デビッド・アーノルドの登場とあいなり、以降、着々とジョン・バリーの後継者となっていくのは周知の通りだけれど、思えば、「オクトパシー」と「リビング・デイライツ」はバリー最終時期の傑作だった訳だ。



<オクトパシー>
01.All Time High
02.Bond Meets Octopussy
03.The Palace Fight - James Bond Theme

<美しき獲物たち>
04.A View To A Kill
05.Wine With Stacey (a View To a Kill)
06.Golden Gate Fight

<リビング・デイライツ>
07.The Living Daylights
08.Necros Attacks
09.Into Vienna
10.Where Has Everybody Gone?
11.Alternate End Titles

<消されたライセンス>
12.Licence To Kill
13.Licence Revoked

<ゴールデンアイ>
14.The Goldeneye Overture
15.Goldeneye
16.A Pleasant Drive In St. Petersburg
17.For Ever,James
18.The Experience Of Love
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ベスト・オブ・007 Vol.2

2009年10月13日 23時16分49秒 | サウンドトラック
 第2巻はロジャー・ムーア時代前期~中期くらいの作品集。こうしてみると、この時期はレギュラーのジョン・バリーと一作おきにジョージ・マーティン(死ぬのは奴らだ)、マービン・ハムリッシュ(私を愛したスパイ)やビル・コンティ(ユア・アイズ・オンリー)が登場して音楽的に新味を出そうしているのがよくわかる。もちろん、バリーの音楽は悪くはなく、正調007シリーズの音楽として堅実そのものだが、やはりこの時期の作品といえば、映画自体もそうだが「私を愛したスパイ」のこれまでの007とはいささか毛色の変わったメロウでムーディ、そして華やいだムードがやはり印象に残る。なにしろ「Nobody Does It Better」が極めつけだ。

<死ぬのは奴らだ>
01.James Bond Theme
02.Live And Let Die (Main Title)
03.Bond Meets Solitaire

<黄金銃を持つ男>
04.Main Title/The Man With the Golden Gun
05.Goodnight Goodnight
06.End Title/The Man With the Golden Gun

<私を愛したスパイ>
07.Bond 77 (James Bond Theme)
08.Nobody Does It Better
09.Ride To Atlantis
10.The Tanker
11.End Titles - Nobody Does It Better

<ムーンレイカー>
12.Moonraker - Main Title
13.Space Lazer Battle
14.Moonraker - End Title

<ユア・アイズ・オンリー>
15.For Your Eyes Only
16.Runaway
17.The P.M. Gets the Bird/For Your Eyes Only (reprise)
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ベスト・オブ・007 Vol.1

2009年10月12日 23時15分51秒 | サウンドトラック
 昨年の冬くらいだったか、カーステレオ用に007シリーズの音楽をCD四枚にまとめたコンビレーションを作った。前のカーステレオと比べると音は貧弱だが、ハードディスクを内蔵しているので、あれこれライブラリ化したもののひとつだったという訳だ。007シリーズといえば、主題曲を集めたコンピレーションは沢山あるが、もう少し映画の雰囲気を伝える曲も聴きたい....という頃合いのベスト盤が存在しない以上、自分で作ってしまえというところである(笑)。今回のはiTunesで適当に「らしい曲」を選んで4枚に割り振っただけだから、まぁ、パイロット版といったところだが、作ったまま放置してあったこのコンピレーション、聴いてみるとけっこうそれぞれの映画が走馬燈してきて楽しい。第一巻はショーンコネリー時代のものをまとめたもので、「Dr. No - Suite」はプラハ・フィルによるスコア版で、オリジナル・サントラに混じってもこういうを入れられるところが、私家盤の楽しいところ。ちなみに「007は二度死ぬ」の曲がけっこう多いのは自分の趣味が出たといったところだろうか。忘れないうちにリストアップしておこう。

<ドクター・ノオ>
01.James Bond Theme
02.Kingston Calypso
03.Dr. No - Suite

<ロシアより愛をこめて>
04.Opening Titles: James Bond Is Back - From Russia With Love - James Bond Theme
05.007 Takes The Lektor
06.From Russia With Love

<ゴールドフィンガー>
07.Into Miami
08.Main Title - Goldfinger
09.Dawn Raid On Fort Knox
10.The Death Of Goldfinger - End Titles

<サンダーボール作戦>
11.Thunderball - Main Title
12.Mr. Kiss Kiss Bang Bang

<007は二度死ぬ>
13.Capsule in Space
14.You Only Live Twice
15.Twice is the Only Way to Live
16.Bond Averts World War Three
17.You Only Live Twice - End Title

<女王陛下の007>
18.We Have All the Time In the World (Instrumental)
19.This Never Happened To the Other Fellow
20.Bond Meets the Girls
21.We Have All the Time In the World

<ダイヤモンドは永遠に>
22.Diamonds Are Forever
23.To Hell With Blofeld
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デビッド・アーノルド/007 慰めの報酬

2009年10月09日 10時17分22秒 | サウンドトラック
 映画の方はしばらく前に観たが、今回はそのサントラの方を聴いてみた。担当は相変わらずデビッド・アーノルド、彼は007シリーズも「トゥモロー・ネバー・ダイ」から早くも5本目、もう実質的にジョン・バリーの後継者、007シリーズにおける音楽の顔になったといってもいいと思う。ブロスナンの頃の作品は、ジョン・バリーへのオマージュみたいなところが散見したものだけれど、「カジノロワイヤル」以降は映画の設定上、「007が未だ出来上がっていない」こともあり、例のテーマがそれほど派手に使わないコンセプトなのか、アーノルドの持っている「素の音楽」がよく出ている音楽になっていて、期せずしてバリーとは違ったセンスが明らかになってきている点は見過ごせない。

 さて、今回の作品だが、映画そのものが前作の続編なので、音楽の方も暗くて重厚、そしてかなりギラギラとしたアシッドなムードが全編をおおっていて、ほぼ前作の雰囲気を引き継いでいるといってもいい。ダンサンブルなアシッド・テクノ的な曲としては1曲目「タイム・トゥ・ゲット・アウト」や17曲目「ターゲット・ターミネイテッド 」あたりが、いつもの彼らしい仕上がり。一方、静かなバラード系作品というと、アーノルドはこれまでいくつかそうしたテーマを作っているのだけれど、12曲目「ワッツ・キーピング・ユー・アウェイク」、あとアンビエントみたいな18曲目「カミールズ・ストーリー 」がしっとりしてて楽しめる。全体としてはこれらの曲を両極として、シンフォニックなオーケストラとテクノ、アンビエント風なシンセとエスニックなリズムとか、アーノルドらしい音楽、音響が満載である。これで1つ2つくらい「これだっ!」って曲があると、更にいうことなしなのだが....。

 ちなみに今回の主題歌はアリシア・キーズ、アメリカのR&B系の女性シンガーでこういうところに引っ張り出されるくらいだから、かなりの売れっ子なのだろう。この人にジャック・ホワイトというガレージ系のギタリストがプロデュースやギターでコラボしているという形で、ガレージ系ロックに黒っぽい女性ボーカルがのるという音楽、アーノルド自身はこの曲の製作には関わっていなようだけど、出来上がった音楽のゴツゴツとして、ギラっとした手触りはいかにもアーノルド好みだ。でも、そろそろ「ノーバディ・ダス・イット・ベター」や「オールタイム・ハイ」みたいなバラードを復活してもいい頃ではないか?。
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JERRY GOLDSMITH / Alien - complete score - Disc.1

2009年09月21日 18時33分41秒 | サウンドトラック
 本完全盤の目玉であるディスク1。従来出ていたサントラ盤は、おそらく厳密にはサントラではなく、サントラ収録とほぼ同時に収録されたアルバム用の別演奏だったので(だったのだろうと思う)、実はこれが正真正銘のサントラということになる。収録曲は全部で30曲、最初の23曲が当初ゴールドスミスがフィルムにつけた演奏で、残り7曲がリドリー・スコットの要請を受けて新たに書き直した音楽となる。ライナーには詳しい解説があるのだが、分かりそうなとこだけでも読みつつ聴くと、元々ゴールドスミスが作った音楽が、どのように取捨選択されたか、ひるがえってスコットとゴールドスミスがどう対立したのがまで分かりそうで実に興味深い。

 一応、ざっくりと整理してみると下記のリストような感じになるだろうか。いやはや、元々ゴールドスミスが映画用に演奏された23曲中、実に11曲が不採用である。そこにはメインタイトルやエンドタイトル、冷凍睡眠、フェイスハガーといった音楽含まれているから、もうほとんど半分以上、いや、主たる部分は「使い物にならない」といわれたようなものだ。映画音楽の現場がどうなっているのか、私にはさっぱり分からないけれど、たいていこんな風に差し替えが頻繁に行われたりするものなのだろうか(だとすると映画音楽家というのは大変な仕事である)。いずれにしても、従来のサントラ盤を聴く限り、ゴールドスミスが元々フィルム用に作った音楽は、それ自体とても優れたものであったから、彼がこの結果に激怒したのも無理はないと思う。

 さて、ひととおりこのディスクを聴いてみて感じたのは、アッシュのワークステーションで流れたらしい「The Lab」、猫を探しにいく場面の「Cat Nip」「Here Kitty」、パーカーが死ぬ場面「Parker's Death」などなど、「えっ、こんな音楽鳴っていたっけな」という曲が実に多い。それぞれの曲が部分的にしか使用されていなかったり、元々音響的な音楽が多いことに加えて、この作品の場合、音楽が本物の音響にマスキングされて、いや、絶妙にブレンドされてというべきなのか、とにかくあまり目立って聴こえないせいもあるだろうが、それにしてもそういう部分が非常に多いのは驚いた。こうなると再び映画の方を観て、きっちりと検証したくなったりしてしまう。そういえば、ディスク2とこちらのディスクに収録された、同じ場面の音楽はどう違うのか?などというのも気になるし、検証すればするだけ、このアルバムおもしろそうだ。



01. Main Title → (差し替え) → 24. Main Title
02. Hyper Sleep → (差し替え) → 25. Hyper Sleep
03. The Landing
04. The Terrain → (追加) → 26. The Terrain
05. The Craft
06. The Passage
07. The Skeleton
08. A New Face → (未使用)
09. Hanging On → (差し替え) → 28. Hanging On
10. The Lab
11. Drop Out → (未使用)
12. Nothing To Say
13. Cat Nip
14. Here Kitty
15. The Shaft → (未使用)
16. It's A Droid
17. Parker's Death
18. The Eggs → (未使用)
19. Sleepy Alien
20. To Sleep
21. The Cupboard → (差し替え) → 29. The Cupboard
22. Out The Door → (差し替え) → 30. Out The Door
23. End Title → (差し替え) → ハンソン交響曲第2番第1楽章コーダ

27. The Skeleton(未使用)
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JERRY GOLDSMITH / Alien - complete score - Disc.2

2009年09月18日 23時14分42秒 | サウンドトラック
このところ度々話題に出していた「エイリアン」の完全盤が先日ようやく到着した。ディスク1に、劇中で使用されたサウンドトラック23曲に、その別テイク7曲。ディスク2には先日取り上げた従来盤のソース10曲に、デモや別テイク等7曲を収録した完全と呼ぶにふさわしい仕上がりである(全47曲、計126分)。レーベルは Intrada という初めて聞くレーベルだが、ウェブサイトなどみると、ここ四半世紀くらい比較的新し目の-サントラとしてはあまりメジャーでない-ソースを扱っているサントラ専門メーカーらしい。本作を初めてとして、ジェリー・ゴールドスミスの作品が多いが、こういう権利関係に太いコネクションのあるメーカーなのだろうか?。ともあれ、まずは従来盤リマスター+ボーナス・トラックの構成をとるディスク2の方から聴いてみた。

 まずと驚くのはそのリマスターの効果である。どういう仕掛けなのかわからないけれど、一聴して解像度、レンジなどが驚異的に向上している。余談だが、「エイリアン」と同時期の製作された「スター・ウォーズ」のサントラも、後年のリマスターで驚異的に鮮度が甦ったが、一体、どういう条件が揃うとこんな仕上がりのリマスターが出来るのだろう?。ともあれ、従来盤は1979年の収録の割に、音が放送録音的に平板すぎたのは確かだ。こうした現代音楽風の音響をメインに据えたサウンド・トラックだと、音が良ければ良いほど聴き映えがする訳だけど、従来盤はそれこそ発売当初のアナログ盤からして、残響の少なく乾き気味で、かつ妙にダンゴ状の冴えない音質だったので、このリマスターは大歓迎である。「The Landing」「The Alien Planet」などメインの旋律を奏でるトランペットとストリングスの絡み、その背後で蠢くような動きをする低弦など、その役割がきっとりと把握できるし、「The Droid」の巧みな音響設計もビビッドに伝わってくるという寸法だ。

 ボーナス・トラックも興味深い。「Main Title (film version)」は文字取り、映画に利用されたメインタイトルなのだろうか、それともそれをベースにした別録音なのか、ちと検証が必要だが(多分後者の方だろうとおもうが)、とにくか映画のオープニングをいやおうなく思い起こさせるトラックだ。「The Skeleton」は「The Alien Planet」の映画ヴァージョンか?。あと3曲収録された主に宇宙船内の描写の時に使われた思われる音楽のデモ・トラックも、おそらくディスク1に収録された本チャンのヴァージョンとの差異など考えれば興味津々のトラックということになるだろう。という訳で次回はディスク1を聴いてみることとした。

(DISC 2)
---The Original 1979 Soundtrack Album ---
01. Main Title
02. The Face Hugger
03. Breakaway
04. Acid Test
05. The Landing
06. The Droid
07. The Recovery
08. The Alien Planet
09. The Shaft
10. End Title

---Bonus Tracks---
11. Main Title (film version)
12. The Skeleton (alternate take)
13. The Passage (demonstration excerpt)
14. Hanging On (demonstration excerpt)
15. Parker's Death (demonstration excerpt)
16. It's A Droid (unused inserts)
17. Eine Kleine Nachtmusik (source)
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エイリアン三部作/various artists

2009年09月11日 21時15分36秒 | サウンドトラック
 先日「エイリアン」のサントラのところにちょっと書いた完全盤については、未だ自宅に到着しておらず、目下、楽しみにしている最中なのだけれど、その渇望を癒すべく聴いているのが、このスコア盤である。アメリカのサントラ専門レーベル、ヴァレーズ・サラバンデから出たアルバムで、「エイリアン」から7曲(約25分)、「エイリアン2」と「エイリアン」から各3曲(約15分)を収録して、アルバム一枚でシリーズの音楽の概要を俯瞰できるという、けだし優秀企画といっても良いアルバムである(同レーベルの似たような企画に「バック・トゥ・ザ・フィーチャー」がある)。演奏は同レーベルでは常に安定サウンドを聴かせるスコッティッシュ・ナショナル・オーケストラ、指揮はクリフ・エーデルマンという布陣だ。

 で、アルバム収録曲でやはり注目されるのは「エイリアン」だろう。ここ数日、久しぶりにサントラ盤との方も聴いてみたけれど、やはりあのアルバムには妙な違和感を覚えずにいられない点がいくつかあって、どうも落ち着いて聴けないのだ。なにしろこのアルバム、曲順がバラバラ。冒頭と掉尾こそメイン・タイトルとエンドタイトルではあるものの、メインタイトルが終わるとすぐに、幼虫が顔に張り付く例のフェイス・ハガーの音楽(The Face Hugger)になって、ずっと後の方に惑星に着陸する音楽(Landing)や惑星を探索する時の音楽(The Alien Planet)だのが出てくる寸法なのである。恐らく単体アルバムとしての聴くときにメリハリをつけるために、あえてこうした曲順に並べ替えたのだと思うが、1979年にもなって、どうして昔の007シリーズのサントラみたいことをやってたのかと、ちと釈然としない思いにかられるのである。

 また、このアルバムの音楽とサントラ盤がかなり違うということも大きい。おそらくゴールドスミスとスコットが対立した部分は、映画では監督のスコットに裁量権があったものの、サントラ・アルバム(実はこれもスコア盤らしいのだが)の作成に当たってはゴールドスミスの意向が優先されたのではないか?。とにかく先日のメイキングでも出てくる、ゴールドスミスとスコットが対立した冒頭のシーンから冷凍睡眠から目覚めるまでのシーンについては、アルバムの方はかなり映画とほとんど違った音楽になっている。映画ではエイリアンの惑星に着陸するシーンで初めて登場し、その後しばしば現れるテーマが、ここでは最初から朗々と登場するである。おそらくこのあたりが「隠された欲望」の音楽との差し替えの部分なのだろうが、いずれにしても「映画の最初にはコレ鳴ってなかったじゃん」という違和感は残る訳だ。

 さて、そのあたりを踏まえてこの再録スコア盤はどうかというと、こちらは実際に映画に使用された音楽を、努めて正確に再現することをコンセプトにしているようで、サントラ盤に比べても遙かに映画の雰囲気が出ている。冒頭のメインタイトルから冷凍睡眠装置での目覚め(Hyper Sleep)の部分も映画そのままである。またサントラ盤ではバーナード・ハーマン流のエキセントリックでグロテスクな音型のブラスが随所に聴こえたりしたけれど、ここでは映画同様、隠し味程度背景に追いやったバランスになっているのも納得できる仕上がりといえる。そんな訳で、映画のムードを音楽で味わうならやはりこちらだろうと思う。また、音質も全般にナローな放送的バランスで収録されていたサントラ盤に比べ、こちらは深々と鳴る優秀録音でまずは文句なしで、どうして全曲録音してくれなかったのかと悔しくなるほどのクウォリティ。さて、もうすぐやってくる完全盤は、まずはこれを越える仕上がりなっていて欲しいものだが....。
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JERRY GOLDSMITH / Alien (OST)

2009年09月08日 23時00分44秒 | サウンドトラック
 昨日取り上げた、「エイリアン」のボーナスディスクのメイキングを今日も観ているところだ。このメイキング、プリ・プロ、プロダクション、ポスト・プロと順を追って構成されていて、優に2時間以上はあるだろう。とにかく長く詳細を究めたマニアックなドキュメンタリーという感じである。今夜はようやくプロダクション、音楽のところに来たところだが、サウンドトラックについても、けっこうな時間を費やして検証していて、当然、この音楽を担当したジェリー・ゴールドスミスの証言なども出てくる。

 おもしろかったのは、ゴールドスミスとリドリー・スコットが、主に前半の音楽で対立していたことだ。スタッフ側は前半部分に「フロイド/隠された欲望」の音楽(これはゴールドスミスが1960年に書いた作品)などをテンポラリー・サウンドトラックとしてつけておいたらしいのだが、結論からいうと、ゴールドスミスが新しく付けた音楽が気に入らず、結局、制作側は「フロイド/隠された欲望」の版権を買い取ってまで、その音楽を使い、それを知ったゴールドスミスが激怒したとかいうものらしい。

 その部分が(「子守歌」の部分らしい)、どんな音楽だったのか明確に記憶にないのだが、いずれにしても制作サイドが版権を買ってまで使ったというのはよほどのことであり、なんとなれば、ぜひ独立した音楽として聴いてみたいと思っていたところで、ハタと思い出した。昔から出ている「エイリアン」のサントラは前半部分がほとんど収録されておらず、もっはら中盤から後半にかけての音楽ばかりで収録されていたのはそういう理由だったのだったのだろう。ゴールドスミスとスコットの対立なのか、版権上の問題なのか、ともかくいろいろあったせいで、できあがったサントラはああいう中途半端なものになったのかもしれない。

 いずれにしても、年月が経ても全く評価が下がらない「エイリアン」のことである。昨今の趨勢からいえば、サントラの方も「ジョーズ」や「スーパーマン」同様、ボーナストラック満載のコンプリート盤が出ているのではないかと、あちこち探してみたらつ、案の定出ていた。2枚組で従来のサントラ・アルバムの音源は当然だが、くだんの前半部分、ゴールドスミスが作ってボツになったトラックなども入っているらしい。当然即座に購入ボタンを押してしまったが(そのくらいこのサントラが好きなのである-笑)、これについては到着しだいレビューすることとしたい。
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早坂文雄/七人の侍、羅生門

2009年08月26日 23時50分52秒 | サウンドトラック
 ずいぶん前-たぶん10年くらい前-に購入してきたものであるが、このアルバムがスコア盤だったことに初めて気がついた。ひょっとすると、今回、初めて聴いたのかもしれない。指揮は早坂の弟子筋にあたる佐藤勝、オケはシネ・ハーモニック・オーケストラというスタジオ・オケ、コーラスは東京混声合唱団で1974年に収録されている。74年だから当然アナログ期で、初出は当然アナログ盤だろう。けっこう昔のアルバムな訳だ。映画音楽のスコア盤というジャンルは、日本だと80年代以降の伊福部先生のものが草分けくらいに思っていたのだが、日本でもこの時代からあったというのはけっこう驚きである。なにしろ、チャールズ・ゲルハルトがナショナル・フィルを指揮したコルンゴルトのスコア盤の登場が70年代前半だったはずだから、「さすが黒澤作品は格が違ったと」いったところだろうか。

 さて、内容だが「七人の侍」と「羅生門」がそれぞれ二十数分程度の組曲で収録されている(おそらくアナログ盤では旧ABに割り振られていたのだろう)。前者はかろうじてサウンド・トラックが残っているためサントラ部分のみがCDでも聴けるが、後者は現在ではフィルムしか現存していないのだろう、CDではセリフも入ったフィルム起しの音源しかないため、これの存在は非常に貴重である。
 で、実際に聴いてみると、とにかくオリジナルとの雰囲気のあまりの違いに驚く。オリジナルのナローだが、おどろおどろしい迫力に満ちたやたらと太い音に比べると、こちらは透明感あふれる繊細さに満ちた音楽になっており、その音の質感、雰囲気の違いは腰を抜かすほどだ。「七人の侍」冒頭の音楽など映画だとエスニックな太鼓が単に暴力的にドンドンとなっているだけみたいに聴こえるが、実は様々な楽器が重なり形成された非常に複雑なサウンドだったことが分るし、「菊千代のマンボ」はこれで聴くと、本当はマンボだったことが良く分かるといった具合だ。
 「羅生門」に至っては、その雅やかな雰囲気とボレロのヴァリエーションなど、大げさにいえばこれでもって、ようやく自立的音楽的としての全容が明らかになってのではないか....といえるくらいに、このクリアなサウンドのおかげで、早坂の作った音楽的意味(ついでにいえば、意外にも西洋的でモダンなオーケストレーションであったことも)がよく分かるものになっている。

 まぁ、こうした「録音方法の進歩により高音質化→ディテールの明確化→聴こえてくる音楽の様相が一変して驚愕」といったプロセスは伊福部先生のゴジラなどでも既に経験しているけれど、この落差はそれ以上に大きい。ひょっとすると録音に当たって、佐藤勝が補筆しているというような可能性もあるかもしれない。そういえば随所に佐藤勝らしいドライな音響やモダンさを強調したようなところがないでもないし。
 という訳で、1974年といえばもう35年も前の録音ではあるものの、劣悪なオリジナル音源(黒澤映画のサントラは特に音が悪いと思う)に比べれば、きちんとしたステレオ録音で演奏が残されているだけでも貴重である。比べれば、きちんとしたステレオ録音で演奏が残されているだけでも貴重である。
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佐藤勝/椿三十郎

2009年08月20日 23時54分07秒 | サウンドトラック
 「用心棒」のほぼ続編といっていい「椿三十郎」だが、「用心棒」とは舞台もストーリーもかなり趣が異なる。実はこの作品、上役の不正を暴こうと立ち上がった9人の若侍が主役で(加山雄三や田中邦衛はいるし)、三船扮する三十郎はそれに助太刀するという役回りではないか。ともあれ、9人の若侍と三十郎のやりとりがおもしろく、こういう部分は、もはやコメディタッチといってもいい仕上がりになっている。また、浮世離れした奥方と娘に対し、居心地が悪そうな三十郎とのやりとりも楽しい。ともあれ、アクションだとかサスペンスみたいなところは「用心棒」に比べ大分後退しているが、その分、こうした趣が華やかだし、活気もあって、なんだか、大昔の正月映画を観ている気にさせてくれる作品である。

 ともあれそういう明朗闊達な作品なせいだろう、音楽の方も「用心棒」ほどユニークさはないと思う。相変わらず、パーカスやブラスの印象的なワンショットやフレーズを散りばめて佐藤らしさはあるのだが、いかんせん若侍を表したと思われるメインタイトルの青春映画風な抒情を感じさせるテーマのイメージが強く、「用心棒」のような独特な乾いたユーモアだとか、シニカルさは今一歩といったところだろうか。ちなみに「用心棒」に登場した、ルンバみたいなリズムを使った三十郎のテーマは途中で多少ちらほら登場するものの、ほぼ完全な形で再現されるのは、ラストシーンである。メインテーマがしおらしく流れた後、一転してこのテーマが登場するあたりは、若侍を尻目に三十郎が後ろ姿でさっていく映画シーンにぴったりと合っていて、なかなかのカッコ良さ、痛快さがある。

 ちなみにサントラ全集に入っている「椿三十郎」のパートは、何故だか映画に使われていない、ドラムやベース、ギターなどが入ったコンポ・スタイルのポップス調のインストが収録されているのは何故だろう?。アメリカではこういうサントラを口当たりの良いインスト・ポップにして発売するようなことはしはしばあったようだけれど、これなどもそういう例なのだろうか。それにしても、いくら青春時代劇みたいな趣がある作品であったとしても、黒澤作品にこのポップなインスト作品はそぐわないと思う。全集にセレクションされたのは11分ほどだが、こんなの収録せずきちっとメインタイトルを入れて欲しかったと思うのは私だけだろうか。
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