「プーベの恋人」という映画は、おそらく団塊の世代には忘れられない映画ではないか。そもそも主演のクラウディア・カルディナーレというイタリアの女優自体が、この世代にはおそらく忘れられない人であり、この作品はクラウディア・カルディナーレの代表作となっているものから、この両者はたぶん不可分なのだろう。物語は第二次世界大戦末期の北イタリアを舞台にしたパルチザンの青年と娘の悲恋といったもので、牢獄に入れられたパルチザンの青年にあえてついていく、苦難の道を選ぶ主人公のけなげな純愛ぶりが当時受けたようだ。私が観たのは、初公開時からずっと20年近くたった頃で、どうもそれが災いしたのか、よくいえばごくまっとうな、悪くいえば通俗的な青春映画という感じで、その名声の割に、例えば先日のアントニオーニのような歴史に残る名作という風格も感じなかった。そのことは監督がルイジ・コメンチーニという、当時の職人監督であったことからもわかる(この人の作品にこれに限らず、割と社会派なところがあり、そこにイタリアのネオリアリズムの残滓を感じることもできる)。
さて、そんなイマイチな印象だったこの作品であるが、そんな中にあって随所で光り輝いていたのがこの音楽である(もちろんカルディナーレも光り輝いていたけれど、こういう気性の激しそうな女は、個人的には「なんか、かなわねーな」とか思って敬遠したくなってしまうのだ-笑)。スコアはカルロ・ルスティケリ、古くは「鉄道員」を筆頭にピエトロ・ジェルミ作品で忘れられない旋律を提供し、「禁じられた恋の島」「イタリア式離婚狂想曲」といった作品でもファンには知られるイタリアの名匠である。さしずめこの作品はルスティケリ最盛期の名作ということになると思う。この作品のには一度聴いたら忘れられないような曲が2つある。ひとつは嘆き悲しむようなトランペットのイントロから、哀愁を漂わせつつサックスが物憂げな旋律を吹く「プーベのブルース」、ワルツのリズムなのに何故かひっそりとした哀しさ誘う「マーラのテーマ(ちなみにこういうタイトルのトラックはない)」である。劇中、このテーマがあれこれと姿を変え、随所に登場する訳だが、実際、この悲恋の物語はこの音楽なくして....というくらいに映画を大きく盛り上げていたと思う。ついでにいえば、アルトサックスがとろけるようにスウィートでノスタルジック旋律を奏でる「ステファーノ」も素晴らしい。基本なジャジーな音楽なのだが、実は地中海の海を望むような壮麗さがある実にイタリアらしい音楽で何度聴いても陶然として聴き惚れてしまう(ちなみにこれも劇中に何度も登場する)。
という訳で、数あるイタリア映画の音楽でも非常に好きな一作である。このサントラを聴くと、この映画自体のことはあまり思い出さないけれど、20代はじめの頃、映画に耽溺していた時の自分のあれこれを思い出したりもしてしまう。もっとも、当時聴いていたのは、このサントラではなくキングから出ていたヨーロッパ映画音楽名作選みたいなものに収録されていた、確かルスティケリ自身のオーケストラかなにかの演奏だったように思う、プーベとマーラのテーマがあわさったアレンジだった(この時期にキングがよく出していたセブンシーズ音源のヨーロッパの映画音楽集、オリジナルサントラではないけれど、趣味のいい演奏が多かったように思う。復刻してくれないかなぁ)。サントラを入手したのはもっともっと後のことだ。
さて、そんなイマイチな印象だったこの作品であるが、そんな中にあって随所で光り輝いていたのがこの音楽である(もちろんカルディナーレも光り輝いていたけれど、こういう気性の激しそうな女は、個人的には「なんか、かなわねーな」とか思って敬遠したくなってしまうのだ-笑)。スコアはカルロ・ルスティケリ、古くは「鉄道員」を筆頭にピエトロ・ジェルミ作品で忘れられない旋律を提供し、「禁じられた恋の島」「イタリア式離婚狂想曲」といった作品でもファンには知られるイタリアの名匠である。さしずめこの作品はルスティケリ最盛期の名作ということになると思う。この作品のには一度聴いたら忘れられないような曲が2つある。ひとつは嘆き悲しむようなトランペットのイントロから、哀愁を漂わせつつサックスが物憂げな旋律を吹く「プーベのブルース」、ワルツのリズムなのに何故かひっそりとした哀しさ誘う「マーラのテーマ(ちなみにこういうタイトルのトラックはない)」である。劇中、このテーマがあれこれと姿を変え、随所に登場する訳だが、実際、この悲恋の物語はこの音楽なくして....というくらいに映画を大きく盛り上げていたと思う。ついでにいえば、アルトサックスがとろけるようにスウィートでノスタルジック旋律を奏でる「ステファーノ」も素晴らしい。基本なジャジーな音楽なのだが、実は地中海の海を望むような壮麗さがある実にイタリアらしい音楽で何度聴いても陶然として聴き惚れてしまう(ちなみにこれも劇中に何度も登場する)。
という訳で、数あるイタリア映画の音楽でも非常に好きな一作である。このサントラを聴くと、この映画自体のことはあまり思い出さないけれど、20代はじめの頃、映画に耽溺していた時の自分のあれこれを思い出したりもしてしまう。もっとも、当時聴いていたのは、このサントラではなくキングから出ていたヨーロッパ映画音楽名作選みたいなものに収録されていた、確かルスティケリ自身のオーケストラかなにかの演奏だったように思う、プーベとマーラのテーマがあわさったアレンジだった(この時期にキングがよく出していたセブンシーズ音源のヨーロッパの映画音楽集、オリジナルサントラではないけれど、趣味のいい演奏が多かったように思う。復刻してくれないかなぁ)。サントラを入手したのはもっともっと後のことだ。