UGUG・GGIのかしこばか日記 

びわ湖畔を彷徨する独居性誇大妄想性イチャモン性前期高齢者の独白

こんなにあっけなく失われてしまうとは思わなかった・・・

2016-08-13 01:24:34 | 日記

一昨日、8月11日の午後、湖都の市内で滋賀弁護士会主催の「死刑廃止を考える日」と題された催しがあり、映画の上映と講演がありました。

湖国の弁護士会が死刑に関する催しを行うのはこれが初めてありましたので、死刑に反対であるGGIは弁護士会に表敬すべくこの催しに出かけました。参加者は百人弱でありましたが、GGIの経験からしますと、湖都で死刑をテーマにしてこの種の催しを行いましても参加者は三桁には達しませんので、さすが弁護士会の影響力かとGGIは脱帽したしました。

はじめに司会者が「死刑に反対のひと、ちょっと手を挙げてみてくだい」と言葉をかけましたが、挙げたのはGGIを含めてほんの数人。そこで司会者曰く、「そうですよね、いきなり質問されて、死刑反対ですなんて言いにくいですよね。今後は手を挙げるよう求めることはいたしませんから、映画を見てから、死刑をどう思うか、それぞれご自分で考えてみてください」、

上映された映画は「休暇」、原作は吉村昭(1927~2006)という作家の同じ題名の短編小説です。

監督:門井肇 主演:小林薫、西島英俊、制作:2007年、第5回ドバイ国際映画祭コンペティション部門審査委員特別賞受賞作品、110分

司会者の説明によれば、この映画はフィクションではあるけれども、原作を著した吉村昭氏は現場、証言、史料を周到に取材し、緻密に構成した多彩な記録文学の書き手として著名であり、そのためおそらく刑務官経験者などの関係者に取材して著された小説であると思われ、死刑執行の現場を克明に描いたこの作品の内容はかなり事実に近いものであろうとのことでありました

この作品の設定は、この催しを伝えるPRのチラシによれが以下のようなものです。

《死刑確定者を収容する拘置所に勤務する刑務官平井(小林薫)は、連れ子のいる美香との結婚を控えていた。そんな折、金田という死刑確定者(西島英俊)に対する死刑執行命令が。平井は、執行の支え役(死刑執行補佐)を務めれば1週間の休暇が与えられると知り、新婚旅行の休暇のために支え役を名乗り出る。平井、同僚たち、金田とその家族、それぞれの死と生への向かい合い方は・・・・》

「支え役」(死刑執行補佐人)というのはGGIには初耳でしたが、死刑執行にあたり一番辛い役目を担う刑務官のことです。すなわち、この役割を担った刑務官は死刑執行直後、宙吊りになって激しく揺れたり、苦悶で痙攣したり打ち震えたりする死刑囚の身体、その下半身に両腕を回して、絶命するに至り死刑囚の体がもはや動かなくなるまで、必死で押えつけていなければなりません。

 この映画では、執行当日の朝、死刑囚が何人もの刑務官に囲まれて独房から連れ出される場面に始まり、死刑執行が完了し、立ち会いの医師が死亡したことを確認するまで、死刑執行の全過程が、かなりの時間をかけて、きわめて克明に描かれていました。

独房から無理やり連れ出されて処刑場に姿を現す死刑囚、控えの間で死刑執行を正式に言い渡された後、椅子にすわり冷たい水をコップに一杯、刑務官に最後のタバコをすすめるのを断り、遺書をかくように紙を差し出されても迷ったあげく何も書かない死刑囚、やがて教誨師の神父が現れ、聖書の創世記の一節を引用しての最後の言葉、恐怖に打ち震えとめどなく涙を流す死刑囚、後ろ手に手錠をかけられ目隠しが施され、足を縛られて、天井から絞首のための綱がぶら下がり、床の中央に踏板が設けられている執行室へ・・・執行室の真下の部屋で、頭上の踏板が開くのを緊張した面持ちで待ち受ける刑務官たち・・・大きな音をたてて開く踏板、宙吊りになって揺れる死刑囚の体、必死の形相で揺れる死刑囚の両脚に腕を回し押えつける「支え役」・・・しばしの時を経て動かなくなった死刑囚の体に聴診器を当て、心臓が停止したことを告げる白衣の医師・・・仲間の刑務官に支えられながら処刑場から立ち去る「支え役」の刑務官・・

死刑執行の現場をこれだけ克明に描いた日本映画は他にないのでないかとGGIは思います。

しかし、これはあくまでもフィクションです。死刑執行に実際に立ち会った経験がある唯一の法務大臣、民主党政権時代の法相、死刑に反対であるにもかかわらず執行を許可した千葉景子さん(弁護士)は、後にNHKの教育テレビが放映したロングインタビューで死刑執行に立ち会ったときの様子を語っていました。

(この番組について関心がある方は以下のサイトなどをご覧ください。

http://www.nhk.or.jp/etv21c/update/2011/0227.html

GGIの記憶はあいまいではありますが、千葉氏はこのインタビューで執行現場に立ち会ったときの様子をおおよそ次のように述べていました。

「あんなにあっけなく一人の人間の命が失われるとは思いませんでした、死刑囚が刑務官に連れられて処刑場に姿を現し、執行を正式に告げられ、目隠しをされ、床の中央に踏み板が設けられている執行室に連れたいかれ、首に縄をかけられて踏板のまんなかに前に立たされ、執行・・・すべての手順が無駄なく、手際よく・・・次々に短時間のうちに事が運ばれました、あっけないぐらいでした、しかし・・・そのあとが長かった・・・執行されて宙吊りになってから絶命するに至るまでの時間が・・・・」

(一般に執行後絶命にいたるまでは5分~10分、ときにはそれ以上かかるとされています。)

死刑に反対である千葉氏は、今後死刑廃止へと向けての第一歩とするために東京拘置所の処刑場をマスコミに公開すること、死刑に関する勉強会を法務省内で立ち上げることなどを条件に、法務官僚の死刑執行の求めにやむを得ず応じて執行を許可したと伝えられています。

事実、千葉法相の命令により2010年12月3日、東京拘置所の処刑場が報道陣に公開されました。処刑場の公開はこれが史上初、しかし今後再び公開されることはないでありませう

報道陣が撮影した処刑場の様子は以下のサイトで見ることができます

https://www.youtube.com/watch?v=pVcJ4MQkth8

千葉景子氏や東京拘置所のことなどを数年前、GGIはこの日記に書いています。関心のある方は以下のサイトをどうぞ

http://blog.goo.ne.jp/ugugggi/d/20140624

現在、全国でおよそ130人の死刑確定者がいます。外部との接触をほとんど絶たれて、3畳ほどの広さの独房で24時間監視されながら、明日にも訪れるかもかもしれない死と向き合った日々を生きています。そして自らの意思とは関係なしに、国家の命じるままに人の命を奪うことを迫られる数多くの刑務官がいます・・・

今日の写真は滋賀弁護士会主催の「死刑廃止を考える日」のチラシを撮ったものです。よろしければクリックしてご覧くださいませ

グッドナイト・グッドラック!