
老境(?)に入いると平穏無事がいちばんなのだけど、些細ながら困ったことがよく起こる。
嬉しいことも勿論ある。
風呂の煙突の頭に据えてある傘が腐蝕して落ちた。
新しい物をさがして量販店を4軒まわったが、無い。
金物店が無い。
結局じぶんで作った。
稲刈りのあと、稲束を懸けてあった稲架(はさ)が台風で
――横倒しになるのはいつものことだが――
まったくの天地裏返しになってしまった。
さかさまに稲架の稲穂はうちそろいSKDの跳ね上げた脚
台風で吹き飛ばされし稲架を解き新たな結木に束を懸け置く
11月12日.脱穀が終わった機械を掃除するうちに、
昇る籾送り部に我知らず左手示指(いわゆる人差し指)を突っ込んで、救急車を呼んだ。
日本赤十字病院からフレッツクリニックに移されて、16日に手術。
一週間入院。
ちっぽけな骨といえども示指手術第二関節二時間かかり
点滴のしたたり数え横たわる事故の記憶が動画のように
還暦を過ぎて短歌を詠み始めた。
心象を切り取って額縁に入れるように、景・情・事を詠む。
景のなかに情あり、だったりが良い。
年末に末娘が帰省した。
ネットにて十割そばの打ちかたを検索すれど母に従う
年越しのそばをゆで終えごえもんの風呂のたきぎを娘は運ぶ
元旦の夜うちの子は読書するそれぞれの背にストーブの暖
短歌はどう詠む(作る)か、どう読む(鑑賞する)か。
おもしろいものです。
※ この記事は、NPO法人土といのち『お便り・お知らせ』2018年4月号より転載しました。