Ommo's

古い曲が気になる

知らざあ言ってぇ聞かせやしょう

2017-05-14 | 日記・エッセイ・コラム

知らざあ言ってぇ聞かせやしょう
浜の真砂(まさご)と五右衛門が
歌に残せし盗人の
種は尽きねぇ七里ヶ浜
その白浪の夜働き
以前を言やぁ江ノ島で
年季勤めの児ヶ淵(ちごがふち)
江戸の百味講(ひゃくみ)の蒔銭(まきせん)
当てに小皿の一文字
百が二百と賽銭の
くすね銭せぇだんだんに
悪事はのぼる上の宮
岩本院で講中の
枕捜しも度重なり
お手長講と札付きに
とうとう島を追い出され
それから若衆の美人局(つつもたせ)
ここやかしこの寺島で
小耳に聞いた祖父さんの
似ぬ声色(こわいろ)で小ゆすりかたり
名せえ由縁の弁天小僧
菊之助たぁ俺がことだぁ

   『青砥稿花紅彩画』(白浪五人男)雪ノ下浜松屋の場、弁天小僧菊之助の科白


夕暮れに、言問橋まで散歩した。(ぜひ、生きて再び隅田川を見たいな、と、北海道・帯広で5年思いつづけていたのだが、浅草に住んで2週間、やっと隅田川まで行く決心がついた‥‥‥徒歩で10分たらずなのだが‥‥)。

言問橋からの帰り、浅草ROXの西友でアサリ生姜飯を買うため、観光客で賑わう商店街を横切って歩いていると、仲見世商店街事務所ビルの前に、河竹黙阿弥の住居跡の碑があった。黙阿弥は、江戸末期から明治に活躍した歌舞伎の天才的な作者だ。「知らざあ言ってぇ聞かせやしょう」の作者が、ここに住んでいたのか‥‥‥。なんだか、感動するな。

月も朧(おぼろ)に白魚の
(かがり)も霞む春の空
つめてぇ風もほろ酔に
心持好く浮か浮かと
浮かれ烏の只一羽
(ねぐら)へ帰る川端で
(さお)の雫か濡れ手で粟
思いがけなく手に入る百両
ほんに今夜は節分か
西の海より川の中
落ちた夜鷹は厄落とし
豆だくさんに一文の
銭と違って金包み
こいつぁ春からぁ縁起がいいわぇ

   『三人吉三廓初買』(三人吉三)大川端庚申塚の場、お嬢吉三の科白


 

言問橋。

東京空襲のとき、焼夷弾の火炎に逃げ惑う人々は、隅田川に殺到した。死者は10万人超ともいわれる。この隅田川の河川敷にも、死体は積まれ、火葬されたという。