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口蹄疫被害、政府が重い腰をあげて、やっとテレビ・新聞が騒ぎだした

2010-05-20 | 日記・エッセイ・コラム

                     

口蹄疫に関して、テレビ・新聞が、大騒ぎしだした。もう、わたしがこのことを書く必要がないだろう。

ただ、不快なのは、最初の発症を、獣医師が見落としたとか、県の農水省への報告がおそかった、とか、いまになって、現地に責任を押しつけるような報道があることだ。それは、間違いだ。このいまの惨状は、ただただ、政府の初動ミスの結果だ。

ニュース・ショーに出演するコメンテーターとか、キャスターといわれる連中が、最初の誤診が残念だ、とやら言ってるが、いまの時点で、現地の開業獣医が誤診をしたという、そんな報告が農水省のプレスリリースにあるのか? ないだろう。公共放送であるテレビ局が、こういう適当な話を電波に流して、政府の失策をかばっては、イケナイ。

3月にすでに発症していたじゃないか、と、テレビでいってるやつがいた。それは、違うのだ。(3月31日に水牛に発症していた、とテレビで言っていたが、いまはまだ、噂のレベルだ。県の報告にも、農水省のプレスリリースにも、地元紙にも、その記載は見あたらない)

4月23日に確認された6例目は、まったく別の検査のために、3月31日に採血されていた牛の試料だった。最初に発症した農家と近いところの牛だ、と、念のためと遺伝子検査した。ウイルスが発見されたのだ。すでにウイルスは、3月に宮崎に上陸していた、といえるが、発症していたわけじゃない。(3月に和牛商法の農場で発症を隠蔽した、という噂は、いま話そうとすることと、すこし方向がちがう。そのことは、またいずれ)。

                     

4月9日に獣医が、かぜ症状の牛を診療した。県が、これを口蹄疫擬似患畜と断定したのは、4月20日だ。11日たっている。だが、10年前と比べて判断がおくれたわけでない。1例目の感染確定までの時系列は、10年前とほとんど同じに推移しているのだ。県は、この日すぐに10キロの移動制限と、20キロの搬出制限を実施している。そして、検体を動物衛生試験場に送っている。そして、23日に抗原検出検査でO型のウイルスが検出されて、1例目の患畜が確定した。

                  

10年前は。2月29日に農家が導入した黒毛和種に、3月8日からかぜ症状が認められた。診察した獣医師が、数日してほかの同居牛に同様の症状がでたので、3月12日、口蹄疫を疑って、県に報告した。かぜ症状が発見されて、13日目、県は、3月21日にこれを口蹄疫擬似患畜と判断して、移動制限と搬出制限をかけ、農水省に報告して、検体を動物衛生研究所に送った。そして、3月25日にウイルスが検出されて、感染が確定した。

このように、発病の疑いから、発症の発見、確定までの時間的な推移は、10年前と今回で、ほとんど変わらないのだ。だから、初例の誤診とか見過ごしとか、県の怠慢などと、軽々しくテレビで世論誘導するべきでない。10年前の報告書では、口蹄疫と疑って県に報告した獣医師の判断を絶賛している。獣医師が県に報告した時間的な経過は、今回もほとんど変わらないのだ。

今回は、これだけの壮絶な、歴史的な伝染病被害だ。終息したあと、感染ルートから綿密な調査がされて、詳細な報告書にまとめられるだろう。そのときに、誤診があったのか、初期の行政の対応ミスだったのか、検証されるだろう。その報告を待って、知事や県の、自治体の行政責任を論じたらいいだろう。

                 

なんども指摘するが、10年前と今回の初動の決定的な違いは、政治的な判断力のレベルの違いだ。10年前は、県が擬似患畜が出たと発表した、その日に、政府が100億円の防疫予算を用意して対策本部を立ち上げ、県と農家と協力して、徹底的な消毒と採血検査をやって、宮崎で3件、北海道で1件で封じ込めた。厳然たる政治的な行動力の差だ。国民が不幸になるか、ならないか、決定的な、大きな差だ。

(10年前には、宮崎県では、45頭の殺処分。今回は、30万頭以上殺さなくてはならない。どんな言い訳をしても、政府の能力の差なのだ。内閣にいる、わずか数十人の政治家の無能が、どれほどの国民を不幸にして、どれほどの税金が使われる? 何十件の農家が倒産し、廃業する? 何百人の農場の従業員が解雇される? どれほどの動物が無駄に死ぬ? なにが事業仕分けだ! )。

宮崎で、3件の農家の感染があって、45頭が殺処分されたが、実際に発症したのは、最初の1件だけだ。あとの2例はウイルスが発見されただけで、牛は発症してない。ひと月後に、北海道・本別町のホルスタイン種からもウイルスが発見された。症状は出てない。(たしかに、宮崎と北海道で、750頭の牛を殺したが、これで終息しているのだ。こんどは、30万頭? それも、いま、感染拡大の真っ最中だ。まだ、これから先、終わりは、みえない。言葉もない。なんてことだ)。

                        

10年前の口蹄疫発症のときに、動物衛生研究所がどう対処したか、インターネット上で一般に回覧できる詳細な記録報告書がある。じつに貴重な歴史資料でもある。農水省には、もっと詳細な報告資料があるだろうに。どうして、その多額の税金をかけた教訓を生かさなかったのか。そして、10年前の感染と防疫と封じ込めを体験した、有能な役人たちがいるだろうに。どうして彼らの知恵をかりなかったのか。(いまとなっては……だが。民主党のいう政治主導とは、国民にとんでもない犠牲者がでるということか。つらい教訓だ)。

                       

下のふたつの資料は、10年前の口蹄疫感染の防疫記録だ。クリックして、読んでほしい。                  

『わが国に発生した口蹄疫の特徴と防疫の問題点』 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所九州支所 臨床ウイルス研究室長 津田知幸 http://www.sat.affrc.go.jp/special_pgm/FMD_Japan_review.htm

『日本における92年ぶりの口蹄疫の発生と家畜衛生試験場の防疫対応』 http://www.niah.affrc.go.jp/publication/kenpo/2001/108-6.pdf   

この報告書によれば、NHKは、10年前、2000年6月6日の「クローズアップ現代」で、防疫対策を取材して、口蹄疫特集を放映している。ぜひ、それを再放送してもらいたいものだ。

民主党の蓮舫と枝野の事業仕分けで、国の、この家畜防疫の唯一の機関、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構・動物衛生研究所の、予算を仕分けた、という。内容が知りたいものだ。

                                      

テレビ・新聞が口蹄疫感染を報道しだした。あしたからはまた、古い洋楽のことでも書こうかな。