tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

アマゾンに見るアメリカの賃金と雇用

2023年03月21日 22時03分05秒 | 労働問題
安倍政権の「働き方改革」以来、政府は、アメリカ流の雇用制度を目指して「職務(ジョブ」をベースにした雇用・賃金制度の導入の推進に力を入れて来ています。

戦後日本の人事・賃金制度は、独自の発展を遂げて来ましたが、海外の研究者からは、いずれ欧米流の制度になるだろうと見られることも多く、日本の経営者や研究者のなかにも、欧米流の制度を見て、この方が合理的と考える人もいました。

古くは戦後の職務給導入の動きから、マネジメント・バイ・レザルト、不況期に導入が言われた成果給そして今回の「働き方改革」といった系譜は、欧米流の人事賃金制度の方がより合理的という考え方によるものでしょう。

しかし現実は欧米流合理性は日本社会の文化の中では、合理性に欠ける所があるようで、部分的導入はあっても人事賃金制度の中核にはなれませんでした。

その結果、欧米流の合理性が認められ賃金制度の基本になったのは、企業の将来を託す基幹従業員・正社員ではなく、現在必要な仕事を充足するための非正規社員においてでした。

ところで現状を見れば、雇用者の約4割が非正規従業員です。現実は日本の雇用者の4割が欧米流の「職務:ジョブ」をベースとした雇用制度、人事賃金制度で働く従業員です。

そこで、最近マスコミを賑わしているアマゾンの賃金と雇用関係のニュースを見てみましょう。
2018年頃からアマゾンの賃金はだんだん高くなってきたようです。最低賃金を上回る水準で、それが地域の賃金水準に影響する事が問題になっていたようです。
アメリカの最低賃金は州によって違い10~13ドルるですが、アマゾンは15ドルを最低にしていたそうです。

然し昨年はNYでは19ドルでもホームレスなどといわれるようになりNYの事業所でアマゾン最初の労働組合が出来たりし、時給19ドルのケースもあったそうですが、この所一転して、昨20日「アマゾンで9,000人解雇」といった報道です。

報道では1月までに18,000人の解雇を決めてとのことですが、それでは間に合わないという事のようです。対象は倉庫や配送関係ではないようで、クラウドや広告関係という事で、解説によれば、大手企業でデジタル関係の人員削減が目立ってきたとのことです。

またアマゾンでは倉庫関係の時給労働者などは常時募集していますが、職場の離職率は年160%などと言われ、求人源が枯渇するのではという危惧もあるなどといった報道もあり、時給に関わらず従業員の定着率は大変低いようです。

更に、アマゾン関係の報道を探しますと昨年秋に年末商戦に向けて1万数千人の採用を打ち出し、1月に18,000人、今回さらに9,000人といったリストラは、ジョブ型採用(仕事があれば採用、無くなれば解雇)という欧米方式の典型のようにも見えます。

「ジョブ型」が合理的といった見方は、企業の利益が中心になり易い傾向を持つようで、日本の様に、「企業で一番大事なのは人間、」「人を育てるのは企業の役割の一つ」といった社会の認識が一般的な日本では、ジョブ型と言っても、欧米のそれとは、まるで違ったものになっていくのだろうと思っています。

今春闘を出発点として、日本の労使は、正規、非正規問題の望ましい解決の方法を探ることになるでしょうが、日本は不合理で欧米が合理的という単純な舶来崇拝はもうさっぱりと卒業しなければならない時だと思っています。