tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

3月11日を過ぎて:自然災害と原発事故

2023年03月15日 20時37分30秒 | 政治
12年前の3月11日はあの東日本大震災でした。

12年後の3月11日の前後、マスコミは、今年もそれぞれに、巨大な災害とその経験と記憶の中に生きる人々との間をつなぐ沢山の多角的な報道を企画し、我々はそれを見、想いを新たにして自然災害と日本人の関わり方を考えさせられました。

日本列島は、豊かな自然の恵みを、そこに住む人々にもたらしてくれるのと同時に、巨大な自然災害が、時に、そこに住む人々を襲うところでもあるという事を日本人は縄文時代からの実体験の中で理解しつつ自然と共存する知恵と文化を育んで来たのでしょう。

その中でも巨大地震と津波は最も恐ろしい自然災害として記憶や記録に残されているものでしょう。
今も、南海トラフ大地震については、専門家もマスコミも、国民に最大限の注意喚起を行っているところです。

こうした自然災害について、日本人の感覚は諦観にも似た一種独特のものかもしれません。
マスコミの報道の中にも家族や友人を亡くされた方は大勢登場します。

ある方は、夫の写真を前に、「12年たって、私は年を取り取りましたが、夫はあの時のままです」と話され、またある人は、12年前津波にのまれた未だ子供だった娘さんが、立派に成人して家族と共に笑いあう絵を著名な画家に依頼して描いてもらい、若し生きていれば家族はこんな様子なのでしょう」と感慨を述べておられました。

そうした方々の気持ちをお伺いして感じるのは、癒されることのない喪失感と同時に、その現実を運命的なものとして受け入れ、その思いを自然の摂理の中に純粋に昇華させているような極めて素直な美しいとさえいえるような心の在り方です。

このブログも、こうした話で終われればいいのですが、東日本大震災についての報道は、必ず福島第1原発の事故につながるのです。

勿論直接の原因は、東日本大震災ですが、つくづく思うのは、あの原発事故がなければ、日本人は毎年の3月11日を、もっとずっと平静な気持で迎えられたのではないかという感慨です。

津波による全電源喪失、それに発するあらゆる災害は、どう考えても「人災」です。
「原発は日本の中で最も安全な場所です。地震の時は原発にいれば大丈夫」などという言葉を何度聞いたでしょうか。

「咽喉に刺さった魚の骨」というより、「大脳に刺さった金属針」とでもいうべきでしょうか。「原発は絶対に安全です」との神話を作り国民のすべてを、総理大臣まで含めて騙したのは一体誰なのでしょう。

日本人は、自然災害なら、いかに大きなものであっても、最終的には、受け入れることが出来るように思いますが、「人災」については、これは全く違うのではないでしょうか。

ここで最近の原発問題については、敢えて書くことはしませんが、国民全体を騙す嘘を言い、その責任の所在も明らかにせず、改めて安全だと言い張るような事にどうしてなってしまうのか、矢張り日本人皆で考えなければならない問題ではないでしょうか。

狭い庭はリュウキンカ全盛の気配

2023年03月14日 13時40分22秒 | 環境
昨日は寒冷前線が西から東に抜けていき、大分雨が降って、風向きは南風から北風に変わり、今朝の外気は、昨日の14℃から7℃に下がりました。

朝方は曇りでしたが10時過ぎて綺麗な青空になり、暖かい日差しでよい春の日にありました。

桜が一層早くなるかな、などと思っていましたら、ニュースで日経平均が700円近く下げていると言っていました。
シリコンバレー銀行に続いてシグネチャー銀行も破綻という事で新興中小銀行でもそれなりの資金量を持てば、マネーゲームの成功を夢見て「巨大な想定元本」の取引をするのでしょうか。

アメリカ政府は大変心配なようで、何はともあれ預金は100%保証と言って金融危機につながることを徹底して避ける気配です。
この辺りは、バーナンキさんの、金融危機は徹底した金融緩和で救えるというリーマンショックの経験を早速に活かす動きのようです。

これで今日の天気のように青空になればいいのですが、問題は破綻した銀行の中身でしょう。当局の監督が甘かったという指摘もあるようです。

青空になった我家の狭い庭では、昨日の雨で雑草も含めて緑が増え、陽光に光っていますが、小さな花壇では困った事が起きて来ています。



春はチューリップ、夏から秋はきゅうり、トマト、茄子のミニ菜園のつもりですから、昨年も11月に、チューリップの球根80球を買って、3列にびっしり植えました。

掘り返して綺麗に整地し、肥料も撒いて球根を植えこれで来年も綺麗なチューリップ観賞と思っていました。
ところが、暮のうちから花壇一面に一面にリュウキンカの芽が出てきたのです。

我家では、何故か至る所にリュウキンカが出て来るのですが、整地した花壇に、寒さの中でも光沢のある小さな濃緑の葉が春先になるとびっしりです。抜くのは大変ですし、チューリップの芽にも傷つけたくないという気もあって放置しました。

どうせ1年目では花も咲かないリュウキンカの葉の中から、背の高いチューリップが伸びて来て、緑の絨毯の上にチューリップの花が咲くのもいいかもしれないなどと考えていました。

確かにチューリップの芽は並んで出て来ました。しかしリュウキンカの成長は予想外に早く、よく日の当たる所は花が咲きだしています。

一方、チューリップの方は、何か育ちが遅く、なかなかリュウキンカの上に伸びてこないのです。上の写真は、今日現在のもので、負けそうなチューリップが一生懸命リュウキンカの葉の間から背丈を伸ばそうと苦闘しているところです。

これでは今年は「咲いた、咲いた、チューリップの花が、並んだ、並んだ・・・」とはいかないかもしれません。

これでは、結果はどうなるのか解りません。
しかし、どうなるにしてもリュウキンカは元気に咲き、多分チューリップも、後から頑張ってそれなりに綺麗な花を見せてくれるのではないでしょうか。

自然にお任せすれば、「結果自然也」で、「それも良かったな」と思えることになるのだろうと素直に自然の働きを見守っていようと思っています。

当面の景気、アメリカ、日本

2023年03月13日 13時29分00秒 | 経済
アメリカから突然にシリコンバレー銀行(SVG)が倒産などというニュースが入って来て、アメリカの金利引き上げの先行きが不透明です。

SVGの倒産も、FRBの金利の上げを見誤り債券価格の低下によるものだそうで、FRBが金利引き上げ幅を下げるのではという見方から円が急騰したり、その影響で、ダウが暴落、日経平均が大幅に下げたりマネー経済は混乱状態です。

アメリカでは預金は完全保護すると言って混乱の収拾をいそいだり、預金保障には限度があるなどといわれたりしているようですが。パウエルさんのインフレ抑制の姿勢は変わらないようです。

実体経済の方を見ますと、アメリカの消費者物価は一応沈静傾向ですが、しつこく上っているものもあるようです。

そろそろ2月の数字が発表になりますが、1月の数字で見ると前月比で12月には7.2%下がっていたガソリンが1.9%上昇、先行きは不透明。一時は新車より上っていた中古車もずっと値下がり続きですが、配管の都市ガスが上がり始め1月は前月比6.7%の上昇、その他食料品は0.5%ですが、外食0.6%、宿泊0.7%、運送費0.9%、医薬品等1.1%(急騰)とこれらは年率にすれば10%前後の上昇です。

総じて人件費の関係するものが上がっている気配で、物の値段は沈静化しても賃金上昇の影響は消えないという傾向が見られます。

恐らくFRBは賃金上昇に強い警戒感を持っていると思われ、パウエルさんも過去(レーガン時代)の経験から賃金インフレストップが最終目的と思われるところです。

日本では、今春闘の賃上げ率は3%前後になると従来の予測を改定するシンクタンクが多くなっているようですが、アメリカの賃金インフレが5~6%に達しているのに対し、日本の場合はせいぜい1%程度と考えられます。

そういう意味では、日本の経済の現状は、基本的には、従来の沈滞状況から多少の活性化の方向に進みつつある程度の状況という事で、健全化の方向ですが、アメリカのインフレ体質のぶり返しとそれに対抗する金融政策の激しさで、為替の変動が大きくなり、その影響を受けざるを得ないという迷惑が悩ましい所です。

しかし、プラザ合意のような大きな為替変動への対応には、10年、20年の月日が掛りましたが、現状では110円~130円といった範囲の辺りのようですから、着実に日本経済は回復路線に入って行くことが可能だろうと見ているところです。

この辺りの状況も、ついでのコロナの先行きについても、夏ごろまでには何となく目鼻がついてくるのではないでしょうか。

あとは、戦争の激化と、テレビでやっていた南海トラフ半割れ大地震とが最も恐ろしい事のようです。

2023年1月、平均消費性向上昇続く

2023年03月11日 13時48分34秒 | 経済

昨日、総務省から1月分の家計調査(家計収支編)が発表になりました。

上昇基調の「平均消費性向」

                   資料、総務省:家計調査報告

消費者物価指数の1月分は2月中に発表になっていて、4.4%上昇(前年同月比)とこの所の最高を示したようですが、家計の支出は、物価高にめげず元気に増加したようです。

マスコミの見出しは2人以上世帯で対前年同月マイナス0.3%と消費不振と思われるものでしたが、これは12月のマイナス1.3%より元気で、消費者物価が大幅に上がったが、家計支出も負けずに増加したからと見てもいいようです。

以月の名目の消費支出増加率は対前年同月でプラス4.8%と、上がった物価を追いかけて増えています。

これをどう見るかですが、物価が上がったからやむを得ず増えた、あるいは、消費意欲が出て来た、そのどちらかという事になりますが、なんとなく消費意欲が出て来た方に賭けたい感じです。

2人以上世帯で支出が20%以上伸びているのが10大費目の中では水道光熱と教養娯楽です。
水道光熱は電力・ガスの値上がりですが、値上がり幅は平均5.3%、寒かったせいか実質支出は15.7%で積極的な支出の感じではないでしょか。
教養娯楽は、行楽やイベントですが、コロナの鎮静化もあり生活に活気でしょうか、当該物価指数上昇の18.6%を超えて伸びています。

こうした傾向は2人以上勤労者世帯でも変わらないようで、勤労者世帯は収入も解りますからこの両面から見ると、名目実収入3.3%増、名目可処分所得(手取り)2.2%増ですが、名目消費支出は5.3%の増加で、例月見ている「平均消費性向」は、昨年1月の79.4%から81.8%に上昇しています。(冒頭の図参照)

  
これで、平均消費性向の上昇は昨年以来の上昇傾向を維持している様子が明らかで、今後のコロナ情勢、物価の沈静化、経済社旗ムードの好転などを考えれば消費の堅調は続きそうな感じのするところです。

そうした中でも、春闘賃上げに期待は強いようですから、そのあたりの改善がはっきりすれば、これまでの消費不振による日本経済の低迷は次第に変わるのではないでしょうか。

円安の原因に、消費性向の向上が影響している可能性があることには、前々回触れました。、円安はこれまでの円高への危惧を減少させ、国内需要の増加の可能性とともに、インバウンドの増加を齎しますから、日本経済も新しい時代に入るのかもしれません。

1990年代から続いた長期不況にも、ようやく変化の兆しという事でしょうか。来月以降をまた確り見ていきたいとおもいます。

主要3物価の動向:インフレは鎮静化に向かうか

2023年03月10日 11時41分36秒 | 経済
今日、日本銀行の調査統計局から2月分の輸出入の物価指数と企業物価指数が発表になりました。

例月通り、日銀の輸入物価指数、企業物価指数と総務省発表にの東京都区部の消費者物価指数の2月速報を加えてグラフにして見ました。

結論から言いますと、インフレ激化と言われていた、資源などの国際価格(輸入価格指数)、それが国内価格に転嫁される企業物価指数、そしてサービス料金も加わった消費者物価指数それぞれに、そろそろ鎮静化傾向が見られるというところでしょうか。
 
      主要③物価指数の動き(原指数)

                     資料:日本銀行、総務省

通常、物価上昇は、まず輸入価格が上がり、それが企業物価を押し上げ、最終的に消費者物価に影響するっといった形が基本です。

しかし、今回、消費者物価指数については、途中から、「不況で値上げすると売れない」と長年値上げを我慢してきた加工食品から送料・配達料などの鬱積したコストアップが一斉値上げという形で噴出したという事情もあって予想外の上昇になりました。

それでも欧米のような10%レベルの上昇にはならないのが、思慮深い日本社会という事でしょう。前月の4.4%ぐらいが限度で、2月は3.4%に下がっています。

       主要3物価の動向:対前年上昇率(%)

                     資料:上に同じ

輸入物価は昨夏から沈静傾向で、2月には原指数は少し上がりましたが、これは円安のせいで、契約通貨ベースでは下がっています。

欧米では、企業も消費者も簡単にインフレムードに乗って「値上げ」「賃上げ」に走るようですが、思慮深い日本人は物事を合理的な範囲で考えるのでインフレの程度が違います。

ですから、日本は日銀総裁が変わっても金利引き上げは不要で、アメリカやイギリスは10%レベルになったインフレを金融政策で抑えるので大変です。金利を上げ過ぎると不況になるので、「インフレにも不況にもならない」金利水準は何処かと中央銀行は苦労しています。

余談になりましたが、本筋に戻せば、海外の資源価格などが安定し、為替レートが安定すれば、日本の消費者物価の上昇は、賃上げ幅にもよりますが、2%以内程度に落ち着くというのが黒田日銀総裁の胸の内で、今度の植田新総裁も当面その線が妥当でしょうという事のようです。

輸入物価と、企業物価と消費者物価を並べてみていますと大体そんな状況ではないかといった様子が自然と見えてくるのではないかと思います。

貿易収支の赤字、もう1つの原因

2023年03月09日 14時26分07秒 | 経済
前回指摘しましたように2023年1月の貿易収支は3兆円ほどの赤字となりました。
これは予想外の大幅なもので、第一次所得収支の黒字を打ち消して経常収支も2兆円の赤字になりました。

例年輸出が少ない1月だからという見方もありますが。こんな状況が続けば、日本は経常収支赤字国に転落します。

財政では、日本は世界トップクラスの赤字国ですから、これで経常収支も赤字になれば、アメリカの「双子の赤字」を笑えない赤字国に転落してしまいます。
そんな可能性が出て来るのでしょうか。

大方の見方は2月からは貿易収支は改善し年間で見れば経常黒字ということのようですが、ここで見落としてはいけない重要な要因があります。

貿易赤字というのは、国際競争力が弱いからというのが通説です。しかし別の見方からしますと、国も家計と同じで、GDP(収入)を国民(家族)が使い残した分が黒字になるわけで、収入より余計に使うから赤字になるという見方もあります。

日本は円高で、国際競争力がない不況の時でも貿易収支はいつも黑字でした。理由は国民が心配性で倹約して年々の収入であるGDPを使い切らずに我慢するからGDPの使い残しが黒字になるという形でした。

そうしますと「日本は競争力が強すぎるから黒字だ」と思われ、円高になる可能性が大きいわけです。
それならGDPを残さずに使い切れば黒字はなくなって、円高の心配は少なくなりますと、このブログでは指摘してきたわけです。

それには、家計が消費を増やすのが早道ですから、低下傾向の「平均消費性向」をと引き上げ、消費を増やすのがいいと提言して来ました。

ところが昨年に入って、平均消費性向が上昇に転じてきたのです。貯金ばかりしていても楽しくない、少し今日の生活を楽しもうというのでしょうか。

その結果もあって、昨年から貿易収支が赤字に転換してきているとあ思われるのです。勿論日米金利差から来る円安、更に加えて原油価格など資源価格の高騰があるのです。
  
こうして現状は、こんなに円安になっても貿易収支は赤字という事になってしまっているのです。
 
現状には3つの原因が絡んでいます。
・円安は黒字化要因:アメリカのインフレが収まれば円高に転換し赤字要因
・資源価格高騰は赤字化要因:次第に収まってくる気配
・平均消費性向の上昇は赤字化要因:今後も続く気配、そして赤字化は円安、黒字化要因

この3つが今後、中・長期的に絡み合って、どうなっていくか、日本の経済政策としてこのそれぞれの変化をいかに巧みに組み合わせて、安定した経済成長を実現していくかが、政府、日銀の課題という事になるのでしょう。

日本の国際収支は大丈夫か?

2023年03月07日 20時44分20秒 | 経済
先日(2/27)に2022年度の貿易収支が大幅な赤字になったことに触れました。
最近の円安傾向が、単に日米金利差によるだけでなく、日本の輸出競争力が落ちて来ていることの反映でもあるともみられるところからです。

先日2023年1月の国際収支統計が発表になり、1月は経常収支も大幅赤字になったことが報道されました。

このブログでは、日本は、経常収支は万年黒字、アメリカは万円赤字と書いて来て言いますが、日本は第一次所得収支(海外からの利子配当などの受入れ)が、毎年20~30兆円の黒字なので、貿易収支が赤字でもそれで埋め合わせて経常黒字に出来ています。

所が今年の1月は、貿易収支の赤字が大きすぎて第一次所得趣旨では埋めきれず、経常赤字になってしまったのです。

経常収支が赤字になれば日本もアメリカと同じ、財政も赤字、国際収支も赤字という「双子の赤字国」になってしまいます。

アメリカは基軸通貨国で有利ですが、日本が双子の赤字になれば、国際的な信用は失墜し、円や国債の価値は暴落、国債紙屑への第一歩、などと心配の声も出て来ます。

という事で、昨年来の月別の貿易収支と経常収支の動きを先ず見てみました。
       貿易収支と経常収支の推移(億円)

                      資料:財務省

茶色の貿易収支の柱はゼロより下、つまり赤字ですが、青の経常収支がゼロより上、つまり黒字という事は、第一次所得収支で埋め合わせているという事ですが、昨年も今年も1月は経常収支も赤字で、今年は特にひどい赤字です。

1月は休みが多く輸出が伸びないという事もあるようですが、それにしてもこの1月の経常収支の赤字は3兆円と大きいです。これが1年続いたら、第一次所得収支ではとても埋めきれません。赤字国日本になります。

そこで、貿易赤字を輸出と輸入のバランスで見てみます。

       輸出額と輸入額の推移(億円)

                        資料:上に同じ

茶色の輸入額の方は原油価格の下落等で減って来ていますが、輸出額の落ち込みが大きいことが解ります。
1月だという事もあるのでしょうが、この落ち込みが、一時的なもので、2月から復活するかどうか、そのあたりが問題です。

半導体不足とかの、サプライチェーンの不具合といった面が中国などとの関係で深刻になる可能性が問題になったりすると些か心配です。
2月以降の数字がどうなるかを見極めなければなりませんが、要注意でしょう。

大局的にみれば、国際資源価格の落ち着き、円安の定着といった状況であれば、日本の輸出は伸びる可能性は高いと思われますが、それには国内生産が必要です。工場は海外ではなく生産設備の国内回帰が必要です。それには国内の熟練度の高い技術者・技能者が欠かせません。

こうした点では手を抜いてきた日本(非正規の多用など)には些か心配な面もありますが、これからの日本企業の頑張りに期待したいところです。

2月以降の数字の動きを追うとともに。もう一つあまりきずかれていない赤字の原因についても、出来れば次回取り上げていきたいと思っています。

PBRと日本の経営・経済

2023年03月07日 20時44分20秒 | 経営
PBRというのは、Price Book-value Ratio(株価純資産比率)、つまりPrice(株価)をBook-value(=1株当たり純資産)で割ったものです。

これは1株あたりにした比較ですが、純資産というのは自己資本の事で、資産総額から負債を引いたもの、「解散価値」(今解散すれば借金を払っていくら資産が残るか)です。
一方株価の総額(株価×発行済み株式数)は「時価総額」です。
つまり、「時価総額」を「解散価値」で割っても同じです。 

解散価値の方が、時価総額より大きければ、解散すれば株主は株価より多い分け前をもらえます。時価総額が足りなければその分は株主の損になります。

つまり、PBRが1より小さければ、倒産しても安心、1より大きければ倒産したら損になります。株価が資産価値より上がり過ぎているという事です。

さて、ところがです、今問題になっているのは、日本の主要企業のPBRは、1を割っているところも多くて、株価が低すぎる、もっとPBRが高くなるような経営をすべきだという指摘が最近多くなっているのです。

考えてみれば、日本企業はプラザ合意とバブル崩壊以降2012年までは円高というコストアップに対応すための苦労を重ね、身を縮めてコストカットに邁進。リーマンショック以降は、更に瀕死の円高に耐えて、さらなるコストカットの努力をしてきました。

そして2013~4年の異次元禁輸緩和で突如コストカットの必要のない経済環境(円レート120円)になり、何もしなくてもそれまでのコストカットの成果が円安差益で入ってくるといったことになったわけです。

正に円レートの80円から120円への転換は輸出産業を中心に予想外に収益好転を齎し一挙に縮小均衡路線を脱しました。
しかし25年以上にわたるコストかったに疲れ果てた日本企業は、円安による円建て利益の増加でホッとし、当面そこに安住してしまったようです。

円安で収益は好転し、内部留保で自己資本(純資産)は増え、経営は安定しましたが、些かゆっくりし過ぎたようです。コロナもそれに追い打ちをかけました。

そうした10年を経て、漸くこのところ「さて、もうひと頑張り」という気持ちになったのでしょうか、技術革新の波に乗った積極的な企業行動が見え始めたように思います。

そういう経済活動のムードの変化が、最近のPBR議論になり、蓄積資本を今後の企業発展に使うべきで、資産内容より、企業の将来性への期待から株価が上るような経営をすべきではないか、といった積極経営への注目が生まれたのではないでしょうか。

かつての日本の高度成長期は、それぞれの企業が成長するので、結果的に、その合計である経済成長が急速に進んでいるというのが実感でした。
そしてそういう時は、成長を牽引する経営、経済理論が盛んになるのです。

もしこの仮説が正しければ、政府の政策がどうあろうと、日本経済は経済成長期に入ることになります。今年はその気配が感じられる年になりそうな気配です。

そうであれば、そこで政府のなすべき役割は何でしょうか。
多分それは、そうした折角の日本経済・社会の新たな変化を、戦争に巻きこまれることで潰してしまわないようにするという事になるのではないでしょうか。

政府の物価対策、価格機構の働きを阻害

2023年03月06日 11時37分49秒 | 経済
このブログでは消費者物価の動きを毎月トレースして来ていますが、昨年に入ってじりじりと上昇に転じ年末に至って4%台まで上がりました。

直接の原因は海外からの原油・LNGなとのエネルギー、穀物などの飼料や加工食品の原材料の値上がりです。

それに加えて、これまで、長年のコストアップの価格転嫁が出来なかった業界(加工食品やサービス部門など)が、我慢の限界」と一斉に値上げに踏み切ったことも大きな原因になったようです。

しかし、こうした動きもそろそろ一巡し、エネルギー価格などの値下がりと共に、値上げムードもそろそろ鎮静化かという段階に達したようです。

今はこうした時期にあるのですが、政府は「今月中に追加の物価高騰対策を」と言い出しています。

中身は「国民生活や企業活動を支援するため、今月中に追加の対策をまとめ、今年度予算の予備費も活用するなどして速やかに実行」という事だそうで、何か「人気取り」(統一地方選挙を目指して?)のような胡散臭さを感じます。

政府にしてみれば、電気料金の値上げを控え、これ以上物価高騰が続いたら大変だと慌てているのかもしれませんが、政府がこうした見当違いの政策を打つことが、正常な経済活動による、価格機構の価格形成を阻害することは明らかです。

昨年の原油価格高騰時も政府は慌てて元売りに補助金を出しましたが、これは正常な価格形成よりも元売りの収益増になったようで、史上最高益の企業なども出たようです。

価格というものは上がるべき時に上り、下がるべき時に下がって、初めて正常な経済活動が維持されるので、政府の物価対策は、余程の緊急時の緊急避難に限るべきです。

状況に確りした分析もなく人気取りで予備費をばら撒くことは、国家予算(政府のカネはもともと国民のカネなのです)の無駄遣いで、不公平なカネの分配を助長し、経済の正常な活動を混乱・阻害して、自由経済の長所を歪めてしまうのです。

自由民主党は、自由経済の長所を確りと活用し、場当たり・人気取りの政府の再分配活動で格差社会化を助長するようなことはしないのが党是でしょう。

公明党は、国家予算によるGDPの再分配活動は、あくまでも国民にとって公明なものでなければならないというのが党是ではないのでしょうか。

この3月に至って物価問題を緊急課題として、人気取りのバラマキをすることは、物価動向についての不勉強と、国家予算を党利党略に使うのではないかと「李下に冠を正す」ことになる可能性にも十分配慮してほしいと思うところです。

梅と桜

2023年03月04日 14時32分08秒 | 文化社会
我家の遅咲きの豊後梅もようやく花を開き始めました。



梅一輪 一輪ずつの 暖かさ (嵐雪)
今日は土曜日で、暖かい良い日です。これで世界に戦争などなければとつくづく思います。

気象庁によれば今年は桜も早いようで、東京では3月中に満開を迎えるようです。梅から桜へ、日は伸び、コートもいらなくなり、一番良い季節なのではないでしょうか。

梅と桜、日本を代表する花ですが、その昔は、「花」と言えば梅だったと聞きます。桜は900年ごろ古今和歌集あたりからとの説が一般的のようです。

梅は、香りがよく、寒さの中でぽつぽつと花を開き「枝振り」と「花」との取り合わせが微妙な線と点のバランスを生むのでしょう。絵になるのが「梅」の美しさでしょうか。 

一方桜は、木全体を花がつつんでその重なる枝の、まさに「万朶の桜」が濃艶な量感のある景観を作り出す「ソメイヨシノ」を代表に、一斉にぱっと開き旬日の命で落花の舞となる潔い美しさが人の思いを深くするのでしょうか。

「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」などと言われますが、これもそれぞれの花をその美しさの特徴を確り捉えて観賞するための極意に繋がる諺でしょう。

梅と言えば、誰も思い浮かべるのは天神様、菅原道真公でしょう。これは学問の神様、今では受験のお守りの象徴的存在です。

桜は菊とともに日本の「国花」ですが、かつては「軍国思想の象徴」でした。
「咲いた花なら散るのは覚悟、見事散りませ国のため」などと歌われました。

花は無心に咲き、人間がそれを見て多様な感覚やイメージを作り上げるのです。かつて日本の軍部は「花は桜木、人は武士」などと言われた潔さのイメージを利用し国民の命を戦争の道具としました。
そうした印象も時間と共に薄れ、花の美しさだけが残るのも自然でしょう。

今また「新しい戦前」などと、戦争の影がちらつく日本ですが、「梅と桜」はともに日本人が美しいと思う花です。

この2つの花に何かイメージを持つとしたら、真のもの、良きものは美しいと考える「真善美」に叶うようなイメージであって欲しいと思うところです。

岸田総理は中国と徹底話し合いを

2023年03月03日 11時56分56秒 | 国際関係
今日は3月3日。桃の節句の穏やかな春の日に、こんな心配をしなければならないというのは残念なことですが、やはり日本国民が安んじて平穏な日々を過ごせるように、総理にはお願いしなければならないのでしょう。

前回指摘しましたように、現状では、日本の空にミサイルが飛んでくるかどうかは、日本国民の意思とは関係なく、中国、アメリカの意思決定の結果によるという客観情勢が見えて来ているのです。

こうした客観情勢に対して、日本国民の意思を代表して日本へのミサイル飛来の可能性をゼロにする努力を日本政府に徹底してやってもらいたいというのが、大多数の国民の気持ちではないでしょうか。

政府が想定しているのは、「台湾有事」だという事は明らかです。これは中国では国内問題という認識ですが、中国にも、台湾にも、歴史的なかかわりは勿論、文化的、経済的そして草の根的にも格別の親交がある日本です。すべきことはありそうです。

アメリカの対中関係と日本の対中関係にはまさに「質的」な相違があるはずです。
当然、アメリカ国民の対中意識と日本国民の対中意識は質的に異なるでしょう。しかし、今の客観情勢は、アメリカの対中関係、対中意識によって、日本国民の意識とは関係なく戦争に巻き込まれ、日本にもミサイル飛来の可能性があるのです。

政府は、日本は民主主義国で、国民が選挙で選んだ政権のやることは日本国民の意思を代表するものという考え方をお持ちなのでしょう。
しかしそれは間接民主主義の誤用で、日本にミサイルが飛来してもいい(仕方ない)という理解は、自民・公明両党の意識であって、国民の意識でない事は明らかでしょう。

選挙で多数を取り、政権を取れば「何でも出来る」というのは民主主義からの逸脱で、独裁制への第一歩でしょう。民主主義の本来の意味の的確な理解こそが大切なのです。

現状、中国との話し合いは、アメリカとの話合いに較べれば、遅々としています。
アメリカは同盟国だから、それは当然というかもしれません。
しかし何か紛争が起きる恐れがある時に、本当に重要なのは、同盟国よりも想定紛争相手国との話し合いではないでしょうか。

特に、日本の場合は、中国との関係には長い歴史があります。東洋の隣国としての草の根の親近感も基本的に存在しているのです。

勿論アメリカも「台湾有事」などはない方がいいと思っているでしょう。国民生活の安全、安定、安寧には、「有事」などない方がいいのは決まっています。
前回触れましたCSISの報告書も、紛争のシミュレーションの結果の人的・物的の犠牲の大きさを示すものとして読むべきなのでしょう。

こうした諸点を十分に考慮すれば、日本が本気になってやるべきことは、中国と十分話し合い、同盟国であると同時に、対中関係に歴史のある独立国としてアメリカを助けるためにも「有事」を避けるための外交に専心すべきでしょう。

岸田総理が国民にその方針を明示すれば、日本国内には、多くの人が総理の下に中国に対して日本の持つ知識と知恵を提供して、総理を支える動きも起きるでしょう。

日本の持つ対中関係の蓄積の上に、「台湾有事」の未然の防止のための最大限の努力が岸田総理には期待されるところです。
そしてそれこそが、日米同盟の意義を生かす、本来の日本としての努力という事になるのではないでしょうか。

本気でミサイル飛来を認めるのか

2023年03月02日 15時58分18秒 | 経済
田中角栄元首相が「戦争を知らない世代が日本の中核になった時は怖いなあ」と言われことは、以前にもこのブログで取り上げました。

そして、まさに今、その時代になっているのです。岸田総理は、日本が戦争をする国になることを認め、具体的な準備を始めているようです。

安倍政権以来、日本の進むべき方向は閣議決定で決められるという事になったようです。
閣議で決めれば、国会では与党絶対多数で、いざとなれば強行採決という手順に自信を持ったのでしょうか。

集団的自衛権から反撃能力、防衛予算の大幅増額、アメリカからの大量の武器購入、これで日本は戦争をしませんと言っても、信用してくれる国があるでしょうか。

集団的自衛権のパートナーであるアメリカは、CSIS(アメリカ政府に直結すると言われるシンクタンク)は、台湾有事シミュレーションの中で当然のように日本の参戦を組み込み、日本政府はそれを黙認しています。

ヨーロッパの戦火が日本に飛び火するとは当面思えませんが、台湾有事(中国の台湾進攻)の可能性は無いとは言えないでしょう。

中台問題は中国では内戦と定義しているのですが、アメリカが介入する可能性は大きいと見られています。
そしてアメリカが介入した場合、集団的自衛権のゆえに、日本は参戦する羽目に陥ることになるのでしょう。

政府はその場合の準備という事でしょう沖縄の南西諸島の防衛体制整備を進めており、アメリカから購入する400基のトマホークもそのあたりへの配備が言われています。

この問題を考える場合、もっとも当惑するのは「参戦」という状況に突入するか否かは、「日本の意思決定の外」にあるという事です。
台湾有事にアメリカが介入した場合、日本は自動的に「参戦」に引きずり込まれる可能性は大きいという事になるのでしょう。

「その場合はミサイルが中心で、地上軍が出動するようなことはない」と政府は言っているようで、ミサイルが飛んでくるのは当然と考えているようです。

政府はミサイルが飛んでくるのは沖縄の米軍基地だろうなどと考えているようですが、横田基地にも飛んでくる可能性は当然考えられるのではないでしょうか。

つまりすべてはアメリカ次第、中国次第で、日本にミサイルが飛んでくるのは避けられず、その時には当然、国民の生命・財産が失われることになるのでしょう。

こうした可能性を実感レベルで考えている日本人は極く少ないのでしょうか、政府は着々準備を進め、マスコミは余り疑問符もつけずにそれを報道しているのです。

まさか「ミサイル戦だから上の空」というのでしょか、それとも戦争を知らない世代は政治家も国民も同じで、実感を持って考えていないという事なのでしょか。

本気で考えることもしないうちに、頭上にミサイルが飛んできたといったことで済む問題ではありません。

自分で経験しなくても、ウクライナの状況を見れば戦争とは何かが解るはずです。手遅れにならないうちに、今、日本国民は起こりうる問題を本気で考えることが必要でしょう。

岸田総理以下の政府ですら、問題を本気で捉えているようには思えないという感じのうちに、現実だけが進んでいるように感じますが、これでいいとはとても言えない時期に、既に至っているのではないでしょうか。

政府、学界は「価格転嫁」の合理性を示せ

2023年03月01日 16時20分24秒 | 経済
今春闘では、大手企業で集中回答日に先だって大幅賃上げをする企業がマスコミをにぎわせています。

一方、中小企業については、賃上げの必要は認めつつも経営実態から厳しい状況に置かれている企業が少なくない事が言われています。

日本商工会議所の小林会頭は、中小企業でも賃上げ野の機運は出ている。賃上げを期待しているが、そのためには取引価格の適正化が欠かせない。「大企業には下請け企業に圧力をかけて収益を伸ばすのではなく・・・」と注文しています。

この問題については、海外の資源価格やインフレ傾向で、輸入原材料価格が上がっても、製品納入先企業(親企業)からなかなか製品価格の値上げを認めてもらえないという、いわゆる「価格転嫁」の困難さがいつも指摘されるところです。

この問題が企業間の力関係で決まるのであれば、下請け中小企業の立場は明らかに不利という事になるでしょう。

確かに「下請適正取引等の推進のためのガイドライン」なども業界別に細かく解り易く(?)用意されているようですが、日本商工会議所が今なおこの問題に言及しなければならないというのは、現場の役に十分立っていないという事でしょう。

輸入原材料が値上がりするという事は、経済学的には日本経済がそれだけマイナスを被るという事です。これは国民全体が負担するしかないのです。
他の条件が一定であれば、輸入価格上昇分は順繰りに転嫁してい行って、最終的には最終消費者が負担するしかないのです。

この原則を基本にして、中小企業など立場の弱い所に余計負担をさせる行為は、商業道徳に反する行為であることを明確にし、その上で、生産性向上努力でのコスト吸収があれば、その成果は生産性を向上した企業に帰属すべきなのです。

その企業の成果を親企業が納入価格を抑えて取り上げることは許されないという取引上の道徳律を日本産業全体として認識できるような行政の在り方が大切です。

そして、学界はその辺りの理論づけを確りと行い、政府にアドバイスし、広く、マスコミを通じ、解り易い常識として国民一般に周知する役割を果たしてほしいと思います。

円安の場合には、輸入品のコスト高分の価格転嫁は常識とし、一方輸出品の円安差益は企業努力は無縁のものですから、段階的な価格転嫁を通じて輸入品の差損を埋め合わせる準備と考えるべきでしょう。(「トヨタ、日鉄、鋼材値上げで合意」参照)

また、輸入品の価格上昇で、国産品が割安になる産業部門においては、国産品による輸入品代替の積極化が必要と考えるべきでしょう。(円高の場合は逆が起きます)

こうしたことは、経済(学)上の最も合理的な行動であるという裏付けの下に、その原則を多様な条件の中でも常に規範としてビジネスを行うという商取引における「合理性の維持」に説得力を持たせるという意味で、基本的なものではないかと思っています。