tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

研究開発が進まない日本、理由は?

2019年04月22日 17時35分32秒 | 科学技術
研究開発が進まない日本、理由は?
 前回、この10年、日本では研究開発費がほとんど増えていないという現実を見てきました。

それに引き換え、中国の研究開発費は、この10年間に約4倍、韓国でも2倍に増えていることがOECD の調査で示されていることも指摘しました。

 もちろん、研究開発費だけが科学技術の発展を決めるわけではありません。人間の能力如何も大きな要件です。
 ニュートンがリンゴの落ちるのを見て「万有引力の法則」を発見するのに、研究開発費は要らなかったという人もいます(冗談です)。

 しかし現在のエネルギー開発やエレクトロニクス・通信技術の研究開発には巨大な研究開発投資が必要なことは周知の事実です。
 企業経営もそうですが、あらゆる人間生活にかかわる進歩は「人間が資本を使って行う」活動によって起こるので、その際人間が活用する「資本(モノ・カネ)」はますます「高度化」、「高価化」しているのが現実です。

 ですから、日本の研究開発投資が増えないということが、日本の研究開発の遅れにつながるということはある意味では当然でしょう。

 ではなぜ日本の研究開発費は増えないのでしょうか。
 日本の科学技術関係の国家予算の対GDP比がこのところ低下傾向といった点も指摘されますが、国の政策の在り方が、このところ顕著にポピュリズムに堕し、当面の人気取り政策に偏るといったことも背後にある見逃せないことのように思われます。

しかし研究開発費の主な支出主体は企業と大学、研究機関で、その内企業の支出が7割以上ですから主要な問題は企業にあるのかもしれません。
 この点を考えますと「日本経済の先行き不透明」という問題がありそうです。アベノミクスは行き詰まっている様相ですが、政府は、少子高齢化の不安を煽りながらアベノミクスの成果を強調するばかりで、科学技術の発展が日本経済を救うといった「長期的視点の政策」は聞いたことがありません。

 いずれにしても、科学技術の振興は、その成果が今日・明日に出てくるものではないでしょう。「モノづくり」を言いますが、「モノ」の中身はますます高度な科学技術に支えられているのです。

 ポピュリズムに汚染され、長期的視点を失った国家政策の下では、企業も安心して 長期的視点の技術開発に腰を入れて取り組むといった気概はなかなか出にくいのかもしれないなどと思ってしまうところです。

 原発の再稼働に異常に執着することにも象徴的にみられますが、「当面のコストが安い」(将来までのコスト計算はできていない)エネルギー源を追い続けて、本当のエネルギー基盤の確立は出来るのでしょうか。

 こうした政府の政策の在り方が、民間企業の行動様式にも影響を与えているといったことはないのでしょうか。
 この点についても、研究開発については、企業行動の面からの検討が必要なように思うところです。
 次回、最近の企業行動について見てみたいと思います。