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企業の研究開発投資行動の変化は「いざなぎ越え」から?

2019年04月23日 22時36分29秒 | 経済
企業の研究開発投資行動の変化は「いざなぎ越え」から?
 かつての高度成長時代、日本経済の基盤を形成したのは技術革新だったのでしょう。欧米の先進技術をどん欲に吸収したい日本企業は技術導入に邁進しました。

 自動車でいえば、ルノー、ヒルマン、オースチンなどの欧州車の旧型を国内でライセンス生産しているうちに、昭和40年代には、カローラ、サニー、ファミリア、等々の1000CCクラスの国産車が走り出すといった情景は、高齢のカーマニアには忘れられない記憶でしょう。

 ライセンス獲得のための「〇〇参り」などという言葉も随分使われれたものです。多くの技術導入がその後、日本企業の「守破離」のプロセスを経て、あらゆる部門で日本経済の急速な発展に寄与した技術の高度化をなし遂げたのは明らかです。

 当時、技術革新は日本流の生産性の向上を伴っていたようです。トヨタのカイゼンを世界に有名ですが、5S,QCサークル、TQMなどなど、新技術に人の働き方をマッチさせ生産性向上につなげる活動も最高潮に達していたのでしょう。

 労働事情の方は、景気が良くなるたびに人手不足になりましたが、生産性向上で何とか切り抜けてきたというのが経験です。生産現場からホワイトカラーの生産性向上まで、生産性向上は産業界の合言葉でした。

 こうして発展途上国時代を駆け抜けてきた日本経済ですが、その元気でオイルショックは切り抜けたものの、プラザ合意の円高は、為替リスクという新しい概念を伴って、日本企業の行動様式に大きな影響を与えたようです。

 プラザ合意による円高とそれ続いたバブル経済の崩壊は2000年までの10年をかけて何とか克服しましたが、企業はそのプロセスで「いくら生産性を上げて頑張っても、その分円高になれば、そんな努力は無意味」という変動相場制の問題点を知ることになり、これはリーマン・ショックで、さらに徹底的に思い知らされることになりました。

     資料:財務省

 上の図を見ていただけば一目瞭然ですが、2002年「いざなぎ越え」が始まり、その後二、三年、企業が多少的な動きを見せる中で、選ばれたのは「海外直接投資」のようです。
 「下手に国内投資を積極化して、円高になったら元も子もない」という事でしょうか。

 この傾向はリーマン・ショック後さらに強まり、円高差益もあって増加した内部留保は、海外企業への投資、買収、統合・・、といった形が多くなったようです。

 もちろん東芝の場合などなどのような残念な失敗もありますが、トータルで見れば、海外直接投資残高の増加とともに利子配当収入は着実に増えています。すでに見ました国際収支の中の 第一次所得収支の巨大な黒字がその結果を示しています。

 これもすでに述べていますが、これはGNP=国民総生産(GNI=国民総所得)に入りますが、GDP=国内総生産には入りません。生産は海外で行われ、利益の配分だけが「入金(所得)」となるからです。

 これが現状、国内の投資不足、技術開発の停滞にもつながっているのではないでしょうか。
 企業が国内で研究開発投資をするより、手っ取り早く高い技術、技術開発力を持った海外企業を買ってしまった方が戦略としては優れていると考える条件はそろっているのです。
 
 さてこうした動きは日本経済全体にとってどんな影響を齎しているのでしょうか。これは次の課題です。

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