tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

安倍さんの公約「賃上げで減税」はどうなっているのか

2018年07月19日 13時07分38秒 | 労働
安倍さんの公約「賃上げで減税」はどうなっているのか
 本来は労使に任せて、政府が介入すべきでない賃上げに、過剰な介入を続けている安倍さんですが、2018春闘ではとうとう「3%以上賃上げをした企業には減税する」という世界にも類例を見ない迷案を考えました。

 結果的に安倍さんの思惑は全く外れたようで、賃上げ率は、経団連調査(大企業中心)で2.54%(昨年2.34%)連合調査で、2.07%(昨年1.98%:調査対象企業異動あり)という事で、確かに前年より高まりましたが、昨年度が未曽有の好況だった事を考えれば、安倍迷案の効果ではなく、経済状況によるものと考えるのが自然でしょう。

 このブログでも、3%賃上げという数字は「いかにして計算すれば合理的か」という問題は 実は大変ですよ」と書いたつもりですが、昨年末の是正改革大綱廼閣議決定を見ますと、
「平均給与等支給額からから比較平均給与等支給額を控除した金額の比較平均給与等支給額に対する割合が3%以上であること」と書いてあるだけです。

これでは「昨年の給与支給額(残業代・ボーナス等含む)の従業員(非正規含む)1人当たりに比べて、今年のそれが3%以上増えたら」減税の対象になるという事です(日雇い関連は除く)。

 法律ですから、こんなところになるのは自然かもしれませんが、これでほんとうに安倍さんの言う3%以上賃上げをした企業に「ご褒美」という事になるのでしょうか。
 これはでは給与の計算は全て1人当たりですから労働時間は関係ありません。

 この制度は「生産性向上のための税制」と銘打っていますが、生産性向上で残業時間が短縮され、残業代が減ったので、その分すべてを賃上げに回した、賃上げは3%以上になったが、残業代が減ったので、平均給与支給額は上がらなかったといった場合はどうでしょうか。

この場合は、生産性向上分は、従業員の労働時間短縮に配分され、賃上げに配分されていません。賃金は上がっていませんが、生産性向上が目的なら、まさに評価されるべき状況です。しかし法人税減税という恩典はないでしょう。
 
 そのほか企業内の雇用の新陳代謝(高齢者退職、新人採用)や、パートの労働時間を延長したら給与の支給が増えたとか、いろいろ問題になるケースはあるでしょう。
 こういう事を「法律」でやろうとすれば、問題が全くないようにすることは不可能でしょう。
 矢張り基本は労使に任せ、それぞれの労使が状況に応じた納得した交渉結果が、進むべき方向に動くように、政府は「大きな経済政策」を考えるのがいいのでしょう。
 
 すでに条件が使いにくいとか、厳しすぎる、手間暇がかかりすぎるといといった苦情は種々あるようです。
 政府が実態を知らずに余計なことをやると、不公平が拡大するだけのような気がします。