tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

やっぱり原子力発電のコスト計算が必要では

2018年07月04日 12時06分32秒 | 経営
やっぱり原子力発電のコスト計算が必要では
 2030年を目指す「第5次エネルギー基本計画」が閣議決定されたようです。
ヨーロッパ主要国などに倣って、再生可能エネルギー主体を目指すという事ですが、本気のほどはどの程度なのでしょうか。未だに原発に恋々としている様子が透けてみえます。

 計画というのは当然達成可能性を確り検討しながら、出来るだけ理想に近づくように考えられるものでしょう。そうした点から見ますと、どうもこの計画は、何となくおざなりで、基本計画としての説得力が弱いようです。

 国際的には、地球温暖化防止の「パリ協定」も踏まえ、日本の本気度を示す再生可能エネルギーの電源構成に占める比率は22~24%という事で、ドイツの65%、原子力発電主体でやってきているフランスの40%には遠く及びません。

 そしてその次に原子力発電の占める比率が20~22%と続きます。
 確かに僅差で再生可能エネルギーが主力という事になりますが、10年以上先においてもまだ原発依存が重視されているのです。

 東日本大震災の後、一時原発の電力供給はゼロになりましたが、その後も原発再稼働の方針は維持されて、現状9機稼働でしょうか。
 正式な電源構成は発表されていないようで、2016年で原発の比率は2%という推計がありますが、これを20%超にまでもっていこうというのには、矢張り原発は安定した(?)ベース電源でコストも安いという前提があるのでしょう。

 しかし「安定した」には各地で疑問符がついていますし、最も問題なのは「原子力発電のコスト計算は出来ていない」ところにあるのではないでしょうか。

 政府は電力会社に気を使っているのかもしれませんが、原発を再稼働すれば安価に電力が供給できるというのは「安全」と「当面」という条件付きです。
 以前から原発はトイレの無いマンションと言われてきていますが、原発から出る核の廃棄物処理に将来どれだけのカネがかかるかは全く計算されていません。

 コスト計算が出来なくて電力会社は経営が出来るのかというのが素朴な疑問ですが、電力会社の料金体系は、「コストプラス」という原則が電気事業法で認められているのです。
 つまりその時にかかったコストに電力会社への報酬を上乗せして電力料金を決めるのですから、将来かかるであろう廃棄物の処理コストはその時の電力料金に上乗せすればいいので、今の時点で処理コストを計算して経営計画を立てる必要はないのでしょう。
 
 つまり今日の電力会社の経営者も、政府も、電力の消費者である我々も、原発廃棄物や廃炉のコストは、われわれの子孫に任せるから「よろしく」という事になっているのです。
 しかしそれでいいのでしょうか。収支計算のできない電源(原発)を再稼働し、廃棄物を増やし続け、負担は子孫にお任せでは些か気が引けないでしょうか。

 やっぱりコスト計算を出来るだけキチンとやってみて、 多分そのコストの膨大さに気が付き、原発の電源構成比を低く抑え、再生可能エネルギーを一層重視する責任が、この基本計画には必要なのではないでしょうか。