tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

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東京都区部消費者物価に見るインフレ傾向

2023年05月26日 15時07分31秒 | 経済
消費者物価指数の先行指標と言われる東京都区部の消費者物価の5月分(中旬速報値)が発表になりました。

このブログでも毎月初旬に発表になる日本銀行の輸入物価指数、企業物価指数と消費者物価指数の関係を見る際、この速報を使っていますが、重要な先行指標です。

今回発表の5月の数字は、季節変動のある生鮮食料品を除いて対前年同月比で3.2%の上昇、前月の3.5%より下がったことを報じていますが、これは政府の電力・ガスの料金引き下げ政策によるもので、消費者物価の上昇基調は変わらないというのが実情です。

マスコミでも、電気・ガス料金が下げられたことで上昇率は下がったが、食料品や日用品の値上がりは大きく、消費者物価の上昇基調はまだ続きそうという論調が多くみられます。

このブログの4月分の消費者物価の分析でも指摘していますが、「生鮮食品とエネルギーを除く総合」(アメリカでは消費者物価の「芯の芯」といった意味でコアコア指数と呼んでいます)は対前年5月で3.9%の上昇となり図のようにこれはこれまでの最高です。

東京都区部の消費者物価3指数の推移

                      資料:総務省統計局「消費者物価指数」

値上がりの大きいのは4月の全国指数とも共通なものが殆どですが、食料品の値上げ傾向は続いており、調理食品、加工食品、飲料、外食などの中にはが2ケタの値上がりのものも多く「生鮮を除く食品」の値上がりは8.9%に達しています。

東京都区部の場合、昨年5月も対前年同期比で8.9%上昇しており一斉値上げで始まった価格水準の改定が1年たっても繰り返されていることが解ります。
長期不況で値上げが出来なかったことの反動と言ってもこの上昇は少し異常です。

原因は種々あると思いますが、2年連続で物価が10%近く上るというのは、他の物価や人件費の上昇との乖離が大きすぎる感じがします。

統計的にみれば、そろそろ上昇率が落ち着いてくるのではないかという状態ですので、この1年ほどの「消費者物価は上がって当然」といった意識の切り替えが必要な段階に入って来ているように思われるところです。

株価は上がっていますが、家計の所得のベースである賃金水準は春闘順調と言ってもせいぜい3~4%の改善です。不用意な価格の引き上げは、また、買い控えによる消費不振につながる恐れも大きいので、社会全体が、物価上昇に用心深くなる段階に入っているのではないでしょうか。

消費者物価のコアコア指数が、アメリカの5%に近づいて来ている事は、危険信号と見た方が良いのではないかなどと考えるところです。