tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

GDPの構成、投資・消費のバランス回復へ

2023年05月17日 13時32分25秒 | 経済
今日、内閣府から2023年1~3月期のGDP速報が発表になりました。
対前期比の年率換算で、短期の変動を報じるマスコミでは1.6%の実質成長、プラスになったのは3期ぶりで、個人消費の伸びが押し上げた、といった見出しが多いようです。

それはその通りですが、日本経済の基調的な動きを見ますと、昨年は順調な成長路線を取り始めており、一昨年までは基本的には企業の設備投資の片肺傾向だった日本経済が、個人消費の伸びにも支えられる形に変化して来ている事が見えて来ています。

これはこのブログで毎月追っている平均消費性向が去年から回復傾向になっている事からも予測出来たことですが、実質GDPの対前年同期の伸び率と個人消費の対応する伸びを図にしておきます。

    GDPと家計消費(共に実質)の対前年同期比の推移

                 資料:内閣府「GDP統計」

今年の1~3月期について見ますと実質GDPの伸びは前年比1.3% 家計最終消費支出は2.7%、民間企業設備が4.2%(いずれも実質)です。

GDPの1.3%の上昇の寄与度の内訳は、プラスが家計最終消費支出が1.5、民間企業設備が0.8、政府支出が0.4などですが貿易収支が-0.7、民間住宅や在庫がー0.7などで結局GDP成長率は1.3%という事です。

在庫は時により増減しますが、基調的には、日本経済は、消費と投資の両方に支えられるようになりましたが、輸入が増えて貿易赤字が増え、その分がマイナスになっているというのが現状でしょう。

この貿易赤字は、GDPには入っていない海外投資からの収益(第一次所得収支)で現状は十分埋めていますから現状は問題はないのですが、今のアメリカの様に、第一次所得収支も沢山あるが、貿易収支の赤字が大きすぎて、国全体として赤字、という事になると大変ですからこの辺りは気を付けなければならない所でしょう。

なぜ昨年から消費が増えて来たのかの理由はまだよく解りません。今朝発表のこの統計の中で、一番下に雇用者報酬(実質)という欄があります。これは日本国内の企業が払った人件費の総額の伸びを消費者物価の上昇率で割り引いたものです。
その数字の動きを見ますと。昨年の1~3月期から今年の1~3月の5四半期の推移は、
消費者物価の上昇もあり、-1.4、-1.2、-1.6、-1.8、-2.3という事で、ずっと対前年比マイナスです。

昨年から日本の家計は、物価上昇にもめげず、物価上昇以上に消費を伸ばしているのです。
そのお蔭で、この1~3月期も日本の実質成長はプラス1.3%を達成しているのです。
 
消費が重要だということは解るのですが、その元は賃金でしょう。さて、今年の春闘の結果はどうなっているのでしょうか。