tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

賃金・物価水準の正常化の鍵は企業行動

2023年05月30日 13時45分51秒 | 経済
日銀の植木総裁は、物価問題の全責任を負わされたような形で、大変ご苦労をされているようです。

アメリカでも、ヨーロッパでも中央銀行の総裁は皆さん物価問題で苦労しておられますが、世界経済が混乱して資源価格などが乱高下したり為替レートが変動したりすると、欧米では民間企業がその影響を増幅するような行動をとり、インフレが激化したり、賃金が高騰したりして、金融政策では容易に抑えられないような状況になるからのようです。

日本の企業や労働組合は、その点ではお行儀がいいようですが、お行儀がいいだけでは済まないし、最近少しそうでもない事もあるようです。

やっぱり企業は経済活動の主体ですから(労働組合も)主体が、環境変化に適切に多応しないと経済は上手く行かないし、金融政策というリモコンでそれを上手く捌こうとしても、容易ではないという事でしょう。

日銀の植田総裁は、今年後半には物価は下がっていってその後また上昇傾向になるのではと予想されているようです。

このブログでも、日本では長年の我慢が限界にきて一斉値上げの波が起きて上ってきた消費者物価も、そろそろ一段落で、後は春闘の賃上げによるコストアップが多少の上昇に繋がるかなといった見方をしていました。

しかし、最近の動きを見ますと、一斉値上げの波は津波のように繰り返して未だ収まらないという状態です。

政府・日銀は「2%インフレ目標」ということで日本経済の体質的なインフレが2%というのが望ましいと言っていますが、、どうも一斉値上げがエスカレートして、東京都区部では5月にはコアコア指数が3.9%となりこれ以上上がればアメリカ並みというところです。

一部の回転寿司チェーンなどでは、値上げで売り上げ減となり、値下げもという動きもありますが、加工食品や飲料などはまだ値上を考えているようですし、電力業界は6月から電気料金の大幅値上げを決めています。

もう昨年来の値上げの季節を卒業し、経営努力で利益を出し、賃上げもするという経営の本来の姿勢に戻る時期でしょう。
経済活動の主体である企業にその辺の自覚が欲しい所です。

ただ、この所の円安、1$=140円が一時的かどうかという問題が起きていますから、これは別途考慮という事で、適切な対応を慎重に考えるべきでしょう。

どう対応するかという問題については、円高の時には賃金を下げ、物価を下げる努力をしたわけですから、円安がこのまま続けば、それは、賃上げ、価格上昇の方向で対応しないと、アベノミクスと同じ失敗をすることになります。

こうした問題に対しても、産業・企業の労使が自覚して適切に対処すればいいのかもしれませんが、問題が些か複雑ですので、慎重な対応が必要という訳です。

考えられる方向としては、アカデミアが国民にも企業にも(政府にも)解りやすい理論構築をして、政府、日銀、産業企業の労使が十分に話し合って経済の安定した成長に整合的な行動を取るといった「日本的な」作業が出来ればいいなと思うところです。