tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

米国「TIME」誌の見出しの責任は何処に?

2023年05月12日 20時01分59秒 | 経済
問題の源がアメリカの1週刊誌の表紙の見出しなのだから、大騒ぎすることはないのではないかという意見もあるかもしれません。

しかし、「平和憲法」で「戦争放棄」を謳っている日本の総理大臣インタビューを特集したTIME誌の次号表紙、岸田総理が眉間に皺を寄せ、厳しい顔で読者(カメラのレンズ)を見る表紙の「日本の選択」という見出しの下の副題を日本政府が問題にしているのです。

次号の内容をあらかじめ紹介する電子版ではこうなっていました。
「岸田総理大臣は何十年も続く平和主義を放棄し、自国を真の軍事大国にしたいと望んでいる」(NHK訳による)

その後、日本政府(外務省)の抗議によって訂正された副題はこうなっています。
「岸田総理大臣は、平和主義だった日本に国際舞台でより積極的な役割を持たせようとしている」(同上)

現状において厳然と存在する日本国憲法を前提にして考えれば、最初の副題は、岸田総理が日本国憲法と全く違う方向に日本を変えようとしているという事になって、日本国民としては、「アメリカの週刊誌に言う前に自分の国の国民の総意を確かめるべきではないか」、「勝手な先走りが過ぎるぞ」といった国民の声がありうるでしょう。

訂正された副題では、「平和主義だった」と過去形になっているのが気になりますが、国際舞台で積極的な役割を果たす気持ちは(出来るかどうかは別として)評価しようか、といったことになるのでしょうか。

松野官房長官によれば、「記事の中身は、ほぼ改定後の副題のようなもの」という事のようです。

そして、NHKの報道によれば、TIME誌は、電子版についてはすでに見出しは改めました(これは確認済みだそうです)、しかし「印刷された雑誌の方の表紙や記事は変わっていない」という事だそうです。

という事で、印刷されたTIME誌の次号では、最初の副題が、世界中の人達に読まれることになるのでしょう。

もし日本国憲法に意思があれば、という事は、現在の日本国憲法を善しとする人たちから見れば、岸田総理はとんでもない事を外国の週刊誌に言ってくれたようだ、この責任は誰にあるのだ、という事になるのではないでしょうか。

紙のTIME誌の次号を読んだ人の多くは、日本もいよいよ戦争をする国になるのだなと思うでしょう。これが国際社会の中の日本や日本人にいかなる影響を与えるかは、恐らく日本の外務省にも、岸田総理にも読み切れないでしょう。

嘗てバングラデシュで、テロ組織の襲撃に対し、「我々は日本人だ」と言いながら、「有志連合の一員だ」と言われテロの犠牲となったJICA関係者7人の例もあります。

国民の安全には、「日本は役に立ってくれるが、無害な国」というイメージの確立が最も重要なようです。これが「平和憲法」の存在意義なのではないかともいえそうです。

TIME誌の表紙が、国際的な場で余計なトラブルのもとにならないよう願うばかりです。