tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

岸田首相、シティーで「岸田に投資を!」

2022年05月07日 11時46分36秒 | 経済
岸田総理は今回の海外歴訪の最後の訪問国イギリスで、国内では発表していない「資産所得倍増プラン」を発表し、「Invest in KISHIDA」と呼びかけたとマスコミが報じています。

場所はロンドンの「シティー」、世界で最も伝統ある金融市場です。

何せ、2000兆円の個人金融資産を持つ国の総理大臣の講演ですから、聴衆も熱心だったと思われますが、中身もかなりいい事が詰まっていたようです。

岸田総理の基本認識は、現在2000兆円の個人金融資産の半分を占める預貯金はゼロ金利で眠っているようなものだから、これをNISAなどの拡充・活用で、貯蓄から投資に振り向け、経済活動の活性化を推進する。

投資を進める分野は「人」「イノベーション」「スタートアップ」「グリーン・デジタル」の4本柱で、具体的項目として脱炭素化に10年で150兆円を充てる、機動的財政支出のために財政の単年度主義を見直すなどというもののようです。

ここまでやりますからぜひ日本に、岸田の政策に投資してくださいと、海外からの投資の呼び込みを意図した、国内では未発表の構想ですが、シティーの投資家たちの反応はどうだったのでしょうか。

その辺りは未だ解りませんが、円レートが正常化しても、相変わらず10年近くゼロ成長の日本経済に興味を持ってもらうのは容易なことではないでしょう。

勿論海外から投資が入ってくるというのは、日本経済が成長していると見られなければ無理でしょうし、円安で物価が安いからと言って賑わうのはインバウンドの旅行者誘致の方が早いのかもしれません。(問題はコロナですが)

やはり「岸田経済政策に投資を!」と言っても、まず日本企業が国内投資に熱心になり、日本経済の安定成長が常識化し、国内でも、ゼロ金利の貯蓄よりNISAなどの投信や株式投資の方が有利だと日本人自身が考えるようでなければ難しいでしょう。

この辺りは個人貯蓄の保有者の選択の問題で、日本では投信や株の売買は危険なもの、損することが多い物という認識が強すぎるのでしょう。
特に最近は、金融市場はマネーゲーマーの世界になっており、最近もそうですが乱高下が大きすぎます。

元本の減少を恐れる庶民は、まずは、ゼロ金利でも元本の減らない貯金です。利息が付かなければその分は月々の貯金額を増やして(自分で利息を付けて)消費を切り詰め、毎日の生活は貯金貧乏で将来に備えるのが現状でしょう。

銀行に預金があってもそれが生きず、投信や株式に投資すればそれが生きるという発想も必ずしも納得できません。銀行にはいくら貯金が集まっても、日本経済を活性化す能力がない仕組みになっているのでしょうか。

これらは総て、経済政策を財政と金融中心でしか考えられない政策当局の発想の貧困からくるものではないでしょうか。

今回のシティーでも岸田講演には、幸いなことに「人」「イノベーション」「スタートアップ」「グリーン・デジタル」といった具体的な政策分野が提示されています。

例えば「人」では教育訓練の充実、「イノベーション」ではそのベースとなる「発電・蓄電」にどのような具体的政策が可能か、岸田講演が生きるためには、まず国内で、国民が明日への期待を感じるような具体策とその効果の実証という基礎的段階が必要になるのでしょう。