tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2022年3月期大手決算好調ですが

2022年05月13日 13時46分02秒 | 経済
コロナ禍で深刻、原油等資源価格上昇で痛手、悪い円安が心配、ロシア経済制裁でビジネス停滞・・・、何か八方塞がりの日本経済のようですが、3月期決算の数字が出てきました。

トヨタをはじめ自動車関連は円安で大幅増益、史上最高利益もありです。輸入原材料高・エネルギー価格上昇で、大変なはずの日本製鉄、JFEは黒字転換、石油元売り企業も資源高に加え政府補助金で過去最高益企業もといった決算報告を見ていますと、原油高、運安で日本経済は大変と言っている経済専門家の意見が「あれ一体何なの?」といった感じではないでしょうか。

確かに自動車産業の様な輸出産業は円安にあればその分利益が増えることは知られています。

では鉄鉱石やエネルギーを輸入する鉄鋼産業は何で黒字転換したり最高益が出たりするのでしょうか。
日本製鉄はトヨタとの鋼板などの値上げ交渉が成功しての結果だそうですから、他の鉄鋼会社も多分同様と思われます。これまでも確り利益を出していたところは史上最高益ということになるのでしょう。

このブログでいつも指摘していますが、輸入原材料が値上がりするのは世界共通なので、その分価格転嫁しても、誰も困らないし、国際競争力は変わらないのです。輸出企業は、輸入企業の価格転嫁を認めていいのです。

円安の場合も同じで、輸出企業は輸入企業の価格転嫁を受け入れればいいのです。この場合の結果は、日本の物価が「円安分だけ上昇する」という事です。

本来ならばその分国際競争力が低下するのですが、日本の場合は自家製インフレが小さく、諸外国(先進国も含めて)はある程度の自家製インフレ(賃金インフレ)が普通ですから現状心配の必要はないというのが実態でしょう。

ということで、3月期決算を見ますと、それなりン価格転嫁が進んでいる様子なのでみんな増益で結構と言うところではないでしょうか。

ところで、これは輸出部門と輸入部門の付加価値(当面は利益)の日本経済内部での分配の話ですが、次に重要になるのが「労使の分配」つまり増えた利益を賃金にどう分配するか「利益と賃金のバランス」という問題です。

多分6月のボーナスはいくらか増えるでしょうが、こうした利益は従業員の努力の結果ではありませんから、労使交渉にはなじまないなどと考える経営者もあるようです。

この考え方は大きな誤りで、従業員に配らないと利益が増え、投資が増えても消費が増えないという経済のアンバランスが生じます。

経済成長のためには、生産と消費がバランスよく増加することが必要です。できればデマンド・プル(消費が生産を引っ張る)くらいの方がいいという説もあります。

長い目で見て増益率と賃上げ率が同じような数字になるのが目安でしょう。
こうしたバランスは本来労使が話し合って決めるべきものでしょう。例えば、連合と経団連がそれぞれの方針を出し、それぞれの企業労使がそうしたものを参考に決めるというのがあるべき姿でしょう。

それが出来ないと、政府が十分な理解もないままに介入して、物事がうまくいかないような結果になるというのが従来でした。
さて、今回の問題も含め、「利益と賃金のバランス」の問題ははどんな展開になるのでしょうか。