tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本経済の人件費支払能力(支払能力シリーズ2)

2016年10月27日 09時17分57秒 | 経済
日本経済の人件費支払能力(支払能力シリーズ2)
 先月、9月の14日に、経営者団体や、経営者が良く使う割に、中身も定義もはっきりしない言葉として「支払能力」を上げて、折に触れて考えてみようと書きました。

 10月の20日に、連合が、2017春闘に向けて2パーセントのベア」を基本方針とするという報道がありました。
 ベースアップ2パーセントというのは、今の日本経済の状況の中で「支払い能力の範囲内」なのでしょうか。この場合、どのように考えるべきなのでしょうか。

 勿論この問いはそう簡単なものではありません。しかしだから勝手に解釈せよというわけにもいきません。
 という事で、思考の順序として、支払能力の判断の基準となるものを上げていき、それをいかに解釈することで、支払能力を考えるアプローチになるか、その辺りから入ってみましょう。

 まず最も基本的な要素は「日本経済が成長したから、人件費も増やす能力があるはずだ」という基準でしょう。
 矢張りこれは支払能力の最も重要な基準でしょう。日本経済が成長した、つまりGDPが増えたというのは、日本人が頑張って働いたからでしょう。ならば、当然、働いた人たちはその分報われるべきでしょう。

 かつて、日経連(現経団連)が主張した「生産性基準原理」というのは、「就業者1人当たりのGDPの伸び率を基準に、1人当たり人件費の伸び率を決めよう」という考え方です。
 GDPが5%成長して、就業人口(雇用者+自営業主)が1%増えたとすれば、1人当たりではGDPは4%増えた(生産性上昇4%)のですから、1人当たり人件費は4パーセント増やせば「支払能力」ピッタリという事になります。

 しかしこの原理は、「失われた20年」になって、経済成長がマイナスになってしまってから、言われなくなりました。理由は、GDPが減れば人件費も減らすことになるからです。
 組合は「定昇程度」は要求しますし、経営側も正面切って、「賃下げをします」とは言いにくかったからでしょう。

 経営側は、正規労働者を減らし、賃金が低い非正規労働者を増やして平均賃金を下げて、辻褄を合わせようとしましたが、結局、売上も減っているので、利益も大きく減って、長期不況になりました。
 経済成長が復活すれば、「生産性基準原理」に沿って人件費を引き上げるという考え方は、当然復活するでしょう。

 連合がベースアップ2%要求と言っているのも、その程度の就業者1人当たりのGDP成長はあるだろう、あるいはあって然るべきだという考え方によるものでしょう。

 という訳で、人件費の支払能力については、まず経済成長率(GDPの伸び率)が、先ずは重要な基準という事になります。
 通常、人件費に代えて「賃金」というのが一般的で、賃金は1人当たりですから、GDPの方も就業者1人当たりのGDP伸び率(国民経済生産性)に直して、1人当たりをベースにして議論するのが普通です。