tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

財政政策、金融政策を越えて

2016年10月11日 09時44分39秒 | 経済
財政政策、金融政策を越えて
 第1次世界大戦後の世界恐慌はケインズ政策によって救われたといわれます。しかし同時に、最終的に世界不況を解決したのは、第2次世界大戦だったという意見もあります。確かに戦争は生産と破壊の両方を同時的に促進します。

 第2次世界大戦後、世界経済は1960年代まで素晴らしい発展の時期を迎えました。しかしその後、基軸通貨国アメリカの万年赤字化、石油危機と先進国経済のスタグフレーション化、さらには為替操作とマネー資本主義の盛行の果てに、サブプライムローン問題・リーマンショックが発生、世界金融危機、さらに新興国経済不振に波及、世界経済は深刻な停滞状態に転落しました。

 今回の世界金融危機に端を発する世界不況は、アメリカ発の異次元金融緩和政策で恐慌転落は何とか回避を見たようですが、その後遺症には未だ明らかな処方箋はありません。

 実は、第二次世界大戦後の世界経済秩序は、2度の世界大戦が、世界の経済運営の失敗の結果だ、との反省からいわゆる「 ブレトンウッズ体制」から始まったことは皆様ご承知の通りです。

 しかしこの体制は、アメリカが言い出したものにも拘らず、アメリカの経済(政治・軍事)政策の失敗から1971年のニクソンショックで終わりを告げました。
 その後の基軸通貨国アメリカの今に至る万年経常赤字は、そのファイナンス技術として発達した金融資本主義、マネーマーケット重視、金融工学などの盛行を生み、その結果としてリーマンショックに至ったという事でしょう。

 金融は実体経済の潤滑油というのはブレトンウッズの体制の基本思想でしょう。その間、世界経済は健全に発展してきています。
 そのブレトンウッズ体制破綻後の金融資本主義の発展は、金融を手段にした富の偏在、格差社会化を発生させました。

 これは第1次大戦後の資本家主導の資本の集積による富の偏在、格差社会化、需要不足による世界恐慌と共通するものでしょう。
 ピケティが指摘しているように、富の偏在、格差社会が逆転したのは、第2次大戦後、1960年代までの時期だけという事になるようです。

 単純化し過ぎかもしれませんが、第1次大戦後の世界恐慌はケインズ政策で救われ、第2次世界大戦後の金融恐慌は異次元金融緩和で救われたと後世いわれるかもしれませんが、それらはあくまでも症状緩和のための応急措置で、本当の病の治療は、少し時間をかけて、経済そのものを健全な体に作り替えることが必要なのでしょう。

 そのためには先ず、経済活動の主体である人間、その主要なグループを上げれば、消費者、生産者、政府、それぞれに影響を与えるアカデミアの頭の切り替えが必要でしょう。

 未だにケインズ政策(財政政策)と金融政策中心の「経済(だけ)政策」に頼っていていいのでしょうか。

 安倍政権の「一億層活躍」は経済政策から一歩踏み出した「 社会経済政策」への一歩かもしれませんが、問題は中身でしょう。思い付きや単純な思い入れが多く、まだまだ未成熟の段階ですが、基本的な活動主体である生産者と消費者、それを統合した生活者、つまり国民の声をよく聞いて立派な中身のものにしていくことが望まれます。