tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

過労死自殺で見過ごされている点

2016年10月23日 11時34分32秒 | 労働
過労死自殺で見過ごされている点
  いつももっと明るい話題をと考えながら、こうしたあまり書きたくない問題にまで触れてしまって、残念です。
 
 過労死自殺も報道がなされるたびに、残業時間の長さが問題にされ、月100時間とか200時間といった数字が出てきます。厚労省が月80時間を危険ラインとしているなどということも聞きます。

 月20日働くとして80時間ですと1日当たり4時間です。日本の企業社会では、手取りを増やすためにそのぐらいの残業をしたい人は沢山いました。
 政府はこれから、企業に対して、副業を解禁させようとしているようですが、そうすれば、副業を4時間やるような人は多でしょう。

 言葉は「過労死」ですが、人間は労働時間が長すぎるだけで自殺するでしょうか。最近の某広告会社の若い女性社員の問題でも、労働時間の長さが自殺の原因と思う人は、あまりいないのではないでしょうか。

 恐らくそこで決定的に重要なのは、職場の人間関係です。業務命令の問題ですから、職場の人間関係といっても上司との関係が最大でしょう。
 真面目な従業員ほど、仕事に一生懸命です、自分のベストの能力をかけて仕事をします。上司がその努力を認めてくれれば、仕事が生きがいになります。

 しかし、もしその成果を全く認められなかったら、自分の能力、人格まで否定されるように感じるのが日本の職場ではよくあることです。
 上司、管理職の役割は「部下を育てること」です。如何にしたら部下は育つか、これは管理者教育の原点であり、第一歩でもあります。

 これ以上は想像でしかありませんが、恐らく担当の管理職は、管理職としての教育訓練を適切に受けていなかったのでしょう。失われた20年の中で、大手企業も教育訓練費と大幅に削りました。現場では「現場力の低下」が言われますが、企業経営者は、管理職の「管理能力の低下」も決して見落としてはいけないと思います。

 マスコミなども、過労死の原因を、残業時間数だけで報道するケースがほとんどですが、「過労死」の「労」は、単に労働時間の問題ではなく。精神的な負担、ストレスのほうがずっと大きいはずです。

 おそらく、睡眠時間中以外は、勤務時間外でも常に、自分の能力への疑問や、上司の反応の怖さにさいなまれ続け、それならどうしたいいかを考え続け、そして決定的に行き詰まった時、それが自殺という恐ろしい行動につながるのではないでしょうか。

 過労死事件というのは、労働時間よりも、より多く上司との 間の仕事上の悩みによるように思われてなりません。
 最後は法律判断かもしれませんが、そこに至るプロセスについては、企業の人事管理、教育訓練重視への態度がより大きな関わりを持っていると、企業は本気で心すべきではないでしょうか。