tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

経済財政諮問会議:「2%インフレ」が至上目標?

2016年10月01日 11時54分03秒 | 経済
経済財政諮問会議:「2%インフレ」が至上目標?
 昨9月30日、政府の経済財諮問会議が開かれ、席上「2%の物価上昇実現のために、継続的な賃上げが必要という事で、安倍首相から「賃上げの動きが広がってデフレ脱却につながることを期待する」旨の話があり、民間議員からも「賃上げ主導の物価上昇が必要だ」という事で、「賃上げをしていきたい」という提言がなされたそうです。

 同時に、賃上げのためには生産性向上が必要だから、そのために政府の施策を期待したいという意見もあったとのことですが、生産性が上がれば、賃上げをしても物価は上がりません。必要なのは生産性向上以上の賃上げです。

 マスコミが書いていることですから、「簡にして要を得ている」のでしょう。そのため言葉足らずもあるのかもしれませんが、なぜか、誠に失礼ながら「群盲象を撫でる」という諺を思い出してしまいました。

 安倍さんは、時によって「アベノミクスの成功でもうデフレの時代ではない」と言ったり、また「デフレ脱出のために」と言ったり、デフレとは何か、 今日の日本でデフレの原因は何なのか、などは多分良く解らないでしょうし、同様に、インフレとは何か、インフレの原因にどのようなものがあり、それが国民経済や国民生活にとってどのような意味を持つかなどについても知らないことが多いのでしょう。

 「賃上げ主導の物価上昇が必要」と提言した民間議員は企業の経営者で、労働組合の代表ではありません。大体、賃上げと物価の論議をするときに、通常、最大の当事者であり、責任者でもある労働組合の代表がいなことも問題ですが、それぞれの立場の人がいて、多様な視点から議論をしてこそ、総合的にバランスの取れた提言や結論が出るのでしょう。

 経営者から「賃上げ主導の物価上昇が必要」という意見が出る(労組からなら解りますが)というのはどういうことでしょうか。
例えば、国民経済の安定、国民生活の向上のために
① 賃金が1%上がって、物価は上がらない
② 賃金が2%上がって物価が1%上がる
③ 賃金が3%上がって物価が2%上がる
のどれが一番いいのでしょうか、またその理由はという問題に、本気で答えようとしたら、これは大変難しい問題でしょう。(政府・日銀は③がいいと頭から信じている)

 政府・日銀の姿勢は、何しろ物価を2%上げないことには「『景気』が付かない」、だから「賃上げでインフレを起こそう」という事のようですが、それでいいのでしょうか。
 賃上げが平均2%というときには好調企業は3%。不調企業は0~1で平均が2%というのが実態です。

 これでは国民生活の中では「格差拡大が進行する」という事になります。格差拡大は、一億総活躍とは相容れないでしょうし、社会の不安定化、 将来不安を齎し、消費需要を抑制し不況の原因になることは今や広く知られています。

 デフレの原因にしても、もともと現状の世界経済の中で、日本がデフレになったのは、基本的には「実力以上の円高を強いられたこと(プラザ合意)」によるものです。それに、将来不安による消費不振もいくばくかの役割を果たしているかもしれません。

 賃上げを実現してインフレ経済にすることなどは、政府が「力ずく」ででもやらなければ不可能でしょうし、例え出来たとしても何も良いことはないでしょう。

 物価が上がれば労働組合は物価上昇以上の賃上げを要求するでしょう。インフレは起き始めると加速する可能性( ホームメイドインフレ)があります。当然金利は上昇します。巨大な国債を抱える政府、日銀はどう管理しようというのでしょうか。
 
  今の世界経済は、貨幣流通量としては投機マネーが圧倒的に巨大な「マネー資本主義」の真只中にあります。
 日本は、万年経常黒字と超巨大な財政赤字という奇妙なバランスの上に国民の真面目な努力で何とか不安定の安定を保っています。
 国際投機資本には面白いケーススタディーの対象でしょう。国際投機資本の狙い目にならないような政策の知恵も含めて、賢明な舵取りを期待したいものです。