tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

所得格差と資産格差、日本の経験 4

2014年09月19日 10時37分19秒 | 国際経済
所得格差と資産格差、日本の経験 4
 1980年代前半までの、「安定成長の維持、低インフレ、低失業率、小さな所得格差」の時代が続けば、日本は「ジャパンアズナンバーワン」と言われた良き時代を中・長期的に維持できたのではないかと私は考えています。

 理由は日本の経済主体、消費者、企業、政府の行動が、比較的バランスが取れ、労使の付加価値配分のバランス(労働分配率)も適切で、問題のあった官民バランス(国民負担率)についても、土光臨調(1981~)のようなバランス回復努力が真剣にやられていたからです。

 しかし国際環境はそうした安定を許しませんでした。欧米諸国は自分たちが、賃金インフレによる「コスト高」に苦しむ中で、唯一、労使の賢明な判断で、コスト高の進行を避けている日本に対し、コスト高にすることを要請してきました。

 これが「プラザ合意」です。お人好しの日本は、余裕もあったので寛容に「円の切り上げ」を認めました。当時$1=¥240からせいせい¥190ぐらいと読んでいたと言われますが、結果は2年後に¥120になりました。
 つまり日本は2年間で、賃金も物価も2倍になるという超インフレをやったことになり、世界で最も賃金も物価も高い国になりました。

 日本の持っていたドル債などの価値はドルでは変わらなくても円では半分になり、コスト高で製造業中心に企業は海外に出て行き、日本産業の空洞化が言われることになりました。

 つまり、経済パフォーマンスの良い国に対しては、通貨高を強いることにより、その国の富(蓄積資産)を海外に移転させることが可能ということを実証したのがプラザ合意でしょう。その結果、日本はリーマンショックの円高も加えて、「 失われた20年を経験することになりました。 これは中国に対する人民元高要請も理屈は同じです。中国は容易に応じていません。

 これが、通貨価値の変動で富=資産の国際的移転という経済政策を生み、さらには金融工学に発展して、資産(資本蓄積)を生産活動に活用するのではなく、マネーゲームで「金が金を生む」マネー資本主義に行き着くことになりました。
 サブプライムローンの証券化による海外からの資金獲得、その破綻による世界中の金融機関の大穴は保障されることはありません。

 日本の名目GDPは1997年に523兆円をピークに減少、今年度で漸く500兆円回復の予定という状況で、実質GDPでも、2007年のピークから縮小に転じ、昨2013年やっとその水準を回復しました。
 その結果、OECDの中でも平均より貧しい方の国に転落しました(実質1人ありGDP:1990年初頭6位、2012年18位)。

 こうして、国際的に富(資産価値)が移転し、生産活動も不振になり、国民経済が劣化するとき、国内では所得格差の拡大が起きるようです。(以下次回)