tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

所得格差と資産格差、日本の経験 5

2014年09月21日 07時38分17秒 | お知らせ
所得格差と資産格差、日本の経験 5
 失われた20年を通じ、日本は円高で跳ね上がった賃金コストを下げ、それによって、物価を国際水準まで下げて国際競争力を回復させなければなりませんでした。
 そのプロセスがデフレであり、デフレ故のゼロ・マイナス成長だったということです。

 証券市場は不振を極め、地価は下落を続け、確かに資産格差は拡大しなかったかもしれませんが、この期間を通じて、所得格差の拡大が進み、日本も格差社会になったという認識が国民に共有され、その後遺症はいまだに余り改善されず残っています。

 加害者を巧く特定できないとき、被害者同士が,解らないままの責任論争などというのは良くあります。プラザ合意による円高の時は、「円高」の経済的帰結がよくわからず、「円高は日本の価値が上がったのだから良いことだ」などというエコノミストもいて。景気の悪いのは円高を巧く活用できない政策の貧困などという意見もあったと記憶します。

 いわば、加害者(?)はプラザ合意のG5の日本以外の国々という訳ですが、それを加害者というか、国際投機資本こそが加害者というか、円高OKといった日本代表がそうなのか、加害者の特定がなされた形跡はありません。

 現実は前回述べましたように2年間で賃金も物価も2倍という超インフレをやったのと同じことですから、デフレになるのは当然で、デフレの中では「デフレ3悪」(http://blog.goo.ne.jp/tnlabo/e/a3727a167073b4dc264999e01c287b22)が発生、企業はサバイバルのために、必死のコスト削減を図らなければなりません。コストカッターはカルロス・ゴーンさんだけではないのです。

 こうして生じた現実は、企業の海外移転、国内ではサバイバルのための人員削減、5.4パーセントという日本としては未曽有の高失業率、就職難、新卒には就職氷河期、といったもろもろの現象を齎し、格差問題の核心、非正規雇用の増加に至ることになります。

 バブル期の資産格差の拡大は収まりましたが、今度は一転して所得格差の拡大です。しかもこれは経済全体(GDP)の縮小と並行的に起きている問題ですから、国内で努力しても解決は容易ではありません。 

 結局これは20年に亘る日本国民の努力と、最後に日銀の政策変更による20円幅の円安実現、漸く現状に辿り着いたというのが問題解決の実態です。

 日本人の成し遂げてきた経済・社会活動の実績から見れば、今の状態が安定維持できれば、既に新卒市場は様変わり、漸次、非正規雇用の正規化は進み、所得格差は次第に縮小し、かつての「1億総中流」の方向へ向かうことも可能かと思える状態です。

 折しも、さらなる円安が進み、他方では、地価の下落が止まり一部では反転上昇、株価も急騰といった新たな動きも見られます。これからの舵取りには注目です。
 こうした日本の経験を、内外の経済安定に生かすことを、政府、アカデミアに期待したいものですが、どうなるでしょうか。