tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

IKEAに学ぶ日本的経営

2014年09月05日 07時45分06秒 | 経営
IKEAに学ぶ日本的経営
 スウェーデンの世界的家具小売業IKEAの日本法人、イケア ジャパンが従業員3400人のうち2400人を占めていた非正規社員を、この9月から順次、全員正社員化すると発表しました。

 すでにこのブログでも 非正規社員の正社員化が動き始めたことをANA、スターバックス、ユニクロなどの動きと共に注目してきましたが、今回はIKEAです。
 正直、この報道を聞いて、喜ばしいと思うと同時に、まさに情けない思いです。

 もちろん非正規従業員が喜ぶ姿が目に浮かびます。多分日本企業にも影響が出るでしょう。しかし同時に、何で外国企業が、正規従業員化の先陣を切っているのか、日本企業は一体何を考えているのかという情けなさの方が先に立ってしまいます。

 もちろん、ANA、ユニクロ、それ以前に広島電鉄といった先進事例はあります。さらに三越伊勢丹HD、西友なども動き始めており、イケア ジャパンのピーター・リストCEOも、「日本全体の正社員化の流れもあり踏み切った」という趣旨の発言をしています。

 正社員化の理由については、「IKEAはもともと人に投資する企業で、人が働きやすく、やる気を出し、成果を上げてくれることこそが企業発展の原動力」という説明です。
 考えてみれば、これこそ日本的経営の基本だったことを「思い出して」頂ける方も多いのではないでしょうか。

 戦後、日本企業は職場における社員・雇員、労務者・職員などの身分をなくし、全員「社員」とし、労働組合も、労職一本の組織(世界に稀)としています。企業は職場であると同時に、人間形成と職業教育の場と考えて企業内の教育訓練をし、企業内の人事管理をしてきたのが、「日本的経営」と言われた日本企業の在り方だったはずです。

 このブログでも何度も触れてきましたように、かつて、日経連(2002年経団連と統合)は、日本的経営の原点として「人間中心の経営」「長期的視点に立った経営」の2つを上げています。

 その日本の経営者が、失われた20年の中で変質し、非正規労働者を多用してコストを下げるのが「経営者のやること」と考えてしまうようになったとすれば、余りに情けないことではないとではないでしょうか。

 今、日本には、経済団体が3つあります。経団連、経済同友会、日本商工会議所です。しかし、その中から、「経営者は非正規雇用の正規化を考えるべき」という声は全く聞こえてきません、「そんなことをしたら、コスト高でやれない」というのでしょうか。

 「われわれは経済団体で、経営者団体ではない」と言えばそれまでですが、傘下の企業トップは皆経営者なのです。「経営者は資本家の代弁者ではない」と誰もが言う今日、各社が社是社訓に掲げる経営理念を踏まえ、 「経営者の役割は何か」を改めて明確に示すことは経済団体にとって必要ないのでしょうか