tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

経常黒字の急減と大幅財政赤字

2014年09月03日 09時44分08秒 | 経済
経常黒字の急減と大幅財政赤字 
 つい先年までは「日本のように国際経常収支が万年黒字の国は、何かあると円高になり、その都度大変な苦労をする」といった状態が日本経済の問題でした。

 しかしここへきて、状況は随分変わってきました。経常黒字は月によっては赤字になるというような様変わりで、国際投機資本の円を見る目も変わって来ているようです。
 様変わりの原因については8月27日.28日の「経常収支再論」でも見て来ましたが、原発事故による化石燃料の輸入急増と価格上昇、思ったより伸びない輸出といったことのようです。

 日本経済にとって苦労の種だった円高を避けるためには、「この程度の経常収支ならまあいいか」という選択もあると私は考えますし、今年度1年たってみれば、経常収支もある程度の黒字かなと思っていますが、日本には別の問題点もあります。

 もともと、経常収支の黒字というのは、生産したGDP を使い残すからで、民間の投資と消費、それに政府の財政支出で全部使ってしまえば黒字はなくなります。逆に、生産したGDP 以上に使い過ぎれば、アメリカや一時のギリシャ、スペインのように経常赤字国になり、経済破綻し、緊縮を強いられます。アメリカは基軸通貨国ということで別格ですが、借金を踏み倒して世界中に不義理をしていることはご承知の通りです。

 日本が大幅経常黒字国でなくなるということは、国際的な経済バランスからみてもいい事ですが、今の状況では、「国内的」に問題もあるように思います。
 と言いますのは、企業、家計、政府といった具合に経済主体別に見ますと、圧倒的に赤字なのは政府です、年々の財政赤字はリーマンショック以降は40兆円を超え、2013年漸く40兆円を微かに切るといった状態です。

 これは当然国債発行で賄われているわけで、国債を引き受けているのは殆どが家計と企業部門です。
 企業は次第に研究開発や設備投資を増やしていくでしょし(そうしてくれないと経済成長が出来ません)、家計は高齢者が増えるので、貯蓄取り崩しが増えて、政府があまり赤字を続けると国内でそのファイナンスできなくなり、国債を外国に引き受けてもらうことになりかねません。

 国際投機資本の一部は、日本売りのチャンス到来などと喜ぶかもしれませんが、日本にとっていいことではありません。
 政府が人気取りのためにやっている大盤振る舞いも次第に難しくなりそうです。

 安倍さんがtnlabo's blogを読んでいて「たまには経常収支の赤字もいいじゃないの」と考えているとは思いませんが、日本も大幅黒字国でなくなる可能性が出て来た今、これまでの経常黒字を減らすことが急務という視点から、今後は、経常収支のバランスを巧みに維持して行くような政策が大事という視点に、重点の置き方をを多少変えていく必要があるかもしれません。