tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

所得格差と資産格差、日本の経験 3

2014年09月17日 12時37分21秒 | 経済
所得格差と資産格差、日本の経験 3
 地価上昇を経済発展のエネルギーに置き換えてきた日本経済にも、転機が訪れます。
 第一次オイルショック(1973年)の影響で、エネルギー資源に乏しい日本経済は強烈な「ショック」受け、政府も企業も国民も、まさに周章狼狽、経済成長率はマイナスを記録しました。

 その後も経済成長は緩やかで、高度経済成長の時期は終わったと言われました。企業経営にも変化が現れ、借金中心の拡大路線への反省も生まれ、名古屋式経営などと、自己資本重視の経営が注目されたりしました。
 その結果もあって、地価(特に商用地)は、それ以前に比べると緩やかになりました。その後の第二次オイルショックでは、日本は、第一次オイルショックの経験を活かして、経済の安定成長を維持し、スタグフレーション化でインフレと失業、低成長に悩む欧米諸国しり目に、「ジャパンアズナンバーワン」と言われるパフォーマンスを実現しています。
 この時期、日本は、世界でも屈指の所得配分の平等な国と言われました。

 しかし、1985年のプラザ合意による円高が日本を襲います。アメリカのアドバイスを受け、内需拡大のためと銘打った金融緩和策で、土地神話がよみがえり、土地バブルと証券バブルの時代が、巨大な資産格差の時代を作りました。

 土地バブルは都市近郊から始まり、日本中に広がって、土地を持つ人と持たない人の資産格差は巨大なものになりました。住宅を買ったサラリーマンの所得は、ローン返済で土地保有者に移転し、企業は融資で土地を買い値上がりを待って転売するといった行動に走りました。

 バブルの必然ということでしょうか、土地取得、地価上昇は生産活動には利用されず、値上がり・転売というキャピタルゲイン獲得という形で富の生産ではなく、富の移転という結果を生んだのです。

 資産増殖も土地転がしのキャピタルゲイン目的でした。果てはジャパン・マネーがNYのロックフェラーセンターやティファニーを買うといった海外の資産ころがしにまで発展し、ジャパンマネーは世界中を闊歩しましたが、生産設備への投資に向かわず、実体経済の拡大を伴わないマネー経済・土地バブルは結局破裂し、特に1991年の地価下落の開始とともに、資産格差の拡大は終わりました。

 こうして日本経済・社会は、オイルショック、円高といった外来の条件変化に振り回され、資産格差の拡大や縮小を経験してきましたが、今、問題になっているのは、資産格差よりも所得格差のように思われます。次回はこの辺りを見たいと思います。