※ 本件,11月28日から旧に復しましたので,参考として御覧ください。
不動産登記規則第72条第2項第2号の規定は,次のとおりである。
二 国民健康保険、健康保険、船員保険、後期高齢者医療若しくは介護保険の被保険者証、健康保険日雇特例被保険者手帳、国家公務員共済組合若しくは地方公務員共済組合の組合員証、私立学校教職員共済制度の加入者証、国民年金手帳(国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)第十三条第一項に規定する国民年金手帳をいう。)、児童扶養手当証書、特別児童扶養手当証書、母子健康手帳、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳又は戦傷病者手帳であって、当該申請人の氏名、住所及び生年月日の記載があるもののうちいずれか二以上の提示を求める方法
「いずれか二以上」が必要であるとされている書類が列挙されている。
この点に関して,最近,突然,京都地方法務局管内において,補正が多発しているそうで,その理由が,「『後期高齢者医療若しくは介護保険の被保険者証』は二者択一であって,この2点の写しの添付では不可。これまでは解釈を誤っていた。大阪法務局管区も同様の取扱いである。」ということであるらしい。
突然の取扱いの変更に実務は大混乱であるが,理のある話ならともかく,全くもって不可解な話である。
「国民健康保険、健康保険、船員保険、後期高齢者医療若しくは介護保険の被保険者証」の部分は,
・ 国民健康保険の被保険者証
・ 健康保険の被保険者証
・ 船員保険の被保険者証
・ 後期高齢者医療の被保険者証
・ 介護保険の被保険者証
の5点をグルーピングしたものに過ぎず,この条文の書きぶりをもって,「『後期高齢者医療若しくは介護保険の被保険者証』は二者択一」と解するのは,それこそ条文解釈を誤っている。
自治体の窓口等における本人確認書類についても,「後期高齢者医療の被保険者証」及び「介護保険の被保険者証」の2点で当然に通用している。
cf. 京都府HP
https://www.pref.kyoto.jp/passport/10200029.html
平成16年改正不動産登記法の施行当時における立案担当者の解説をみても,「二者択一」とは読み取りようもないのだが。
cf. 小宮山秀史「逐条解説不動産登記規則」(登記研究平成23年10月号)17頁以下
「国民健康保険、健康保険、船員保険、後期高齢者医療」は,医療保険であり,基本的にこれらの被保険者証の2点所持はあり得ない。ただし,船員保険と後期高齢者医療については,二重加入が可能であり,これらの被保険者証の2点所持はあり得る。
介護保険は,これらの医療保険とは異なる制度であるから,その被保険者証と「国民健康保険、健康保険、船員保険、後期高齢者医療」のいずれかの被保険者証の2点所持は当然に可能である。
というわけで,上記2号書類に関して,「『後期高齢者医療若しくは介護保険の被保険者証』は二者択一であって,この2点の写しの添付では不可」という理屈は成り立たない。