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恵庭の彫像-1,恵庭大橋に季節の乙女像(作者は鈴木吾郎・本間武男)

2014-10-05 16:28:53 | 恵庭散歩<記念碑・野外彫像・神社仏閣・歴史>

恵庭大橋「季節の乙女像」

恵庭市に存在する野外彫刻は必ずしも多くない。が,多くの人が目にするのは「恵庭大橋」の4基の乙女像であろう。いつもは車窓から「欄干に彫像があるな」とチラッと眺めるだけで,交通量が多い国道だけに車を止めて鑑賞することもしない。そこで,初秋のある日,散歩がてら漁川の堤防を20分ほど歩いて行ってきた。

4基の像が置かれているのは,橋脚部に設置された4か所のバルコニー「恵庭大橋季節の広場」と称される場所であった。北側橋脚に2基,南側に2基のブロンズ像が設置されている。4箇所に説明板があり,季節の広場設置の目的と各彫像の製作意図が記されている。

恵庭大橋季節の広場の解説板には,「恵庭大橋季節の広場は,国道36号線の漁川に架かる恵庭大橋を渡る人々に潤いと安らぎを与えるために橋台に設置された広場です。4箇所の広場は,それぞれ「春」「夏」「秋」「冬」というテーマによって構成されており恵庭市の四季の移ろいを表現しています。また,広場と橋の一体化に努め,照明・親柱・高欄等には橋を渡る人々がふれあいと親しみを感じるデザインが施され,橋脚部に設置されたバルコニーは,それぞれに広場と同じテーマによって製作された乙女の像を配置しています。当広場は市民の憩いと橋とのふれあいを願う春(夏・秋・冬)の広場です」とある。 

各広場には,作者の署名と制作意図が記された説明板があるので紹介しよう。

◆春の広場,鈴木吾郎作品「こぶし」

説明文「コブシは春早くに咲きます。山の木々がまだ若葉の準備をしている頃ホロホロと白い花を咲かせます。甘い香りと眩しいほどの白さは北海道の春のシンボルと言えます。薄紫の春の山に点景のように散咲するコブシは私たちに暖かい喜びを与えてくれます。作品はそうした明るい喜びとのびやかな情感を表現しました」

北海道人にとって,待ち遠しかった春の訪れは,まさに喜びを感じる季節である。両手を開いた仕種,ふくよかな肉体から春の訪れを喜ぶ様子が伝わって来る。

◆夏の広場,本間武男作品「夏の日」

説明文「透明な空気をさいて光が躍動する,風とせせらぎの音のながれ出る恵庭の街,さわやかな北の大地の匂いがある」

夏は,身体いっぱいに爽やかな風を感じたい。恵庭の街,漁川を吹き抜ける風は爽やかな緑の匂い。きっと誰もが深呼吸したくなるだろう。

  

◆秋の広場,鈴木吾郎作品「もみじ」

説明文「北海道の秋は短く一気に冬を迎えます。しかし短い秋はそれだけ華やかに野山を彩り私たちに美しいパノラマを見せてくれます。木々の中でもモミジはひときわ鮮やかで冬へ向かう私達に美しいひとときを与えてくれます。作品はそうした豊かな秋と厳しい冬へ向かう緊張感を表現しました」

北海道の秋と言えば,豊穣の稔を早々に片付け,さあ冬支度をと考える季節。短い秋の緊張感は,北国に暮らす人でなければ分からないだろう。

◆冬の広場,本間武男作品「雪の朝」

説明文「降りつづく白一色の雪の重みから,流れるすべを持たない恵庭岳,耳をかたむけると,北海道にいきる人々の優しい愛,不屈の魂が静かに伝わってくる」

吹雪の中でも北海道の女性は逞しい。恵庭岳からの風雪に顔をゆがめ,コートの裾をなびかせながらも活発に行動する。冬の厳しさを楽しむように。

  

作者「鈴木吾郎」は,昭和14年(1939)芦別生まれ,北海道学芸大学で藤川叢三に師事,教職に携わる傍ら,昭和35年(1960)から道展を主舞台に活躍する彫刻家である(野外彫刻の数は本郷新,佐藤忠良,安田侃に次ぐ)。佐藤忠良に繋がる,健康的で柔和な表情の女性像の作品が多い。日本人の心を追及しているのだろうか,女性の何気ないしぐさに情感が漂う。全道に50点を超えるモニュメントがある。新境地を拓いたと言われる「素焼き作品」も評価が高まっている。北海道を代表する作家の一人。

作者「本間武男」は,昭和4年(1929)余市町生まれの版画家,イラストレーターとして知られる。日本水彩画会宮崎信吉に師事し,水彩画を髣髴とさせるシルクスクリーン版画に独自の境地を拓いた人気の版画家である。1960年(昭35)代から全国各地で版画展を開催。北海道を題材とした作品シリーズは高い評価を得ている。郵便切手や年賀ハガキの原画制作,青函トンネル吉岡海底駅の版画作品(陶板)制作など作品多数。スペインやフランスの展覧会入選,広く世界に活躍の場を広げた。ネパールやバングラデイシュの福祉施設・病院建設支援などにも積極的な取り組みを行った。昭和49年(1974)から苫小牧を拠点に活躍,平成18年(2006)逝去。

「本間武男は彫刻もしたのか?」と疑問に思っていたら,「本間武男がデザインし,制作したのは別人らしい」と伝聞した。作者の創作原型(原画,デッサン)を受けて,関係者が具象化することはよくある話だ。制作過程の詳細を確認していないが,本間武男のオリジナルであることに間違いない。 

因みに,恵庭大橋は国道36号線恵庭バイパスの漁川に架かる橋で,近くに「道の駅花ロードえにわ」「天融寺」などがある。恵み野駅から1.2km。漁川堤防には遊歩道があり,多目的広場やウオーターガーデン,中島公園と一体化している。

道の駅に立ち寄ったら,或いは堤防や公園遊歩道を散歩される折にでも,恵庭大橋の4作品を鑑賞してみては如何ですか。漁川の流れと遠方の街並みを背景に,行き交う車の群れが音響効果となって,恵庭大橋の4作品が心を癒してくれる。美術館で鑑賞するのとは全く違った印象に驚かれることだろう。

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