◆顕在化する病害虫被害と旱魃
作付体系は大豆(夏作)-小麦(冬作)が基本で,大豆を毎年栽培する畑が多い。地力維持の観点から大豆の後作にトウモロコシや緑肥作物を導入する事例が増えているが,一方では年2回大豆を栽培する例もみられる。この場合は大豆の早播や早生品種が使用される。大豆の作付頻度が高いため,病害虫被害は常に問題となる。
病害では,1990年代初頭に茎かいよう病が猛威を振るったが,現在は抵抗性品種が開発されたため被害は減っている。一方,紫斑病,褐紋病など登熟期の葉の病害が目立つようになり,また成熟期間に長雨があると炭そ病が発生し子実の品質を低下させる。さび病は2001年にパラグアイ日系移住地で初めて発生が確認され,その後ブラジル,ボリビア,アルゼンチンに拡大し,甚大な被害をもたらしている。本病は現在,緊急に対策を求められている病害である。また,炭腐病の被害も拡大している。
害虫では,カメムシ類の被害が大きく,カメムシ防除は必須である。ダイズシストセンチュウは,1992年にブラジル,1998年にアルゼンチン,2003年にはパラグアイで発生が確認され,被害拡大が予想されている。また,旱魃害が頻繁に起こり,生産不安定要素になっている。
◆どこへ向かうのか
ブラジル,アルゼンチン,パラグアイの南米3国は国際大豆市場の供給安定に欠かせない存在となったが,世界の大豆需要はなお増加傾向にあり,南米の大豆生産は当面さらなる拡大が予想される。また,これらの国では大豆生産が外貨獲得の筆頭産業で,加工業など国内産業の発展をもたらしていることを考えても,増加傾向は続くだろう。その中で,不耕起栽培とGM大豆は不可欠である。
GM大豆の問題点については前述したとおりであるが,南米でも非GM大豆生産にこだわる動きがある。例えば,パラグアイでは日系農協が中心になり,技術協力で開発された品種「Aurora」を日本へ輸出し好評を博している。アルゼンチンやブラジルで非GM大豆を栽培し輸入している事例がある。また,食品用大豆開発の動きも加速している。今後は,GM,非GM,有機大豆など異なる生産形態が共存する仕組みを,各国で構築することが課題となるだろう。
参照:土屋武彦2010「南米における大豆生産の実態」農業1529:53-58
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます