豆の育種のマメな話

◇北海道と南米大陸に夢を描いた育種家の落穂ひろい「豆の話」
◇伊豆だより ◇恵庭散歩 ◇さすらい考
 

南米の鳥と聞いて君は何を思い出す? コンドル,オニオオハシ,ハチドリ

2012-05-12 10:04:48 | 南米で暮らす<歴史・文化・自然>

「南米大陸に住む鳥」,貴方は何を思い出しますか?

◆音楽好きの君は言うだろう。

コンドルだね。アンデスのフォルクローレ El Cóndor Pasa (コンドルは飛んで行く)を思い出すよ。Simon & Garfunkelの歌声でね

この曲は1913年,ペルー人作曲家 Daniel Alomía Robles が伝承曲をもとに作曲したもので,アメリカのSimon & Garfunkel がカバーして世界中に広く知られるようになった。今でも,ボリビアやアルゼンチンのフォルクローレグループの定番になっている。

 

レストランのショータイムに,「ご希望曲は?」と聞かれたら,「El Cóndor Pasa, Por favor」と応じるがいい。他の客席からも拍手が起こるし,嬉々と演奏してくれるだろう。

 

南米コンドルVultur gryphus)は,南アメリカ大陸のアンデス山脈に生息する。体長1.2m,両翼を広げると3mに達し,10kg以上にもなる。この体型は上昇気流に乗って空高く舞い上がるのに適している。

 

アンデスの標高3,0005,000mの場所に巣をつくり,雛を育てる。氷河ツアーをしたとき,ガイドが山の頂を指して,「あの辺りで,コンドルがしばしば観察されます」と説明していたのを,思い出す。その時は見つけることが出来なかったが,コンドルは巣やねぐらの周囲に広い行動圏を持ち,死肉を探して日に250kmも移動する事がしばしばだという。

 

コンドルの頭や首に毛が生えていないのは,動物の死体に頭を突っ込んで餌をとる際に,腐敗浸出液などが羽毛に染み込んで不衛生になるのを避けるためであると,その時に聞いた。羽毛がなければ皮膚に付着した液の乾燥は容易で,さらには高地の強い紫外線で殺菌されるのだという。

 

コンドルは,ボリビア,チリ,コロンビア,エクアドルの国鳥となっている。インカ帝国最後の皇帝トウパック・アマルーが死後,コンドルに生まれ変わったとの伝説も残っている。南米アンデスを象徴する鳥であるのは間違いない。

 

◆ブラジル熱帯雨林を旅した君は言うだろう。

オニオオハシ(Ramphastos tocoToco Toucanだよ。明るい黄色やオレンジ,赤い色で彩られた大きな嘴をもつこの鳥は,アマゾンの宝石とも呼ばれている。ブラジルの国鳥にもなっているのだ」

 

ギアナからブラジル北部及び東部の熱帯樹林帯の樹の上の方に生息するこの鳥は,確かに印象的な姿だ。その嘴の色が豪華である。体長は60cmを超え,そのうち嘴の長さが三分の一もある。この嘴の構造はスポンジ状になっていて,見かけほど重くはなく,体温調節の役割も果たすらしい。

 

果実,卵,ヒナ,昆虫など何でも食べ,好奇心旺盛で声が大きく,「森の道化者」と呼ばれることもある。

「そういえば,原住民のトーテム像に,この鳥が彫られているね。部族の祖先を象徴するものだという」

これも南米を代表する鳥だ。

 

◆或いは君は,オウム科のオキナインコMyiopsitta monachusMonk Parakeet),ダチョウよりも小太りのアメリカ・レアRhea AmericanaGreater Rhea),アンデスの塩湖に群れるアンデスフラミンゴPhoenicoparrus andinus),最近放映されたイグアス滝のテレビ映像からオオムジアマツバメStreptoprocne phelpsi)を上げるかも知れない。

 

だが,私が思い出すのは,子供の頃に絵本でみた「ハチドリ」である。

「遠い国には,蜂のように小さな鳥がいるって,本当なのか?」と,不思議に感じたものだった。何しろ,伊豆の山奥で見慣れている小鳥と言ったら,庭に来るスズメ,椿の花に集まるメジロ,春のウグイスの鳴き声,水田の空を飛び交うツバメくらいのものであった。蜂のような鳥と言われても想像できなかった。

 

ハチドリTrochilidae)は,アメリカ合衆国の南西部からアルゼンチン北部にかけて生息する。全300種以上あるが,長7cm以下のものが多く,最小種は約5cm。確かに,鳥類の中で最も体が小さいグループである。羽の色は金属光沢がある緑色など多彩である。

 

毎秒約55回,最高で約80回の高速ではばたき,空中で静止しホバリングしながら花の蜜を吸う。「ブンブン」 と蜂と同様の羽音を立てるため,ハチドリ(蜂鳥)と名付けられたという。英語ではハミングバード Hummingbird で,こちらも同様にハチの羽音(英語における擬音語が hum)から来ている。

 

最初の出会いは,アルゼンチンのマルコスフアレスだったと思うが,詳細は記憶にない。二度目は,パラグアイのエンカルナシオンにある農業試験場(CRIA)だった。庁舎から試験圃場に通じる道路の脇に並木があり,赤い花が咲くと訪れるハチドリが待ち遠しかった。

 

三度目は,シウダ・デル・エステ市近くのホテル Casa Blanca Hotel Spa & Golfに宿泊したとき,食堂のベランダに砂糖水を入れた小瓶(フィーダー)が吊るしてあり,訪れるハチドリをコーヒー片手に眺めた(写真)。子供の頃の夢が叶ったような至福の時であった。

この日は,ブラジルから来た佐藤ご夫妻,イグアス在住の古明地ご夫妻との暫くぶりの邂逅の時だった。記憶が重なって甦る。

 

後になって,ある種のハチドリは特定の植物と密接な関係があると知った。ハチドリにとっては他の種と食料獲得の競合を避け,植物にとっては自分専用の花粉媒介者がいることで効率受粉を可能にする,いわゆる共進化がみられるという。



 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 異国での講演会 | トップ | ツリスドリの群がるのをみた... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

南米で暮らす<歴史・文化・自然>」カテゴリの最新記事