令和元年(2019)5月の或る日、満開の桜を眺めながら島松を歩く。JR島松駅前から北に180mほど進み、南20号を左折、千歳線の踏切と道道46号(江別・恵庭大通り)を渡り、ルルマップ川を越え、坂を上ると畑地が広がる。ルルマップ川と島松川に挟まれた丘陵台地である。駅からおよそ1km、徒歩で20分弱の距離。
右手には「ホクレン恵庭研究農場」、かつての北海道農業試験場ばれいしょ育種研究室(島松試験地)が佇んでいる。左手の建物はとみれば「恵庭市農業活性化センター」の標識(表札)と「公益財団法人道央農業振興公社」の看板が見える。
ホクレン恵庭研究農場については、2019年5月10日の拙ブログに「島松試験地、ばれいしょ農林1号、キタアカリの故郷」として紹介したのでご覧いただきたい。ところで、公益財団法人道央農業振興公社とはどんな施設なのか?
◆公益財団法人道央農業振興公社
公社HPによれば、目的として「この法人は、江別市・千歳市・恵庭市・北広島市の4市地域内において、地域内農業・農村の持続的発展と、農業の多面的機能の発揮に寄与します」とある。事業内容は「担い手別の育成事業」「農用地の利用調整事業」「生産性の向上と安全安心な農産物生産支援事業」「農業労働力確保支援事業」「酪農、畜産関連の受託事業」等が挙げられている。
我が国の農業は高齢化、担い手不足、農家戸数の減少が進み、農地の荒廃も目立つなど厳しい状況にあるので、農家経営の改善と技術支援を行うための活動拠点ということだろう。具体的には、①土壌分析、②地域に適する品種選定や栽培試験、③地域農業のリーダーを養成する研修事業(農業塾)、④農地の集約・農業労働力確保、⑤市民との交流事業を行っている。農業関係者以外の一般市民にはあまり知られていないが、地域農業のために重要な役割を担っている組織のひとつと言えよう。
道央農業振興公社は平成17年(2005)5月に設立され、平成25年に公益財団法人となった。かつて恵庭市には恵庭市農業活性化センター(平成9年設置)があり、各地域にも同様の組織があったが、農業情勢の変化に対応して広域化を図り整備された。理事長は松尾道義道央農協組合長、運営支援組織は江別市、千歳市、恵庭市、北広島市、道央農業協同組合。職員は27名(公社業務職員18うち出向6、受託牧場業務9)だという。
なお、管轄する4市の農家数は930戸余り、産出額はおよそ350億円とされる。
◆地域農業技術センター連絡会議(NATEC)
このような地域農業技術センターと呼ばれる組織は、平成31年2月現在全道に42機関存在する。例えば、札幌市農業支援センター、旭川農業センター、和寒町農業活性化センター(農想塾)、帯広市農業技術センター、厚沢部町農業活性化センター等々である。それぞれが地域農業活性化に向けた活動をしている。
今から25年前、北海道立農業試験場(道農政部)の呼びかけにより、地域農業技術センター相互の情報交換や連絡調整のための「地域農業技術センター連絡会議」が結成された。連絡会議には、各地域農業技術センターのほか、ホクレン農業総合研究所など関係団体及び北海道立総合研究機構の各農業試験場が参画し、56機関・団体の構成となっている(平成31年2月現在)。毎年、研究交流会や研究情報交換会を実施しているという。
農業研究と普及のシステムは、原則としては①農業試験場が技術開発を行い、②農業改良普及センターが普及指導を行い、③農協技術部や地域農業技術センターが地域に即した取り組みを行う役割分担になっている。道央農業公社もそうだが、地域農業センターが成果を上げるためには、パートナーたる連携機関との連携度合いがポイントになるだろう。地域農業センター個々の陣容では「理念として成立しても、目的を達成するのに現実では困難が伴う」ということになりかねない。そこを打ち破るのは、関係機関との連携をより深めることにあるのではないか。道央農業振興公社は頑張っているが、地域農業農村活性化の核となっているか? と、常に問い続けることが必要だと考えるが如何だろう。
◆ウオーキングの道すがら
ホクレン恵庭研究農場と道央農業振興公社前に面する道を直進すると、島松小学校創設跡地とされる場所に至る。跡地記念碑には「明治26年、元士族大坂与太郎が広島街道沿い、下島松北の丘にわずか6坪の掘立小屋を建て寺子屋式の児童教育を開始したのが始まりで、同年校舎東側に12坪の校舎を建設」とある。島松では、この地で開拓当初の幼児教育が開始されたのだ。
さらに、突き当りを左折し西方向に進めばルルマップ自然公園、恵庭墓園に至る。また、直進して沢に下り、島松川沿いを少し遡れば島松沢地区に至る。島松沢は、「旧島松駅逓所」「寒地稲作ここに始まると記された中山久蔵翁の碑」「クラーク博士記念碑」など開拓の歴史をとどめる場所である。
この台地は、恵庭市保健福祉部発行「ウオーキングマップ」にも「空の道」として紹介されているが、心地よいウオーキングコース。ウオーキングの途中に、馬鈴薯の花を楽しみ、開拓の歴史と農業の行く末に思いを巡らしてみるのも良い。
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