豆の育種のマメな話

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カリンバ自然公園の「ザゼンソウ」、恵庭の花-31

2022-05-02 11:11:47 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

僧侶が座禅を組む姿に似て座禅草

4月の或る日、ミズバショウの写真を撮ろうとカリンバ自然公園へ出かけた。ミズバショウの群生地に、仏炎苞が白くない黒赤~暗紫の個体が散見される。形がよく似ているのでミズバショウの変異個体かと見間違えるが、別の種類である。案内板には「ミズバショウの仲間、ザゼンソウ、黒ずきん(黒紫色)をかぶったお坊さんが座禅をして座っている姿に似ていることからつけられた名といわれています」とある。

「仏像の光背に似た形の花弁の重なりが僧侶の座禅姿に見える」ことが名称の由来とされる。また、花を達磨大師の座禅する姿に見立てて、ダルマソウ(達磨草)とも呼ぶ。一方、英語では全草に悪臭があることからスカンクキャベツと呼ぶそうだが、名前を聞いただけでも匂いが漂ってくる。

カメラのレンズを向ける。ミズバショウは仏炎苞と花序が地上に伸びているので華やかだが、ザゼンソウの仏炎苞は地際から生えている(一部埋もれているように見える)ので些か写真映えしない。仏炎苞の色も地味だ。

家に帰って調べてみると、開花期に発熱し周辺の氷雪を溶かし、臭いで花粉媒介昆虫を誘引するなど、ザゼンソウには植物の知恵が詰まっていることを知った。

発熱システムについては、①ザゼンソウの肉穂花序にはミトコンドリアが豊富に含まれており、②気温が氷点下になると根に蓄えているデンプンと酸素が活性化し、③デンプンと酸素にミトコンドリアが結合して呼吸活動が活発化するため、ザゼンソウ花序が発熱すると言われている。子供の頃はお化けのように見えて近づかなかったが、興味ある植物だ。

北アメリカ東部および北東アジアに分布。日本では、諏訪市、兵庫県香美町、大田原市、甲州市、滋賀県高島市、鳥取県智頭町などの群生が知られているが、北海道ではどうだろう。恵庭ではカリンバ自然公園の他に漁川沿いの湿地帯で見たことがある。

 

◆ザゼンソウ(座禅草、学名: Symplocarpus renifolius)は、サトイモ科ザゼンソウ属の多年草。冷帯、および温帯山岳地の湿地に生育。開花時期は1月下旬から3月中旬。開花する際に肉穂花序で発熱が起こり約25℃まで上昇する。そのため周囲の氷雪を溶かし、いち早く顔を出すことで、この時期には数の少ない昆虫を独占し受粉の確率を上げる。発熱時の悪臭と熱によって花粉を媒介する昆虫であるハエ類をおびき寄せると考えられている。

地下茎は太くて短い。葉は2~7枚が根出し、ほぼ円形で長さ幅とも30~50cmになり、先は急にとがり、基部は心臓型。浅緑でつやがあり、葉柄は太く長く葉身と同じ長さになり、基部は幾分さや型で重なり合う。花は葉が出る前に咲く。花茎は太く長さ10~20cmになるが半ば中にあるため仏炎苞は地際から生えているように見える。仏炎苞は暗紫から淡紫、まれに白や緑もある。形は半球形で先がとがり、中には長円形で長さ2cm余りの花穂がある。穂には小さな花が多数密集して着く、果実は初夏から盛夏にかけて黄色に熟するが有毒。

自家不和合であり、昆虫などによる花粉の運搬を必要とする。多くの種子は野ネズミによって食害されるが、一部は野ネズミの貯食行為によって運ばれる。種子はそれによって散布され、被食を逃れて発芽することが出来る(参照:北海道の植物図鑑)。

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