私の「本づくり」第8話
「ラテンアメリカ旅は道づれ」「パラグアイから今日は!」「伊豆の下田の歴史びと」「伊豆下田里山を歩く」自費出版する
コロナ禍の巣ごもり時間を活用して昔の駄文を補筆編集し冊子に纏めることを思い立ち、「ラテンアメリカ旅は道づれ」(A5版276p)、「パラグアイから今日は!」(A5版222p)、「伊豆の下田の歴史びと」(A5版234p)、「伊豆下田、里山を歩く」(A5版230p)の4冊を上梓した。
前2冊は南米で暮らした頃の紀行文と随想録である。南米大陸を旅し、アルゼンチンやパラグアイで生活してみると、アンデス文明の歴史や文化、ラテン気質と言われる人びとの生き方、豊かな自然について驚き学ぶことが多かった。また、後の2冊は開国の舞台となった伊豆下田の歴史びと、筆者の故郷である伊豆の里山について幼少時体験をもとに綴ったものである。
これまでの人生では仕事にかまけて子供や孫に「来し方」を語ることもなかったので、この機会に記憶を辿り体験を書き残すことは意味があろうと考えた。
◇本づくりの顛末
編集作業は過去の経験で何とかなったが、問題は製本作業である。先ず家庭用複写機を利用して印刷し、製本はホームセンターで万力・糸鋸・ボンドなどを調達して無線とじ製本に挑戦した。試行錯誤しながら何とか形になったが、裁断機が無かったので、かつて世話になった街の印刷屋にトリミングをお願いした。印刷屋の主人は冊子のページを繰りながら、「これでは、我々の商売も上がったりだ」と出来栄えにお世辞を言ってくれた。
しかし、近しい方に贈るにしても数十部は必要なので、新たな項目を加え再編纂し発行することを考えた。印刷製本は部数を考慮して外注することにし、かつて取引があった地元及び札幌の業者を含め数社で見積もりを取ったところ、最近増加しているネット印刷の見積額が従来業者の30-70%だったので、その中からコストパフォーマンスの高そうな東京と大阪の2社を選んだ。
ネット印刷では、紙質の選定など製本体裁を選択し、部数を設定すると、見積額と納品期日が即表示される。ワード作成の編集原稿をPDF変換し圧縮フォルダーで送付する。校正をメールでやり取りし、1~2週間後には宅急便で納品された。ネット上のオンデマンド印刷に不安はあったが、活字の大きさや写真サイズ、写真の濃淡等を工夫すればオフセット印刷に遜色ない出来栄えになることが分かった。予想以上の低コスト・迅速納品である。便利になったものだ。
◇完成後の思い
「旅は道づれ」「パラグアイから」は相棒との南米大陸弥次喜多道中記、異文化圏での暮らしの記録。アンデス文明遺産を訪れインデイオの悲劇を想い、パタゴニアの氷河を見て自然破壊を憂い、イースター島やマヤ遺跡では人類の行く先を考えた。日系移住者の苦難の歴史と誠実さに感銘し、経済的貧困の中でも長閑に暮らす現地の人々と語り「幸せとは何か」を考えた。日系人が持ち込んだ裏庭のダイズが今や国家経済を支え、世界の市況を左右するまでになったことに驚いた。
「歴史びと」「里山を歩く」では、伊豆下田生まれの歴史びとの生き様を辿った。共通する伊豆人気質(人がよく無心な心、一途で頑固なまでの生き方・・・)に、己を重ねて妙に納得もした。歴史遺産を訪ね、古道を歩いた。自然あふれる里山、温暖な気候、いで湯に漬かり昔を偲んだ。ある時は深根城・鵜島城の戦いに思いを馳せ、ある時は日露交渉中の大津波顛末から友好とは何かを考えた。カワヅサクラを育てた人々を訪ね、コシヒカリの起源種「身上早生」で醸した地酒を味わった。
今回発刊した4冊は些か雑然とした内容だが、ふるさと応援団を自称する著者の意図は感じて頂けるに違いない。人は誰もが暮らした場所に愛着を感じ、それぞれの地域が故郷となる。年老いてから故郷に還元出来るものはごく僅かだが、この冊子はその一つ。本書をご覧になり、ラテンアメリカ及び伊豆下田の歴史や自然に興味を抱き、旅に出て見ようかと思って頂けたら有難い。
遊び心で創った冊子であるが、私の中では「コロナ禍に記憶を紡ぐ。せめて八十路の一里塚・・・」となった。早速、子供や孫へ贈ろう。
◇2年に及ぶコロナ禍、千差万別多様な過ごし方があろうが「本づくり」もその一つ。ある作家が「若者に対する年配者のアドバンテージは圧倒的な記憶の集積にある。高齢者は積極的に昔話をしたほうがいい」と述べていたが、小生も断捨離・終活は成り行きに任せて先送り、脳活性化のために記憶を紡ぐ作業を続けようと思う。
なお、これらの本は「恵庭市立図書館」で閲覧できる。
「ラテンアメリカ旅は道づれ」目次
はじめに
第1章 アルゼンチンの旅
1 ブエノス・アイレスに遊ぶ
2 大豆の都と呼ばれる町がある
3 コルドバの地名で思い出すのは?
4 マル・デル・プラタ、アルゼンチン最大のビーチ・リゾート
5 メンドーサのワインとアコンカグア展望
6 北西部のサルタとフフイ、「雲の列車」とウマワカ渓谷
7 世界最大イグアスの滝、「何だ、こりゃあ!」
8 南米のスイス「バリローチエ」
9 世界最南端の町ウスアイア、哀愁を感じる町だ
10 世界の果て国立公園、テイエラ・デル・フエゴ
11 最果ての海峡「ビーグル水道」、鉛色のうねりにオタリアが群れる
12 ペリト・モレノ氷河クルーズとウプサラ氷河探訪
13 アルゼンチン心の詩集「ガウチョ、マルテイン・フィエロ」
14 南米大陸へ最初に渡った日本人、フランシスコ・ハポン
15 アルゼンチンの大牧場主「伊藤清蔵博士」、札幌農学校から世界へ
16 パンパ平原を札幌生まれのガウチョが駈ける「宇野悟郎氏」
第2章 ウルグアイの旅
1 ウルグアイ東方共和国モンテビデオ
2 世界遺産の町コロニア・デル・サクラメント
第3章 パラグアイの旅
1 イエズス会の遺跡トリニダを訪れる
2 信仰の町カアクペ、パラグアイ巡礼の道
3 ボケロンのユートピア、原住民はどう思う?
4 ピラールの牛は腹まで水に浸かって草を食む
5 パラグアイの豆乳飲料、フルテイカ社を訪ねる
6 パラグアイ最初の日系移住地「ラ・コルメナ」
7 戦後初の計画移民の地「チャベス」
8 パラグアイ大豆発祥の地「ラパス」
9 周到に進められた直轄移住地「ピラポ」
10 最後の直轄日系移住地「イグアス」
11 ジョンソン耕地に抱いたコーヒー生産の夢は大豆で実ったか?「アマンバイ」
12 日本人は山へ帰れ・・・
第4章 チリの旅
1 パイネ国立公園を行く
2 君はアンヘルモでクラントを食べたか?
3 サンチアゴに雨が降る
4 チリのアカプルコと呼ばれる「ビーニャ・デル・マル」
5 旧都、天国のような谷「バルパライソ」
6 南米チリに渡った最初の日本人
7 英雄詩人パブロ・ネルーダと革命家チエ・ゲバラ
8 年間降水量が1.1ミリ、チリ北部のアリカ
9 世界最高所のチュンガラ湖に水鳥が遊ぶ
10 イースター島の旅、モアイは歩いたのか? 悲しみの顔は何を語る
第5章 ペルー、ボリビアの旅
1 リマ、黄金の都はどうなった?
2 ナスカの地上絵、何のために描いたのか?
3 クスコ、インカ帝国の都は黄金の輝き
4 マチュ・ピチュ、インカの失われた天空都市、ミステリアスな想いに浸る
5 チチカカ湖、トトラの浮島で子供らは歌う
6 チチカカ湖再訪、高山病で急遽サンタクルスへ、友との邂逅
第6章 メキシコの旅
1 アステカ神殿の上に立つ大聖堂、メヒコの旅の始まり
2 君は「国立人類学博物館」を訪れたか?
3 テオテイワカン遺跡のピラミッド
4 陶器「タラベラ焼き」とグルメの町「プエブラ」
5 チョルーラに昔の栄華を偲ぶ
6 コロニア様式の町「タスコ」に遊ぶ
7 殉教壁画に「太閤さま・・・」、クエルナバカ大聖堂
8 カンクン、一度は訪れたいカリブ海のリゾート
9 チチエン・イッツア、森に埋もれるマヤ遺跡
第7章 スペインの旅(十七世紀中南米で覇権を握った国)
1 ガウデイとサグラダ・ファミリア聖堂
2 カタルーニャの芸術家たち
3 落日に染まるアルハンブラ宮殿
4 石柱の森のメスキータ、宗教に共存はあるか?
5 ラ・マンチャの風車
6 スペインの農業
7 プラド美術館でみる夢
8 ソフィア王妃芸術センターの「ゲルニカ」
9 マドリード王宮、豪華絢爛スペイン王室の歴史
10 ラス・カサスに学ぶ、「ビラコチャと見間違えた」では済まされない
第8章 アメリカ大陸の歴史
1 アメリカ大陸、移民の歴史
2 新大陸における農耕文化の起源と新大陸原産の作物たち
3 文明を変えた作物「大豆」、新たな開拓者
あとがき
「パラグアイから今日は!」目次
はじめに
第1章 南米からの便り
(1)パラグアイからの便り
1 パラグアイ国から今日は! 初年目、友への便り(2000年)
2 遠い国パラグアイから親愛なる皆様へ(2006年)
3 セマナ・サンタのパラグアイにて(2006年)
4 近況報告申し上げます(2006年)
5 親愛なる皆様、いかがお過ごしですか(2007年)
6 元旦にフェリシダーデスと電話あり
(2)アルゼンチンからの便り
1 アルゼンチン雑感(1979年)
2 アルゼンチンの人々(1980年)
3 研修員のことなど(1984年)
4 パンパ平原に君の姿は良く似合う(1984年)
第2章 南米の暮らし
1 ゴミの話
2 釣銭は飴玉ですか、アスピリンですか?
3 新札はどこへ消えた
4 セニョリータと呼ばれたくない
5 ロマーダで車のスピードを落とせ
6 運が良かった? 南米の車社会は事故と紙一重
7 異国での講演会
8 南米人の気質
9 グアラニー語、言葉は民族のアイデンテイテイー
10 南米で暮らした家
第3章 南米の食事
1 アルゼンチンの主食はアサード
2 ブエノス・アイレスの焼き肉レストラン「ラ・エスタンシア」
3 世界を養う「マンジョカ」
4 家庭の食事
5 飲むサラダ「マテ茶」の作法
6 エンパナーダとチパ
7 南米でエントラーダ(前菜)に何を選ぶ?
8 南米のデザート、「アロス・コン・レチエ」とは何だ?
9 海外では食中毒に気をつけろ
10 パパイア、甘さが強く独特の癖がある
11 南米の香り懐かしマラクジャ(パッションフルーツ、時計草)
12 マンゴーを食べ過ぎかぶれた話
13 ジャボチカバ、木の幹に白い花が咲きブドウが実る?
14 タマリンド、果肉を食べる豆
15 南米で和食を御馳走する
第4章 南米の動植物
1 遠目には満開の桜、ラパチョの花に望郷の想いが募る
2 聖なる木、「パロ・サント」
3 ケブラッチョ、斧も折れる硬さ、皮の「なめし」に使われた
4 酔っぱらいの樹パロ・ボラーチョ
5 バルサ、中南米原産の世界で最も軽い木
6 ハカランダ(ジャカランダ)
7 パラグアイの森林事情と木材加工品
8 アルゼンチンの国花「セイボ」
9 大豆試験圃場でのできごと
10 南米の蟻と蟻塚、大豆畑でも蟻にはご用心
11 ツリスドリの群がるのをみた
12 南米の鳥と聞いて君は何を思い出す?
13 アルゼンチンの国鳥「オルネーロ」(カマドドリ)
第5章 南米の民芸品
1 アオポイ、パラグアイを象徴する繊細な刺繍の綿織物
2 ニャンドウテイ、「蜘蛛の巣」と呼ばれるパラグアイ刺繍
3 銀細工のボールペン
4 サボテンの民芸品、アルゼンチンのフフイにて
5 パラグアイ神話の主人公
6 インカローズとカルピンチョ
7 チリのお土産
8 アルパとボトル・ダンス
9 パラグアイの画家「ルーベン・シコラ」の水彩画
あとがき
「伊豆の下田の歴史びと」目次
はじめに
目 次
第1章 開国の舞台「下田」
1 風待ち船で賑わった下田港
2 伊豆下田の「打ちこわし騒動」
3 入会地をめぐる紛争「茅場争い」
4 黒船艦隊が下田から持ち帰った植物
5 黒船艦隊が箱館から持ち帰った植物
6 ペリー艦隊が下田で手に入れた二つの「大豆」
7 ワシントン記念塔の「伊豆石」
8 ペリー艦隊来航記念碑と日米友好の灯
9 ペリー提督来航記念碑、函館の「ペリー提督像」を訪ねる
10 ハリスと牛乳のはなし「開国の舞台、玉泉寺」
11 ハリス江戸出府の道程、「ヒュースケン日本日記」から
12 村山滝蔵と西山助蔵、ハリスに仕えた二少年
13 タウンゼンド・ハリス、教育と外交にかけた生涯
14 日露交渉の真っ最中、下田を襲った「安政の大津波」
15 プチャーチン、日本を愛したロシア人がいた
16 橘 耕斎、幕末の伊豆戸田港からロシアに密出国した男
17 「宝島」の作者ステイーヴンソンと「吉田松陰伝」
第2章 伊豆下田の歴史人
1 「伊豆の長八」と呼ばれた男
2 新選組隊士となった加納通広(鷲尾)
3 中根東里、伊豆下田生まれの儒者、清貧に生きた天才詩文家
4 中根東里と伊豆人気質
5 石井縄斎(中村縄斎)、伊豆下田生まれの儒者
6 篠田雲鳳、開拓使仮学校(札幌農学校前身)女学校で教えた女流詩人
7 下岡蓮杖、写真術の開祖
8 写真師鈴木真一と晩成社出立時の記念写真
9 横浜馬車道にある写真師下岡蓮杖顕彰碑
10 依田勉三、奥伊豆の里から何故「北海道十勝開拓」だったのか?
11 三余塾、奥伊豆生まれの碩学、土屋宗三郎(三余)
12 渡瀬寅次郎、依田勉三の十勝入植に異を唱えた同郷の官吏
13 井上壽著、加藤公夫編「依田勉三と晩成社」に思う
14 晩成社の開拓は成功したのか? 農事試作場としての視点
15 晩成社の山本金蔵と松平毅太郎、札幌農学校農芸伝習科に学ぶ
16 依田勉三翁之像(帯広市中島公園)
17 依田勉三の実験場、晩成社「当縁牧場跡地」
18 晩成社、鈴木銃太郎・渡邊 勝・高橋利八のシブサラ入植
19 新渡戸稲造は何故「お吉地蔵」を建立したのだろうか
20 韮山反射炉再訪
21 韮山代官、江川太郎左衛門英龍(坦庵)
22 今村伝四郎藤原正長、「愛の正長」と校歌に謳われる
23 下田市名誉市民、中村岳陵と大久保婦久子
24 下田生まれの性格女優、浦辺粂子
付表1 伊豆下田歴史年表/付表2 黒船艦隊が下田から持ち帰った植物標本/付表3 黒船艦隊が箱館から持ち帰った植物標本/付表4 伊豆下田歴史年表(開国の時代)/付表5 ハリス江戸出府の道程/付表6 ハリスに仕えた二少年/付表7 プチャーチン関連年表/付表8 下岡蓮杖関連年表/付表9 鈴木真一関連年表/付表10韮山反射炉年表/付表11江川太郎左衛門年表/付表12中村岳陵年譜/付表13大久保婦久子年譜/付表14浦辺粂子年譜
あとがき
「伊豆下田、里山を歩く」目次
はじめに
目 次
第1章 里山を歩く
1 カワヅザクラ(河津桜)を育てた人々
2 南伊豆の「早咲きサクラ」を知っていますか?
3 熱海のハカランダ
4 コシヒカリ、ゆめぴりか、起源を辿れば南伊豆
5 上原近代美術館、伊豆の田舎の陽だまり美術館
6 須原小学校、昭和二十七年度卒業生が六十年ぶりに通学路を歩く
7 坂戸から谷津へ、河津三郎の里を歩く
8 坂戸「子之神社」でパワーは得られるか?
9 屋号、奥伊豆では今も使われる
10 須原小学校(下田市)、「長松舎」から始まる九十九年の歴史
11 古松山「三玄寺」、開創は竜王祖泉禅師
12 竹一筋に、奥伊豆の友
13 西伊豆の小さな漁村戸田港と「造船郷土資料博物館」
14 下田富士と民話伝説
15 寝姿山と武山
16 下田の城(深根城と下田城)
17 稲梓郷稲梓里、伊豆下田の地名考
18 伊豆の土屋郷(須原村)と土屋氏
19 夏のウグイス、裏山のイノシシ一家
20 サルが渋柿をかじり、シカが遊ぶやわが家の庭に
21 北海道で咲いた伊豆の花(マンリョウとシャガ)
22 やはり野に置け蓮華草、冬の水田を利用した花畑
23 彼岸花(曼殊沙華)咲く
第2章 記憶の断章
1一枚の写真
2 囲炉裏端は「学び」の場
3 異邦人のような来訪者たち
4 百姓の時代
5 イラクサ、カラムシを食い尽くした毛虫
6 山で摘んだ珠玉の味が忘れられない
7 メジロと「鳥もち」
8 ヤブツバキと椿油
9 竹、今昔物語
10 稲梓中学校昭和三十年度卒業生
11 下田北高第十一回生
12 下田北高の校訓を思い出す
13 寂空常然の生涯
14 禮堂文義が保存していた「感謝状」「嘱託状」
15 四分利公債證書と支那事変行賞賜金国庫債券
16 伯父「朝義」のこと
17 啓山石堂が生きた時代
18牛飼い
19 祝日と国旗掲揚
20 石堂が植えた「ヒイラギ」と「イヌマキ」
資料1農業の時代/付表1須原小学校九十九年の沿革/付表2古松山三玄寺/付表3村落の形成と変遷(稲梓郷稲梓里)/資料2寂空常然の系図/資料3 明治・大正・昭和時代の記録簿等/
あとがき