豆の育種のマメな話

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石堂が植えた「ヒイラギ」と「イヌマキ」

2020-12-09 13:45:42 | 伊豆だより<里山を歩く>

「石堂」は須原(椎ヶ下)の住宅が完成すると、玄関先に「ヒイラギ(柊)」を、裏口に「ナンテン」を、庭の境界には「イヌマキ」を植えた。「ヒイラギは邪鬼の侵入を防ぐ」「イヌマキは防火・防風・防音の機能を有する」「ナンテンは火災除け」と古くから信じられているので、その謂れに倣ったのだろう。ヒイラギについては「節分の夜、ヒイラギ・大豆・鰯の頭を入口に飾ると悪鬼を払う」という風習(鬼の目突伝説)があることを多くの方が知っている。

子供の頃の記憶によれば、生家の山(須原坂戸)の水源地近くに一本のヒイラギがあった。葉の形状が珍しく、縁にある鋸歯を親指と人差し指で支え、息を吹きかけ葉を回転させて遊んだ。また、生家の水場近くにはイヌマキの大樹があり、秋には胚珠基部の赤い実が沢山落ちた。赤い部分は甘く口に含むこともあったが、祖父母から「食べてはだめ」と言われた。松脂のような臭いとねっとりした触感が蘇るが、毒があるから口にするのを諫めた言葉だったろうか。後になって、種子に毒成分を含むことを知った。イヌマキの落ちた実は腐敗すると臭いを放つので、かき集めて捨てるのが大変だった。「石堂」が庭に植えたヒイラギ、イヌマキはこれらの樹の実生苗だったのだろうか。

平成30年(2018)11月下旬の或る日、「石堂」が植えたヒイラギに可憐な白い花が咲いているのを見つけ、イヌマキの実と併せ写真に収めた。

◇ヒイラギ

ヒイラギ(柊・柊木、学名: Osmanthus heterophyllus)は、モクセイ科モクセイ属の常緑小高木、樹高は5~8m。日本の関東以西、台湾にかけて自生する。和名は、葉縁の刺に触るとヒリヒリと痛むことから、「ヒリヒリと痛む」を表す古語「疼(ひひら)く・疼(ひいら)ぐ」から名付けられたと言われる。冬の訪れとともに白い花を咲かせることから、「木」偏に「冬」を組み合わせた「柊」の文字を当てたとされる。

葉は対生で堅くて光沢があり、楕円形から卵状長楕円形。葉縁には先が鋭い刺となった鋭鋸歯がある(老樹になると刺は次第に少なくなり、縁は丸くなる)。11~12月頃、葉の付け根に小さな白い花を密生して咲かせる。花冠は深く四つに裂け反り返り、花径は5mm位。キンモクセイに似た芳香がある。柱頭と2本の雄蕊が観察される。

庭木、盆栽、生け垣(棘があるので防犯になる)に利用されることが多い。幹は堅く、しなやかであることから強靱な耐久性を有し、玄翁(大金槌)の柄に使われたそうだ。緻密で変形しない性質を生かし算盤玉、櫛、将棋の駒、印鑑などの材としても利用されると言う。

「柊の花」は初冬の季語で俳句の題材にされることが多い。其角は「ふれみぞれ柊の花の七日市」と詠んだ。また、「宵闇の手探りの中でこそ 仄かに匂う柊の花 見せかけの棘にそっと隠した その麗しくゆかしき花・・・」と歌手さだまさしも歌っている。花言葉として、葉の形状から「用心深さ」「保護」「先見の明(年を経ると棘が無くなり丸くなる)」、幹の特性から「剛直」、花の可憐さと香りから「歓迎」が与えられた。

◇イヌマキ

イヌマキ(犬槇、学名:Podocarpus macrophyllus)は日本の関東以西、台湾にかけて自生する。ホソバ(細葉)、ヒトツバ(一つ葉)と呼ぶ地方もある。マキ科マキ属の常緑針葉高木で、樹高が20mにもなる。樹皮が白っぽい褐色で、細かく薄く縦長に剥がれる。茎は真っ直ぐに伸び、葉は細長く扁平で主脈がはっきりしている。

イヌマキの名前は、古く「杉」のことを「マキ」と呼んでいたので是に準ずる材の意味で、或いはコウヤマキを本槇と呼ぶことに対して命名されたとする説があるが、材質はそれほど劣るものではない。また、イヌマキより小型で葉の数が多い園芸変種ラカンマキがある。

雌花は柄の小さな包葉先端部の胚珠を含む部分が膨らんで種子となり、その基部も丸く膨らむ。基部の膨らみは花托(花床)と言われ、熟すると次第に赤くなり甘い(偽果)。この赤い偽果を鳥が食べ、彼方此方に種子を落とし繁殖するのだと言う。種子は緑色になって白い粉を吹くが毒成分を含み、食べると下痢や嘔吐などを引き起こす(成分はジテルペン類のイヌマキラクトンと、ナギラクトン)。

イヌマキは常緑で葉色が美しいため、庭木・生垣として植栽されることが多い。水に強いことから、風呂桶などの材としても用いられたそうだ。首里城の構造材にはかつてイヌマキが使われていた。これはイヌマキがシロアリに強いためだと言う。

千葉県の「県の木」。家を守るように成長することから「慈愛」、季節を問わず葉が茂ることから「色褪せぬ恋」の花言葉が与えられた。

石堂がこれら庭木を植えてから65年が経過した。伊豆の里でどれ程生長したか次回に幹の太さを図ってみよう。

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