アリカ Arica
アリカAricaは,チリ最北端の乾燥地帯,ペルーとの国境近くにある。スペインの植民地時代にはボリビアで産出された銀がアンデスを越え,この港町からヨーロッパに輸出されたという。今もペルー,ボリビアと往来が盛んで,海外との貿易も行われる小さな港町であるが(人口18万には見えない),年間を通じて気温が18~23度で過ごしやすく「常春の町」と呼ばれる。
日本人には馴染みの薄い町であるが,近年リゾート地としての開発が進み,南米各国から観光客が訪れるようになった。リオやブエノスアイレス,イグアスやパタゴニアも飽きたし,今度の休暇はどこに行こうかと悩んでいたら,此処は穴場かもしれない。静かに過ごせて,見所も多い。市内に小さなホテルはあるが,少し離れた海辺のホテル・アリカ&リゾートやレストラン・マラクジャが良かった。
町の中心は海岸に近いコロン広場,フランスのエッフェルが設計したサン・マルコス教会と旧税関の建物が,ヨーロッパの香りを漂わせる。繁華街は5月21日通り,歩行者天国になっている。広場の南側にはアリカ要塞の岩山がそそり立つ。アリカ港,魚市場を訪れるとアザラシが泳ぎ,ペリカンの群れが寄ってくる。市内は半日もあれば回りきれる。
1.アサパ渓谷へ
サンホセ川に沿って東へ進む。アンデスの雪解け水を利用した灌漑栽培の野菜や果物が谷の底に広がる。アサパ渓谷の裸の山肌には,岩を並べて描いた地上絵が残っている。アサパ村で有名なのは考古学博物館。世界最古といわれる,1万年前のミイラが状態よく保存されている。仮面をかぶったミイラ。入り口には,18世紀に使われたオリーブ搾油機展示されている。日本人の名前も。
2.ラウカ国立公園ツアー
早朝にアリカを出発。山肌にリャマの地上絵を眺めながら,渓谷の村ポコンチリで古い教会などを見学。荒涼とした谷を75kmほど進むと,燭台の形をしたサボテンが目につくようになる。カンデブロと呼ばれる。インカ以前に栄えた遺跡を過ぎさらに進むと,雪を抱く標高5,810mのネバド・デ・プトウレ山が眺められる。
海抜が高くなるにつれ,荒涼とした岩肌の地帯は緑の地帯に変化する。山肌に当たる風が雪に変わるためらしい。
山岳風景の中にビクーニャの群れ,岩の陰に珍しい兎ビスカチャが観察される。さらに,薄い空気の中を進むと,雪を抱いた山を映す真っ青な湖面,透明な水,水鳥の群れが泳ぐチュンガラ湖が現れる。標高4,517m。景色は正に清涼として壮観。訪れる価値有り。
酸欠の旅行者にガイドがアルコールを含ませた脱脂綿を配る。気付け薬。血の気が引いた子供には酸素吸入。とにかく,ゆっくり歩くしかない。休憩のレストランではコカ茶が出る。現地人はコカの葉を噛む。
ツアーで同行した少女たちに「どこから来たの? 日本人なの? アニータを知っているか?」と声をかけられる。一瞬「?」。ああそうか,此処はチリなのだ。