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豆の育種のマメな話

◇北海道と南米大陸に夢を描いた育種家の落穂ひろい「豆の話」
◇伊豆だより ◇恵庭散歩 ◇さすらい考
 

花梨を収穫する、恵庭の花-25

2020-11-08 15:38:24 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

庭に一本の「花梨」がある。今年は台風や暴風雨の被害が少なかったので多くの実が残った。11月初旬の或る日、雪が降る前にと脚立を持ち出し収穫した。写真のように色づいた堅い実が100個以上、玄関に置いたら芳しい香りが充満した。

 

◇花梨

カリン(花梨、榠樝、学名: Pseudocydonia sinensis、英名Chinese quince)は、バラ科カリン属の落葉高木。4~ 5月頃、新葉とともに5枚の花弁からなる白や淡紅色の花を咲かせる(わが家の花梨は淡紅色)。葉は互生し楕円状卵形(長さ3~ 8cm)、先は尖り基部は円く葉縁に細鋸歯を有し光沢がある。秋には紅葉する。

果実は洋梨型(楕円形か卵形)で、未熟なうちは褐色の綿毛が密生するが、次第に肥大し成熟すると黄色を帯び表面がつるりとした状態になる。収穫時期は秋(10 - 11月)。トリテルペン化合物による芳しい香りを放ち、中国では「香木瓜」とも呼ばれるそうだ。

カリン属に最も近い近縁種にマルメロ属(Cydonia)があり、マルメロ(Cydonia oblonga)は花梨と混同されやすい(一部の地域でマルメロのことをカリンまたはセイヨウカリンと呼ぶことがある)。しかしよく観察すれば、マルメロの果実は球形で果皮にビロード状の毛がある。マルメロは葉の縁に細鋸歯がないことでも区別できる。北斗市(北海道)の街路樹にマルメロが植えられていて、同市の「せせらぎ温泉」にマルメロの実が浮かんでいたのを思い出した。

花梨の原産地は中国東部で広く分布する。一方、マルメロはイラン、トルキスタン原産と言われる。伝来時期ははっきりしないが、薬用および鑑賞果樹として導入されたのではないだろうか。耐寒性があり北海道でも育つ。

 

◇利用

果肉は石細胞が多いため硬くて生食には適さない。カリン酒、砂糖漬け、ハチミツ漬け、ジャム等に加工される。リキュールは数年前にも作ったことがあるが、暗所に保管したまま試飲すること無く何年か経ってしまった。

カリンの果実(生100g、水分80.7%)に含まれる成分は、炭水化物18.3%、食物繊維8.9%、タンパク質0.4%、脂質0.1%、灰分0.5%、カリウム270mg、リン17mg、βカロチン38μg、ビタミンC25mgなどである(日本食品標準成分表)。含有されるリンゴ酸やクエン酸が疲労回復に役立つと言われている。また、生薬、民間療法として咳や痰など喉の炎症に効くとされるが、これは未熟果や種子に含まれるアミグダリン(青酸配糖体の一種)の効果と考えられている。ただし、アミグダリンは加水分解により猛毒のシアン化水素を発生するため(青梅と同様)、過剰摂取は健康障害の危険性があると国立健康・栄養研究所は注意喚起している。

カリンの材は比較的固い事から、家具などの材木としても利用されると言うが、むしろ家庭果樹(庭木)として最適である。花・果実が楽しめ、新緑・紅葉・樹皮も美しい。昔から「金を借りない(語呂合わせ)」の縁起を担ぎ、庭に花梨を植えたものだと言う。

そう言えば、ミツバチの分蜂が我が家の花梨木に宿したのは8年前(2012年)の事だった。

  

追記2023.11.15:わが家の花梨は毎年実を着ける。今年も102個収穫した。


葉が枯れてから花が咲く、庭の毒草「コルチカム(イヌサフラン)」、恵庭の花-24

2018-09-23 18:18:32 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

コルチカム「イヌサフラン」

北海道に秋の気配が漂う頃、9月下旬になると「コルチカム」がピンクの花を開く。葉が出ていないのに、地面から顔を出した土筆のようなピンクの蕾は花茎を伸ばし華やかな花弁を開く。花弁の色は遠目にもひときわ目立つ。コルチカムは、春先に根生した光沢ある長い葉が初夏には枯れてしまい、葉が無くなってから花を開く習性があるのだ。

園芸用に球根が販売されているので、ガーデニングのまち「恵み野」でも目にすることが多くなった。拙宅では10年前に植えた球根が絶えることなく、今もなお季節になるとピンクの花を開く。

 

コルチカムは「イヌサフラン」(autumn crocus, Colchicum autumnaleL.)を園芸用に品種改良したもので、ユリ科コルチカム属の球根植物、60種ほど存在すると言われている。球根は35cmの卵型、秋に15cmほどの花茎を伸ばし、サフランに似た花を付ける。翌春になると2030cmほどの万年青(オモト)やギョウジャニンニクに似た葉を根生する。

イヌサフランとサフランは名前が似ているだけでなく、球根も花の形もよく似ているが全く別の種類。サフラン(saffron crocus, Crocus sativusL.)がアヤメ科クロッカス属なのに対し、イヌサフランはユリ科コルチカム属(イヌサフラン属)である。花の形は似ているが、サフランの花の雄蕊が3本で大きく垂れさがっているのに対し、イヌサフランは6本の雄蕊があるので区別できる。原産地はヨーロッパ中南部から北アフリカと言われる。

サフランは料理の色付けや風味付けのための香辛料として利用されるが、イヌサフランは全草(球根、茎、葉、花など)に有毒成分(コルヒチン)を含んでいるので誤食しないよう注意が必要。

特に、春先の山菜の時期にギョウジャニンニク(アイヌネギ)と間違えて食べ、嘔吐、腹痛、下痢、痙攣、呼吸困難、死に至る例が多い(2007新潟、2014静岡、2015山形、2017北海道、2018北海道など)。その他にも、鱗茎をタマネギやミョウガと間違えた例、球根をイモと間違え誤食した例、乾燥した花柱をスパイスとして誤用した中毒例なども報告されている。

北海道「庭や野山の毒草ハンドブック」にも、食中毒を起こしやすい植物として注意喚起されている。

下の写真はイヌサフラン(北海道「庭や野山の毒草ハンドブック」から引用)。イヌサフランには球根がある。


「ムスカリ」&春の香運ぶ「ヒアシンス」、恵庭の花-23

2018-05-01 09:42:27 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

◇ムスカリ

スイセンの開花を追いかけるように、ムスカリが青紫の花を開く。北海道では5月の連休の頃から最盛期。英名が Grape hyacinth(ぶどうヒアシンス)と言うそうだが、花の着き方は葡萄の房のようにみえる。花弁が余り開かないので少花が丸みを帯び、房のように密生していることから連想したのだろう。花言葉は「失望、失意」。日本では紫色は「高貴」なイメージだが、ヨーロッパでは「悲しみ」のイメージなのだろうか。

学名はmuscari neglectum、名前の由来はギリシア語のmoschos(ムスク、じゃ香)で、野生種にじゃ香の香りがあったことによると言われるが、栽培種の香りは強くない。原産地は地中海沿岸地方から南西アジア。青紫の他に白や黄色、ピンクなどの園芸種が販売されている。キジカクシ科、ツルボ亜科、ムスカリ属、ムスカリ種に分類される。

耐寒性が強く育てやすい。拙宅では数年間も植えっぱなしにしているが群生するほど増殖している。華やかではないが早春を彩る花のひとつ。ボーダークロップとしても重宝する存在だ。

 

◇ヒアシンス(ヒヤシンス)

「春来ぬと風憂かりけりヒヤシンス」秋櫻子

「敷く雪の中に春置くヒヤシンス」秋櫻子

拙宅の庭ではムスカリと同じころ咲き始める。植物学上の分類ではムスカリと同じ科(キジカクシ科、ツルボ亜科)で、属が異なる(ヒアシンス属、ヒアシンス種)。ムスカリに比べると花は爽やかで、スイセンやチュウリップと並び花壇を彩る春の花。紫、赤、黄、白と多様な品種が出回っている。水栽培や鉢植えで楽しむ事も多い。

原産地は地中海東部沿岸からイラン付近、日本へは江戸末期に渡来したと言われ、明治時代に「風信子、飛信子」の文字があてられた。「春の香」が風に乗って漂ってくる様子から名付けられたのだろう。また、香りが強いことから「夜香蘭」と呼ぶこともあるらしい。

ヒアシンスの香りは「グリーンノート(自然の香りの総称)」と呼ばれるように、青葉の香りを思わせる爽やかな香りが特徴。フェニルアセトアルデヒド(芳香成分)が含まれているためである。

英名は Common hyacinth、学名はHyacinthus orientalis. ギリシア神話の美青年ヒュアキントスに由来する(ヒュアキントスの額から流れた大量の地から生まれた)と言う。花言葉は「悲しみを超えた愛」。

野生種のオリエンタリス種から、オランダで品種改良が進んだダッチ系とフランスで改良されたローマン系がある。現在流通しているのは殆どがダッチ系で、一本の茎に多数の花をつけるタイプ。一方、ローマン系は数本の花茎を出し球根は分球しやすいと言う。

多年生で露地栽培も可能だが、植えっぱなしにしておいた拙宅のヒアシンス(ダッチ系)は次第に数が減って数個体が残るのみ。小振りになったが、今年も健気に花をつけている。

  


春を告げる「ツクシ(ツクシンボウ)」、恵庭の花-22

2018-04-25 11:23:32 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

「古草に うす日たゆたふ つくしかな」龍之介

「前垂れの 赤きに包む 土筆かな」漱石

「妹よ 来よここの土筆は 摘まで置く」虚子

植物形態上は胞子茎と呼ばれ、花ではないが、ツクシ(ツクシンボウ)も春を告げる風物詩の一つである。春の季語であり、「ツクシ」を詠んだ句は数知れない。また、絵手紙でも格好の素材となっている。

拙宅の隣は永く空き地になっているが、今年も4月下旬に「土筆が原」と化した。何百本という土筆が朝陽に背伸びしている。夕日に映えている。この空き地の所有者は毎年2回ほど除草剤を散布しに来るが、ツクシはその除草剤にも耐えて春になると元気な顔を見せる。

 

ツクシはスギナの胞子茎である。筆状で淡褐色、高さは10-30cm、円筒状で先に長楕円状の胞子穂をつける。節には袴(はかま)と呼ぶ葉が茎を取り巻いている。胞子が成熟するとツクシは枯れ、濃緑色の栄養茎が伸びてくる。この栄養茎はスギナの名前で多くの方に認知されている。

栄養茎は多数の枝を輪生し、30-60cmになる。茎は円柱状で中空、縦に数本の溝があり、質感は堅い。トクサに比べ茎は細いが、茎の材質は似ている。小枝は四角柱状で節に鞘状の葉をつける。枝と葉の形状が杉(スギ)に似ていることからスギナと呼ばれるようになったと言う。

スギナ(英名:Field horsetail、学名Equisetum arvense L.)は、トクサ科、トクサ属、スギナ種の多年生植物。地中に地下茎を伸ばし、節々から芽を出して繁殖するので畑地では極めて厄介な雑草として知られる。畑地、樹園地、土手、空き地などに生え、全国に分布する。

 

ツクシは昔から春の山菜として食べる習慣があった。近頃は野原で土筆を摘む姿を見かけなくなったが、インターネットには多数のレシピが紹介されている。袴を取って灰汁を抜き、お浸し、卵とじ、天ぷら、油いため、土筆ご飯などで食べる。また、スギナを乾燥したもの(スギナ茶)を伝承生薬として利用されている。

なお、ツクシはワラビ、ゼンマイなどの山草と同様にチアミナーゼを含んでいることも指摘されている。チアミナーゼはチアミン(ビタミンB1)を分解する酵素で、多量摂取を続けるとビタミンB1欠乏症を起こす恐れがあるとか。春の山菜として味わう分には気にすることもあるまい。


スイセン(水仙、Narcissus L.)、恵庭の花-21

2018-04-22 17:04:46 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

4月下旬から5月初めの頃、恵み野の街を歩いていると、庭や路傍の至る所でスイセンの開花を目にする。北国に春を告げる最もポピュラーな花の一つである。その中でも、拙宅前庭のスイセンは周辺に比べて早咲きで、今年も418日には満開になった。南向きブロック塀の前に植えられているため、久能山の石垣イチゴと同じ理屈で、ブロックから輻射熱の影響を受け開花が早まるのだろう。

スイセンは、ヒガンバナ科スイセン属のひとつで、色や形の異なる種や品種が多く存在する。

原産地はスペイン、ポルトガルなど地中海地方と言われ、園芸用に改良された品種が世界に広まっている。日本にはニホンズイセンが古く中国を経由して渡来し、本州以南の海岸地帯には野生化した群生が見られる。群生して風に揺らぐ姿は爽やかで、越前海岸や伊豆下田の爪木崎では12月下旬から2月初めにかけて観光客を集めている(北海道より3か月以上も早い)。

拙宅の周りには秋植えの球根を何種類も植えている。ユリやチューリップは年とともに消えるが、スイセンは粗放に耐えて毎年花を開く。何故だろうと調べてみると、ユリやチューリップの球根は野ネズミに食害されるが、スイセンの球根(鱗茎)には毒があるためか野ネズミが食害しないことに気づいた。

「庭や野山の毒草ハンドブック2005(北海道)」によると、毒成分はリコリン、有毒部位は全草(特に球根)、中毒症状はおう吐、下痢、けいれんと記されている。脱水症状となり衰弱死に至ることもあると言う。札幌市内では、毎年のようにスイセンの葉とニラを誤って食べ中毒を起こす事故が発生している、と本書では注意喚起している。

ところで、学名のナルシサスはギリシャ神話に由来する。水鏡に映った自分の姿に恋をしてスイセンになってしまった美少年ナルキッソスの伝説である。スイセンは水辺であたかも自分の姿を覗き込むかのように咲くことから、名付けられた。

花言葉は「うぬぼれ」「自己愛」。自己陶酔型の人「ナルシシスト(ナルシスト)」の言葉の謂れでもある。ナルシストに毒があるとは思えないが、スイセンには毒がある。

 


ハナニラ(イフェイオン)、恵庭の花-20

2018-04-16 18:16:35 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

クロッカスを追いかけるように、イフェイオン(和名:ハナニラ)が花を開いた

まだ緑が見えない北国の庭先に、青、ピンク、白の可憐な花が群生しひときわ目につく。例年は420日頃に咲くが、今年(平成30年)は1週間近く早い開花である。数年前に植えた球根をそのまま放置しておいたので、種子が飛び分球で増え、今は絨毯のように群生している。越冬を繰り返したため個体の生育は貧弱だが花の姿は美しい。北国に春を告げる花の一つ。恵み野を歩いていると、多くの家の庭にこの花を見つける。

和名をハナニラ(花韮)、英語では花の形からスプリング・スターフラワーと呼ぶそうだ。学名はIpheion uniflorum、ネギ科、ハナニラ属(イフェイオン属)に分類される。葉や球根を傷つけると、名前のとおりネギやニラのようなにおいがする。

原産地は中南米大陸。メキシコからアルゼンチンにかけて25種以上が自生していると言われるが、園芸種も販売されているので変異はさらに拡大しているのかもしれない。最もよく見られるのはユニフロルム(Ipheion uniflorum)であるが、黄色い花を咲かせる近縁の黄花ハナニラ(Nothoscordum sellowianum)もハナニラと呼ばれている。

アルゼンチンに滞在したいた頃、INTAの庭に咲く可憐な花を見た記憶が蘇る。この花だったのか。

  


クロッカス(春サフラン)、恵庭の花-19

2018-03-31 11:28:37 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

20183月末日、クロッカスが咲いた。「春告花」とは梅の呼称だが、クロッカスがわが家の「春告花」となった。春先に温暖な日が続いたためか、例年より710日早い開花である。

 

クロッカスは、アヤメ科(Iridaceae)、クロッカス属(Crocus)に分類される(学名Crocus L.)。秋植え球根植物で、原産地は地中海からトルコにかけての地域とされる。

晩秋に咲き、花を薬用やスパイスに使うサフラン(Crocus sativus L.)と同属であるが、早春に咲き、観賞用のみに栽培されるクロッカスを春サフラン花サフランなどと呼んでいる。クロッカスの名前は、雄しべの先が糸のように見えることから、「糸」を意味するギリシャ語からきているのだと言う。

球根は直径4cmくらいの球茎で、花はほとんど地上すれすれのところに咲き、黄色・白・薄紫・紅紫色・白に藤色の絞りなどがある。植物学上は、クリサントゥスCrocus chrysanthusを原種とする黄色種と、ヴェルヌスC. vernusを原種とする白・紫系の品種とは別種だが、通常は同一種として扱われている。

寒さに強く、日当たりと水はけの良いところなら、植えっぱなしでもよく生育するほど丈夫と言われるが、今回開花したクロッカスも植えっぱなしのもの。周辺はまだ緑のカケラもないのに、健気に花開いている。

花言葉は、早春に花咲く姿から連想した「信頼」「青春の喜び」、ギリシャ神話に由来する「愛したことを後悔する」など。ギリシャ神話には、「美青年クロッカスは、羊飼いの娘と恋仲だったが、神々の反対にあい、悲嘆のあげく自殺してしまった。クロッカスをあわれに思った花の神フローラは、彼の亡骸をこの花に変えた」との伝説があるそうな。


セイタカアワダチソウ,オオアワダチソウ,恵庭の花-18

2017-09-11 15:22:40 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

セイタカアワダチソウ」の名前を始めて耳にしたのは,昭和40年代の頃だったろうか。線路脇や河原,空き地を黄色に染める花が目につくようになり,その植物群落は年々拡大していた。草丈は12m,茎の先端の複数の穂が黄金に輝き風に揺れている。英語では通称Goldenrodと呼ぶらしいが,まさに「金色の竿」である。植物に詳しい先輩が「帰化植物で,繁殖力が強く群生するため,日本古来のススキも駆逐される」と語っていたことを思い出す。

アワダチソウは,平成の時代になって嘗てのような勢いは薄れているように見えるが,今なお秋にはひときわ目につく野の花である。北海道恵庭ではお盆を過ぎるころから咲きだし,9月~10月にかけて河川敷や荒地,市街地の空き地でよく見かける。

◆セイタカアワダチソウ

セイタカアワダチソウ(背高泡立草,Canadianrod,Solidago canadensisi var.scabra L.)は,キク科アキノキリンソウ属の多年草である。北アメリカ原産で明治末期に切り花用の観賞植物として導入されたという。第二次大戦後に存在が目立つようになったが,ミツバチの資源作物として全国で組織的植栽した経緯があったらしい。

草丈は1~2.5m,茎は先のほうで枝別れし,濃黄色の小さな花を多数つけるのでよく目立つ。花期は秋。茎には短くかたい毛があり,ざらついている。葉は披針型,葉長6~12cm,葉幅1~2cm,先がとがり3本の葉脈が目立つ。

種子と地下茎の双方で増え,さらにアレロパシー(他の植物の成長を抑える物質を放出)を有することから他植物の生育を妨げるなどし,繁殖力が極めて大きい。急激な増殖の要因でもある。北海道ブルーリスト2010でA2に指定され,外来生物法でも要注意外来生物に指定されている。しかし皮肉なことに,セイタカアワダチソウだけの群落になってしまうと,アレロパシーは自身にも影響し生長が抑制されるのだという。これも自然の摂理と言えようか。

虫媒花であることから(風媒花でない),花粉症の原因植物ではないと考えられている。

 

◆オオアワダチソウ

同属の仲間にオオアワダチソウ(大泡立草,Giant goldenrod,Solidago gigantea var.leiophylla L.)がある。キク科アキノキリンソウ属の多年草である。北アメリカ原産の帰化植物。こちらも観賞用として輸入したものが野外へ逸出,帰化したものとされる。北海道ブルーリスト2010でA2に指定され,外来生物法でも要注意外来生物に指定されている。

オオアワダチソウは,セイタカアワダチソウに比べ背が低い(50~150cm),花期が早い(7~9月),葉や茎がざらざらしない(ほとんど無毛)などの特徴がある。オオアワダチソウは,茎が淡い緑色で大群落にはならないとも言われるが,群生しているのをよく見かける。

浅井康弘「緑の侵入者たち,帰化植物のはなし」(朝日新聞社1993)によれば,オオアワダチソウは北海道や本州中部などの寒冷な地域に多いとある。とすれば,従前にセイタカアワダチソウと一括思い込んでいたのは,オオアワダチソウなのか。セイタカアワダチソウの名前が独り歩きしていると言うことなのか。

◆群落に2つのタイプが混在

9月中旬,拙宅近くの空き地で観察してみると,群落の中に2種類が混在している。一つは,既に開花盛期を過ぎ一部の花弁が変色していて,葉は互生,葉色はやや淡く,茎はやや赤みを帯び(生育が進み発色したと思われる)表面はなめらかで,群落の中で優先している。他の一つは,開花が始まったばかりで,葉色は濃く密生,茎の表面はざらざらしていて,個体の生育は旺盛である。

特性からして前者がオオアワダチソウ,後者がセイタカアワダチソウと言うことになるのか。それとも変異種と考えるべきなのか。

ともあれ,アワダチソウは晩夏から秋にかけてひときわ目立つ野の花として定着している。

 

 


白いレースを連想させる「ノラニンジン」,恵庭の花-17

2017-08-11 11:40:46 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

夏の北海道,路傍,空地,荒地などに群生する白い花を見かけるようになった。恵庭市内でも,近年その勢いは急激に拡大しているように思える(全国に分布するが北海道,特に道央・道南に多い)。この植物はヨーロッパ原産の外来植物で,「北海道ブルーリスト2010」ではA3(本道の生態系に影響が報告され,または懸念される外来種)に分類されている。即ち,既存の在来植物と競合し,それらを駆逐する可能性があるということだ。セリ科ニンジン属の二年草,ノラニンジン(野良人参,Wild carrot,Daucus carota)である。

草丈は1~2m(やせ地では30~40cm),茎には毛があり,根から数本直立し上部で分枝し,茎頂に白い5弁の小花(花弁の大きさは均一でなく蝶のように見える)をたくさん付ける。小花の直径は3~5mmと小さいが,全体が集まって丸い形状となり,遠目には直径5~15cmの花に見える。花冠を上から見ると,あたかもレースの冠のように美しい。葉は小さな切れ込みの入った羽状複葉で,互生する。根は人参のようには肥大しない。開花時期は7~8月。蕾は鳥の巣のようだ。

 

◆野良人参の呼称

昭和の初め,牧野富太郎が野生化した人参を発見し野良人参と名付けたとされる。野良生えした人参の意味である。また,ヨーロッパや地中海沿岸地方原産のニンジンが野生化したものとする説がある。しかし,栽培種が散逸して野生化したと考えるより,栽培種の祖先種と考える方が自然だと思える。或いは、他の種子に混入して導入されたのかもしれない。

◆アン女王のレース

ノラニンジン(Wild carrot)の花は,精密なレースのように美しい。その姿からQueen Anne's Lace(アン女王のレース)と呼ばれる。その謂れは,レースづくりに優れたアン女王に因む,アン女王のレースの頭飾りを思い起こさせる,レース作り手の守護聖人(聖アンナ)に由来するなど多説あるようだ。

中でも,レースを編んでいたアン女王が誤って針で指を刺し,レースに一滴の血が落ち,これが花の中心部に見られる暗紫色の小花であるとの逸話は面白い。

 

◆紫の中心小花

アン女王の逸話を知ってから,漁川に群生するノラニンジンの花冠を注意深く観察した。確かに写真のような紫色小花が確認できる。一見しただけでは見落とすような姿であるが,何故中心の小花だけ紫色でなければならないのか。

この謎に関しては,植物学会でも長い間論争があったと聞く。飛んでいる昆虫に対して,花の上には既に別の虫が留まっていると見せかけて仲間を引き寄せ,受粉に役立てているのだという。いわゆる昆虫の模倣花だ。一方,繁殖には何ら貢献していないとの意見もある。

花の写真を撮ろうとカメラのレンズを近づければ,花冠から微かな臭いが漂う。蜜を求めてアリや昆虫が多く集まっているのが観察される。視覚で集まったのか,嗅覚で集まったのか,彼らは答えてくれない。

「自然界に意味のない事象はない」と考えるか,或いは「アン女王の血の一滴」と詩を想うかは,観察者の勝手と言うものだ。

 

◆似た植物

白い小花を密生して付け,葉が人参に似ていることなど,ドクニンジン(毒人参,poison hemlock,Conium macratum,セリ科ドクニンジン属)に似ている。ドクニンジンはヨーロッパ原産の外来種で野生化し,有毒であることが知られている。北海道では春先に,シャク(ヤマニンジン,Anthriscus sylvestris,せり科シャク属)と間違って食べ,中毒する事故がしばしば発生している。


厄介な雑草「ヒメジョオン」,恵庭の花-16

2017-07-26 14:02:08 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

7月の或る日,漁川の堤防を歩いているとき,一面が真っ白な畑を見つけた。遠目には蕎麦の花が咲いているのかと思ったが,近づいてみると厄介な畑地雑草「ヒメジョオン」である。前年の作物が何であったか記憶にないが,畑は満開のヒメジョオンに占有されている。

ヒメジョオンは,初夏から秋口にかけて野菊のような白い花をつける。北米原産の帰化植物であるが,近ごろ畑地や道端の至る所で見かけるようになった。恵庭でもこの群落が増加しているように思う。

   

◆ヒメジョオン

ヒメジョオン(姫女菀,annual fleabane,Erigeron annuus)は,キク科ムカシヨモギ属の一年生植物。背の高さは30~150cm,茎は先の方で枝分かれをして,白い(薄紫)花をつける。花はヒマワリのような形だが,花径が1~2cm程度と小さく,周りの花弁は細い。形態的には,花と見えるのが頭状花序で,小さな花の集まり。周辺の花びらのようなものが舌状花,中央の黄色の部分が管状花と言う。

北アメリカ原産であるが,今では世界中に広がっている。日本には江戸末期(1865頃)に入り,明治時代には既に雑草化していたという。1個体あたり47,000以上の種子をつけ,種子の寿命も35年と長いため,繁殖力は驚異的で,厄介な雑草とされている。漁川沿いの畑地群落を見た時,さもありなんと感じた。要注意外来生物に指定され(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律),「日本の侵略的外来種ワースト100」に選定されている(日本生態学会)。

日本に入ってきた当初は,「柳葉姫菊(やなぎばひめぎく)」「鉄道草(てつどうぐさ)」と呼ばれたとの記載がある。柳のような細い葉,花が小さい菊,線路沿いに広がった状況など,名前から形態や生態を推察することが出来る。

 

◆ハルジオン

花が良く似ている,帰化植物で厄介な雑草ということもあり,ヒメジョンとハルジオンは混同されやすい。

ハルジオン(春紫菀,Philadlphia fleabane,Erigeron philadelphicus)は,キク科ムカシヨモギ属の多年生植物。種子と根の先に新苗を作って繁殖する。ハルジオンも要注意外来生物に指定され(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律),「日本の侵略的外来種ワースト100」に選定されている(日本生態学会)。

ヒメジョンとハルジオンを比べると,ハルジオンは背が低く(50~80cm),花は大きくて少なく,花の時期はヒメジョンより早い,根本に葉があるなどである。分かり易いのは,ハルジオンの茎には真ん中に空洞があり(ヒメジョンには空洞が無い),ハルジオンの葉の基部が耳型になり茎を抱くように付く事であろうか。