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豆の育種のマメな話

◇北海道と南米大陸に夢を描いた育種家の落穂ひろい「豆の話」
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野の薬草「ドクダミ」,恵庭の花-15

2017-07-18 13:34:54 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

庭の片隅,グミの木の根元にドクダミが群生している。子供の頃,湿疹やかぶれに対して祖母が処方してくれたことを思い出して植えた一株が,いつの間にか増殖して,夏(7月)になると一斉に白い花をつける。実は,一見白い花びらと思われるのは総苞(苞葉)と呼ばれるもので,花弁ではない。総苞中央部に穂のような棒状花序があり,淡黄色の小花が密生している。小花には花弁も萼(がく)もなく,雌蕊と雄蕊だけでできている。

 

ドクダミ(蕺草,Houttuynia cordata)は,ドクダミ科ドクダミ属の多年草。日陰のやや湿りのある場所に自生。繁殖力が強く,地下茎を伸ばして繁殖する。葉は卵状ハート型で先が短く尖り,濃緑,柔らく厚い。全体に独特の臭気がある。

ドクダミの名称は,「毒矯み」(毒を抑える)に由来するらしい。中国語では「魚腥草」(魚臭い),英語では「fish mint」「fish herb」などの表現があり,生魚の匂いから名付けられたのだろう。ベトナムや中国では香草として食用に供されるというが,日本では「どくだみ茶」として商品化されている。

「どくだみ茶」はドクダミを乾燥したもので,煎じて服用する。北海道農業改良普及協会発行「薬草の楽しみ」(熊谷明彦1995)によると,薬用量は一日10g,薬効は消炎,利尿,解毒など。注意事項として「虚弱,貧血,冷え症。体力低下している化膿には用いない。長期継続服用は避ける」と記されている。

クエルシトリン(利尿作用,動脈硬化の予防作用),デカノイルアセトアルデヒド(臭気成分,抗菌作用・抗カビ性),カリウム(利尿作用)を含有しており,十薬(じゅうやく)の名前で生薬として日本薬局方に収録されている。湿疹,かぶれなどに生葉をすり潰したものを貼り付けることも有効。漢方では解毒剤として用いられるという。

一方,過飲用による副作用事例(高カリウム血症,GOTGPT上昇)も報告されているので,注意が必要。

真夏の強い日差しを避け,木陰に駆け込む。明るさに慣れた目には日陰が暗く感じるが,足元を見やると可憐な花が目に入る。俳人川端茅舎(大正から昭和初期に活躍)は「十薬や真昼の闇に白十字」と詠んだ。十薬(じゅうやく)が夏の季語。ドクダミの別名。ドクダミが生薬として使われることからこの名前がついたと言われる。薄暗い中に浮かぶ4枚の白い総苞片を白十字と表現。写実的な作品である。


恵み野中央公園の「バイカモ(梅花藻)」,恵庭の花-14

2017-07-13 17:04:57 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

7月中旬、恵み野中央公園のバイカモが今年も可憐な花をつけた。この公園は、茂漁川から取水した用水の流れを効果的に取り入れた設計で、バイカモを観察できる。見どころは、恵み野小学校・恵み野幼稚園西側の清流200m、群生した濃緑色のバイカモが清流に揺れている。また、恵み野旭小学校西側にも数年前からバイカモが定着し始め、ここでもバイカモの白い花を観察できる。

  

バイカモ(梅花藻、ウメバチモ、Ranunculus nipponicus var. submersus)は、キンポウゲ科キンポウゲ属の多年生水草。日本固有種である。冷涼で(生育適温15℃)、流れのある清流に生育し、静水では育たない。多年生、葉は濃緑色で常緑、葉身は細かく裂け糸状で、葉身の長さは2~6cm、流れに沿って1mほど伸びる。水中に茎を匍匐させ、節から不定根を出し定着、茎の長さは2m以上になることもあるという。

夏には梅に似た白い小さな5弁の花をつける。花の大きさは1~1.5cm、葉腋から伸びた長さ3~5cmの花茎の先についた花は水上で開花する。清流の流れに浮かぶ多数のウメの花。涼しさを感じさせる風情である。

北日本には広く分布するが、西日本では湧き水のある地域などに限られる。例えば、滋賀県米原市の地蔵川、静岡県三島市の富士湧水などには、バイカモの白い花を目当てに多数の観光客が訪れる。

「バイカモは清流の目安」と言われる。恵み野中央公園のバイカモが「花のまち」にふさわしい群落として生育することを期待したい。


厄介な野の花「ブタナ」「コウリンタンポポ」、恵庭の花-13

2016-08-16 10:56:06 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

「ブタナ」と「コウリンタンポポ」

夏が来ると,恵み野中央公園の芝生一面に黄色の花が群生し,お花畑を作り出す。数年前から群生が拡大し,その勢いが気になる。さらに近年,鮮やかなオレンジ色の花も急速に増え始めた(写真は2016.6.24撮影)。恵み野中央公園内の冒険広場の丘や野外音楽堂の芝生が黄色やオレンジの絨毯に覆われる景色は美しいが,双方の植物とも北海道ブルーリスト2010A2(本道の生態系に大きな影響を及ぼしており,防除対策の必要性について検討すべき外来種)に分類されていることを、頭の片隅に置くべきだろう。ブタナは外来生物法(特定外来生物による生態系などに係る被害の防止に関する法律)でも要注意外来生物に指定されている。

◆ブタナ

黄色の花は,ブタナ(豚菜,Hypochaeris radicata L.,キク科エゾコウゾリナ属の多年草)という。ヨーロッパ原産で,現在では世界中に帰化している。日本では昭和8年(1933)に札幌で初めて発見され,北海道帝国大学農学部館脇繰教授によってタンポポモドキと命名されたが,翌年六甲山で発見され(京都帝国大学北村四郎教授によりブタナと命名),現在はブタナの名称が一般的である。その名は,フランスでの俗称Salade de porc(豚のサラダ)に由来するという。若葉は食用可能で,ヨーロッパではサラダ,茹で野菜,揚げ物などで食べることもあるというが,試食したことはない。

外観はタンポポに似ているが,30~60cmほど花茎が伸び,途中で数本に枝分かれして,それぞれの頭に直径3cmほどのタンポポに似た黄色い花をつける。開花は6~9月。葉はロゼット状で裏に毛が密生し,根は深く伸びる。群生すると芝生が枯れるなどの被害が出る。

◆コウリンタンポポ

オレンジ色の花は,コウリンタンポポ(紅輪蒲公英,エフデギク,Hieraciumu aurantiacum L.,キク科ヤナギタンポポ属の多年草)という。ヨーロッパ原産で,現在は北半球に広く帰化している。近縁種に,花が黄色のキバナコウリンタンポポがある。

草丈は20~50cm,茎先に総状花序(柄のある花が花茎に均等につく)を出し,花径2~3cmの頭花を10輪くらいつける。開花は6~8月。葉は根際から出る葉と茎から出る葉がある。根際の葉はロゼット状,茎につく葉は互生,葉の先にギザギザがない。繁殖力が強いため,在来種植物への影響が懸念されている。

◆セイタカアワダチソウ,ブタクサ

因みに,北海道ブルーリスト2010でA2に指定され,外来生物法でも要注意外来生物に区分される植物は10種ほどあるが,河原や道端で黄色の花をつけ群生が目立つものに,「セイタカアワダチソウ」(背高泡立草,Solidago canadensisi var.scabra L.,キク科アキノキリンソウ属の多年草)と「ブタクサ」(豚草,Ambrosia artemisiifolia L.,キク科ブタクサ属の一年草)がある。

セイタカアワダチソウは,北アメリカ原産で,高さ1~2.5m,茎は先のほうで枝別れし,濃黄色の小さな花を多数つけるのでよく目立つ。開花は秋。鑑賞用,はちみつ花粉用としての用途もあるが,種子と地下茎の双方で増え,さらにアレロパシーを有することから繁殖力が極めて大きく問題となっている。虫媒花で(風媒花でない)花粉の量も少ないことから、花粉症の原因植物ではないと考えられている。

一方,ブタクサはブタナと名前が似ているが,こちらは違う種である。北アメリカ原産で世界中に広まり,日本でも明治初期に渡来したと考えられている。高さが1mほどになり,葉は細く切れ込む。雌雄同株の風媒花で,雄花は約2~3mmの黄色い小花が複数集まり細長い房を形成する。その下に雌花が数個咲く。開花は7~10月。花粉症の原因となるアレルゲンを擁し,日本ではスギ,ヒノキに次いで患者数が多いという。

追記:セイタカアワダチソウについては、本ブログ「恵庭の花-18」2017.9.11を参照されたい。


北国の恵庭に根付いた「シャガ」の花、恵庭の花-12

2016-06-14 13:44:31 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

恵庭の拙宅裏庭で,今年も「シャガ」が咲いた。平成24年(2012)に伊豆の里から持参した苗が越冬し,群落を形成,北海道でも自生しうることを証明してみせた(写真上:奥伊豆の里山に自生する群落,写真下:北海道恵庭で開花したシャガ)。

 

  

◆シャガ(射干,著莪,胡蝶花などの字を当てる,学名:Iris japonica)は,本州から九州,中国地方に分布するアヤメ科アヤメ属の多年草。古い時代に中国から持ち込まれた帰化植物だという。

本州では,杉林や竹林の下など里山の日陰に群生していることが多い。日本に存在するシャガは全て三倍体だそうだ。ということは,我が国全てのシャガは同一遺伝子を持ち,同一の顔をしていることになる。本当にそうなのかと観察しているが,今のところ変異種を見つけることは出来ていない。

種子を作らず,球根を作るわけでもないシャガが全国に広く分布するということは,シャガの苗が多くの人手を渡り広まったことになる。シャガには,観賞用として大和人の心をとらえる何かがあったのか,それとも特別な薬効でもあるのだろうか。シャガを日本へ持ち込んだ渡来人は,よほどの風流人だったのだろう。

シャガは地下茎で繁殖し(短く横に這い)群落を形成する。アヤメ科ではめずらしく常緑で,北海道では青い葉のまま雪の下になる。葉は扁平でつやがある。葉の片面だけを上に向けその面が表面のような様子になり,二次的に裏表が生じたように見える。草丈は40~50cm。

開花は4~5月頃(北海道では5~6月),白っぽい紫のアヤメに似た華麗な花をつける。花弁には濃い紫と黄色の模様がある。白地に青と橙色の斑点があるのが外花被片,その内側に3枚の青白い内花被片がある。その上には,先端が細く裂けた雌蕊の柱頭。柱頭の下には雄蕊が1本あり,これらの構造は他のアヤメ属植物と同じである。花は1日しかもたず,開花した翌日には萎んでしまうが,同一花梗のなかで次々と開花を観ることが出来る。

木陰に育ち,庭の主役にはなり難いシャガ。しかし,花の姿は清純にして,なんと高貴なことよ。奥伊豆に暮らした小学生の頃,学校帰りの山道で目にしたシャガの映像が重なる。

 


恵み野中央公園の「キノコ」たち、恵庭の花-11

2015-11-14 16:58:19 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

11月も中旬,北海道は初冬の季節となった。昨日までの小春日和は嘘のように,今日はどんよりとして冷たい風が頬を刺す。庭木の冬囲いを終え,落ち葉を片付け,暖房用の灯油を満タンにし,雪かき用の道具は玄関フードに準備した。「さあ,いつでも雪よ来るがいい」と,空を見上げた。

雪が降る前に,やり残したことは無かったか? と思いを巡らす。「ああそうだ,キノコの写真を撮ったままだった」と気づいた。

以下は,恵み野中央公園の「キノコ」たちである。僅か1年の観察ゆえに不十分だが,色々な種類が見られ絵になると思った次第。名前を付すのは,次年度以降の写真を追加してからにしよう。取敢えず,秋の名残りに。

◆9月15日,前々日まで続いた雨も上がり,その日は清々しい秋晴れの朝だった。恵み野中央公園を歩いていると,野球グラウンド外野の土手に大きなキノコが生えているのに気付いた。土手の芝生は短く刈り込まれていたので,遊歩道から眺めると,三本のキノコは青空に背伸びしているように見えた。笠が反り返った個体には朝露が溜まっていた。

 

秋の訪れに思いを馳せながら遊歩道を進むと,恵み野中学校近くの椴松の下に朱色のキノコを見つけた。芝草の間に群生し,柄やひだは白いが笠は華やかな朱色に染まっている。

 

◆恵み野中央公園にどのような種類が自生するのか。散歩がてら注意して観察すると,9月~10月にかけて以下の写真のような種類を認めた。いずれも,地面に生える種類である。

 

 

 

◆また,漁川の河川敷には塊に生えるキノコの群生を確認した。更に,苔の絨毯に頭を出す小さな笠のキノコも健気で,絵になる。

 


「マンリョウ(万両)」が北海道で咲いた、恵庭の花-10

2015-11-10 11:47:37 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

鉢植えの「マンリョウ」

昨年鉢植えしたばかりの「マンリョウ」が,北海道恵庭にある拙宅ベランダで花をつけた。注意しないと見落としそうな可憐な姿である。この植物は,昨年伊豆下田の庭に実生していた苗を持参したものである。

マンリョウの分布地は本州(関東地方以西)~沖縄,中国,台湾,東南アジア,インドなど温暖な地方とされる(鈴木康夫「樹木図鑑」日本文芸社2005など)。北国での越冬は難しいと考え室内で育てたが,冬を越して夏が過ぎた10月末に1本だけが開花した。暖地では,7~8月頃に開花,10~11月頃に赤く熟し,翌年2月頃まで実を残す習性があると言う。が,10~11月の開花は低温下の北海道で生育が遅延したためだろう。結実に至るか否かはまだわからない。写真をご覧頂くと分かるが,昨年の赤い実がまだ残っている。

 

「マンリョウ」(万両,Ardisia crenata)は,サクラソウ科ヤブコウジ属の常緑小低木(樹高は0.3~1m)である。葉は縁が波打ち鋸歯状で互生,花は白,花冠は5つに深く裂け,裂片は反り返る。小枝の先に散形花序をなし,果実は液果で赤い実を着ける(黄色や白色の園芸種もある)。茎は年月を経ても太くならず,根元から新しい幹を出し株立ちとなる特性があると言う。

  

冬に熟する赤い実は濃緑の葉に映えて美しい。和名「万両」は名前の縁起が良いことから,「センリョウ(千両)Chloranthus glabra」とともに縁起物として正月の飾りに使われる。花のない正月にこれらの植物を使う習慣は,クリスマスにヒイラギを使う習慣にも似ている。

今回開花をみた個体(写真)の花色は白にピンクがかかっている。書物やネット情報によれば花色は白となっているので,この個体の花色は明らかに異なる。この個体は,山の暮らしをしていた亡父が伊豆の持ち山から庭に移植した「万両」に由来する実生と考えられる。「万両」は古典園芸植物のひとつで江戸時代に多くの変異種が作出されていることから,伊豆産の自生種由来の園芸品種があったとしても不思議ではない。

また,葉の波打つ形状も大きいように思われるが,品種の違いなのか。ウイルス感染の縮葉ではないかと調べていたら,「万両」の葉が波状に膨れている部分には共生細菌が詰まった部屋があるのだと言う。そうなると,この変異は何とも言えない。

もう一つ,次のような情報もある。「マンリョウ」がフロリダ州で外来有害植物(Exotic Pest Plants)に指定されていると言う。異なった地域に移動した動植物が,原産地とは全く異なった条件で爆発的に繁殖する事例は数多く報告されている事ではあるが,日本における園芸植物「万両」からは想像できない姿である。


恵み野「花暦 9月」、恵庭の花-9

2015-09-29 08:54:15 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

9月はコスモス

恵み野では,8月下旬に咲き始めたコスモスが9月に盛りとなる。マリーゴールドや木槿もなお花を残している。ダリアや菊の季節となり,下旬には秋咲きコルチカム(イヌサフラン,Colchicum,ヨーロッパ・北アフリカ原産)が突然地表に現れる。

この花(コルチカム)は不思議なことに,根も葉もない状態で花を咲かせる。開花後に根や葉が伸長し球根に養分を蓄える習性の植物で,北海道では春~夏にみられた葉が枯れ暫くしてから開花する。よく知られているのは,球根や種子にコルヒチンを含み,この成分は細胞分裂を抑え染色体を倍加させる効果がある。

 

 

 

 

 


恵み野「花暦 7月」、恵庭の花-7

2015-08-01 10:57:47 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

7月に咲く

 

花の街「恵庭」,ここ「恵み野」の7月は夏の緑がひときわ濃くなるが,花の季節でもある。花ロード界隈の庭々は多様な花々に埋め尽くされ,燦々と降り注ぐ太陽に自己主張しているかのようだ。

また,家庭菜園のキュウリが生り,トマトが色づき始める季節でもある。勿論,昆虫たちの動きは活発になっている。

                         


恵み野「花暦 6月」、恵庭の花-6

2015-07-04 17:57:52 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

6月の花

今年の6月は,晴れた日が少なく,寒い日が多かったような気がする。しかし,不順な天候であろうとも,草花は可憐な花々を咲かせる。

花の街「恵庭」と呼ばれるが,ここ「恵み野」を歩けば、手入れの行き届いた庭が多く,多様な花々に埋め尽くされていることに気付くだろう。