集歌一九五二
原文 今夜乃 於保束無荷 霍公鳥 喧奈流聲之 音乃遥左
訓読 今夜のおほつかなきに霍公鳥(ほととぎす)鳴くなる声し音の遥(はる)けさ
私訳 今夜の恋して心細い想いの中に、ホトトギスの「それはカツコヒ(片恋)」と鳴いている声の響きが遥かに聞こえる。
集歌一九五三
原文 五月山 宇能花月夜 霍公鳥 雖聞不飽 又鳴鴨
訓読 五月(さつき)山(やま)卯の花月夜(つくよ)霍公鳥(ほととぎす)聞けども飽(あ)かずまた鳴かぬかも
私訳 五月の山。その山に卯の花(有の花)が咲き、月明かりの夜。そんな夜にホトトギスの鳴く声を聞いても聞き飽きることはありません。また、鳴かないものでしょうか。
集歌一九五四
原文 霍公鳥 来居裳鳴香 吾屋前乃 花橘乃 地二落六見牟
訓読 霍公鳥(ほととぎす)来(き)居(ゐ)も鳴かぬか吾(あ)が屋前(やと)の花橘の地(つち)に落ちむ見む
私訳 ホトトギスと飛び来り居て鳴かないものでしょうか。私の庭先の花橘の花弁がひらひらと散るのを見たいものです。
集歌一九五五
原文 霍公鳥 厭時無 菖蒲 蘰将為日 従此鳴度礼
訓読 霍公鳥(ほととぎす)厭(いと)ふ時無み菖蒲(あやめくさ)蘰(かづら)にせむ日こゆ鳴き渡れ
私訳 ホトトギスよ、お前の鳴き声を厭うようなことはありません。五月の薬狩りの、菖蒲を蘰にするこの日に、ここに「カツコヒ(片恋)、カツコヒ」と鳴きながら飛び渡って来い。
集歌一九五六
原文 山跡庭 啼而香将来 霍公鳥 汝鳴毎 無人所念
訓読 大和には啼きてか来らむ霍公鳥(ほととぎす)汝(な)し鳴くごとに亡(な)き人念(おも)ほゆ
私訳 大和の里には啼きながら飛び来ているでしょう。ホトトギスよ、お前が鳴くたびに今亡き人を思い出す。
原文 今夜乃 於保束無荷 霍公鳥 喧奈流聲之 音乃遥左
訓読 今夜のおほつかなきに霍公鳥(ほととぎす)鳴くなる声し音の遥(はる)けさ
私訳 今夜の恋して心細い想いの中に、ホトトギスの「それはカツコヒ(片恋)」と鳴いている声の響きが遥かに聞こえる。
集歌一九五三
原文 五月山 宇能花月夜 霍公鳥 雖聞不飽 又鳴鴨
訓読 五月(さつき)山(やま)卯の花月夜(つくよ)霍公鳥(ほととぎす)聞けども飽(あ)かずまた鳴かぬかも
私訳 五月の山。その山に卯の花(有の花)が咲き、月明かりの夜。そんな夜にホトトギスの鳴く声を聞いても聞き飽きることはありません。また、鳴かないものでしょうか。
集歌一九五四
原文 霍公鳥 来居裳鳴香 吾屋前乃 花橘乃 地二落六見牟
訓読 霍公鳥(ほととぎす)来(き)居(ゐ)も鳴かぬか吾(あ)が屋前(やと)の花橘の地(つち)に落ちむ見む
私訳 ホトトギスと飛び来り居て鳴かないものでしょうか。私の庭先の花橘の花弁がひらひらと散るのを見たいものです。
集歌一九五五
原文 霍公鳥 厭時無 菖蒲 蘰将為日 従此鳴度礼
訓読 霍公鳥(ほととぎす)厭(いと)ふ時無み菖蒲(あやめくさ)蘰(かづら)にせむ日こゆ鳴き渡れ
私訳 ホトトギスよ、お前の鳴き声を厭うようなことはありません。五月の薬狩りの、菖蒲を蘰にするこの日に、ここに「カツコヒ(片恋)、カツコヒ」と鳴きながら飛び渡って来い。
集歌一九五六
原文 山跡庭 啼而香将来 霍公鳥 汝鳴毎 無人所念
訓読 大和には啼きてか来らむ霍公鳥(ほととぎす)汝(な)し鳴くごとに亡(な)き人念(おも)ほゆ
私訳 大和の里には啼きながら飛び来ているでしょう。ホトトギスよ、お前が鳴くたびに今亡き人を思い出す。