竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

万葉集 集歌364から集歌368まで

2020年04月08日 | 新訓 万葉集
笠朝臣金村塩津山作謌二首
標訓 笠朝臣金村の塩津山にて作れる謌二首
集歌三六四 
原文 大夫之 弓上振起 射都流矢乎 後将見人者 語継金
訓読 大夫(ますらを)し弓上(ゆづゑ)振り起(こ)し射つる矢を後(のち)見む人は語り継ぐがね
私訳 塩津山の峠で立派な大夫が弓末を振り起こして射った矢を、後にそれを見る人はきっと語り継いでしょう。

集歌三六五 
原文 塩津山 打越去者 我乗有 馬曽爪突 家戀良霜
訓読 塩津山(しほつやま)打ち越え行けば我が乗れる馬ぞ爪(つま)づく家恋ふらしも
私訳 塩津山を越えて行こうとすると、私が乗る馬がつまずく。家に残す人が私を慕っているようです。

角鹿津乗船時笠朝臣金村作謌一首并短謌
標訓 角鹿(つぬか)の津(みなと)で船に乗れる時に、笠朝臣金村の作れる謌一首并せて短謌
集歌三六六 
原文 越海之 角鹿乃濱従 大舟尓 真梶貫下 勇魚取 海路尓出而 阿倍寸管 我榜行者 大夫乃 手結我浦尓 海未通女 塩焼炎 草枕 客之有者 獨為而 見知師無美 綿津海乃 手二巻四而有 珠手次 懸而之努櫃 日本嶋根乎
訓読 越海(こしうみ)し 角鹿(つぬが)の浜ゆ 大船に 真梶(まかぢ)貫(ぬ)き下(さ)し 鯨魚(いさな)取り 海道(うみぢ)に出でて 喘(あへ)きつつ 我が榜ぎ行けば 大夫(ますらを)の 手結(てゆひ)が浦に 海(あま)未通女(をとめ) 塩焼く炎(ほむら) 草枕 旅にしあれば ひとりして 見る験(しるし)なみ 海神(わたつみ)の 手に纏(ま)かしたる 玉(たま)襷(たすき) 懸(か)けてし偲(しの)ひつ 大和島根を
私訳 越の海の角鹿の浜辺から大船に立派な梶を挿し下ろして鯨を取るという海原に海路を取り出航して、大声を立てながら船を操って行くと、立派な大夫が手に結び付ける手結、その言葉のような手結の浜辺で漁師の娘女達が塩水を煮て塩を焼く炎の中に、草を枕にするような苦しい旅の途中であるので、娘女の手結から独りで遣って来た海路や遥か彼方の山並みを見ても大和への思いはどうしようもない。海の神が授けて漁師の娘女の手に巻かせている玉、その玉の襷を懸ける。その言葉の響きのように心に懸けて思い出しましょう。人麻呂が明石から詠った大和の島のような山並みのことを。

反謌
集歌三六七 
原文 越海乃 手結之浦矣 客為而 見者乏見 日本思櫃
訓読 越(こし)し海(み)の手結(たゆひ)し浦を旅しせに見れば乏(とも)しみ日本(やまと)思(しの)ひつ
私訳 越の海にある手結の浜辺を旅の途中で見ると気持ちがおろそかになり、大和の風景を思い出します。

石上大夫謌一首
標訓 石上大夫の謌一首
集歌三六八 
原文 大船二 真梶繁貫 大王之 御命恐 礒廻為鴨
訓読 大船に真梶(まかぢ)繁(しじ)貫(ぬ)き大王(おほきみ)し御言(みこと)恐(かしこ)み磯廻(いそみ)するかも
私訳 大船に立派な梶を貫き降ろして、大王のご命令を恭みて浪の恐ろしい磯の周りを航海することです。
左注 右今案、石上朝臣乙麿任越前國守 盖此大夫歟
注訓 右は今案(かむが)ふるに、石上朝臣乙麿の越前國守に任けらる。盖し此の大夫か。
コメント
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