竹取翁と万葉集のお勉強

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古今和歌集 原文推定 巻三

2019年12月22日 | 古今和歌集 原文推定 藤原定家伊達本
美末幾仁安多留未幾
みまきにあたるまき
巻三

奈徒乃宇多
夏哥
夏哥

歌番号一三五
多以之良寸
題しらす
題知らず

与美比止之良須
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 和可也止乃以个乃布知奈美佐幾尓个利夜万保止々幾須以徒可幾奈可武
定家 わかやとの池の藤波さきにけり山郭公いつかきなかむ
解釈 我が宿の池の藤波咲きにけり山郭公いつか来鳴かむ

己乃宇多安留比止乃以者久加幾乃毛止乃比止万呂可奈利
このうたある人のいはくかきのもとの人まろか也
この哥ある人の曰はく柿本人麿か也

歌番号一三六
宇川幾尓左个留佐久良遠美天与女留
う月にさけるさくらを見てよめる
卯月に咲ける桜を見て詠める

幾乃止之左多
紀としさた
紀利貞

原文 安者礼天不己止遠安万多尓也良之止也者留尓遠久礼天飛止利佐久良武
定家 あはれてふ事をあまたにやらしとや春にをくれてひとりさくらむ
解釈 あはれてふことをあまたにやらじとや春に遅れてひとり咲くらむ

歌番号一三七
多以之良寸
題しらす
題知らず

与美比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 佐川幾末川夜万保止々幾須宇知者不幾以万毛奈可奈武己曽乃不留己恵
定家 さ月まつ山郭公うちはふき今もなかなむこそのふるこゑ
解釈 五月待つ山郭公うちはぶき今も鳴かなん去年の古声

歌番号一三八
以世
伊勢

原文 佐川幾己者奈幾毛布利奈无保止々幾須末多之幾本止乃己恵遠幾可八也
定家 五月こはなきもふり南郭公またしきほとのこゑをきかはや
解釈 五月来ば鳴きも古りなん郭公まだしきほどの声を聞かばや

歌番号一三九
与三比止之良寸
よみ人しらす

原文 佐川幾末川者那多知者那乃加遠可个者武可之乃比止乃曽天乃可曽寸累
定家 さつき松花橘のかをかけは昔の人の袖のかそする
解釈 五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする

歌番号一四〇
原文 以徒乃末尓左川幾幾奴良武安之比幾乃夜万保止々幾須以万曽奈久奈留
定家 いつのまにさ月きぬ覧あしひきの山郭公今そなくなる
解釈 いつのまに五月来ぬらんあしひきの山郭公今ぞ鳴くなる

歌番号一四一
原文 遣左幾奈幾以末多々飛奈留保止々幾須者那多知八奈尓也止八可良奈无
定家 けさきなきいまたゝひなる郭公花たちはなにやとはから南
解釈 今朝来鳴きいまだ旅なる郭公花橘に宿は借らなん

歌番号一四二
遠止者夜万遠己衣个留止幾尓保止々幾須乃奈久遠幾々天与女留
をとは山をこえける時に郭公のなくをきゝてよめる
音羽山を越えける時に郭公の鳴くを聞きて詠める

幾乃止毛乃利
きのとものり
紀友則

原文 遠止者夜万遣左己衣久礼盤保止々幾須己寸恵者留可尓以万曽奈久奈留
定家 をとは山けさこえくれは郭公こすゑはるかに今そなくなる
解釈 音羽山今朝越え来れば郭公梢はるかに今ぞ鳴くなる

歌番号一四三
保止々幾須乃者之女天奈幾个留遠幾々天与女留
郭公のはしめてなきけるをきゝてよめる
郭公の初めて鳴きけるを聞きて詠める

曽世以
そせい
素性法師

原文 保止々幾須者川己恵幾个者安知幾奈久奴之左多万良奴己飛世良留者多
定家 郭公はつこゑきけはあちきなくぬしさたまらぬこひせらるはた
解釈 郭公初声聞けばあぢきなく主定まらぬ恋せらるはた

歌番号一四四
奈良乃以曽乃加美天良尓天保止々幾須乃奈久遠与女留
ならのいその神てらにて郭公のなくをよめる
奈良の石上の寺にて郭公の鳴くを詠める

原文 以曽乃加美布留幾美也己乃保止々幾須己恵者可利己曽武可之奈利个礼
定家 いその神ふるき宮この郭公声許こそむかしなりけれ
解釈 石上古き都の郭公声ばかりこそ昔なりけれ

歌番号一四五
多以之良寸
題しらす
題知らず

与三比止之良寸
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 奈徒夜万尓奈久保止々幾須己々呂安良者毛乃毛不和礼尓己恵奈幾可世曽
定家 夏山になく郭公心あらは物思我に声なきかせそ
解釈 夏山に鳴く郭公心あらばもの思ふ我に声な聞かせそ

歌番号一四六
原文 保止々幾須奈久己恵幾計者和可礼尓之布留左止佐部曽己飛之可利个留
定家 郭公なくこゑきけはわかれにしふるさとさへそこひしかりける
解釈 郭公鳴く声聞けは別れにし古里さへぞ恋しかりける

歌番号一四七
原文 保止々幾須奈可奈久左止乃安万多安礼八奈保宇止万礼奴於毛不毛乃可良
定家 ほとゝきすなかなくさとのあまたあれは猶うとまれぬ思物から
解釈 郭公汝が鳴く里のあまたあればなほ疎まれぬ思ふものから

歌番号一四八
原文 於毛以徒累止幾者乃夜万乃保止々幾須加良久礼奈為乃布利以天々曽奈久
定家 思いつるときはの山の郭公唐紅のふりいてゝそなく
解釈 思い出づる常盤の山の郭公唐紅のふり出でてぞ鳴く

歌番号一四九
原文 己恵者之天奈美多者美衣奴保止々幾須和可己呂毛天乃飛川遠可良奈无
定家 声はして涙は見えぬ郭公わか衣手のひつをから南
解釈 声はして涙は見えぬ郭公我が衣手のひつをからなん

歌番号一五〇
原文 安之飛幾乃夜万保止々幾須於里者部天多礼可万佐留止祢遠乃美曽奈久
定家 あしひきの山郭公おりはへてたれかまさるとねをのみそなく
解釈 あしひきの山郭公折りはへて誰れかまさると音をのみぞ鳴く

歌番号一五一
原文 以万佐良尓夜万部加部留奈保止々幾須己恵乃可幾利八和可也止尓奈遣
定家 今さらに山へかへるな郭公こゑのかきりはわかやとになけ
解釈 今さらに山へ帰るな郭公声のかぎりは我が宿に鳴け

歌番号一五二
三久尓乃末知
みくにのまち
三国町

原文 也与也末天夜万保止々幾須己止川天武和礼与乃奈可尓寸美和飛奴止
定家 やよやまて山郭公事つてむ我世中にすみわひぬと
解釈 やよや待て山郭公言伝てむ我世の中に住み侘びぬとよ

歌番号一五三
可无部以乃於保无止幾々左以乃美也乃宇多安者世乃宇多
寛平御時きさいの宮の哥合のうた
寛平御時后宮の哥合の哥

幾乃止毛乃利
紀とものり
紀友則

原文 佐美多礼尓毛乃於毛日遠礼者保止々幾須与不可久奈幾天以川知由久良武
定家 五月雨に物思ひをれは郭公夜ふかくなきていつちゆくらむ
解釈 五月雨に物思ひをれば郭公夜深く鳴きていづち行くらん

歌番号一五四
原文 与也久良幾美知也万止部留本止々幾須和可也止遠之毛寸幾可天尓奈久
定家 夜やくらき道やまとへるほとゝきすわかやとをしもすきかてになく
解釈 夜や暗き道やまどへる郭公我が宿をしも過ぎがてに鳴く

歌番号一五五
於保衣乃知左止
大江千里
大江千里

原文 也止利世之者那多知者那毛加礼奈久尓奈止保止々幾須己恵多恵奴良武
定家 やとりせし花橘もかれなくになとほとゝきすこゑたえぬ覧
解釈 宿りせし花橘も枯れなくになど郭公声絶えぬらん

歌番号一五六
幾乃川良由幾
きのつらゆき
紀貫之

原文 奈徒乃与乃布寸可止寸礼盤保止々幾須奈久比止己恵尓安久留之乃々女
定家 夏の夜のふすかとすれは郭公なくひとこゑにあくるしのゝめ
解釈 夏の夜の臥すかとすれば郭公鳴く一声に明くるしののめ

歌番号一五七
美不乃多々美子
みふのたゝみね
壬生忠岑

原文 久累々可止美礼八安計奴留奈川乃与遠安可寸止也奈久夜万保止々幾須
定家 くるゝかと見れはあけぬるなつのよをあかすとやなく山郭公
解釈 暮るるかと見れば明けぬる夏の夜をあかずとや鳴く山郭公

歌番号一五八
幾乃安幾美祢
紀秋岑

原文 奈徒夜万尓己飛之幾比止也以里尓个武己恵布利多天々奈久保止々幾須
定家 夏山にこひしき人やいりにけむ声ふりたてゝなく郭公
解釈 夏山に恋しき人や入りにけむ声ふり立てて鳴く郭公

歌番号一五九
多以之良寸
題しらす
題知らず

与三比止之良須
よみ人しらす
詠み人知らず

原文 己曽乃奈徒奈幾布留之天之保止々幾須曽礼可安良奴可己恵乃可八良奴
定家 こその夏なきふるしてし郭公それかあらぬかこゑのかはらぬ
解釈 去年の夏鳴き古るしてし郭公それかあらぬか声の変らぬ

歌番号一六〇
保止々幾須乃奈久遠幾々天与女留
郭公のなくをきゝてよめる
郭公の鳴くを聞きて詠める

徒良由幾
つらゆき
紀貫之

原文 佐美多礼乃曽良毛止々呂尓保止々幾須奈尓遠宇之止可与多々奈久良武
定家 五月雨のそらもとゝろに郭公なにをうしとかよたゝなくらむ
解釈 五月雨の空もとどろに郭公何を憂しとか夜ただ鳴くらん

歌番号一六一
左不良比尓天遠乃己止毛乃左遣多宇部个留尓女之天
さふらひにてをのことものさけたうへけるにめして
候ひにて男どもの酒食うべけるに召して

保止々幾須万川宇多与女止安利个礼八与女留
郭公まつうたよめとありけれはよめる
郭公待つ哥詠めとありけれは詠める

美川祢
みつね
凡河内躬恒

原文 保止々幾寸己恵毛幾己衣寸夜万比己者保可尓奈久祢遠己多部也八世奴
定家 ほとゝきすこゑもきこえす山ひこはほかになくねをこたへやはせぬ
解釈 郭公声も聞こえず山彦はほかに鳴く音を答へやはせぬ

歌番号一六二
夜万尓保止々幾須乃奈幾个留遠幾々天与女留
山に郭公のなきけるをきゝてよめる
山に郭公の鳴きけるを聞きて詠める

徒良由幾
つらゆき
紀貫之

原文 保止々幾須比止末川夜万尓奈久奈礼者和礼宇知川个尓己比万佐利个利
定家 郭公人まつ山になくなれは我うちつけにこひまさりけり
解釈 郭公人待つ山に鳴くなれば我うちつけに恋まさりけり

歌番号一六三
者也久寸美个留止己呂尓天本止々幾寸乃奈幾个留遠幾々天与女留
はやくすみける所にてほとゝきすのなきけるをきゝてよめる
早く住みける所にて郭公の鳴きけるを聞きて詠める

堂々美祢
たゝみね
壬生忠岑

原文 武可之部也以万毛己比之幾保止々幾須布留左止尓之毛奈幾天幾川良武
定家 むかしへや今もこひしき郭公ふるさとにしもなきてきつらむ
解釈 昔へや今も恋しき郭公古里にしも鳴きて来つらむ

歌番号一六四
保止々幾須乃奈幾个留遠幾々天与女留
郭公のなきけるをきゝてよめる
郭公の鳴きけるを聞きて詠める

美川子
みつね
凡河内躬恒

原文 保止々幾須和礼止者奈之尓宇者那乃宇幾与乃奈可尓奈幾和多留良武
定家 郭公我とはなしに卯花のうき世中になきわたる覧
解釈 郭公我とはなしに卯の花の憂き世の中に鳴き渡るらん

歌番号一六五
者知寸乃川由遠美天与女留
はちすのつゆを見てよめる
蓮の露を見て詠める

曽宇志也宇部无世宇
僧正へんせう
僧正遍照

原文 波知寸者乃尓己利尓志万奴己々呂毛天奈尓可八川由遠多万止安左武久
定家 はちすはのにこりにしまぬ心もてなにかはつゆを玉とあさむく
解釈 蓮葉の濁りに染まぬ心もて何かは露を玉とあざむく

歌番号一六六
川幾乃於毛之呂可利个留与安可徒幾可多尓与女留
月のおもしろかりける夜あかつきかたによめる
月のおもしろかりける夜暁かたに詠める

深養父
深養父
清原深養父

原文 奈徒乃与者末多与為奈可良安遣奴留遠久毛乃以川己尓川幾也止留良武
定家 夏の夜はまたよゐなからあけぬるを雲のいつこに月やとるらむ
解釈 夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月宿るらん

歌番号一六七
止奈利与利止己奈川乃者那遠己飛尓遠己世多利个礼八於之美天
となりよりとこなつの花をこひにをこせたりけれはおしみて
隣より常夏の花を乞ひにをこせたりけれは惜しみて

己乃宇多遠与美天川可八之个留
このうたをよみてつかはしける
この哥を詠みて遣はしける

美川祢
みつね
凡河内躬恒

原文 知里遠多尓寸部之止曽於毛不左幾之与利以毛止和可奴留止己奈徒乃者那
定家 ちりをたにすへしとそ思さきしよりいもとわかぬるとこ夏のはな
解釈 塵をだに据ゑじとぞ思ふ咲きしより妹と我が寝る床夏の花

歌番号一六八
美奈川幾乃川己毛利乃比与女留
みな月のつこもりの日よめる
水無月の晦の日詠める

原文 奈徒止安幾止由幾可不曽良乃加与日地者加多部寸々之幾可世也不久良武
定家 夏と秋と行かふそらのかよひちはかたへすゝしき風やふく覧
解釈 夏と秋と行き交ふ空の通ひ路は片へ涼しき風や吹くらむ
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