ちょうど3月の初めころかな。
被災地の瓦礫の広域処理について議論が盛んでした。
何年までにどれくらい被災地内で処理して、
残りは被災地外に運んで燃やして埋める・・・。
放射能がどうとか、
阪神大震災の時は被災地内で処理できたのに何で東北はできないのか、とか、
なんだかつらかった。
なんか被災地が悪く言われているみたいで・・・。
「瓦礫なんか街の端っこに集められてるんだから復興の妨げにならんでしょ」
とかつぶやいてる人もいて、
一部の被災地だけ見てそんなこと言ってるやつにムカッと来て、
そんな奴とは一緒になりたくないと思って
瓦礫の火災とかで問題になってた山田町まで行ってみたり。
とにかくもっとなんかいい瓦礫を片付ける方法無いのかなって思ってました。
そんなときにこの本を見つけました。
パラパラと開いてみると、初めの数ページにカラーで図解があり、
そこには瓦礫をどのように再利用するか、
どうやって津波の被害を最小限に食い止めるかがわかりやすく描いてあり、
「えーこんなの実現可能なの?」ってすごく興味が湧いて、すぐ買いました。
宮脇昭氏は植物生態学者で、
その土地本来の潜在自然植生、
すなわち、
人間の都合で植え替えられる前にそこに本来生きていた植物の生態バランスの重要性を説いています。
もともと日本の森にはもっとタブノキ、シイ、カシなどの広葉樹が多かったのだそうです。
それが今は人間の都合で植え替えられて広葉樹が少なくなっている。
東日本大震災では、海岸線の多くの松の木が倒されましたが、
本来、松などの針葉樹は根が浅く、防潮林としては非常に頼りないものなのです。
本来、森というのはいろいろな木が混ざって生きているものなのに、
「海には松」と言った景観的な理由や、
「高く売れるから」といった経済的理由で、
同じ木ばかり、しかも根が浅い針葉樹ばかり植えるから、
津波で流されたり、土砂崩れが起こったり、花粉症の人が多くなったりする。
根が深く本来その土地に生きていたいろんな種類の広葉樹と、
ところどころに針葉樹が混ざった自然の森は、
災害に強く、私たちの命や財産を守ってくれるのです。
この度の震災の復興に際しては、コンクリートの強い防波堤と共に、
このような災害に強い森を沿岸部に造って行こうじゃないかと宮脇さんは言っています。
具体的には、ガレキと土を混ぜて小高い丘(マウンド)をつくり、
その上に森を作るのです。
そうすればそのマウンドと根深く強い木々が、
押し波の力をある程度和らげ、
引き波で私たちの大事なものが海に流出するのを防ぐ効果もあります。
この計画については、最初のわたしがそうだったように、図解があるとずっとわかりやすいので、
こちらを参照ください。
宮脇さんはこれについて震災直後から国に持ちかけていたのですが、
当初取り合ってもらえなかったそうです。
その理由は、法令によって震災瓦礫は産業廃棄物とされており、
木質のものは焼却処分しなければならないと定められている・・・と。
しかし今年に入って環境省を中心に宮脇さんの計画が受け入れられ、
実行可能なものになってきました。
実際、先日4月の終わりには、
岩手県の大槌町でこのようなマウンドの上での植樹が行われたそうです。
素晴らしいことです。
もっとこの考えが広がればよいなと思います。
瓦礫はもともとみなさんの生活の証です。
それをどこか縁もゆかりもない遠くに持って行って
ただ時間を無駄にかけて燃やして埋めるのではなく、
地元の土と共に埋めてその上にいずれ我々の子孫を守る森となる苗木を植える。
その森は犠牲者や遺族のための鎮魂の森となるでしょう。
宮脇先生の活動はドキュメンタリー映画になって夏に上映されるそうです。
多くの方がこの本を読んだり、映画を見たりして、
「いのちの森」の計画を知ってくれたらなと思います。