被災地にて活動されたたくさんの医師のなかの9名から
当時の話を聞きまとめてあります。
地震と津波のとき現地にて診療をしていた方、
被災地に住んでいるのに当日はほかのところで仕事をしていて戻られた方、
被災地外や準被災地にお住まいで被災地に駆けつけてくださった方、
いろいろな目線で今回の震災後の医療活動を
知ることができます。
遺体検死に携わった宮城の歯科医師の言葉、
「日本のような先進国で身元不明者がいるなんて絶対に許せません」・・・・。
胸にしみました。
ほんとですよね。
はやくすべての遺体の身元が判明することを願います。
でも、この機械を使えばもっと判明するのに・・・っていう最新のものがあるのに
やはり許可が下りないとかなんとかで使てない現状もあるようです。
千葉から釜石に来てくださった医師とそのチーム、
阪神大震災のような災害を想定して外科処置用品をたくさん持って来てくださったのに、
現地は外科的処置が必要な人はごくわずか。
「そんな怪我を負った人はみんな死んでしまったよ」と言われて愕然。
津波から逃げた人は怪我はしておらず、
怪我をするような場面に出くわした人はみんな津波にのまれて亡くなっているのです。
現地で必要なのは薬を持たずに逃げてきた内科疾患を持つ人への対応でした。
心のケアのチームを組んで陸前高田に来てくださった千葉の心療内科医。
これから大きな問題になってくるであろう
引きこもり、孤独死、自殺を防ぐためのメンタルケアの重要性を
説いています。
特に岩手県は常に自殺者数トップ3に入っているので
震災を機にまた増えてしまわないよう長期の支援が必要です。
阪神大震災の遺族の孤独死はいまだに問題になっているようです。
先の体験から学んでいかなくてはなりません。
阪神大震災と言えば、
話は脱線しちゃいますが、
阪神の時あまりにも無力だった私は
次に万が一大きな震災などがあった時には何かできる人になりたいと
まあいろいろ自分なりに自己研鑽を積んできたわけですが、
その中の一つにアウトドア派になることがありました。
被災地にボラで行くにしろ自分が被災者になるにしろ、
最低限のものでなんとか生きることができる知恵が必要と思ったのです。
キャンプとか登山とか自分一人でも何とかできるように
道具をそろえたりいろんなアウトドア体験をしたりしてきました。
で、
今回この本に載っていた岩手県大槌町の医師が登山をする人なんですが、
自宅兼医院の建物に何人かで取り残された時も
ビバークの経験や何にもないところで生きる経験が豊富だから
面白いほど飄々と現実に対応できている様子で、
救助されて避難所で診療活動をしているときも
特に何もテンパったりせず、いつもやってることを当たり前にこなし、
それがかえって周りの人の安心感につながっているんです。
あ、私もこういう人になりたいってあの時思ったんだっけ・・・
と思いだしました。
陸前高田の県立高田病院院長のお話には涙が止まりませんでした。
病院に取り残され、救助され、
避難所にて診療を開始して・・・・
奥様を遺体安置所で見つけたのは3月27日だったそうです。
すごい赤字を抱えていた高田病院に赴任して
病院改革をして黒字を出して、
定年まであと2年でこんな医療を・・・って高い意識で進んでこられたのに
病院も家も家族も失って、
それでもあと定年までの2年でまた高田病院を再建したい、と。
頭が下がり胸が熱くなります。
後に続く若い医師にも期待がかかります。
先にも書いたように
けが人というものがあまり出なかった今回の震災において、
重要になってくるのはやはりメンタルケアだなと痛感しました。
私も今はボランティアに行っても片付けをメインにやってますが、
コメディカルとしていずれはそういった方面でお役にたてればと
思っています。
日々医療や福祉の中にいると、
なんだか金の亡者かゴマすり系か偉そうに威張ってる系か、
そんな人々のるつぼだなこの業界・・・と
半ば世捨て人的になっていたわたくしですが、
世の中にはこんなにたくさんの意識の高い医師がいるんだなー
しかも地域医療の現場で・・・
と、この本を読んで感じ、
またちょっと頑張ってみようかな、仕事・・・・
と心が洗われる思いがしました。