Ma Vie Quotidienne

一歳に二度も来ぬ春なればいとなく今日は花をこそ見れ

読書 下町ロケット 池井戸潤 著

2015-10-16 23:57:16 | Book


三陸からの帰りの列車内でヤフー閲覧してたら、
「下町ロケット」ドラマ化、来週オンエアみたいな記事があって、
吉川晃司も出演って書いてあり、
まあ元来キッカワ好きなのと、
スーツ姿のキッカワってあんまり見ること無いし、
つか、そもそも現代劇もデビュー当時以来?とか思って、
あんまりドラマ観ないタチなんですがこれは観ようと思い、
それに先立ち、キッカワがどんな役をやるのか知りたくて、
ドラマ始まる前にサクッと原作読もうかなと思いまして(笑)

池井戸潤さんの本は初めて読みました。
ドラマ半沢直樹が流行ったとき読んでみようかと思ったんですが、
他にも読むものたくさんあってね・・・(汗)

また前置き長くなりましたが(笑)、
作品自体はどうかというと、
ロケットとか裁判とか特許とか、難しそうなことが多い内容なのに、
たいへん読みやすく、さっくり読了しました。

いろんなどんでん返しがあり、
どうなるんだ、と次々読み進み、
最後には涙、という素晴らしいパターンです。
エンターテイメントです。
ちょっと伊坂幸太郎に似てるかなと思ったりもしたけど、
やっぱなんか違う。
こっちのほうが現実的というか。
まあ伊坂も池井戸ももっと色々読んでみないと
たいそうなこと言えた立場じゃありませんが(汗)

ドラマも楽しみですがキャストはなんかしっくりこないかも。
とくに財前役のキッカワ(爆)、そして殿村役のひと。
同じ曜日に他局で放映の「エンジェルハート」をチラッとみて、
上川さんはじめキャストがイメージ重視なので、
つい比較しちゃう(笑)

まあ、文句言わずにドラマはそれで楽しんで観ます。

あ、あんまり読書感想文になってなかった気がする(笑)

読書  続・氷点  三浦綾子著

2015-08-27 22:44:06 | Book


氷点に引き続き、さっそく続・氷点も読みました。
これもまたすごく引き込まれて、集中して読みました。

氷点のテーマは原罪で、
続・氷点のテーマは罪のゆるし。
難しいテーマだけに、
いずれも物語はドロドロの愛憎劇みたいな感じなんですが、
細やかな心理描写や美しい風景描写で
飽きることなく読み進むことができ、
テーマがすっと心にしみていく感じがします。

登場人物のつながりがとてもよくできていて、
皆が少しずつ「罪」を犯し犯され、責めたり責められたり、
許そうと葛藤しながら成長する様が、とても身近に感じられました。

あんまり身近に感じすぎて、
わたしも主人公のようにひとりで流氷でも見に行ったら、
いま心に潜んでいるいくつかの「許せないなこりゃ」という気持ちが
薄れるんじゃないかと錯覚を起こしそうでしたが、
やっぱりムリっぽいです・・・。
まだ徳を積み足りないのかな。
なんだかキリスト教だか仏教だかわからなくなってきました(笑)

あとこれまた氷点に引き続き続氷点でも
北海道のいろんな町のことが書いてあって、
まあ大体いったことあるところだし、
あと主人公が北大に入学して、キャンパスのことなんかもいろいろ書かれあって、
これまた勝手知ったる場所なんで、
そういうのもするする情景が浮かんだ一因かと思います。

出会えてよかった一冊でした。

読書  氷点  三浦綾子著

2015-08-22 20:15:53 | Book


7月の「塩狩峠」つながりで、読んでみました。

とてもおもしろかった。
早く次の展開を知りたくて、寸時を惜しんで読みました。

登場人物それぞれの心理描写と、その動き、すれ違いがとてもおもしろかった。
人間の心がいかに自分本位で、そして性に左右されるものなのか、
それに気づかずに思いのままに行動する人、
それをコントロールしようと葛藤する人、、
様々な思いが交錯しています。

人間とはなんと愚かな罪深い生き物なのでしょうね。
でもそれが人間なのですね。

この小説のテーマは「原罪」だそうです。
「人間は生まれながらにして罪を持っていて自分ではそれをぬぐう術を持たない」ということ。
だからこそ「ゆるし」の心を持たなければならない。
その「ゆるし」をテーマにしたのが「続・氷点」だそうで、
早く読みたいです

そのような内容とは別に、
旭川が舞台のこのお話、川や山や森や雪の描写が美しく、
ゆっくりとこの物語に出てくる風景を辿る旭川の旅をしたくなりました。

他にも三浦作品たくさん読みたいと思います。
北海道が舞台のことが多いし、
調べたら、戦中戦後のことやもっと前の歴史上の人物のことが描かれている作品も多いようで、
おもしろそう。
なんで今まで読んでなかったんだろう・・・。
っていうか、
まだまだ読んでない作家さんってたくさんいるんですけどね

読書  火花  又吉直樹著

2015-08-15 20:38:48 | Book


うわさの芥川賞受賞作。

芸能人の作品って、
水嶋ヒロのアレでもう懲りたので全然読んでなくて、
コレも読む気なかったんですが、
母が買って読んだと言うので、お盆休みに実家で読みました

短めの小説なのですが、正直、読みにくくて、何度も休みながらようやく読了。
水嶋ヒロのアレよりも大人の読み物だなーとは思ったし、
所々にすごいきれいだなーとか思う表現はあったのですが、
なんだかスッと入って来ないんです

一言でいうなら、Too Much、過剰装飾で、
美しい情景を表すためのせっかくの言葉も、
字を追うのに一生懸命になってしまい、
像を結ぶまで時間がかかってしまう感じ。

あとは登場人物にあんまり魅力を感じられなかったかな。
たいていの小説で一人は共感できる登場人物いるんですけどね

おもしろかった本読んだあとは、
余韻というか、しばらくその世界に浸ったりするんですけどそれもなかった・・・。

巷でも賛否両論みたいですよね。
賛が多いのかな、でも。

又吉さん本人が、
「コレきっかけで読書に興味もってくれたらいいけど、
もし自分の小説がアカンかっても諦めずいろんなの読んでほしい」
とか言ってましたが、これは、
ふだん読書してない人が、お笑い芸人のだからって気楽に読めるお話じゃないと思います・・・。
ほんと、なんでこんなに売れてるのかわからんけど、
そのうちブックオフにガサーっと並ぶんじゃないでしょうか(笑)

でも、しばらく経ってまた読んでみたら面白く感じることもあるんで、
気が向いたらまた読んでみようかな



読書  ガレキ 丸山佑介著

2015-08-12 23:56:13 | Book


2012年発売の本で、
購入当初途中まで読んでそのままになっちゃってたんで
また読み返してみました。

あの当時は本当に悲しかった。

東北沿岸に何度も行って、
いつまでたっても小さくならないガレキの山を見て歩くのも、
季節が過ぎてガレキの山に雑草が生えてそれが枯れて雪が積もって
春が来てまた雑草が生えるのを繰り返し見ることも、
ガレキの広域処理について議論されているのも、
お金をかけて九州とかにガレキを運んで処理しなきゃならない現実も
周りにそういうことについて話せる人がいないことも。

いまはね、またいろんなことを思います。

いちばん心が静かでいられたのは、
瓦礫の山が無くなって更地になっていた時かもしれないなーとか。
それまで瓦礫があって歩けなかったところに入ることができて、
そこに生きていた人たち、生きている人たちのことや
そこにある海や砂浜や土や草を感じながら歩いていた時期。

それからわずかに残されていた建物が解体され、
そこに土が運ばれて、
元々あった地面が覆われ、みんなが歩いた道が無くなり、
新しい地面や道路が作られている・・・。
そんな今、
不謹慎かもしれないけど、
ちょっとあの瓦礫の山を懐かしく思ったりもするんです・・・。

話がそれましたが・・・

この本は宮城出身のジャーナリストが、
ガレキの広域処理問題に関して様々な人にインタビューした内容をまとめたものです。
いくつかの自治体の首長や議員、
広域処理反対運動をしている市民、ガレキの処理をしている産廃処理業者など、
様々な人にそれぞれの立場からの瓦礫問題のとらえ方のほか、
震災直後から使われていた「絆」という言葉についてどう思うかも尋ねています。

「絆」っていう言葉はずっと違和感ありました、わたし。
「絆」ってなんかよく意味わかんなかったな・・・。

こうやって震災間もない時期に買った本を今になって読んでみるって、
大事なことですね。
結構東北に足を運んでいるのに、忘れかけていることがいっぱいある。
出来事を時系列で追えなくなっていたりもするし、
自分がどう感じたかってこととか、
あの政治家がこんなこと言ってたなーみたいなことまで。

実はまだ読んでない本も本棚にいくつかあるし、
新たに震災関連の本もたくさん発行されているので、
すこしあせっていたのですが、
時間が経ってから読むのも悪くないなと気づきましたので、
じっくりいろんな本を読んでいきたいと思います



読書 鈍感力 渡辺淳一著

2015-08-05 21:20:24 | Book


最近はあんまりこういう感じの本読んでなかったんですけどね、
仕事がらみで壁にぶち当たり、読んでみようかなと

わたくし、特定の物事にこだわりが強い傾向があるとは思うんですが、
それ以外のことは結構大雑把だと思うし、
他人のことも「ま、いっか」とか
「どーでもいいわ」「めんどくさいからほっとけ」と思える方なんです。
それでもね、仕事に関しては、
どーにもこーにもハンパなく仕事ができない人が目の前に現れる確率が高く、
直接教えたりせず裏で「どーもならんなアイツ」と言っている人たちのようになりたくないんで、
正々堂々と、できない人たちに仕事を教えはじめ、
もっとこーしたら効率よくなるんじゃないかとかアドバイスしたりするんですが、
それがもとで自分の首を絞める結果になることもしばしばで、
もうそれに疲れ果て、
仕事ができない人に関わらない人になりたい、鈍感になりたい、
と思ったことがきっかけで、
なんとなく鈍感力っていうの流行ったなーそういえばって思い出して・・・

結論から言うと、この本から私が求めていたことは得えられませんでした。
目次をみた時点で「こりゃ違う」と思ったんですが、
せっかく借りたので読んでみました。
読みやすくて1日で読み終えました。

この本に書いてあるような「鈍感力」は、
まあまあ持ち合わせているんじゃないかと思います、わたし。
この本には書いていない何かにたぶんすごく敏感で、
譲れないアイテムがあるんだろうなと。

たぶんわたしは「プロフェッショナル」ということに敏感なんだと思います。
ザービスを提供しその対価をいただくということについて、
提供する側としても、
満足していただけるよう、この人に出会えてよかったと思っていただけるよう努力したいし、
サービスされる側としても満足したいという気持ちが強い。

自分がお客さんの立場なら行く店や病院を選べばいいだけなんですけど、
同じ看板の下で働いている同じ資格を持つ人が
全く別のクオリティのサービスを提供しているということに対して
鈍感になれるのかどうか・・・わかりませんな

これはもうシステムの問題なのです。
分かっていたけど、また壁にぶつかって、いろいろ考えて、
この本も読んでみたりしましたけど、結局同じ結論に達しました。

あとはたぶん結構「おせっかい」な性格なのかな、わたし。
「おせっかいの心理学」みたいな本があったら読んでみたい・・・と思って、
ネットで調べたらおせっかいの深層心理みたいなこといろいろ書いてあって
参考になりました

ということで、読書感想文というよりは、
自己分析、反省文でした

読書   塩狩峠  三浦綾子著

2015-07-22 23:25:06 | Book


7月の最終週末はハーフマラソンで道北の士別にいきます。
宿検索したところ周辺で空いているのは、
旭川の高級ホテル、士別よりさらに北の名寄にひとつ、
そして、士別より少し南の塩狩のユースホステルのみ。
料金が安いということと、なぜかその手作り感あふれるユースホステルに魅かれ、
塩狩泊を決めました。

旭川以北に足を踏み入れるのは何年振りでしょう。
ましてや塩狩に自分が降り立つことになろうとは想像したこともありませんでした。
せっかくだから、行く前に、
有名な「塩狩峠」という小説を読んでおきたいなと思い、
図書館から借りました。

実は、三浦綾子さんの作品を読むのははじめてです。
実家の母の本棚に「氷点」があるのは子どもの時から見ていたのですが、
手に取ろうと思ったことがなかった・・・
「塩狩峠」を読んだら「氷点」も読んでみようと思います。

いつも思うことですが、
物事との出会いのタイミングといいますか、
興味がわくタイミングというのはほんとうに不思議なものです。
いつも自分の周囲に存在していてそのことに気づいていながらも全く興味がないものを、
手に取ってみようと思うきっかけが突然舞い降りてくるのです。
今回も、士別市内やもっと他の便利なホテルが空いていれば
塩狩に泊まろうなんて思いもしなかっただろうし、
「塩狩峠」を読もうとも思わなかったと思います

でも登山でこれだけ旭川に行く回数が増えているので、
なんか別のきっかけで三浦綾子作品に導かれる運命だったのかもしれないし・・・・。
本当に物事がつながるタイミングというのは不思議かつ面白いものです。

この小説「塩狩峠」の中にも、そんな不思議な巡りあわせが描かれてあります。

明治の時代、キリスト教が忌み嫌われていたころ、
主人公も小さいころから周囲の影響もありそのヤソ教を毛嫌いしていましたが、
あるとき自分も洗礼を受けることになるのです。
それどころか、各地でキリストの教えを説いて歩くようにまでなります。
そしてその教えに忠実であろうとするがゆえに、
自分の身を犠牲にして多くの人の命を救うことになります。
名寄での信仰の会のあと、汽車に乗って札幌にむかっていた時のこと、
塩狩峠を越えようとしていたときに汽車の連結が外れ、
自分が乗っている客車が峠を逆走しながら暴走、
それを身を挺し命を投げ出して止めて多くの人の命を救ったのです。

これは明治のころに実際に起こった事故で、
長野政雄さんという方が殉職されているのですが、
この長野さんが当時通っていたのと同じ教会に、
著者でキリスト教徒の三浦綾子さんが通うようになり、この小説が生まれました。
これもまた不思議な巡りあわせです。

小説は、
主人公がどのような幼少期・青年期を送って信仰に至るかというお話が大部分で、
そこは三浦さんの作り上げたお話なのですが、
明治という時代に一人の青年がどのように成長していくかという点でも
とても読みごたえがありました。

塩狩に行くのも、他の三浦作品を読むのも楽しみになってきました

読書 生存者 3・11大槌町、津波てんでんこ  根岸康雄著

2015-05-20 22:19:45 | Book


岩手県の大槌町で、
津波に襲われ黒い海水に引きずり込まれながらも
九死に一生を得た方々の物語です。

この本は2012年3月に発刊され、その割とすぐあとに購入し、
その年のうちに読み始めたんですが、
途中で止まってしまい、そのままになっていました。

ちょっと描かれているみなさんの体験が凄すぎて、
通勤電車の中で涙が止まらなくなって、
これはもうちょっと時間経ってから読もう・・・と。

それまでにもいくつかの震災関連本を読んでいたんですけどね・・・。
自分の中で整理付けられることもあったけど、
ちょっとその段階でまだ折り合いつかないことがあったんだろうな・・・。

多くの方が亡くなったことについては覚悟していたんで
それについて読んだり見たりしてそのとき涙が止まらなくても
先に進めないということはなかったんですけど・・・。
この本は、津波にのまれながらも、
まさに「運」としか言いようのない神がかりな出来事の連続で命拾いした人達のお話で、
とても生々しいというか・・・
行ったことある土地のことだからなおさらかもしれません。
あの大槌の光景、あの素敵な人たちとストーリーがリンクしてしまって・・・。

今回はしっかりと心に受けとめながら読むことができました。
もちろんあの大槌の光景と
これまでで会った多くの素敵な人たちのことも思い浮かべながら。


この本を読むと震災前の町の様子が少しわかるので、
かさ上げでどんどん町が変わるいま、
読んでまた以前を思い出したり想像したりすることができました。

そしてその町と、
あの震災を生き抜いた人々と、
彼らが失った大切な人たちに対する思いが
またあらたになったような気がします。

大槌に限らず、すべての沿岸の町に対して・・・。

やはり4年という歳月で
少しなあなあになっていたところがあるんですね、きっと。

折に触れて読み返したい本です。

読書  悼む人  天童荒太著

2015-05-11 01:02:56 | Book


久々に小説読んでみた

今年始めに映画化されたことを知り、
実家にこの本あったなーと思いだし、
5月の連休中の移動中に読もうと旅行に持ち歩き、
ちょうど仙台で帰りの飛行機に乗る前に読み終えました。

死と生のお話です。
家族のお話です。
愛のお話です。

主人公がおこなっている死を悼み生前を胸に刻むことは、
ちょっと自分で言うのもなんですが、
東北の沿岸の町を何度も訪ね歩いているわたくし自分自身の想いと、
ちょっと意味合い的に似ているような気もしました。
私は個人ではなく町を悼んでいるんですけどね。
部外者だけど、この町にはこんないいところがあったということを覚えておきたい。
それはこれからも同じような形で引き継がれるのか、
少し変わった形で継がれるのか、
全く無くなっちゃうのか・・・それを見届けたい、
という気持ちでリュックを背負って歩いています
震災前はほとんどの町に行ったことなかったので、
この物語の主人公のように「手遅れの人」なんですけどね

そういう共通点と、末期ガンの在宅医療という点で、
興味深く読み進むことができましたが、
全体としてはあんまり琴線に触れる感じがしなかったなー、このお話

なんか裏の世界のこととか暴力の描写とか性の描写とかか宗教とか軽くファンタジーなところとかが、
村上春樹とかぶってるんだけど、ちょっと軽くて妙な感じがしたし、
すべてにおいて説明的すぎて読むの疲れる感じがしました。

しかもすべてが思った通りの結論で、「そうきたか…」的なわくわく感がない。

はっきりしないことが多少あった方が、あとで色々想像できて楽しかったりするのは、
村上春樹の読みすぎですかね(笑)

この作家さんの別の小説読んでみたいと思わなかったし・・・。
といいつつ作品検索してみたら、「家族狩り」の作者なんですねー。
ドラマになってたけど、
佐世保の高校生の殺人事件の時に放送中止しろとかって話題になってましたな。

この「悼む人」も、
家族とは、生きるとは、死ぬとは、みたいな部分は若い人に考えてほしいテーマだけど、
暴力とか性の部分であんまり青少年にはお勧めしにくい感がありますね。

あ、そうそう、映画は大コケだったみたいですね。
ははは

読書 宮沢賢治、ジャズに出会う  奥成達 著

2015-05-02 23:04:57 | Book


宮澤賢治の詩に、
「『ジャズ』 夏のはなしです」と題されたものと、
ほとんど同じ内容の改稿「岩手軽便鉄道 七月(ジャズ)」というのがあり、
それが書かれたのが日本でまだジャズが一般的ではなかった時代だったことから、
宮澤賢治はいつどこでジャズという言葉やその音楽と出会っていたのかを追いながら、
戦後復興期までの日本のジャズ史を紐解いていく内容の本です。

ちょうどアメリカのジャズ史を勉強しているところで大戦前後までは理解していたので、
予習済みって感じでよかったです。

日本のほうはペリー来航まで遡ってましたが、
宮澤賢治が生きた大正から昭和初期のことが多くかかれていて、
音楽ばかりでなく当時の芸能一般や日本の文壇のことも絡めて書いてあって、
ちょっと前に
文藝春秋で関東大震災後に当時の作家さんたちがかいた「震災文章」を読んでいたので、
そのへんも予習済みって感じでよかった…。

それらの予習がなければ、ちょっと情報量多すぎて、
読むの難しいというか大変だったかなって思います、この本(笑)

肝心の、前述した賢治のジャズの詩は、
題名を知らずに読んだら「鉄道の詩だね」と思っちゃいます。
題名を知って、「ジャズ!?どこが!?」と何度も読み返すんですが、
詩心ない私には理解不能で
解説を読んではじめて、ああなるほどジャズっぽい…と思いました(汗)
その時点では、言葉の意味とかリズム的な意味でジャズっぽいとの理解なのですが、
さらにこの本を読み進むと
宮沢賢治そのものがジャズな人なんだ!ってことがわかってきます。

宮澤賢治の大ファンだったという詩人の中原中也は、
賢治は「名辞以前の世界」を生きる人だ、と評しています。
それは「概念」などのまったく容喙できない世界であって、
賢治の一生はその世界への「間断なき恋慕」であった、と。

この本の著者は、
「賢治のその世界はジャズのインプロヴィゼーション(即興)そのままだ」といっています。

アドリブ、フェイク、ライド、ジャム・・・
文字的論理的に考える前に即興的にあふれでてくるもの、ということですね。
賢治の作風は心象スケッチ。
賢治の心のなかにある即興的イメージをそのまま表しているものなのですね。
まるでチャーリー・パーカーが内から湧き出るものを音であらわしたように・・・。

著者はこうも言っています。
「賢治はジャズ・インプロヴァイザーのソロイストであり、
リズムセクションは岩手軽便鉄道であり、
伴奏者はイーハトーヴの風景であり、風であり、北上山地という風土だったのでは。」

岩手にはなんとなくジャズな人が多い気がしていたんですが、
賢治が愛したイーハトーヴは
そういう人が生まれ育ちやすい風土なのかもしれないですね

さて、
明日5月3日から岩手に行ってきます。
しかも以前岩手軽便鉄道だった路線、
現JR釜石線ドリームラインで乗って釜石に行ってきます。
当時よりは乗り心地の良い電車になってガタンゴトンと揺れたりしないので
ジャズのリズムは感じられないかもしれませんが、
賢治が感じた風を感じることが出来るイーハトーヴの旅になるといいなー