東日本大震災の津波で大きな被害を受けた宮城県南三陸町。
そこで暮らすあるご家族の物語です。
わたしは震災後、毎年秋に南三陸を訪ねているのですが、
今年もその旅を数日後に控え、
たまたま書店でこの本を見つけて、行く前に読んでおこうと思いました。
津波でご長女を失ったお母さんと、
このご家族と長く繋がりのある記者さんの共同執筆のような形となっています。
亡くなられたご長女さんのお名前は遠藤未希さん。
南三陸町の防災対策庁舎で
最後まで町民に高台への避難を防災無線で呼び掛けていて津波のまれたということで、
メディアにも多く取り上げられました。
この本では、
震災の前のことから震災後3年4ヶ月となる今年の夏までの
ご家族の悲しみや葛藤、気持ちの変化を読み取ることができます。
残された者の一生消えることのない自責の念、
それを抱えつつも前に進まなければならないなんて、
生きると言うことはなんという苦行なのでしょう。
それでも生きる。
またいつか会える日に胸を張れるように。
この本ではまた、
被災者を取り巻く様々な問題を知ることができます。
メディアや被災地観光の在り方、
特殊公務災害認定や行政の災害対策の在り方に関する訴訟、
行政と町民の温度差、
土地や建築資材の価格高騰、
震災遺構を残すか解体するか、などなど。
南三陸町は、
遠藤未希さんはじめ多くの職員・町民が命を落とした防災対策庁舎を
残すか否かで揺れています。
いろんな意見があって難しい問題です。
遠藤さんのお母さんもはじめはあの赤い鉄骨を見たくもないと思っていたのに
少しずつ想いは変わってきたようです。
わたしも昨年
「これで最後かもしれない」という気持ちで防災対策庁舎に手を合わせてきたのですが、
今年も防災庁舎の鉄骨は残っています。
南三陸に行く前にこの本を読んだことで、
また引き締まった気持ちで手を合わせることができると思います。