Ma Vie Quotidienne

一歳に二度も来ぬ春なればいとなく今日は花をこそ見れ

映画  変身 - Metamorphosis

2014-06-28 22:19:33 | Movie


変身 - Metamorphosis
2013年/日本
監督/脚本/撮影/編集/ナレーション 堀 潤


元NHKの堀潤さんが製作した、
日米の原発メルトダウン事故を追ったドキュメンタリー映画。

アメリカの事故については、
堀さんが2012年からUCLAの客員研究員だったときに取材した
スリーマイル島原発事故(1979年)と
サンタスサーナ原子炉実験場事故(1959年)、
が取り上げられています。

サンタスサーナのことは全然知りませんでした。
それもそのはず、
最近までその事故で放射能汚染が起こっていたことは
アメリカ国内でも全く知られていなかったのです。
周辺住民の中には乳がんは白血病が多かったのです。
みんな何も知らないでこの土地で子供を産み育てていたのです。
54年も経った今、
住民の闘いが始まったのです・・・・。

スリーマイルについては、
メルトダウン、レベル5、放射能汚染に関して、
「全然気にならないよ」「だって僕らはこうして生きてふつうに生活しているじゃないか」
という住民と、
放射能の動向とその環境への影響を事故以来ずっと調査している団体の人とのギャップが
印象的でした。

団体の代表者は、
「僕たちがもっと、情報が多くの人の目に触れるよう努力していれば、
 福島の人たちをもっと救えたかも知れなかったのに、
 すまないと思っている」
といったようなことをおっしゃっていました。

また、UCLAの研究者が福島のSPEEDIのデータをビジュアル化して、
こういう情報に住民がアクセスできていれば、
線量が高い方高い方へと避難したりはしなかったでしょうね・・・と
おっしゃっていました。

調べてみると、
実に多くの国で原子力の事故が起こっています。
しかし情報は十分公開されず、
私たちもそれを求めようとはしてこなかった。

そういう時代遅れなことは
もうこの福島第一の事故で終わりにしたいですね。

スリーマイルの活動団体の方はこうも言っていました。
原子力の事故はいつ起こったかはわかるけど、
決してこの日で終わりという風にはならないのだ・・・と。

そう、決して終わらないのです。
だからだんだん風化して忘れられてしまう・・・。


監督の堀さんはこの映画を
カフカの有名な同名の小説から「変身」と名付けたそうです。

「変身」の主人公はある朝突然、自分が虫になっていることに気づきます。
主人公は突然降ってきた災難によって自分はどうなるんだろうという不安を抱えながら、
家族のために自分は息をひそめていようとします。
周囲からも、はじめはかわいそうに思われていますが、
だんだんに疎まれ、放置されていきます。

これが、福島をはじめとした原子力事故とどこか重なるのではないかという思いを
タイトルに込めたのだそうです。

カフカの「変身」の主人公は最後には死んで、
家族は「なんか清々しいわ」みたいなこと言って終わるんですが、
原子力の事故には決して終わりはないのです。
汚染の影響は何十年、何百年と続くのですから。


福島第一の収束作業のずさんさも、
この映画では取り上げられています。

多重構造の雇用形態で、
詳しいことを知らされないまま福島に移動させられて、
原発で働いたことがありますとか現場の経験がありますみたいなウソの経歴を書かされて、
低賃金無保証で高線量区域で作業されられる人々・・・・。

誰かが片付けなければならない。
遅々として進まない作業。
現場で作業を経験した人が言っていました。
あんな状況では、
今この瞬間に生まれた子どもの中でも
20年後とかにこの片づけの続きをする人がいるんだろうな・・・と。

そんな情けないことってありますか・・・。

映画は、原発再稼働反対のデモの様子を映して終わります。



この日は映画終了後、
監督の堀潤さんを迎えて、ワークショップ形式のトークイベントがありました。


映画のこと、NHKの裏話、福島のこと・・・
時間がいくらあっても足りない感じの興味深い時間でした。

日本のメディアにこういう方がいることを頼もしく思います。

この映画をたくさんの方に見てもらいたいと
心から思います。


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