東京・台東借地借家人組合1

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【判例紹介】 家賃の増額請求の際の内金受領が賃料の受領拒否に当たるとされた事例

2007年08月17日 | 弁済供託

 判例紹介

 賃借人が家賃増額請求されたにもかかわらず従前の賃料を提供したところ、賃貸人が賃料の一部として受領する旨申出たことが民法494条の受領拒絶に当たるとされた事例 (東京高裁昭和61年1月29日判決、判例時報1183号88頁以下)

 (事案)
 賃貸人Xは賃借人Yに対し、昭和57年7月1日から同年4月1日に実質上増額されていた従前の月額12500円の賃料を、月額15000円に増額する請求をしていたところ、同年9月に、同年8月分の賃料として従前の12500円を持参したYに対し、更に同年10月1日から月額25000円に増額請求をしたうえ、「持参した賃料は増額された賃料の一部として受領する」旨述べた。

 賃借人Yは賃料の受領を拒絶されたとして、従前の賃料を供託した。
  賃貸人Xは、この供託の効力はないとして賃料不払による契約解除をなし建物の明渡しを求めていた事案である。

 (判旨)
 「借家法7条2項によれば、賃料の増額を正当とする裁判が確定するまでは、賃借人は相当と認める賃料を支払えば足るのであるから、その間の相当と認める賃料支払は、債務の本旨に従った弁済に当たると解することができるのであり、特に増額請求が理由のない場合には、実質的に見た場合にも、これが一部弁済に当たる余地はないのである。他方、賃貸人が、賃料弁済の提供を受けた際内金(賃料の一部)として受領する旨述べることは、特段の事情のない以上、賃料の全額の弁済として提供されるのであればその受領を拒絶する趣旨を含むものと解することができる」

 (寸評)
 賃料の内金受領の意味が、受領拒絶に当たるかどうか争われた事例は、この他にもあった。本件とやや事実関係をことにする事案では供託を無効とした判例もある。短期間に2度にわたる理由のない増額請求がなされたという本判決の事実経過に照らせば判旨に異論はない。

 しかし、内金受領がすべて受領拒絶の意味を含むとは言えない。従って、日常の取扱井は、現実の提供を成し、「内金」「一部」といわれても賃料を受領させた方が安全といえる。

(1987.04.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 


内金受領に関してはこちらも参考にして下さい。

 

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