東京・台東借地借家人組合1

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(問題11) 告知されなかった前入居者の死亡

2007年10月13日 | 仲介手数料・不動産業者とのトラブル

 (問題11) 告知されなかった前入居者の死亡
 
入居して1ヶ月が経つが、今借りている部屋が3年前に入居者が自殺した部屋だった。不動産屋から知らされていなかったが、気持ちが悪いので部屋を出たいが、礼金や手数料、引越し代を家主に払ってもらえるか。

    (①払ってもらえる。 ②自費で引越すしかない。)


 解答・解説は田見高秀弁護士(東借連常任弁護団)です。

 (解答)
  ①払ってもらえる

 (解説)
  設問は【家主に対して】
 [事例 ―過去に自殺の事実があった事例]

 借主がアパートに入居した。ところが、その部屋で「2ヶ月前」に首つり自殺があったことが判明した。借主はこの事実について何も説明されていなかった。仲介業者に確認すると、仲介業者も、貸主から何も説明されていなかった。しかし、調査してみたら、自殺は事実で、貸主が隠していたことが判明した。

(1)借主は、賃貸借契約を解除し損害賠償請求できるか?

 【答】 一般的にはできる。

 【解説】 
① 賃貸ではなく売買の事例であるが、建物において過去に自殺があった事実が「瑕疵」にあたるとされた裁判例(横浜地方裁判所平成1年9月7日判決)()がある。そのため、瑕疵担保責任に基づく契約解除・損害賠償の主張が認められる可能性がある(民法570条、559条)。
)売主の妻が6年前に首吊り自殺した事例(判例時報1352号126頁)。・・・・<東京・台東借地借家人組合>

② 契約締結交渉過程で自殺の事実を告げないことは、情報提供義務違反の契約締結上の過失があるとして、契約締結上の過失に基づく契約解除・損害賠償の主張が認められる可能性がある(民法1条2項)。

③ 不法行為に基づく損害賠償の主張が認められる可能性がある(民法709条)。

 

(2)自殺が2年前の場合も解除し損害賠償請求できるか?

 【答】 一般的にはできる。

 【解説】
 自殺から2年間経っていても、通常の借主は気にすると思われ、「瑕疵」となる可能性がある。同様に、契約締結上の過失、不法行為が成立する可能性もある。


(3)自殺後、既に何人も、借主が入れ替っていたらどうか?

 【答】 一般人から見て重大な嫌悪すべき事情にあたらなければできない。

 【解説】
 自殺後、長い期間が経ち、更に既に何人も借主が入れ替っていたら、嫌悪すべき事情は薄まると見ることができる。したがって、客観的に見て通常の借主は気にしないだろうと判断されるならば、瑕疵担保責任も、契約締結上の過失も、不法行為責任の問題は生じない。


  ところで【不動産仲介業者に対して】
 入居決定に重要な影響を及ぼす事項は説明しなくてはならない

 賃貸を仲介する不動産業者は、入居希望者に対して自殺者が出たことを説明する義務があるでしょうか
 宅地建物取引業法は、宅地建物取引業者に対して重要事項の説明義務を科していますが、自殺者が出たことを説明しなければならないとは規定していません。

 しかし、重要事項として列挙されていなくても、アパートを借りるかどうかの意思決定に重要な影響をおよぼす事項は、賃貸借契約に付随する義務として、入居希望者に説明する義務があります。自殺者の出たアパートであることは、通常、入居を決める上で、極めて重要な事項だと考えられますので、入居希望者に説明しなければならないといえます。

 ところで、自殺者が出たことを説明しなかった場合、入居後に入居者が知って退去に至ることも考えられます。その際、入居者は、説明義務違反および債務不履行に基づいて、損害賠償請求、契約解除をすることができます。損害の中には、当然、敷金、礼金、引っ越し費用が含まれます。説明を受けていれば、入居者は、支払う必要のない費用だったのですから。

 では、いつまで自殺者が出たことを説明すべきかという問題ですが、永久にというわけではありません。次第に忘れ去られるものですから、常識的に判断するほかないと思われます。

 

Owners誌2003年9月号より

 

東京・台東借地借家人組合

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