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(問題4)火災と借地上の建物の修理と増改築

2007年09月28日 | 増改築・改修・修繕(借地)

(問題4)火災と借地上の建物の修理と増改築 
 ①火災の火元となった。2階居宅の一部が焼けたがボヤ程度で、居宅を使用できるように内装工事をしようと思うが、地主の許可は必要か。
 ②全焼で自宅を建替える場合、地主の許可は必要か。
なお、契約書では増改築や大規模修理は地主の承諾を必要とされている。



  ① (①地主の許可は必要。   ②地主の許可は必要ない。) 

 解答・解説は田見高秀弁護士(東借連常任弁護団)です。

 ①の解答(②地主の許可は必要ない。)
①の解説「台東借地借家人組合4」(2007年7月7日)ブログ参照 


   増改築禁止特約があっても
      改良工事(リフォーム)や修繕に
            承諾料を支払う必要はない

 (問) 借地上の建物の修復工事とリフォームを考えている。地主に承諾料を支払わないと工事は出来ないのか。内訳は外壁の亀裂の修理、屋根の葺替え及びベランダ・風呂場・台所のリフォーム。尚契約書には増改築特約がある。

  (答) 市販の借地契約書や不動産仲介業者が使用している契約書には「建物の増改築をする場合には事前に賃貸人の承諾を受けなければならない」という条項が挿入されている。これに違反した場合、地主は催告を要しないで借地契約を解除する旨の特約を無断増改築禁止特約と言う。しかし、常に借地人がこの契約条項に拘束されていては借地の利用が制約されてしまう。

 そこで増改築の承諾を巡る当事者の協議が調わない場合は裁判所が借地人の申立てにより、その増改築についての地主の承諾に代わる許可を与えることが出来る借地借家法17条)。これにより地主が増改築禁止特約を盾に増築や改築を認めない場合でも裁判所の代諾許可を得れば適法に増改築が行える。

 裁判所の許可の手続きをしないで無断増改築を行った場合、直ちに契約解除が認められるのか。

 判例は「賃借人が賃貸人の承諾をえないで増改築をした場合において、増改築が借地人の土地の通常の利用上相当であり、土地賃貸借に著しい影響を及ぼさないため、賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないときは賃貸人は特約に基づき解除権を行使することは許されない」(最高裁1966年4月21日判決)としている。

 つまり、無断増改築であっても、地主に対する信頼関係を破壊する恐れがあると認められない場合は契約の解除は出来ない。総ての増改築について地主の承諾が必要という訳ではない。

 それでは地主の承諾なしに増改築出来る範囲はどの程度なのか。

   前記最高裁の事案では、家族が居住していた2階建建物の一部の根太と2本の柱を取替え、2階6坪を14坪に増築し、外階段にして2階全部をアパートにして賃貸にしたケース。この程度なら地主の解除権は認められない。 既存建物の維持・保存に必要な通常の修繕修復工事や建物のリフォームが増改築禁止特約に触れないと言うことは勿論のことである。 


 

 ②全焼で自宅を建替える場合、地主の許可は必要か。
  
 (①地主の許可は必要。  ②地主の許可は必要ない。)

②の解答は(②地主の許可は必要ない。)
②の解説は「台東借地借家人組合4」(2007年7月10日)ブログ参照

 増改築を制限する特約付の場合でも
      火災後の再築には地主の承諾は不要

  (問) 火災で借地上の建物が焼失してしまった。20年間の借地契約の残存期間は4年であるが、再築することは出来るのか。又、地主の承諾がいるのか。

 (答)  借地借家法施行(1992年8月1日)前に設定された借地権については建物滅失後の建物築造に関しては、なお従前の例によるとされている(借地借家法附則7条)。

 最高裁は建物の《滅失》を次のように定義している。建物の滅失の原因が自然的であると人工的であると借地権者自身の任意の取壊しであると否とを問わず、建物が滅失した一切の場合を含むとしている(最高裁1963年5月21日判決)。

 相談者の事例は借地法7条が適用される。7条には次の趣旨のことが書かれている。
 ①借地権の存続期間が終了する前に借地上の建物が滅失しても借地権自体は消滅しない。
 ②従って借地人は新たに建物を築造することが出来る。
 ③その再築建物の耐用年数は、借地権の残存期間を超えることが多いので、地主が滅失建物の再築に「遅滞ない異議」がなければ借地権の存続期間の延長を認める。借地権の存続期間延長の起算点は、旧建物が滅失した時(事例では火災で建物が焼失した日)である。
 ④借地権は建物滅失の日から起算して堅固建物については30年間、その他の建物は20年間存続する。
 ⑤但し、残存期間の方が長い時は、その期間による。
 ⑥また、地主が借地人の再築に反対する旨の異議を遅滞なく述べた場合、その異議の効果は、従来の借地権の存続期間が延長されないだけである。勿論借地人は、借地契約の期間満了後に「借地法6条」による法定更新を主張することが出来る(最高裁1972年2月22日判決)。

 異議は遅滞なく述べなければならない。再築に着手しているにも拘らず、その完成間際になって異議を述べてもその異議は有効ではない(高松高裁1972年10月31日判決)。

  だが増改築を制限する特約がある場合はどうであろうか。
 実際の借地契約では増改築をする場合は地主の承諾が必要であり、承諾なしに増改築をすると地主は契約を解除出来るという特約条項がある。

 このような特約は建物が火災で焼失した場合にまで適用されるのか。
 借地法7条は、建物が滅失しても建物を再築することが出来ると規定している。7条の規定に反して再築を禁止する特約は、借地法11条の規定によって借地権者に不利なものとして無効とされる最高裁1958年1月23日判決)。

 従って増改築を制限する特約は火災・地震・風水害が原因で滅失した建物の再築までを制限したり禁止する趣旨ではないことは明らかである。判例も 「建物を新築する時は、地主の承諾を得る旨の特約があるとしても、この特約は、消失した建物を再築する際にも地主の承諾が必要である趣旨ではない」(東京高裁1958年2月12日判決)。

 このように増改築に制限のある特約がある場合でも火災によって建物が滅失し、それを再築する場合は地主の承諾は不要という結論になる。

 

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