東京・台東借地借家人組合1

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【Q&A】 借地の相続は地主の承諾がいるのか

2008年12月26日 | 借地の諸問題

(問) 私は借地上の建物に住んでいるのですが、父が亡くなり誰が相続人になるかについて相談しているのですが、相続に当たって地主の承諾がいるのでしょうか。
 また、相続人には居住者でなければ駄目なのでしょうか。


(答) 建物の相続は相続人の誰が相続人になろうが問題はありません。

 地主との関係でも借地権の相続には、地主の承諾は必要ありません。同居人以外の相続人が相続する場合も地主の承諾は要りません

  地主の中には、「土地を借りた本人が死んだのだから、土地は返してもらう」といってくる場合もありますが、借地権も他の遺産と同様、法的に当然、相続人が相続することになります。当然、名義書換料は発生しません。地主に名義書換料を支払うよう要求されても、支払い義務がないので、無駄な支払いは拒否してください。借地権の相続の場合、名義書換料の支払いは必要がありません。

 相続人が何人かいる場合は、共同で相続することになりますので、相続人間で協議して、借地権の相続人を決めて、地主に通知すればよいのです。誰が相続するかは、相続人が自由に決められますから、遠方に住んでいる相続人も借地人になれます。

 また、借地上の建物に相続人が住まなくても、借地権に問題は生じません。建物全部を貸す・部分的に部屋貸す場合でも地主の承諾は要りません。建物の賃貸借は自由にできます。借地上の建物を貸家として他人に貸しても借地を又貸し(転貸し)したことにはなりません。

 しかし、借地上の建物を地主の承諾なく売却(所有権を移転)すると、借地権を無断譲渡として借地の契約解除の問題が起きてきますのでご注意ください。

 

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【判例紹介】  自ら法律に反していながら法的救済を求めるのは信義則に反するとした事例

2008年11月07日 | 借地の諸問題

 判例紹介

 自ら法律に反していながら法的救済を求めるのは信義則に反するとした建築距離違反の事例 大阪地裁昭和63年9月26日判決、判例タイムズ695号)

 (事案)
 Aは甲土地、Bは乙土地をそれぞれ所持し両土地と隣接している。

 Aは両土地の境界線をイ、ロを直線で結んだ線(B地に食い込んだ線上を境界と主張)であるとして境界の確定を請求し、同時にBが民法234条で定める建築距離である境界線から50cm空けずに建物を築造しているため、本来空地であるべき土地部分を利用できなかった損害賠償としてBに対し40万円の支払を求めた。

 BはAの主張する境界線を争い(結果、Aの主張は認められず、Aには不利な境界が確定)、Bの建築物が仮に民法234条に違反しているとしても、A自身(昭和48年に建築)も同条に違反しているから、Aの請求は認められないとして争った。

 (判決)
 「信義則上、およそ法的救済を求めんとするものは自ら潔き手を持って来るべし(*)、という要請があると解すべきであるところ、AはBに対し民法234条の遵守を求め、これに従わなかったとして賠償を請求しているけれども、右認定のとおりA自身も同条に違反しているので、それは右信義則に反することになる。一般に、信義則違反の事実が認められる場合で、強行法規が適用される場合には、その強行法規の強行性の程度、内容と法の目的に照らして衡量し、後者が前者に優位するときに限り信義則の法的効果を承認することができると解すべきである。」

 (寸評)
 判決は、民法234条のうち火災の延焼防止の目的は公益的要素の強いものであるが、隣地上の築造、修繕の便宜、日照、通風の確保等の利益の保護は利益的要素に属するとして、A、B双方の建物が耐火建築物であることを考慮し、本件では民法234条はそれほど強い強行性があるといえないとしている。

 強行法規に反した相手方の行為と信義則の関係につて参考となる事例であるので照会した。

(1992.12.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より 

 


 

 参考法令
 民法 (境界線付近の建築の制限)
第234条  建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない。

2  前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から1年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。

(*)クリーンハンドの原則・・・・「自ら法を尊重するものだけが法の尊重を要求することができる」という原則である。即ち、自ら法を尊重するものだけが、法の救済を受けるという原則で、自ら不法に関与した者には裁判所の救済を与えないという意味である。

 

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【判例紹介】 借地上の建物を取壊し有料駐車場にしたが、契約解除を認めなかった事例

2008年11月05日 | 借地の諸問題

 判例紹介

 借地上の建物を取壊してアスファルト舗装をし有料駐車場にしたが、契約解除が認められなかった事例 東京高裁平成2年4月26日判決、判例時報1351号)


 (事案)
 借地人は、木造建物所有の目的で借地していたところ、昭和61年に借地上の建物を取壊してアスファルト敷きにして、「月極駐車場」の看板を出し、9台分の駐車場として使用していた。

 地主は、借地を他人に使わせるので無断転貸であり、また建物所有のために貸したのに駐車場に使用するのは借地の使用目的に違反している、 と主張して契約の解除をした。

 第一審裁判所の千葉地方裁判所木更津支部は、地主の主張を認めたが、本判決である第二審の東京高等裁判所は、借地人勝訴の逆転判決をした。


 (判決の要旨)
 借地人が本件土地を有料駐車場として使用していることは、本件土地の無断転貸にあたるし、本件賃貸借契約で定められた用法にも違反する。

 しかし、次の理由から、本件賃貸借関係は、未だ解除を相当とするほど信頼関係が破壊されたものとはいえないので、解除は許されない。

 借地人は、本件土地上の建物を以前貸家として使用していたが、1年以上借手がつかず、空家のままであった。庭には雑草がはびこり、浮浪者が入り込んだりして火災の発生する危険もあったので、建物がかなり老朽化していることも考慮して、とりあえず本件土地を駐車場として使用する目的で建物を取壊して整地及び舗装をしたことが認められる。

 舗装はアスファルトによる簡易なもので、建物敷地への復元は容易であり、駐車場といっても他に何等の設備ないし施設はなく、駐車料金は月額5000円程度であるから、借地人の利益は本件土地賃料と大差がないこと、借地人は、昭和63年中に「月極駐車場」の看板を撤去したことが認められる。

 借地人が借地上の建物を取壊したのはそれなりの合理的な理由に基づいており、有料駐車場としての利用は、利用者の利用関係の解消は困難ではなく、暫定的かつ小規模なものであって、その原状への復元も容易である。


 (短評)
 借地を駐車場にして他人に貸すケースがある。地主がこれを承知していても、契約更新のときなどに駐車場使用を理由に解除を迫ってくることも珍しくない。

 判断の微妙な違いにより、本判決と一審の地方裁判所の結論が分かれている。

(1990.09.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 賃料支払を遅滞したとき無催告解除の特約の効力が生じないとされた事例 

2008年10月04日 | 借地の諸問題

 判例紹介

 土地賃貸借契約において、2回以上賃料の支払いを遅滞したときは無催告解除できる旨の特約がある場合に、借地人が賃料の支払いを2回滞納したことを理由とする無催告解除の意思表示が効力を生じないとされた事例 (東京高裁昭和61年9月17日判決、判例時報1210号54頁以下)

 (事案)
 XはYに対し、昭和54年12月1日、土地を、期間30年、賃料1か月25万円、毎年5月、11月各末日6か月分前払、Yが賃料の支払いを2回以上遅滞したときは、Xは、何ら催告をしないで、賃貸借契約を解除することができる(無催告解除の特約)の約定で賃貸した。

 ところが、Yは、Xに対し、次の通り、賃料を支払い、昭和55年9月分以降の賃料は支払っていない。
 (1)、 昭和55年1月
     昭和54年12月分から昭和55年5月分までの賃料
 (2)、 昭和55年9月
     昭和55年6月分、7月分 
 (3)、 その後 
     昭和55年8月分

  そこで、Xは、昭和54年8月、重度障害である労働者を多数雇用して、印刷、製本の受注、加工、販売等の事業を営むことを目的として設立されたYの取締役 に当初から就任していたことを主張した。

 第一審宇都宮地裁は、Xの請求を認め、Yに対し、建物収去と土地明渡の判決を言い渡した。これに対し、Yは右判決を不服として東京高裁に控訴した。

 (判決要旨)
 右の無催告解除の特約は、賃貸借契約が当事者間の信頼関係を基礎とする継続的債権関係であることにかんがみれば、右の2回以上の賃料の不払いを理由として契約を解除する際、催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存在する場合に限り、その効力を肯定すべきものである。

 右のような立場に立って、検討するに、Yの履行遅滞の程度は契約の当初から相当なものであるといわなければならない。しかしながらYが前記の目的を持って設立されたこと、Xが当初からYの取締役であったこと、Yが、助成金の受給資格の申請中、窓口機関から、賃料の前払いは、助成金の先喰いになり、不適当ではないかと指摘を受け、Xにも伝えたことなどを総合すると、本件の場合、催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存在するというには躊躇されるのであって、結局、右解除の意思表示はその効力を生ずるに由ないものといわなければならない。

 (短評)
 本判決は、一審判決を覆した逆転救済判決であり、本件無催告解除の特約自体が無効とされたものでないことに留意すべきである。

 賃貸契約関係において、賃料支払義務は、基本的なものであり、この違反に対しては、裁判所が、当然ながら、厳しい態度を堅持していることを知る必要がある。

(1987.01.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【Q&A】 相続開始後の同居相続人の建物継続使用は無償の使用貸借契約が成立する

2008年10月03日 | 借地の諸問題

 (問) 5年前に同居していた父が亡くなり、末弟の私が家業の酒屋を継いで母を扶養していたが、その母も2年前に亡くなった。2人の兄は家業を継がずに独立し、別に世帯を持っている。遺産分割の話合いのこじれが原因で借地上建物の占有使用は不当利得だから賃料(家賃)相当額分の利得金の支払請求をしてきたが、この支払請求には納得がいかない。


 (答) 相続人の中の誰かが親(被相続人)の遺産である建物に同居して生活していた場合、相続が開始されても、建物にそのまま居住・使用するのが通常である。

 しかし、遺産分割の話合いがこじれ、建物占有者に対する不平・不満を他の相続人が主張する場合、不法行為又は不当利得を原因として賃料相当額の賠償金又は利得金の支払請求をする例が多い。

 即ち複数の相続人がいる場合、自分の持分に相当する範囲を超えて建物全部を占有・使用していることは、建物を使用していない相続人に損害を与えている。それらの共有物の使用は賃料相当額の賠償金又は不当利得である。従って、非同居相続人に賃料相当分を支払えという理窟である。

 父親(被相続人)の死亡によって、突然それまでの建物使用が不当利得だから賃料を支払え、不法占有だとされては納得がいかないのは当然である。

 相談事例に類似した裁判で最高裁が下した判断は次の通りである。
共同相続人の一人が相続開始から、被相続人の許諾を得て遺産の建物で同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と同居の相続人との間で、相続開始後も、遺産分割により建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認」されるとした。

 その上で「被相続人が死亡したときは、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人らが貸主となり、同居の相続人を借主とする、建物の使用貸借契約関係が存続することになる」(最高裁平成8年12月17日判決)と判示した。親と同居していた相続人に対する不当利得返還請求は請求理由がないとして非同居相続人の主張を認めなかった。

 そもそも使用貸借は基本的に無償で目的物を使用させるものである。相談者の場合は、判例から無償の使用貸借契約に基づく占有・使用という法律的理由が存在することになる。従って兄達の利得金(賃料・家賃)請求は理由がないから、当然請求されている利得金を支払う義務はない。

 

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【判例紹介】 賃料不払を理由にした契約解除を特段の事情があるとして解除を無効とした事例

2008年09月29日 | 借地の諸問題

 判例紹介

 約17か月分の賃料不払を理由とする借地契約の催告解除につき、背信行為と認めるに足りない特段の事情があったとして、右解除を無効とした事例 東京地裁平成元年12月27日判決、判例時報1359号78頁)

 (事案)
 借地人Yは地主Xの先代と昭和8年頃より借地関係を継続し、本件まで地代の遅滞等の紛争を起さなかった。地代は事実上年払が多く、Xが便宜取立てに赴く慣行もあった。

 Yは昭和61年12月28日、60年分の地代不足分約13万円と61年年分約170万円の支払を62年1月半ばまでの猶予を申出てXの了承を得た。しかしYはそれまでに支払わなかった。この間Yの次男が重病になった。

 Xは62年6月16日、同年5月分までの滞納地代総額約255万円を3日以内に支払うよう催告の上借地契約を解除した。Yは解除の前後を通じ誠意ある対応を採ったが、XはYに会うことを避けた。

 (判決要旨)
 遅延期間は支払猶予の時点から計算すれば5か月程度に過ぎない。この間に支払わなかったYは強く非難されるべきであるが、次男の病状のことや、事実上は原告が取立てに赴いたり、年末まで猶予したりする長年の慣行に照らすならば、この一時をもって数10年も続いている本件契約の解除を直ちに相当ならしめるほど高度の背信性があるとは言えない。しかも、Xの催告に対してYは催告期間内及び期間後直ちにX宅や事務所を訪ね真摯な対応をしており、催告期間内②弁済の事実が認められない点も催告金額と期間(3日間)及びそのための対応を考えると、やはり背信性が極めて高いとはいえない。

 以上のとおり、Yの背信性はさほど強いものではなく、加えてまた、XY間の賃貸借関係が長期に及んでおり、しかもその間正常な関係が保たれてきたこと、Yはその不注意を法律の無知から紛争を引き起こしたものの、その後供託もし経済的に問題もなく信頼関係の復旧に努めていることに照らせば、催告期間中ないしその直後にXがYに対し地代支払についてしかるべき協議に応じてやっておれば、正常な賃貸借関係の継続が十分可能であったと考えられる。そうすると、結局本件の解除についてはXY間の信頼関係を破壊しない特段の事情があるということができる。

 (寸評)
 判決はもとより正当である。こういう判例があるからといって賃料の支払がルーズであっていいわけでは決してない。5か月分の滞納で解除を認めなかった例もあれば、4か月分の滞納で解除を認めた例もある。いうまでもなく賃料債務は賃借人の最も重要な債務であり、Yの不払は重要な義務違反である。だから賃貸人側も契約解除し易い。

 当事者間の信頼関係を破壊すると認めるに足りない特段の事情があれば解除は認められないのが通説・判例だが、それはあくまで最後の砦だ。

(1990.12.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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固定資産税評価証明発行で都主税局が懇談拒否

2008年07月29日 | 借地の諸問題

 東京都主税局は、固定資産税課税台帳の評価証明と閲覧問題で「契約書が存在せず、賃料を供託している場合には、供託書の提示のみでは真に権利を有する賃借人であるかどうか確認できない」との見解を昨年10月に発表した。

 東借連では、昨年11月に主税局と交渉し、評価証明を発行できない法的根拠を求め、総務省及び法務省に照会するよう求め、今年2月に総務省固定資産税課と会談し、都主税局の見解について総務省の意見を聞いた。

 総務省は「借地借家人に対しては原則公開であり、真に賃借人であるかどうかの立証責任は税務当局にある」との説明がされた。

 6月19日に日本共産党曽根肇都議を通じ主税局に要請書を渡し懇談を申し入れたところ、6月24日になって主税局は「東借連への回答について総務省に確認したところ、そういう話はしていないといっている。事実と違う。東借連の要請内容では土台が違うので懇談には応じられない」と拒否してきた。

 6月27日に東借連の役員6名は、曽根都議と面会し、今後の対応について相談した。主税局が東借連との懇談を拒否してきたことは、総務省との協議で主税局の先の見解に矛盾が生まれ、追い詰められた証拠である。

 都主税局の見解は借地借家人に原則公開を認めた平成14年の地方税法改正の趣旨を逸脱するもので、東借連では引続き不当な見解の撤回を求めていく。現在多くの地方自治体では契約書がなくても供託書のみで評価証明を発行している。

 

東京借地借家人新聞より

 

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借地人の土地に地主が7年間も無料駐車 (東京・荒川区)

2008年06月17日 | 借地の諸問題

 荒川区南千住*丁目で昭和45年から11・5坪の借地をしている。Aさんは平成12年頃、地主から一時借地内に車を置かせてくれと頼まれて一時使用料として5万円を受け取り承諾した。

 しかし、その後、1年が経過しても地主は車を移動せずに時々使用するのみであった。Aさんは車が駐車している所は以前から洗濯物を干していた場所である。地主は、Aさんが80近い高齢者であり、すでにご主人を亡くしている事もあって勝手に鉄骨を立てその上に簡単な物干場を作りそこを利用するようにと言ってきた。

 Aさんは、最初に5万円を受け取ったため、しばらく我慢をしていたが、坪1086円の地代も払っているのにその上に7年間も無料で駐車を認める訳にはいかないと地主に申し出た。

 地主は、今年9月が更新だからその時は更新料を安くしてあげる等々といって全く話し合いにならなかった。Aさんは組合に相談して入会し、車を地主が撤去するまで更新料は支払う意思のないことを申し出る決意である。

 

東京借地借家人新聞より

 

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【Q&A】 20年の借地契約の途中で堅固建物へ建替えたが契約期間は30年に自動的に延長されるのか

2008年04月30日 | 借地の諸問題

 (問) 昭和63年に父名義で借地の更新をした。その3年後に父が亡くなり、私が借地権を相続した。建物が老朽化していたので、平成5年に建替承諾料290万円を支払って木造2階建てから鉄骨4階建てへ建替えた。だが、借地契約書は父名義・存続期間20年のままで、存続期間30年の契約へ書換えずにいた。 地主は20年経ったので借地の更新だと言って坪10万円の更新料を請求してきた。建替承諾を受けて堅固建物を建てたのだから契約書を取交わさなくても、存続期間30年の契約に自動的に延長されるのではないか。


 (答) 借地借家法は平成4年8月1日から施行されている。それ以前に設定された借地権については「建物の滅失後の建物築造による借地権の期間の延長に関してはなお、従前の例による。」(借地借家法附則7条)とされている。この場合には旧「借地法」が適用される。

 借地法7条は借主が残存期間を超える耐用年数のある建物を再築することに対して貸主が遅滞ない異議を述べなかった場合、借地権は建物滅失の日から、堅固な建物については30年間、その他の建物については20年間存続する。但し、残存期間がこれよりも長い時はその期間による。このように建物再築による期間延長を規定する。即ち再築による法定更新を定めている。

 ここでの「滅失」は「建物滅失の原因が自然的であると人工的であると、借地権者の任意の取壊しであると否とを問わず、建物が滅失した一切の場合を含む」(最高裁昭和38年5月21日判決)。即ち、火事による建物の焼失や地震・台風による建物の倒潰の他に借主が再築のために建物を取壊す場合も含まれる。

 借地法7条にある貸主の異議申立ては、貸主に正当事由は必要がないが、存続期間の延長を妨げるだけのものである。貸主が異議を述べても借主は建物を取り壊す必要はない。従来の存続期間が満了した時は、借地法6条による更新の規定が適用される(最高裁昭和47年2月22日判決)とされているので、借主は法定更新を主張できる。勿論、借地法4条の更新請求による法定更新も主張できる。

 なお、借地法4条、6条による法定更新の場合は朽廃による借地権の消滅が問題になるが、7条による法定更新の場合は期間の途中で朽廃があっても借地権は消滅しない点に違いがある。

  結論、相談者の場合は、平成5年に貸主が堅固建物への建替えを承諾しているから、貸主の異議申立に関しては問題にならない。従って、借地法7条の規定から借地権の存続期間延長の起算点は旧建物滅失した時からである。即ち、旧建物を解体し、取壊しが完了した日が起算点となり、存続期間30年の借地契約が法定され、借地期間の延長を主張出来る。

 参考として借地法7条の条文上は存続期間の起算点は「建物滅失の日」となっている。しかし、20年以上も時間が経過すると滅失日が確定できない場合もある。そこで「建物保存登記日」を存続期間の起算点とした例もある(東京地裁昭和48年7月25日判決)。

 また、建替承諾の許可の裁判確定の時を存続期間の起算点とした例もある(千葉地裁昭和43年7月11日判決)。

 借地借家法(7条1項)では「借地権は、承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から20年間存続する。」となっている。

参考法令 (借地法
第7条 借地権ノ消滅前建物カ滅失シタル場合ニ於テ残存期間ヲ超エテ存続スヘキ建物ノ築造ニ対シ土地所有者カ遅滞ナク異議ヲ述ヘサリシトキハ借地権ハ建物滅失ノ日ヨリ起算シ堅固ノ建物ニ付テハ30年間、其ノ他ノ建物ニ付テハ20年間存続ス
但シ残存期間之ヨリ長キトキハ其ノ期間ニ依ル

 

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レオパレス21と地主が勝手に地境の植木を伐採し、ブロック塀を (東京・町田市)

2008年03月28日 | 借地の諸問題

 町田市小川で50坪を借地しているAさんのところに、今年の1月にレオパレス21町田店より自宅の北側の地主の土地に共同住宅を建築するための「建築計画のお知らせ」が届けられました。

 その後、地境に植えられている植木の枝が越境しているので伐採してほしいとの要望がありAさんは快く枝を掃いました。ところが、営業している理髪店がお休みでAさんが外出中に、レオパレスは植木を根から伐採し、勝手に測量した地境にブロック塀を途中までつくってしまいました。

 地主に抗議すると、「これで勘弁してくれ」とお金を置いていったり、「あなたの親父の墓にあやまってくる」と分けのわからないことを言い出す始末。Aさんはお金をつき返し、組合に相談し、早速組合から内容証明郵便で「借地人の同意の得てない境界は一切認められない。塀の築造を中止し、借地人と協議の上境界線を明確にしてください」と通知しました。

 レオパレスはAさんに謝り、測量士を伴って以前の測量図面を修正したものを持って組合事務所を訪問して説明しました。2月27日に現地で地主とレオパレス、Aさんと組合役員と測量士が立ち会い、水糸をはって地境を確認しました。

 その後、境界確認書を双方で署名捺印し、境界がはれて確定しました。この結果、Aさんの借地面積は50・86坪となりました。すでに築造したブロック塀は撤去し、境界線の外側に沿ってブロック塀を作ることも確認しました。

 

全国借地借家人新聞より

 

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【判例】 *不動産の取得時効完成後に譲渡を受けて所有権移転登記をした者が背信的悪意者とされた事例

2008年01月18日 | 借地の諸問題

 判例紹介


  平成18年01月17日 最高裁第三小法廷判決 平成17年(受)第144号 所有権確認請求本訴,所有権確認等請求反訴,土地所有権確認請求事件


<要旨>
 不動産の取得時効完成後に当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した者が背信的悪意者に当たるとされた事例


<内容>
 (件名)  所有権確認請求本訴,所有権確認等請求反訴,土地所有権確認請求事件 (最高裁判所 平成17年(受)第144号 平成18年01月17日 第三小法廷判決 一部棄却,一部破棄差戻し)
 (原審)  高松高等裁判所 (平成14年(ネ)第213号)

 

 

主    文


 1 原判決のうち別紙記載の部分を破棄する。
 2 前項の部分につき,本件を高松高等裁判所に差し戻す。
 3 上告人らのその余の上告を棄却する。
 4 前項に関する上告費用は上告人らの負担とする。

 

理    由


 上告代理人早渕正憲の上告受理申立て理由について
 1 原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
 (1) 上告人らは,鮮魚店を開業する目的で,平成7年10月26日,A社から徳島県鳴門市▲▲▲231番2,232番3及び275番1の各土地を購入して,同日付けで,その所有権移転登記を了した。
 上告人らは,上記開業のための資金の融資を受ける予定の取引銀行から,上記各土地の公道(国道▲号線)に面する間口が狭いとの指摘を受けたため,その間口を広げる目的で,平成8年2月6日,Bから同所234番の土地(地目ため池,地積52㎡。以下「本件土地」といい,上記各土地と併せて「本件土地等」という。)を代金80万円で購入して,同月13日付けで,その所有権移転登記を了し,また,同年4月18日,Cから同所274番2の土地を購入して,同日付けで,その所有権移転登記を了した。

 (2) 被上告人は,本件土地の西側に位置する同所231番1,232番1,232番2,233番2及び235番3の各土地を所有し,同所231番1及び232番1の各土地上に通称「D会館」と呼ばれる建物(以下「本件建物」という。)を所有している。
 なお,上記の各土地の公図上の位置関係は,第1審判決別紙公図の写しのとおりである。

 (3) 第1審判決別紙図面(以下「本件図面」という。)の(1),⑤,④,(2),②,①,(3),(4),3105,(5),⑥,(6),(1)の各点を順次直線で結んだ線で囲まれた部分(以下「本件通路部分」という。)は,コンクリート舗装がされており,国道▲号線から被上告人所有の本件建物への進入路として利用されている。
 本件通路部分は,Eが,昭和48年3月から,同所231番1,232番1,232番2の各土地及びその地上建物(昭和45年建築。以下「従前建物」という。)のための専用進入路として,所有の意思をもって,上記各土地並びにそのころ取得した同所233番2及び235番3の各土地の一部と信じて,占有使用するようになったものであり,Fら10名が,昭和61年4月にEから上記各土地及び従前建物を購入し,その約3か月後,本件通路部分をコンクリート舗装したものである。そして,被上告人は,平成3年7月,Fら10名から上記各土地及び従前建物の現物出資を受け,本件通路部分を引き続き従前建物及びその後建築された本件建物のための専用進入路として使用して現在に至っている。

 (4) 本件土地の位置は,本件図面の3104,⑤,3102,3100,3101,(3),(4),3105,(5),⑥,3106,3104の各点を順次直線で結んだ線で囲まれた部分である。
 本件通路部分のうち,本件図面の(1),⑤,3104,(1)の各点を順次直線で結んだ線で囲まれた部分は,上告人ら所有の同所232番3の土地の一部であり,本件図面の(1),(6),⑥,3106,3104,(1)の各点を順次直線で結んだ線で囲まれた部分(以下「本件通路部分A」という。)は,被上告人所有の同所232番2及び233番2の各土地の一部である。

 2(1) 本件本訴請求事件は,上告人らが,被上告人に対し,本件土地の位置が本件図面の3100,3101,①,3103,3105,3107,⑦,⑥,3106,3104,⑤,3102,3100の各点を順次直線で結んだ線で囲まれた部分(以下「本件係争地」という。)であると主張し,上告人らが本件係争地につき所有権を有することの確認を求めるとともに,本件係争地のうち本件図面の3105,3103,①,②,③,④,⑤,3104,3106,⑥,(5),3105の各点を順次直線で結んだ線で囲まれた部分内のコンクリート舗装の撤去を求めるものである。
 これに対し,被上告人は,(ア) 本件係争地のうち本件通路部分と重なる部分(以下「本件通路部分B」という。)は,被上告人所有の同所232番2,233番2及び235番3の各土地に当たる,(イ) 仮に(ア)が認められないとしても,被上告人は,前々主及び前主の占有を併せて,昭和48年2月から20年間本件通路部分Bを占有したことにより,所有権又は通行地役権を時効取得した,(ウ) 仮に(ア),(イ)が認められないとしても,同所233番2及び235番3の各土地は幅が2mしかなく自動車の通行が不可能であるから,被上告人は,本件通路部分Bについて,囲繞地通行権を有する(エ) 仮に(ア),(イ),(ウ)が認められないとしても,上告人らは被上告人を困惑させる目的で本件土地を廉価で購入したものであるから,上告人らの請求は権利の濫用に当たるなどと主張した。

 (2) 本件反訴請求事件は,被上告人が,上告人らに対し,(ア) 本件通路部分のうち本件通路部分Aを除く部分(以下「本件通路部分A ̄(判文中ではAと ̄が一体で標記されている。以下同じ)」という。)は,被上告人所有の同所232番2,233番2及び235番3の各土地に当たる,(イ) 仮に(ア)が認められないとしても,被上告人は,前々主及び前主の占有を併せて,昭和48年2月から20年間本件通路部分A ̄を占有したことにより,所有権又は通行地役権を時効取得したなどと主張し,主位的に,被上告人が本件通路部分A ̄につき所有権を有することの確認を求め,予備的に,被上告人が本件通路部分A ̄につき通行地役権を有することの確認を求めるものである。

 (3) 上告人らは,被上告人の(1)(イ)及び(2)(イ)の各主張に対して登記の欠缺を主張し,被上告人は,これに対して上告人らが背信的悪意者に当たると主張した。

 (4) なお,被上告人は,第1審において,本件通路部分の全体につき所有権確認等を求めていたところ,このうち本件通路部分Aの所有権確認を求める部分は,第1審で認容され,上告人らから不服申立てがなかったので,原審での審理判断の対象とならなかったものである。

 3 原審は,前記事実関係の下で,次のとおり判断し,上告人らの本訴請求を本件係争地のうち本件図面の⑤,3102,3100,3101,①,②,(2),④,⑤の各点を順次直線で結んだ線で囲まれた範囲内の土地が上告人らの所有に属することの確認を求める限度で認容し,その余を棄却し,被上告人の反訴請求(主位的請求)を全部認容した。

 (1) 本件土地の位置は,本件図面の3104,⑤,3102,3100,3101,(3),(4),3105,(5),⑥,3106,3104の各点を順次直線で結んだ線で囲まれた部分と認められるから,上告人らの本訴請求のうち,本件図面の3105,3107,⑦,⑥,(5),3105の各点を順次直線で結んだ線で囲まれた範囲内の土地の所有権確認を求める部分は,理由がない。

 (2) 本件通路部分A ̄の取得時効の成否について検討するに,被上告人の前々主は,昭和48年3月,本件通路部分A ̄を所有の意思をもって占有を始め,昭和61年4月,被上告人の前主がその占有を承継し,さらに,被上告人が引き続き所有の意思をもって占有を継続したことが認められるから,被上告人は,昭和48年3月から20年が経過した平成5年3月に本件通路部分A ̄の所有権を時効取得したものというべきである(なお,昭和61年4月からの前主の占有がその開始時において善意無過失であったとは認められない。)。
 上告人らは,上記時効完成後の平成7年10月に同所231番2,232番3及び275番1の各土地を,平成8年2月6日に本件土地を,同年4月18日に同所274番2の土地をそれぞれ購入したことが認められるところ,上告人らは,上記各土地の購入時において,(ア) 被上告人所有の同所232番1及び231番1の各土地上に従前建物と本件建物が建っており,被上告人が本件土地の大部分と重なる本件通路部分A ̄をその専用進入路としてコンクリート舗装した状態で利用していること,(イ) 被上告人が本件通路部分を利用できないとすると,公道からの進入路を確保することが著しく困難となることを知っていたことが認められる。そして,上告人らが被上告人を困惑させる目的で本件土地を購入したものとは認められないが,上告人らにおいて調査をすれば,被上告人が本件通路部分A ̄を時効取得していることを容易に知り得たというべきであるから,上告人らは,被上告人が時効取得した所有権について登記の欠缺を主張する正当な利益を有しないといわざるを得ない。

 4 しかしながら,原審の上記判断(2)は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 (1) 時効により不動産の所有権を取得した者は,時効完成前に当該不動産を譲り受けて所有権移転登記を了した者に対しては,時効取得した所有権を対抗することができるが,時効完成後に当該不動産を譲り受けて所有権移転登記を了した者に対しては,特段の事情のない限り,これを対抗することができないと解すべきである(最高裁昭和30年 (オ) 第15号同33年8月28日第一小法廷判決・民集12巻12号1936頁,最高裁昭和32年 (オ) 第344号同35年7月27日第一小法廷判決・民集14巻10号1871頁,最高裁昭和34年 (オ) 第779号同36年7月20日第一小法廷判決・民集15巻7号1903頁,最高裁昭和38年 (オ) 第516号同41年11月22日第三小法廷判決・民集20巻9号1901頁,最高裁昭和41年 (オ) 第629号同42年7月21日第二小法廷判決・民集21巻6号1653頁,最高裁昭和47年 (オ) 第1188号同48年10月5日第二小法廷判決・民集27巻9号1110頁参照)。
 上告人らは,被上告人による取得時効の完成した後に本件通路部分A ̄を買い受けて所有権移転登記を了したというのであるから,被上告人は,特段の事情のない限り,時効取得した所有権を上告人らに対抗することができない。

 (2) 民法177条にいう第三者については,一般的にはその善意・悪意を問わないものであるが,実体上物権変動があった事実を知る者において,同物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情がある場合には,登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しないものであって,このような背信的悪意者は,民法177条にいう第三者に当たらないものと解すべきである(最高裁昭和37年 (オ) 第904号同40年12月21日第三小法廷判決・民集19巻9号2221頁,最高裁昭和42年 (オ) 第564号同43年8月2日第二小法廷判決・民集22巻8号1571頁,最高裁昭和43年 (オ) 第294号同年11月15日第二小法廷判決・民集22巻12号2671頁,最高裁昭和42年 (オ) 第353号同44年1月16日第一小法廷判決・民集23巻1号18頁参照)。
 そして,甲が時効取得した不動産について,その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において,乙が,当該不動産の譲渡を受けた時点において,甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており,甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは,乙は背信的悪意者に当たるというべきである。取得時効の成否については,その要件の充足の有無が容易に認識・判断することができないものであることにかんがみると,乙において,甲が取得時効の成立要件を充足していることをすべて具体的に認識していなくても,背信的悪意者と認められる場合があるというべきであるが,その場合であっても,少なくとも,乙が甲による多年にわたる占有継続の事実を認識している必要があると解すべきであるからである。

 (3) 以上によれば,上告人らが被上告人による本件通路部分A ̄の時効取得について背信的悪意者に当たるというためには,まず,上告人らにおいて,本件土地等の購入時,被上告人が多年にわたり本件通路部分A ̄を継続して占有している事実を認識していたことが必要であるというべきである。
 ところが,原審は,上告人らが被上告人による多年にわたる占有継続の事実を認識していたことを確定せず,単に,上告人らが,本件土地等の購入時,被上告人が本件通路部分A ̄を通路として使用しており,これを通路として使用できないと公道へ出ることが困難となることを知っていたこと,上告人らが調査をすれば被上告人による時効取得を容易に知り得たことをもって,上告人らが被上告人の時効取得した本件通路部分A ̄の所有権の登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する第三者に当たらないとしたのであるから,この原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決のうち別紙記載の部分は破棄を免れない。そして,上告人らが背信的悪意者に当たるか否か等について更に審理を尽くさせるため,上記部分につき,本件を原審に差し戻すとともに,上告人らのその余の上告を棄却することとする。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。


 (裁判長裁判官 濱田邦夫 裁判官 上田豊三 裁判官 藤田宙靖 裁判官 堀籠幸男)


(別紙)

 1 上告人らの被上告人に対する本訴請求のうち
 (1) 第1審判決別紙図面の①,②,(2),④,⑤,3104,3106,⑥,(5),3105,3103,①の各点を順次直線で結ぶ線で囲まれた範囲内の土地の所有権確認請求を棄却した部分
 (2) 第1審判決別紙図面の①,②,③,④,⑤,3104,3106,⑥,(5),3105,3103,①の各点を順次直線で結ぶ線で囲まれた範囲内の土地のコンクリート舗装の撤去請求を棄却した部分
 2 被上告人の上告人らに対する反訴請求のうち第1審判決別紙図面の①,②,(2),④,⑤,(1),3104,3106,⑥,(5),3105,(4),(3),①の各点を順次直線で結ぶ線で囲まれた範囲内の土地の所有権確認請求を認容した部分
 

 

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【判例】 *平成18年02月07日最高裁判決(建物明渡請求事件)

2008年01月12日 | 借地の諸問題

 判例紹介


  平成18年02月07日 最高裁第三小法廷判決 平成17年(受)第282号 建物明渡請求事件

 <要旨>
 買戻特約付売買契約の形式が採られていても,目的不動産の占有の移転を伴わない契約は,特段の事情のない限り,債権担保の目的で締結されたものと推認され,その性質は譲渡担保契約と解するのが相当である。


 <内容>
 (件名) 建物明渡請求事件 (最高裁判所 平成17年(受)第282号 平成18年02月07日 第三小法廷判決 破棄自判)
 (原審) 福岡高等裁判所 (平成16年(ネ)第378号)

 

 

主    文

  1 原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。
 2 被上告人の請求をいずれも棄却する。
 3 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。

 

理    由

 上告人らの上告受理申立て理由について

 1 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。

 (1) 上告人株式会社Y1(以下「上告会社」という。)は,平成13年12月13日当時,第1審判決別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)及びその敷地である同目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を所有していた。

 (2) 平成12年11月13日,被上告人は,上告人Y2に対し,利息を月3分とする約定で,1000万円を貸し付け(以下「別件貸付け」という。),その担保として,有限会社Aとの間で,同社の所有する土地及び建物について譲渡担保契約を締結した(以下,この契約の契約書を「別件契約書」という。)。

 (3) 上告人Y2は,別件貸付けに係る利息ないし遅延損害金として,同年12月12日,平成13年2月5日,同年3月6日,同年5月8日,同年6月8日にそれぞれ30万円を支払ったのみで,それ以降の弁済をしなかった。そこで,被上告人は,別件貸付けに係る債権について,少なくとも利息を回収するため,上告人Y2が代表取締役を務める上告会社との間で,上告会社所有の本件土地建物について買戻特約付売買契約を締結することを考えた。

 (4) 平成13年12月13日,被上告人と上告会社とは,いったん,本件土地の売買代金を700万円,本件建物の売買代金を100万円,買戻期間を平成14年2月28日までとする買戻特約付売買契約を締結することに合意して契約書(以下「変更前契約書」という。)を作成し,司法書士に対し,登記手続を依頼した。

 (5) しかし,被上告人代表者は,司法書士が退去した後,売買代金は,合計800万円ではなく,合計750万円でなければ契約を締結することができないと言い出し,上告人Y2も,750万円の方が買戻しをしやすいとしてこれに応じたことから,被上告人と上告会社は,本件土地の売買代金を650万円,本件建物の売買代金を100万円とし,上告会社は平成14年3月12日までに上記売買代金相当額及び契約の費用を提供して本件土地建物を買い戻すことができる旨の内容の買戻特約付売買契約(以下「本件契約」という。)を締結し,変更前契約書の内容を改めた契約書(以下「本件契約書」という。)を作成した。

 (6) 被上告人は,本件契約日に,上告会社に対し,売買代金750万円のうち400万円を支払うこととしたが,上告会社の了承の下,400万円から,買戻権付与の対価として67万5000円,別件貸付けの利息9か月分として270万円,登記手続費用等の支払に充てるべく司法書士に預託した41万円,以上合計378万5000円を控除し,21万5000円を上告会社に交付した。
 別件貸付けの利息として支払われた270万円の領収証には,そのただし書欄に「利息」と明記されているのに対し,買戻権付与の対価として支払われた67万5000円の領収証にはその記載がない。

 (7) 本件契約日の翌日,被上告人は,司法書士が本件土地建物について変更前契約書の内容で登記手続を完了したことを確認し,上告会社に対し,売買代金の残金350万円を支払った。

 (8) 上告会社は,平成14年3月12日までに本件契約に基づく買戻しをしなかった。

 (9) 本件契約には,買戻期間内に本件土地建物を上告会社から被上告人に引き渡す旨の約定はなく,本件建物は本件契約日以降も上告人らが共同して占有している。

 (10) 本件訴訟は,被上告人が上告人らに対し,本件契約は民法の買戻しの規定が適用される買戻特約付売買契約(以下「真正な買戻特約付売買契約」という。)であり,被上告人は本件契約によって本件建物の所有権を取得したと主張して,所有権に基づき本件建物の明渡しを求めるものであり,上告人らは,本件契約は譲渡担保契約であるから被上告人は本件建物の所有権を取得していないと主張して,これを争っている。

 

 2 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断し,被上告人の請求をいずれも認容すべきものとした。

 (1) 別件契約書には,「買戻約款付譲渡担保契約書」という標題が付されているが,変更前契約書にも,本件契約書にも, 「買戻約款付土地建物売買契約書」 という標題が付されている。

 (2) 上告人らは,被上告人が控除した67万5000円は本件契約による貸付けに係る3か月分の利息であると主張するが,別件貸付けの利息として支払われた270万円の領収証にはそのただし書欄に「利息」と明記されているのに対し,買戻権付与の対価として支払われた67万5000円の領収証にはその記載がないので,これを認めることはできない。

 (3) 上告人らは,上告会社は被上告人から371万5000円しか受け取っておらず,このような少額の代金で上告会社が時価1800万円を下らない本件土地建物を売却するはずはないと主張するが,上告会社が371万5000円しか受け取ることができなかったのは,買戻権付与の対価,別件貸付けに係る利息,登記手続費用の合計378万5000円が控除されたからにほかならず,本件土地建物は飽くまで750万円と評価されているし,本件土地建物の時価が1800万円を下らないと認めるに足りる証拠もない。

 (4) したがって,本件契約は,譲渡担保契約ではなく,真正な買戻特約付売買契約と認められる。

 3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

 (1) 真正な買戻特約付売買契約においては,売主は,買戻しの期間内に買主が支払った代金及び契約の費用を返還することができなければ,目的不動産を取り戻すことができなくなり,目的不動産の価額(目的不動産を適正に評価した金額)が買主が支払った代金及び契約の費用を上回る場合も,買主は,譲渡担保契約であれば認められる清算金の支払義務(最高裁昭和42年(オ)第1279号同46年3月25日第一小法廷判決・民集25巻2号208頁参照)を負わない(民法579条前段,580条,583条1項)。このような効果は,当該契約が債権担保の目的を有する場合には認めることができず,買戻特約付売買契約の形式が採られていても,目的不動産を何らかの債権の担保とする目的で締結された契約は,譲渡担保契約と解するのが相当である。

 そして,真正な買戻特約付売買契約であれば,売主から買主への目的不動産の占有の移転を伴うのが通常であり,民法も,これを前提に,売主が売買契約を解除した場合,当事者が別段の意思を表示しなかったときは,不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなしている(579条後段)。そうすると,買戻特約付売買契約の形式が採られていても,目的不動産の占有の移転を伴わない契約は,特段の事情のない限り,債権担保の目的で締結されたものと推認され,その性質は譲渡担保契約と解するのが相当である。

 (2) 前記事実関係によれば,本件契約は,目的不動産である本件建物の占有の移転を伴わないものであることが明らかであり,しかも,債権担保の目的を有することの推認を覆すような特段の事情の存在がうかがわれないだけでなく,かえって,① 被上告人が本件契約を締結した主たる動機は,別件貸付けの利息を回収することにあり,実際にも,別件貸付けの元金1000万円に対する月3分の利息9か月分に相当する270万円を代金から控除していること,② 真正な買戻特約付売買契約においては,買戻しの代金は,買主の支払った代金及び契約の費用を超えることが許されないが(民法579条前段),被上告人は,買戻権付与の対価として,67万5000円(代金額750万円に対する買戻期間3か月分の月3分の利息金額と一致する。)を代金から控除しており,上告会社はこの金額も支払わなければ買戻しができないことになることなど,本件契約が債権担保の目的を有することをうかがわせる事情が存在することが明らかである。

 したがって,本件契約は,真正な買戻特約付売買契約ではなく,譲渡担保契約と解すべきであるから,真正な買戻特約付売買契約を本件建物の所有権取得原因とする被上告人の上告人らに対する請求はいずれも理由がない。


 4 以上によれば,本件契約を真正な買戻特約付売買契約と解し,被上告人の請求を認容すべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は,上記の趣旨をいうものとして理由がある。したがって,原判決を破棄し,被上告人の請求を認容した第1審判決を取り消した上,被上告人の請求をいずれも棄却することとする。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

 (裁判長裁判官 上田豊三 裁判官 濱田邦夫 裁判官 藤田宙靖 裁判官 堀籠幸男)

 

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借地は一代限り (東京・府中市)

2007年12月25日 | 借地の諸問題

 府中市紅葉丘に住むYさんは、父親が昨年の11月に他界した。父親は西多摩郡瑞穂町に66坪の土地を借地していて、母親も数年前に亡くなり、Yさん達兄弟3人が借地権を相続することになった。

 Yんを含め兄弟は全員実家を出ていて、現在は空家となっている。瑞穂町の土地の地主はお寺で、借地は9軒あるが皆んなお寺の檀家でお墓もある。借地人9軒は交代で地代を集金し、お寺に納めている。

 ところが、Yさんの父親が亡くなった直後から、地代の集金に来なくなった。Yさん達兄弟は、不審に思いお寺の坊さんに会って尋ねたところ、「借地は一代限りに決まっている。このことは檀家総代との話し合いで決められている」と一方的な返事。

 Yさんは檀家総代にも問い合わせてみると、「(一代限りについて)聞いたことはないし、よく知らない」との話で、どうも坊さんの勝手な作り話であることがはっきりした。坊さんは、Yさん達が実家を出ていることを幸いに、借地の土地を取り上げて駐車場にでもする魂胆のようだ。

 Yさんは、兄弟3人で相談し、親が残した借地権を引継いで守るため、3人の内一番下の弟が実家に入ることを決めている。檀家の借地の土地を取り上げてまで金もうけをしようとする坊さんは許せないと、他の8件の借地人にも団結するよう働きかけをする予定でいる。

 

東京借地借家人新聞より

 

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(問題6) 借地の契約面積と実測面積の違い

2007年10月12日 | 借地の諸問題

(問題6) 借地の契約面積と実測面積の違い
 (1)借地の契約面積が実測面積より少ないようです。地主に計測しなおしてほしいと申し出たが断られた。借地人自ら測量したら、地主にその費用を請求できるか。

   (①請求できる 請求できない。)


  解答・解説は田見高秀弁護士(東借連常任弁護団)です。

 (2)実測面積が契約面積より少なかったときは、地主に多く払いすぎた地代を返還請求できるか。

   (①返還請求できる。 ②請求できない。)

 (解答)
 
借地料を借地面積の単位当たりの倍数で定めていたか(数量指示)どうかで変わってくる。数量指示なら,(1)・(2)とも,①請求できる。そうでなければ,(1)・(2)とも,②請求できない

 

 (解説)
  「土地賃貸借契約書には借地面積50坪と書かれており、今まで50坪あると信じて地代を払ってきました。地代も1坪当たり600円で月3万円と決められていました。
 ところが、今回、測量をしたら私が使っている土地は48坪しかないと事がわかりました。 今まで払い過ぎていた地代は返してもらえますか?」

 この場合、地主から借地をした当初、測量をして50坪あることを確認し、契約書にも測量図が添付されるなど地主も50坪あることを保証しているとみられるとき(法律学の分野では、「数量指示賃貸借」といいます)は、その後、周辺の人が土地を侵食したとかの事情で2坪へったんですから過払い分の返還の問題が出てきます。

 しかし、昔から設定されている大部分の借地は、借地をする際に専門家による測量をして面積を算出するようなことはしていません。したがって、契約書上の坪数はあくまでも地代を算出するための一応の基準として目見当の坪数や登記簿上の坪数を表示しているにすぎないと考えられます。このため、契約書上の坪数と実際に使用している土地の面積とが相違することはよくあることです。

 この場合、地主と借地人の双方は、現実に使用している土地48坪分の対価(地代)として「月3万円にしましょう。 いいです」と合意してきたのです。したがって、一坪当たり600円で50坪という計算方法は地代を算出するための一応の目安に過ぎないので、「実際は2坪少なかった」からといっても「当然,地代が改定されるべきだ」ということにはなりません。

 契約書上の面積より実際の坪数が多かったときも同じ理屈で、地主は、当然に過去の不足分を請求できるわけではありません。

 しかし、昨今は、借地権の価格も高くなっています。 契約更新時などに地主・借地人・周辺地権者立ち会いの上で借地境界を定めて測量をし、契約書に測量図面を添付して契約内容を明確にしておくことは必要であると思われます

 

東京・台東借地借家人組合

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地主の底地買取請求を等価交換に変更させた (東京都・足立区)

2007年09月15日 | 借地の諸問題

 足立区千住東町に住んでいる山田さんは借地して40年程になります。地主さんとも長いお付き合いで兄弟のようでした。

 突然町の不動産屋さんが来て「底地を買ってください」といわれてびっくりしました。地主さんに相続問題がおこり整理したかったらしい。でも、急に言われても定年過ぎて、年金暮らしの身では買うに買えない。

 組合と相談し等価交換を申し出てみた。最初は難色を示していたが、何回か話し合いをしているうちに、「いいでしょう」ということになり、等価交換が成立しめでたし・めでたしでした。

 山田さんは、「土地が自分の物になったからといって組合は辞めませんよ」と意志を固めた。

 

東京借地借家人新聞より

 

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